2011年6月27日月曜日
阿弖流為
以前から気になっていた人物.実態不明.
俗に「蝦夷の族長」ともいわれていますが,「蝦夷」の実態も不明なので,“部族”とよんでいいような社会体制だったどうかも不明であり,したがって,こういう肩書きでいいのかどうかも不明.
「アテルイ」もしくは「阿弖流為」で調べても,出てくるものは,ほとんどが小説の類なので,参考文献がみつかりません.
以前,行き当たりばったりで,以下の二つを購入しましたが,ほとんど,なにも書かれていませんでした.
菊池敬一(1990)「北天鬼神―阿弖流為・田村麻呂伝―」(岩手日報社)
新野直吉(1994)「田村麻呂と阿弖流為―古代国家と東北―」(吉川弘文館)
前者は創作.後者は副題が中身で,表題は「売る」ためにつけた名前のようです.
不愉快なので,しばらく放置.
その間にも,小説・マンガの類が増殖する.実態が不明なのに….不明だからか….
別な理由で,以下の書籍を購入する.
なかなか面白い視点だと思う.戦争はどちらが勝とうと「歴史の転換点である」とみることは正しい.
鈴木拓也「蝦夷と東北戦争 戦争の日本史3」(吉川弘文館)
この本を読んで,ようやく「阿弖流為」のことが理解できました.
イヤ,そうではなく,阿弖流為の歴史的位置づけのことですね.なぜ,阿弖流為という人物の実態が不明なのか,不明にされたのかが理解できます.そして,なぜ阿弖流為が創作の類の中で生きているのかも理解できます.
新野直吉(1994)も,読みなおしてみようかという気になる.
斜めから見ると…,戦争は,その時代のハイテクが用いられているのが普通です.したがって,武器を調べれば,その「時代」がわかるはず….
でも,こういう見方をしている本は,まったくありませんね.
わりと近い本が出ています.
盛本昌広(2008)「軍需物資から見た戦国合戦」(洋泉社)
でも,これは「戦国時代」だけの話.歴史的変遷の話ではありません.
昔の本では,
奥村正二(1970)「火縄銃から黒船まで-江戸時代技術史-」(岩波書店)
奥村正二(1973)「小判・生糸・和鉄=続江戸時代技術史=」(岩波書店)
がありますが,これも江戸時代だけ.
「材料技術史」として歴史的変遷を追った本としては,
小山田了三・小山田隆信(2001)「材料技術史概論 第3版」(東京電機大学出版局)
があります.でも,この本は明らかな間違いが多く,気をつけないといけない.
つまり,武器から(材料史,技術史として)歴史を見ようというやり方は,まだ成立していないようです.
話を戻しましょう.
関連した別な記事で「平将門」について書くつもりですが,こちらを読めば,阿弖流為の時代の材料技術についてある程度推測ができます.つまり,「鉄」など必要ない.
もちろん,考古学的な発掘などで,この時代の武器が「もの」として発掘されたりしなければ話にならないですけど.
2011年6月24日金曜日
学者タレント
なんか,最近また“あるある番組”が増えてきましたね.
最近のパタンは,学者・評論家などを集めて,かれらに言いたい放題を語らすというもの.どんどんエスカレートして,相当危ないことをしゃべってます.しかし,これなら,放送局やディレクターが「いわせてる」わけではないので,どんな発言があったとしても放送関係者は一切責任をとらなくていい.
番組の最後に数秒「これは一説です」と断りを入れれば,無罪放免というわけです.
なにか問題が起きたって,その学者・評論家を「切れば良い」だけですからね.
うまいやり方を考え出したものです.
明石家さんまさんは,決して嫌いではないのですが,どうもあの番組は見るに堪えない.
一番腹が立つのは,I-教授です.
怪しげな“脳科学者”がたびたび「DNAがすべてを決定する」と主張しているのに,ひたすら,にたにた笑っているだけですね.本当に同一人物かと疑いました.
I-教授は,「構造主義生物学」の中心人物だったひとです.今はどうも看板を下ろしたらしい.
構造主義生物学は,ネオダーウィニズム全盛の現代生物学会で,「DNAがすべてを決定するという考え方はおかしい」と主張して孤軍奮闘してきた学説でした(これは非常に面白いので,I-教授の著書はたくさん読みました.古生物学に応用はできなかったですけどね).
I-教授が自説に自信があるのなら,構造主義生物学は信じるに足るものだと考えているのなら,“脳科学者”の「DNAがすべて」論が出てきたならば,反論しなければおかしい.I-教授の著作には「DNAがすべて」と考えるのはおかしいと何度も書いてある.
反論しないのは,凄く悲しい.自説を棄てたら,その人はもう学者ではない.
もう,まったく,最近の彼の著書は読む気がしないですね.
そういえば,かなり前から,かれの著書が,読まれることを意識した文章に変わってるような気がしてましたが,人格が変わってしまったのだろうか….
魚の分類(途中経過)
Berg (1940)が示した魚についての分類史を追っかけています.
示された分類名を追跡してゆけば,なにか手がかりがつかめるのではないかと続けていたのですが,まったくうまくいきませんね.最大の理由は,分類群名はあっても,その定義者を示さないことが習慣化していて,だれが定義したものかがまずわからないことです.そのため,まったく同じ名称でも,「同じ分類群」を示しているのかどうかさえ判らない(もっとも,原著者名が示されていたとしても,原著が入手できなければ,定義はわからないのですけどね).
これまでいくつかいじったことのある哺乳類や爬虫類あるいは軟体動物などだと,各分類群名には定義者名が明記されていて,追跡しようとすれば可能だったのですが,魚類に関してはできません.
だれが定義したのかもわからない分類群名は比較検討ができないのですね.定義がわからないと,妥当なものか,そうでないかの判断もできないことになります(でも,おこなわれているのが不思議…).
こんなんで,「魚の分類」が成立しているといえるのだろうかと,疑問がわきます.
くわえて,クラディズムによる分類の再編成が進んでいるようで,それはそれでいいのですが,こちらでも,使われている分類群名に定義者が示されない上に,定義も示されることがない.クラディズム以前の分類と同じ名称が使われていれば,その定義は同じと考えるべきですが,定義者が明示されないので,比較もできません.
これでは,ほとんど,魔法使いの呪文(「唐人の寝言」「gibberish」「It's Greek to me !」)と同じです(やってる本人以外わからない).
結局,科学嫌いを増やすだけかも.
分類学は科学であることをやめてしまったのでしょうか…(ま,魚類関係が特にひどいということですが).ま,「分類しても世界はわからない」という本を科学者が書いてますけど…(-_-;
だんだん,めんどくさくなってきました.
もう少し続けるつもりですが,思うところには到達できそうもありませんね.
ま,《新ラテン語》《科学用合成語》の例がたくさん集まったので,「良し」としよう.
