北海道におけるマラリア発生数(明治43~大正2年)
年度 人口 患者数 死亡者数 人口対患者数(%)
大正 二 1,803,181 6,440 9 0.357
大正 一 1,739,099 9,794 2 0.563
明治四四 1,667,593 12,559 14 0.753
明治四三 1,610,545 11,748 48 0.357
(西島浩,1967「北海道開拓と虫害(二)」より)
一時期,「地球温暖化が起きると,日本でもマラリアなど南方の伝染病が流行るであろう」というキャンペーンがありました.最近はあまり聴きませんけどね.
この話は,なにかおかしいな.と,思っていたのですけど,この資料を見つけました(実際には,数年前に見つけていたんですが,その後,入院したりなんだりで,失念してたヤツです).
この記録によると,明治末期から大正にかけて,北海道の開拓が本格的に始まった時期ですが,死者が出るほどマラリアが流行っていました.
もちろんこれは,公式な記録がとられ始めてからのものということで,実際には,明治の初めから発症の記録があるそうです.
媒体であるハマダラカは北海道の気候に適応して生きていたということが記録されています.当時の北海道は,現在よりはるかに寒かったのにもかかわらず.
北海道におけるマラリア発生数(昭和22~38年)
年度 患者数 罹患率 死者数 死亡率(%)
昭和
38 1 0.0 1 0.0
37 - - - -
36 - - - -
35 - - - -
34 - - - -
33 - - - -
32 4 0.1 2 0.0
31 17 0.4 1 0.0
30 9 0.2 - -
29 12 0.3 - -
28 5 0.1 3 0.1
27 7 0.2 1 0.0
26 21 0.5 2 0.0
25 18 0.4 2 0.0
24 47 1.1 3 0.1
23 111 2.8 6 0.1
22 186 7.4 11 0.3
(西島浩,1967「北海道開拓と虫害(二)」より)
別表ですが,昭和に入ってからも,北海道ではマラリアによる死者があったということです.昭和28年はわたしが生まれた年ですが,この頃になっても,まだ死者がいました(@_@;).
この間,いま売れっ子である「戦場カメラマン」がいってましたが,現在の日本にはマラリアを治療できる施設がないそうです.たった半世紀でそうなってしまった.
昭和32年以降は死者が記録されていませんので,この頃になってようやくマラリアの恐怖から脱したということになります.意外と最近まで,マラリアは流行っていたんですね.
日本で,マラリアが流行しないのは,流行源であるハマダラカが生息しにくい環境を作りあげてきたためで,沼地・藪などを放っておけば,(別に温暖化などなくても)流行しているはずだということです.気温には関係がない.
いまだに,不勉強なマスコミ関係者がポロッと「温暖化が進むと日本でもマラリアが流行る」などと平気でいってるのを聴きますが,歴史は「それはウソだ」ということを教えてくれています.
なお,昭和38年に死者が一名出ているのは,敗戦後の南方からの復員兵であり,例外です.
0 件のコメント:
コメントを投稿