2011年6月16日木曜日
魚の分類(7)Berg (1923)
ベルグが6番目に示したのがベルグ自身による分類です(Berg, 1923).
ベルグは“魚様脊椎動物”と“魚”を六つの「綱」に分けています.しかし,これは現生種のみについての分類ですので,ベルグ自身も,化石種を含めるともっと複雑になるだろうとしています.
Berg, 1923, “Fresh-water fishes of Russia" (in Russian)
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I. MARSIPOBRANCHII s. CYCLOSTOMATA
class 1. MYXINI
class 2. PETROMYZONES
Il. PISCES
A. CHONDRICHTHYES
class 3. SELACHII
class 4. HOLOCEPHALA
B. OSTEICHTHYES
class 5. DIPNOI
class 6. TELEOSTOMI
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I.のMARSIPOBRANCHII s. CYCLOSTOMATAは「囊鰓類 s. 円口類」で,具体的には「ヤツメウナギ」などの顎をもたない“魚”のことです.ここで,II. PISCESはもちろん,“顎”をもっている魚のことですから,われわれが通常“魚”と呼んでいる「ヤツメウナギ」などは“魚様脊椎動物”として分けられるべきだと,明確化されているわけです.
もちろん,これは,魚の分類(6)でしめしたグードリッチ (E. S. Goodrich, 1909)にも示されています.
HOLOCEPHALA
(2011.08.25:修正)
(2011.09.09.:削除)HOLOCEPHALI;参照
PETROMYZONES
class PETROMYZONES (author unknown)
1923: class 2. PETROMYZONES: Berg, (Berg, 1940, p. 349)
(2011.09.15.:削除)PETROMYZONTIFORMES;参照
2011年6月12日日曜日
エコ
摩訶不思議な言葉がまかり通ってます.
それは「エコ」.
またぞろ,企業(+マスコミ)がつくり出した「不可思議用語」ですね.
この「エコ」には,さまざまな都合のいい意味に使われていて,定義がないんですね(「マイナスイオン」みたい?).
「となりのおうちに塀ができたってね.」
「エコだね~~」
なんて会話も…(ウソだね(^^;).
たぶん,多くの人が「ecologyのことだ」と思い込んでいると思いますが,どちらかというと企業が絡んでいますから「economyのこと」でしょう.「節電」といえば,電気を使わないようにすることではなく,わずかばかりの省電力傾向がある電化製品に,(まだまだ使えるのに)どんどん買い換えてゆくことなんですから.
安易に「車」に乗らないようにすることではなく,「(原発がつくった)電気」を消費する車に乗ること(これは,ステータスと化している).
ま,どっちにしても「地球に優しい」なんて意味はありませんね.
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さて,これらecologyとeconomyは,じつは同じ語源をもっています.
それは,ギリシャ語で「家,住居.生活の場所」の意味を持つ「オイコス[οἶκος]」です.
ギリシャ語の「オイコス[οἶκος]」に「慣習」という意味を持つ「ノモス[νόμος]」が結びついて(もちろん「家の慣習」という意味ですが),「家主.執事」を意味する「オイコノモス[οἰκονόμος]」という熟語ができました.家の慣習をキチンと守る人という意味ですかね.これが変化して「オイコノミアー[οἰκονομίᾱ]」=「家計.経済」になったわけです.家を守ることは家計を守ることですか.
「オイコノミアー」は,ラテン語化して「オエコノミア[oeconomia]」になり,フランス語化して「エコノミ[économie]」となり,英語化して「エコノミー[economy]」になったわけです.
一方,「オイコス[οἶκος]」に,ギリシャ語で「語ること,言葉,言語.数えること」の意味を持つ「ロゴス[λόγος]」をあわせます.これをラテン語化するとoiko-logiaになりますが,ヘッケル(独)はドイツ語化して「ökologie」と造語しました.1866年のことです.これが「生態学」の始まりですが,意味はどうやっても「家庭の言語」にしかなりませんね.ここでは,「生活の場所=(系)」という意味が強調されているのでしょう.
それに,-logia《ラテン語》(-logie《独》,-logy《英》)は「言語.言葉」の意味しかないんですが,意訳して「~学」とされ,たくさんの「~学」という「ラテン語化」がなされています.
さて,ドイツ語の「ökologie」は,英語化されて,当初は「oecology」と綴られていたのですが,簡略化して「ecology」になりました.当初は「生物環境を解析する学問」だったわけです.
「地球に優しい」とか,「企業活動に協力を」なんて意味はどこにもないでしょ.
つまるところ,エコロジーもエコノミーも「家庭内での出来事」が,もとだったわけですね.
エコロジーの方は,まだまだ進化(?)します.
のちに「人間生態学[human ecology]」とか,「社会生態学[community ecology]」とか,だんだん怪しげな用い方をされるようになり,ついには,「自然環境保護運動」なんて,まるで関係ないものまで“エコロジー”と呼ばれるようになります.
ここまでくると,あくまで「和製英語」と認識し,「エコ」といったほうが正確になりますね.「エゴ」でもたいしてかわりありませんが….
2011年6月10日金曜日
魚の分類(6)Goodrich (1909)
ベルグが5番目に示したのがグードリッチ (E. S. Goodrich, 1909)の分類です.
グードリッチはaquatic Craniates(=「水棲頭蓋動物」)を以下のように分類しました.
ただし,この[aquatic Craniates]という用語の意味はよくわかりません.よくわからないというのは,分類用語としては不自然だからです.分類用語としてはCRANIATA (= crani-ata=「頭蓋の」+「~をもった」)(複数形)であるべきで,実際にこの言葉が使われてもいるようです.
したがって,[Craniates]は英語の普通名詞で[Craniate]の複数形と考えるべきでなのしょう.
CRANIATA Linnaeus, 1758
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E. S. Goodrich, 1909, Cyclostomes and Fishes. London.
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BRANCH I and class CYCLOSTOMATA
subclass 1. MYXINOIDEA
subclass 2. PETROMYZONTIA
BRANCH II. GNATHOSTOMATA
grade I. class PISCES
subgrade 1. CHONDRICHTHYES
subclass 1. ELASMOBRANCHII
order 1. SELACHII
order 2. HOLOCEPHALI
subclass 2. † PLEURACANTHODII
subclass 3. † CLADOSELACHII
subclass 4. † ACANTHODII
subgrade 2. † OSTRACODERMI
order 1. † PTERASPIDOMORPHI
order 2. † CEPHALASPIDOMORPHI
order 3. † ANASPIDA
order 4. † PTERICHTHYOMORPHI
subgrade 3. † OSTEICHTHYES
group A
subclass 1. DIPNOI
subclass 2. † COCCOSTEOMORPHI
order 1. † ANARTHRODIRA
order 2. † ARTHRODIRA
group B
subclass TELEOSTOMI
division 1
order † OSTEOLEPIDOTI
division 2
order COELACANTHINI
division 3
order POLYPTERINI
division 4. ACTINOPTERYGII
subdivision 1
order CHONDROSTEI
subdivision 2. HOLOSTEI
order 1. AMIOIDEI
order 2. LEPIDOSTEOIDEI
order 3. TELEOSTEI
suborder 1. LEPTOLEPIFORMES
suborder 2. CYPRINIFOMES
suborder 3. CLUPEIFORMES
suborder 4. ESOCIFORMES
suborder 5. ANGUILLIFORMES
suborder 6. SYMBRANCHIFORMES
suborder 7. GASTEROSTEIFORMES
suborder 8. NOTACANTHIFORMES
suborder 9. MUGILIFORMES
suborder 10. ACANTHOPTERYGII
suborder 11. GADIFORMES
GADIFORMES
(clade unkown) GADIFORMES (author unkown)
1909: suborder 11. GADIFORMES: Goodrich, (Berg, 1940, p. 348)
---
GADIFORMES = gad-iformes=「Gadusの」+「~の形をしたもの《男女複》」(=「タラ形類」)
---
Gadus は,ギリシャ語の[ὁ/ἡ γάδος]=《男女》「タラの一種」をラテン語化したもの.
[ὁ/ἡ γάδος]は,ラテン語の《合成前綴》化して,gad-になります.
以下,
《合成語》《属名》Gadus = gad-us=「タラの」+《名詞化》=「タラ属」
《合成語》《科名》GADIDAE = gad-idae=「Gadusの」+《科》
《合成語》《目名》GADIFORMES = gad-iformes=「Gadusの」+「~の形をしたもの《男女複》」
という合成語を作ります.
(2011.09.07.:修正)
MUGILIFORMES
(clade unknown) MUGILIFORMES (author unknown)
1909: suborder 9. MUGILIFORMES: Goodrich, (Berg, 1940, p. 348)
---
MUGILIFORMES = mugil-iformes=「Mugilの」+「~の形をしたもの《男女複》」(=「ボラ形類」)
---
mugil-は,ラテン語のmugil (mūgil)=「ボラ科の魚」がそのまま,属名として使われています.
これに,《科》を意味する-idaeが合成されて,
MUGILIDAE = mugil-idae=「Mugilの」+《科》
《目》を意味する-iformesが合成されて,
MUGILIFORMES = mugil-iformes=「Mugilの」+「~の形をしたもの《男女複》」=「Mugil目」
となります.
(2011.09.13.修正)
NOTACANTHIFORMES
(clade unknown) NOTACANTHIFORMES (author unknown)
suborder 8. NOTACANTHIFORMES: Goodrich, 1909 (Berg, 1940, p. 348)
---
NOTACANTHIFORMES = notacanth-iformes=「Notacanthusの」+「形類(の複数)」(=「ソコギス形類」)
---
Notacanthus = not-acanth-us=「背中の」+「棘の」+《名詞形》=「背棘属(ソコギス属)」
not-は,ギリシャ語の[τό νῶτον]=「背,背中」が,ラテン語の《合成前綴》化したもの.
acanth-は,ギリシャ語の[ἡ ἄκανθα]」=《女》「棘,針」が,ラテン語の《合成前綴》化したもの.
-usは,さまざまな意味を持つラテン語風《接尾辞》ですが(辞典,文法書にもまともな説明はない),この場合は《名詞化接尾辞》と考えるべきでしょう.
あわせて,「背中の棘の属するもの」ですが,たぶん“背中に棘のあるもの”なんだと思います.とりあえず,「背棘属」と訳しておきます.普通,「ソコギス属」が使用されていますが,これは「訳」ではありません.
---
このNotacanthusが語根化したものが,notacanth-で,これから《科名》《目名》が造られます.
《科》を意味する-idaeを合成して,
NOTACANTHIDAE = notacanth-idae=「Notacanthusの」+《科》(=「ソコギス科」)
《目》を意味する-iformesを合成して,
NOTACANTHIFORMES = notacanth-iformes=「Notacanthusの」+「~の形をしたもの《男女複》」(=「ソコギス形類」)
などです.
(2011.09.14.:修正)
GASTEROSTEIFORMES
suborder GASTEROSTEIFORMES (author unknown)
1909: suborder 7. GASTEROSTEIFORMES: Goodrich, (Berg, 1940, p. 348)
---
GASTEROSTEIFORMES = gasteroste-iformes=「Gasterosteusの」+「~の形をしたもの《男女複》」=「イトヨ形類」(=「トゲウオ目」?)
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Gasterosteus = gaster-osteus =「腹部の」+「~骨の様に硬いもの」=「腹骨属」(=「イトヨ属」)
gaster-は,ギリシャ語の[ἡ γαστήρ]=「腹.胃」が,ラテン語の《合成前綴》化したもの.
-osteusは,ギリシャ語の[τό ὀστέον]=《中》「骨」が,ラテン語の《合成後綴》化したものの変異形.
本来は,ラテン語化するとosteonであるから,《中性形》osteumになるはずですが,この場合は,《形容詞形》-osteus = -oste-us=「骨の」+《形容詞》が採用されたうえで,名詞化しているようです. その意味は,「~骨;骨のように硬いもの《男単》」
あわせると「腹部が骨のように硬いもの」=「イトヨ属」となります.
---
Gasterosteusの語根はGasteroste-であり,これに分類名をあらわす語尾がついて,いくつかの分類群名となります.
《合成語》《属名》Gasterosteus = gaster-osteus=「腹部の」+「~骨の様に硬いもの」=「イトヨ属」
《合成語》《科名》GASTEROSTEIDAE = gasteroste-idae=「Gasterosteusの」+《科》=「トゲウオ科」(注:属名が「イトヨ属」ならば,科名は「イトヨ科」になるべき)
《合成語》《目名》GASTEROSTEIFORMES = gasteroste-iformes=「Gasterosteusの」+「~の形をしたもの」=「トゲウオ目」(同上)
---
注:Gasterosteusは「トゲウオ属」とは訳されていないので,GASTEROSTEIFORMESを「トゲウオ目」とするのはおかしいですね.
日本名「トゲウオ」は,これが示す属・種は存在しません.つまり,“トゲウオ科”もしくは“トゲウオ目”を示す一般名詞らしいのです.なんで,こんな,混乱を起こすような命名をするのか理解に苦しみますね.
たとえば,以下のようにGasterosteusを「イトヨ属」ではなく,「トゲウオ属」とするだけで,混乱は解消されるのですけどね~~~.
order GASTEROSTEIFORMES (author unknown)=「トゲウオ目」
family GASTEROSTEIDAE (author unknown)=「トゲウオ科」
genus Gasterosteus Linnaeus, 1758「トゲウオ属」
Gasterosteus aculeatus Linnaeus,1758「イトヨ」
Gasterosteus microcephalus Girard,1854「ハリヨ」
genus Pungitius 「トミヨ属」
(2011.09.07.:修正)
SYMBRANCHIFORMES
suborder SYMBRANCHIFORMES (author unkonwn)
1909: suborder 6. SYMBRANCHIFORMES: Goodrich, (Berg, 1940, p. 348)
(2011.09.23.削除)SYNBRANCHIFORMES:参照
ANGUILLIFORMES
1909: suborder 5. ANGUILLIFORMES: Goodrich, (Berg, 1940, p. 348)
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ANGUILLIFORMES= anguill-iformes=「Anguilla の」+「形態」=「Anguilla 形類(ウナギ形類)」
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anguill-は,ラテン語でanguilla =《女》「ウナギの類」が,《合成前綴》化したもの.
なお,anguilla = angu-illa=「ヘビ」+《縮小語》で,「小さなヘビ」を意味します.
-iformesは,ラテン語のforma (fōrma)=《女》「品種.形」が《合成後綴》化したものの変化形.
《合成後綴》《形容詞》《男性》《複数》の形です.
本来は,《形容詞》ですが,この場合は《名詞》化していて,=「~の形;~の形をしたもの」を意味します.
辞典類には,“-formes:動物分類で「目」を示すとき,よく使われる”などとありますが,実際には,-iformesの方が多いようです.
なお,-i-はラテン語形連結詞として扱われ,語根に入れない場合もあります.
【蛇足】ラテン語動詞を結びつけるときには-i-,ギリシャ語同士を結びつける場合は-o-が使われます.
(2011.08.31.:修正)
ESOCIFORMES
(clade unknown) ESOCIFORMES (author unknown)
1909: suborder 4. ESOCIFORMES: Goodrich, (Berg, 1940, p. 348)
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ESOCIFORMES = esoci-formes=「Esox の」+「~の形をしたもの《男女複》」=「カワカマス形類」
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esoci-は,ラテン語でesox =「ライン川の魚で,カワカマスの類」が《合成前綴》化したもの.ギリシャ語では[ὁ ἴσοξ]=《男》「サケに似た魚」のことらしいですが,こちらはラテン語綴り化すると,isoxです.
-formesは,ラテン語のforma (fōrma)=《女》「品種.形」が《合成後綴》化したもので,《名詞》《男女》《複数》形です.意味は,「~の形;~の形をしたもの」.
(2011.09.07.:修正)
CLUPEIFORMES
(clade unknown) CLUPEIFORMES (author unknown)
1909: suborder 3. CLUPEIFORMES: Goodrich, (Berg, 1940, p. 348)
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CLUPEIFORMES = clupe-iformes=「Clupea の」+「形類(の複数形)」=「ニシン形類」
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genus Clupeaは,ラテン語でclupea =《女》「非常に小さい川魚の一種」が,そのまま属名になったもの.しかし,Clupeaは「ニシン属」のことですから,もともとラテン語が意味した「もの」そのものではないと思われます(ニシンは川魚ではないですから).
このClupeaを模式属として,亜科・科・目名が造り出されています.
《合成語》《属名》Clupea=「クルペア」=「ニシン属」
《合成語》《亜科》CLUPEINAE = clupe-inae=「Clupeaの」+《亜科》
《合成語》《科名》CLUPEIDAE = clupe-idae=「Clupeaの」+《科》
《合成語》《目名》CLUPEIFORMES = clupe-iformes=「Clupeaの」+「~の形をしたもの」
ところで,属名ClupeaはLinnaeus (1758)が造りだしたものですが,現在使われている《亜科名》《科名》《目名》は,誰が定義したものか不明です(不思議ですが,魚類の分類ではよくある話…;「定義者名がわからない=定義がわからない」なのに,普通に分類名称として使われています…(^^;).
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参考までに,
order CLUPEIFORMES (author unknown)
family CLUPEIDAE (author unknown)
subfamily CLUPEINAE (author unknown)
genus Clupea Linnaeus, 1758
Clupea pallasii Valenciennes,1847 (ニシン)
(2011.09.05.:修正)
CYPRINIFORMES
Order CYPRINIFORMES Bleeker, 1859
1909: suborder 2. CYPRINIFORMES: Goodrich, (Berg, 1940, p. 348)
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CYPRINIFORMES = cyprin-iformes=「Cyprinus の」+「~の形をしたもの《男複》」
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cyprin-は,ギリシャ語の[ὁ κυπρῖνος]=《男》「コイ」を,ラテン語風につづったもの.本来は,cyprinosですが,[-ος](-os)は(-us)に変換される習慣があります.
これが,そのまま属名として用いられ…(と,普通は書いてありますが,たぶん,Cyprinusの語根cyprin-に名詞化語尾-usがついたのだろうと推測しています;結果として形は同じですが…),
genus Cyprinus Linnaeus, 1758
そして,Cyprinusの語根cyprin-に,例によって,《科》を意味する《合成後綴》-idae,《目》を意味する《合成後綴》-iformesがついて,各種分類名称が造られます.
《合成語》《属名》Cyprinus = cyprin-us=「cyprinusの」+《名詞》=「コイ属」
《合成語》《科名》CYPRINIDAE = cyprin-idae =「Cyprinusの一族《女複》《科》」
《合成語》《上科》CYPRINOIDEA = cyprin-oidea=「Cyprinus類似の形からなるもの《男複》」
《合成語》《目名》CYPRINIFORMES = cyprin-iformes=「Cyprinusの形をしたもの《男複》」
(2011.09.06.:修正)
LEPTOLEPIFORMES
(clade unknown) LEPTOLEPIFORMES (author unknown)
1909: suborder 1. LEPTOLEPIFORMES: Goodrich, (Berg, 1940, p. 348)
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LEPTOLEPIFORMES = leptolep-iformes=「Leptolepisの」+「~の形をしたもの《男女複》」
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leptolep-は,Leptolepisの語根.
Leptolepis = lepto-lepis=「弱い」+「鱗」で,「弱い鱗属」という意味.「弱鱗属」とでも訳しますか.
このleptolep-が語根となって,いくつかの分類用語を生み出します.
《科》を合成する-idaeをつけて,
LEPTOLEPIDAE = leptolep-idae=「Leptolepisの」+《科》
《目》を合成する-iformesをつけて,
LEPTOLEPIFORMES = leptolep-iformes=「Leptolepisの」+《目》
(2011.09.12.:修正)
LEPIDOSTEOIDEI
order LEPIDOSTEOIDEI (author unknown)
1909: order 2. LEPIDOSTEOIDEI: Goodrich, (Berg, 1940, p. 348)
1930: order LEPIDOSTEOIDEI: Goodrich, (Berg, 1940, p. 351)
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LEPIDOSTEOIDEI = lepid-oste-oidei=「鱗の」+「骨の」+「~類似の形からなるもの」=「鱗骨類」
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lepid-は,ギリシャ語の[ἡ λεπίς]=《女》「角質;鱗.鱗片」が,ラテン語の《合成前綴》化したもの.
oste-は,ギリシャ語の[τό ὀστέον]=《中》「骨」が,ラテン語の《合成前綴》化したもの.
-oideiは,ラテン語の-oideus = -oid-eus=「~類似の」+「~からなる」の変異形です.もとはギリシャ語らしいのですが,納得できる説明をしている辞典が無いので,略.
ということで,-oideiは《合成後綴》《形容詞》《男性》《複数》が《名詞》化したもので「~類似の形からなるものども」という意味.
あわせて,「鱗の骨の類似の形からなるものども」になりますが,意味不明((^^;).「鱗が骨のような~~」なら,意味が通じますけどね.
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周囲を探索してみると,LEPIDOSTEOIDEIはLepidosteusを冠とする分類用語らしいです.
つまり,LEPIDOSTEOIDEI = lepidoste-oidei=「Lepidosteusの」+「~類似の形からなるものども」というのがもとの形ですね.
ところが,これは,genus Lepisosteus Linnaeus, 1758とゴッチャになっているようです.
order LEPISOSTEIFORMES O. P. Hay, 1929
family LEPISOSTEIDAE Cuvier, 1825
genus Lepisosteus Linnaeus, 1758
解きほぐしてみようと,Lepidosteusについて探索してみましたが,その記載者が見つかりません.何らかの理由でLepidosteus はLepisosteusに収斂したようですが,その経緯がまったくわかりませんでした.
で,経緯は不明ですが,現在は上記Lepisosteusから派生した分類群名が使われているようです.
こういうのは本当に困ると思うのですが,魚類分類学は先取権を尊重しない(記載者名を明記しない)という伝統があるので,こういうことが頻繁に起きます.
もっと困ったことには,lepis-, lepiso-をサポートするギリシャ語ラテン語が存在しないことです.つまり,文法的にはLepisosteusをサポートする言葉がないということです.
もっとも,学名は(意味が無くても)最初に作られた言葉が優先権を持ちますので,意味がない言葉でもかまわないのですが….
(2011.09.12.:修正)
AMIOIDEI
1909: order 1. AMIOIDEI: Goodrich, (Berg, 1940, p. 348)
1930: order AMIOIDEI: Goodrich, (Berg, 1940, p. 351)
---
AMIOIDEI = ami-oidei=「Amiaの」+「~類似の形からなる《男複》」
--
amiaは《ギリシャ語》の[ἡ ἀμία]=《女》「魚の一種(解説は意味不明)」のラテン語風つづり.
これを,ラテン語の《合成前綴》化したものがami-=「amiaの」.
-oideiは,-oideus = -oid-eus=「~類似の」+「~からなる」.
これの,《合成後綴》《名詞形》《男性》《複数》で,=「~類似の形からなる」を意味します.
---
したがって,AMIOIDEI は ami-oideiの構造で,「Amiaの」+「~類似の形からなる《男複》」という意味を持ちます.amia = [ἡ ἀμία]自体の和訳がないので,和訳は不可能.「アミア類」としておくしかないですね.
ただし,ギリシャ語の[ἡ ἀμία],ラテン語のamia,分類学上のAmiaが同じものを示しているかどうかは検討していません.あしからず.
(2011.08.30:訂正)
ACTINOPTERYGII
1885: [clade unknown] ACTINOPTERYGII Klein,
1909: division 4. ACTINOPTERYGII: Goodrich, (Berg, 1940, p. 348)
1930: division ACTINOPTERYGII: Goodrich, (Berg, 1940, p. 351)
1934: III. ACTINOPTERYGII: Säve-Söderbergh, (Berg, 1940, p. 351)
1936: branch IlI. ACTINOPTERYGII: Stensiö, (Berg, 1940, p. 351)
1937: class ACTINOPTERYGII: Romer, (Berg, 1940, p. 352)
---
ACTINOPTERYGII = actino-pterygii=「放射線状の」+「翼《男複》」=「条鰭類」
--
actino-は,ギリシャ語の[ἡ ἀκτίς]=《女》「光.光線.放射線」がラテン語の《合成前綴》化したものです.
-pterygiiは,ギリシャ語の[ἡ πτέρυξ]=《女》「翼」の変化形.
[πτέρυξ] (pteryx)をラテン語の《合成前綴》化したものが,pteryg-, pterygo- =「翼の」.
これに,《所属・関係》を意味するラテン語の《合成後綴》-iusを合成して,-pterygius = -pteryg-ius=「翼の」という《合成後綴》《男》ができます.
この-pterygiusの《複数形》が -pterygii.
理由はよくわかりませんが,この《形容詞》が,「~翼」を意味する《名詞》に変化したものが,上記-pterygii=《男》《複数》「~翼:~翼を持つもの」.魚の「翼」は「鰭」のこと.
あわせると,ACTINOPTERYGII = actino-pterygii=「放射線状の」+「~翼を持つものども《男複》」=「条鰭類」
---
なお,ACTINOPTERYGIIは,現在,「綱(class )」扱いですので,怪しげな論理展開はせずに,ACTINOPTERYGOMORPHAあたりのほうが,いいんじゃあないかと思います.
(2011.08.25.:修正)
POLYPTERINI
order POLYPTERINI (author unknown)
1909: order POLYPTERINI: Goodrich, (Berg, 1940, p. 348)
1930: order POLYPTERINI: Goodrich, (Berg, 1940, p. 351)
---
POLYPTERINI = polypter-ini=「Polypterusの」+《所有・従属関係》=「Polypterusに属する」
--
POLYPTERINIは,genus Polypterus Lacépède, 1803を冠とする分類群名称の一つです.
Polypterus = poly-pterus=「多くの」+「~翼;翼をもつもの《男単》」=「多翼属(多鰭属)」
poly-は,ギリシャ語の[πολύς]」=「多くの.十分な.重厚な」が,ラテン語の《合成前綴》化したもの.
-pterusは,ギリシャ語の[τό πτερόν]=《中》「羽,翼」が,ラテン語の《合成後綴》化したもの.その《男性》《単数》形が名詞化したもので,「~羽;~翼」もしくは「~羽のもの;~翼のもの」という意味.
あわせて,「多くの翼をもつもの」となります.たぶん,背鰭がたくさんに分かれていることを表現したものでしょう.
このPolypterusの語根が,polypter-で,これから各分類群名称が造られます.
たとえば,
《合成語》《科名》POLYPTERIDAE = polypter-idae=「Polypterusの」+《科》
《合成語》《目名》POLYPTERIFORMES = polypter-iformes=「Polypterusの」+「~の形をしたもの」
など.困ったことに,どちらも定義者不詳….
上記,POLYPTERINIは,polypter-iniという構造で,-iniは《所有・従属関係》をあらわす《合成後綴》-inusの《男性》《複数》形です.まあ,「~に属するもの」ぐらいの意味ですか.
《合成語》《目名》POLYPTERINI = polypter-ini=「Polypterusの」+《所有・従属関係》=「Polypterus類」
---
-iniは,現在では動物分類上の「tribe(族)」の語尾に用いられています.その意味,文法的位置付けが示されていることは,まずありません.が,調べると,どうも抽象的ですが《関係・性質・原料》,《所有・従属関係》を示すなどと出てきます.
Goodrichの当時は,-iniを「tribe(族)」の語尾に用いるというルールもしくはマナーはなかったと考えられるので,使われたものでしょう.
(2011.09.18.:修正)
OSTEOLEPIDOTI
order OSTEOLEPIDOTI (author unknown)
1909: order OSTEOLEPIDOTI: Goodrich, (Berg, 1940, p. 348)
1930: order OSTEOLEPIDOTI: Goodrich, (Berg, 1940, p. 351)
---
OSTEOLEPIDOTI = osteo-lepidoti=「骨の」+「鱗のあるもの《男複》」=「骨鱗類」
注:Osteolepis を冠とする分類群名ですから,OSTEOLEPIDIDAもしくはOSTEOLEPIFORMESが用いられるべきですね.
---
Osteolepis = osteo-lepis=「骨の」+「鱗」=「骨鱗属」
Osteolepisの語根はosteolep-となります.これに,各分類群をあらわす《合成後綴》を合成すれば,各ランクの分類群名が造られます.
《科》をあらわす-idaeを合成して,
OSTEOLEPIDAE = osteolep-idae=「Osteolepisの」+《一族の名》=「Osteolepis一族(科)」
《目》をあらわす-iformesを合成して,
OSTEOLEPIFORMES = osteolep-iformes=「Osteolepisの」+「~の形をしたものども《男女複》」=「Osteolepis形類(目)」
もしくは-idaを合成して,
OSTEOLEPIDA = osteolep-ida=「Osteolepisの」+《一族の名:中複》=「Osteolepis一族(目)」
《綱》をあらわす-morphaを合成して,
OSTEOLEPIMORPHA = osteolepi-morpha=「Osteolepisの」+「~様のものども《中複》」=「Osteolepis様類(綱)」
などができあがります.
標記のOSTEOLEPIDOTIを解析すると,
OSTEOLEPIDOTI = osteo-lepidoti=「骨の」+「鱗のあるもの《男複》」=「骨鱗類」
になり,Osteolepisを冠としているとはいいがたいものです.
同様に,過去に使用されていたものに,OSTEOLEPIDIDAがありますが,こちらも,
OSTEOLEPIDIDA = osteo-lepid-ida=「骨の」+「鱗の」+《一族の名前:中複》=「骨鱗類」
になり,Osteolepisを冠としているとはいいがたいものです.
(2011.09.14.:修正)
ARTHRODIRA
1930: order ARTHRODIRA: Goodrich, (Berg, 1940, p. 351)
1932: subclass 3. † ARTHRODIRA: Woodward, (Berg, 1940, p. 350)
1936: group B. † ARTHRODIRA: Stensiö, (Berg, 1940, p. 351)
従って,dira=《女》「首,頸」という意味(「首」と「頸」は,本来意味が違うのですが,現代日本語では違いが重視されていません:その昔,ある古生物学者が「長頸竜」という呼び方があるのに,「首長竜」という俗称を流行らせた輩がいると憤慨してました.さらにカタカナで「クビナガリュウ」表示するのは,なにをかいわんや,ですね).
ギリシャ語の[ἡ δειρή]=《女》「首,喉」のラテン語化形容詞を造るために,ラテン語の《合成前綴》化したdir-に《形容詞》化語尾の-usを合成すると,
-dir-us = -dirus=「首の」+《形容詞》
しかし,これはわかりづらいので,いっそのこと,「~類」という意味の語尾をつけた方がよいと思う.
つまり,ARTHRODIR-I-MORPHAとかARTHRODIR-IFORMESとか….
1923: class 6. TELEOSTOMI: Berg, (Berg, 1940, p. 349)
1930: subclass TELEOSTOMI: Goodrich, (Berg, 1940, p. 351)
移動しました.
ANARTHRODIRA
1909: order 1. † ANARTHRODIRA: Goodrich, (Berg, 1940, p. 348)
1930: order ANARTHRODIRA (MACROPETALICHTHYS): Goodrich, (Berg, 1940, p. 351)
---
ANARTHRODIRA = an-arthro-dira=「無・」+「節のある」+「~首《中複》」=「無節頸類」
---
an-は《否定辞》のan-.
arthro-は,ギリシャ語の[τό ἄρθρον]=《中》「関節.肢節」を,ラテン語の《合成前綴》化したもの.
-diraは,ギリシャ語の[ἡ δηρή]=《女》「首,喉」もしくは[ἡ δειρή]=《女》「同上」もしくは[ἡ δέρη]=《女》「同上」を,ラテン語の《合成後綴》化したものの変化形.
《合成後綴》《形容詞》《中性》《複数》の形です.
本来は,《形容詞》ですが,この場合は《名詞》化していて,=「~首;~首を持つもの」という意味です.
また,本来は-deiraのはずですが,《ギ語》>《ラ語》変換時には[ει (ei)]は(i)となる習慣があるようです.
---
したがって,ANARTHRODIRA は an-arthro-diraの構造をもち,「無・」+「節のある」+「~首《中複》」という意味からなります.和訳すれば,「無節頸類」となります.
(2011.08.31:修正)
COCCOSTEOMORPHI
(clade unknown) COCCOSTEOMORPHI (author unknown)
1909: subclass 2. † COCCOSTEOMORPHI: Goodrich, (Berg, 1940, p. 348)
1930: subclass COCCOSTEOMORPHI: Goodrich, (Berg, 1940, p. 351)
---
COCCOSTEOMORPHI = coccosteo-morphi=「Coccosteus属の」+「~様のもの《男複》」=「Coccosteus様類」
---
COCCOSTEOMORPHIは,Coccosteusを模式属とする《科》の上位分類群として造られたものです.
---
まずは,Coccosteusから…,
Coccosteus = cocc-osteus=「球果状の」+「~骨;~骨をもつもの」
cocc-は,ギリシャ語の[ὁ κόκκος]=《男》「種子,穀粒;深紅色の液果」が,ラテン語の《合成後綴》化したもの.
-osteusは,ギリシャ語の[τό ὀστέον]=《中》「骨」の《合成後綴》《形容詞》形が,名詞化したもの=「~骨;~骨をもつもの」の意味.
あわせて,Coccosteus は「球果状の骨をもつもの」という意味になります.
---
このCoccosteusが語根化してcoccoste-, coccosteo-=「Coccosteusの」になり,《科名》《亜綱名》を造ります.
《合成語》《科名》COCCOSTEIDAE = coccoste-idae=「Coccosteusの」+《科》
《合成語》《亜綱》COCCOSTEOMORPHI = coccosteo-morphi=「Coccosteusの」+「~様のもの《男複》」=「Coccosteus様類」
---
ただし,科名も亜綱名も誰が定義したものか知られていません.
参考までに…,
subclass COCCOSTEOMORPHI (author unknown)
order COCCOSTEIFORMES (author unknown)
suborder COCCOSTEINA Heintz, 1932: Müller, 1985, p. 84.
family COCCOSTEIDAE (author unknown)
genus Coccosteus Miller, 1841 ex Agassiz MS.
なお現在は,亜目以上はCoccosteusが代表するものでないと考えられているらしく,Coccosteusのは冠していません.
(2011.09.05.:修正)
OSTEICHTHYES
1880: superclass OSTEICHTHYES Huxley,
1909: subgrade 3. † OSTEICHTHYES: Goodrich, (Berg, 1940, p. 348)
1923: B. OSTEICHTHYES: Berg, (Berg, 1940, p. 349)
1930: subgrade OSTEICHTHYES: Goodrich, (Berg, 1940, p. 351)
1933: class OSTEICHTHYES: Romer, (Berg, 1940, p. 352)
1937: Class OSTEICHTHYES: Watson, (Berg, 1942, p. 353.)
---
OSTEICHTHYES = oste-ichthyes=「骨の」+「魚」=「硬骨魚(類)」
---
ichthyes:ギリシャ語の[οἰ ἰχθύες]=《男複》「魚ども」をラテン語綴り化したもの.
(2011.08.25:修正)
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なお,クラディズムの台頭が著しい現在では,OSTEICHTHYES(=「硬骨魚類」)には,「哺乳類」や「鳥類」も含まれてしまうらしいです.
この一見,混乱した状況に対し,いろいろ理由がつけられているようですが,根本の問題は,“魚類分類学”では,分類用語に定義者を明記しないという習慣(悪習)があるためだと思います.
定義者を明記しないまま,同じ「言葉」を,違う概念に用いれば,混乱するのは当たり前ですね.
簡単に言ってしまえば,class OSTEICHTHYES Huxley, 1880と,クラディズムでいう”OSTEICHTHYES”とは定義が異なるのでしょう.
だから,クラディズムでは定義者を明記した「別の言葉」を使う必要があるのだと思いますね.
PTERICHTHYOMORPHI
order PTERICHTHYOMORPHI (author unknown)
1909: order 4. PTERICHTHYOMORPHI: Goodrich, (Berg, 1940, p. 348)
1930: order PTERYCHTHYOMORPHI: Goodrich, (Berg, 1940, p. 351)
---
PTERICHTHYOMORPHI = pterichthyo-morphi=「Pterichthysの」+「~様のもの《男複》」=「Pterichthys様類」
PTERYCHTHYOMORPHI = pterychthyo-morphi=《不詳》+「~様のもの《男複》」=「Pterichthys様類」
注:pterychthyo-はpterichthyo-の誤記と思われる.
---
PTERICHTHIOMORPHIはgenus Pterichthys Agassiz, 1840を冠とする分類群名称の一つ.
Pterichthys = pter-ichthys=「翼状の」+「魚」=「翼魚属」
pter-は,ギリシャ語の[τό πτερόν]=《中》「羽,翼」が,ラテン語の《合成前綴》化したもの.
-ichthysは,ギリシャ語の[ὁ ἰχθύς]=《男》「魚」を,ラテン語綴り化したもの.ただし,この場合は《合成後綴》化したものとして扱ったほうがいいだろうと思う.
あわせて,「翼状の魚」=「翼魚属」となります.
---
Pterichthysの語根はpterichthy-,《連結辞》も含めるとpterichthyo-.これに分類群名をあらわす《合成後綴》を結合して,各分類群名称が造られます.
標記の場合は,
《合成語》《目名》PTERICHTHYOMORPHI = pterichthyo-morphi=「Pterichthysの」+「~様のもの《男複》」=「Pterichthys様類」
《目名》ならば,やはり,
《合成語》《目名》PTERICHTHYIFORMES = pterichthy-iformes=「Pterichthysの」+「~の形をしたもの《男複》」=「Pterichthys形類」
のほうがいいかと思います.
(2011.09.19.:修正)
ANASPIDA
1909: order 3. † ANASPIDA: Goodrich, (Berg, 1940, p. 348)
1923: order ANASPIDA: Jordan, (Berg, 1940, p. 349)
1927: order 2. † ANASPIDA: Stensiö, (Berg, 1940, p. 351)
1930: order ANASPIDA: Goodrich, (Berg, 1940, p. 351)
1932: order † ANASPIDA: Woodward, (Berg, 1940, p. 350)
1937: order † ANASPIDA: Watson, (Berg, 1942, p. 353.)
---
ANASPIDA = an-aspida=「無・」+「盾《中複》」=「無盾類」(=「欠甲類」)
--
an-は《否定》の《接頭辞》<[ἀ, ἀν]=《否定辞》
-aspidaは,ギリシャ語の[ἡ ἀσπίς]」=《女》「丸い楯,楯;重装歩兵;エジプトコブラ」が,ラテン語の《合成後綴》《形容詞》化したものですが,この場合はさらに《名詞》化していて,=「楯《中複》」を示します.
したがって,ANASPIDA は an-aspida という構造で,「無・」+「盾《中複》」と訳され,「無盾類」もしくは「欠甲類」と呼ばれています.
(2011.08.26.:修正)
(2011.08.31.:修正)
CEPHALASPIDOMORPHI
1909: order 2. † CEPHALASPIDOMORPHI: Goodrich, (Berg, 1940, p. 348)
1927: subclass B. CEPHALASPIDOMORPHI: Stensiö, (Berg, 1940, p. 351)
1930: order CEPHALASPIDOMORPHI: Goodrich, (Berg, 1940, p. 351)
---
CEPHALASPIDOMORPHI = cephalaspido-morphi=「Cephalaspis の」+「~様《男複》」=「ケプァラスピス様類」
---
cephalaspido-は,Cephalaspisの語根.
--
Cephalaspis = cephal-aspis=「頭の」+「丸い楯」
cephal-は,ギリシャ語の[ἡ κεφαλή](ケプァレー)=《女》「頭.頭蓋」が,ラテン語の《合成前綴》化したもの.
-aspisは,ギリシャ語の[ἡ ἀσπίς](アスピス)=《女》「丸い楯,楯;重装歩兵;エジプトコブラ」がラテン語綴り化したもの.
あわせて,Cephalaspis は cephal-aspisという構造で,「頭の」+「丸い楯」という意味を持ち,和訳すれば,「頭の丸い楯」>「頭盾属」と訳せます.「頭甲類」と訳されている場合がありますね.
---
Cephalaspisの語根:cephalaspido-には,さまざまな《合成後綴》が合成され,各種分類群名をあらわします.
《亜科》をあらわす -inaeが合成されて,
CEPHALASPINAE = cephalasp-inae =「Cephalaspisの」+《亜科》=「頭甲類」
《科》をあらわす-idaeが合成されて,
CEPHALASPIDAE = cephalasp-idae =「Cephalaspisの」+《科》=「頭甲類」
「父祖からの一族・種族の名」をあらわす-idesが合成されて,
CEPHALASPIDES = cephalasp-ides =「Cephalaspisの」+「一族」
これは,かつては《科》をあらわす用語として使われたこともあるようです.
《類似;動作の状態,性質》をあらわす《合成後綴》-idusの《中性複数形》-idaが合成されて,
CEPHALASPIDA = cephalasp-ida=「Cephalaspisの」+「類似のもの《中複》」
これは,かつては,《目》をあらわす用語として提案されたことがあるようです.
現在は,《綱》の名称を形成するための《合成後綴》として用いられていますが,もともとは,「~様の」という意味を表す《中性複数》形の-morphaが合成されて,
CEPHALASPIDOMORPHA = cephalaspido-morpha=「Cephalaspisの」+「~様のものども《中複》」
これは,《目》を示す言葉として提案されたことがあるようです.
同じく,《男性複数》形の-morphiが合成されて,
CEPHALASPIDOMORPHI = cephalaspido-morphi=「Cephalaspisの」+「~様《男複》」
こちらは,現在も《目名》をあらわす用語として,用いられているようです.
しかし,記載者名が知られていないというのは…,いったい何なんだろう…!?
(2011.09.02.:修正)
PTERASPIDOMORPHI
class PTERASPIDOMORPHI Goodrich, 1909
1909: class PTERASPIDOMORPHI Goodrich,
1909: order 1. † PTERASPIDOMORPHI Goodrich, (Berg, 1940, p. 348)
1930: order PTERASPIDOMORPHI: Goodrich, (Berg, 1940, p. 351)
1927: subclass A. PTERASPIDOMORPHI: Stensiö, (Berg, 1940, p. 351)
---
PTERASPIDOMORPHI = pteraspido-morphi=「Pteraspisの」+「~様のもの《男複》」=「Pteraspis様類(翼甲様類)」
---
PTERASPIDOMORPHIはgenus Pteraspis Kner, 1847を冠とする分類群名称の一つです.
ただし,疑問がひとつあります.Pteraspisの語根はpterasp-であって,pteraspid-ではないと思うのですが….
Pteraspis = pter-aspis=「翼状の」+「丸い楯」
pter-は,ギリシャ語の[τό πτερόν]=《中》「羽,翼」が,ラテン語の《合成前綴》化したもの.
-aspisは,ギリシャ語の[ἡ ἀσπίς]=《女》「丸い楯,楯;重装歩兵;エジプトコブラ」が,ラテン語の《合成後綴》化したものです.
あわせて,「翼状の丸い楯」の意味.ただし,Pteraspisは「丸い楯」状でもないし,「翼」=「鰭」のようなものも特徴的ではありません.
この場合は,本来の「丸い楯」ではなく「盾」=「装甲」の意味で,普通の魚にある「鰭」ではなく背鰭の位置にある針状突起のことを意味しているようです.
---
さて,Pteraspis の語根 pterasp- が分類群名称を造る《合成後綴》と結びついて各分類群名称を造ります(変な日本語(^^;).
ところが,実際には,pteraspid-も使用されているようです.というよりは,こちらのほうが多い.
たとえば,《科》をつくる-idaeと結びついた分類用語には,
family PTERASPIDAE Claypole, 1885
family PTERASPIDIDAE Woodward, 1891
の二つが見いだされます.
上位分類群の名称では,
order PTERASPIDIFORMES Berg, 1940
order PTERASPIDOMORPHI Goodrich, 1909
が見つかりますので,pteraspid-のほうが多いわけです.でもこれだと属名はPteraspisではなくPteraspidusだったことになるんではないかと思うのですが….
だから,あるべき姿では
order PTERASPIFORMESだと思うんですけどね~~.
下記は,使われていませんけど,もしさらに上位分類群名称として使われるならば,
class PTERASPIMORPHA
文法学者の意見を聞いてみたいところです.
ま,実際の言語なんて,文法通りになんか,ならんもんですけど.
(2011.09.18.:修正)
OSTRACODERMI
(clade unknown) OSTRACODERMI (author unknown)
1909: subgrade 2. † OSTRACODERMI: Goodrich, (Berg, 1940, p. 348)
1932: subclass 1. † OSTRACODERMI: Woodward, (Berg, 1940, p. 350)
1930: branch and class OSTRACODERMI: Goodrich, (Berg, 1940, p. 351)
1927: class OSTRACODERMI (= CYCLOSTOMATA): Stensiö, (Berg, 1940, p. 351)
---
OSTRACODERMI = ostraco-dermi=「貝殻の」+「~皮膚をもったもの《男複》」=「介皮類(甲皮類)」
ostraco-は,ギリシャ語で[τό ὄστρακον]=《中》「陶器(の破片),貝殻」が,ラテン語の《合成前綴》化したもの.
-dermiは,ギリシャ語で[τό δέρμα]=《中》「皮,皮膚」が,ラテン語の《合成後綴》化した-dermus の変異形です.この《男性》《複数》形が名詞化したもので「~皮膚をもったもの」の意.
あわせて,「貝殻の皮膚をもったもの」の意味で,「介皮類(甲皮類)」などと訳されています.
(2011.09.14.:修正)
ACANTHODII
1909: subclass 4. † ACANTHODII: Goodrich, (Berg, 1940, p. 348)
1923: order ACANTHODEI: Jordan, (Berg, 1940, p. 349)
1930: subclass ACANTHODII: Goodrich, (Berg, 1940, p. 351)
1932: order † ACANTHODII: Woodward, (Berg, 1940, p. 350)
1934: I-1. ACANTHODII: Säve-Söderbergh, (Berg, 1940, p. 351)
1936: sub-branch 1. † ACANTHODII: Stensiö, (Berg, 1940, p. 351)
1985: class ACANTHODII: Mueller, A. H., p. 180.
---
ACANTHODIIは「Acanthodesの仲間」という意味で造られたと考えることができます(でも直感的に,oder, classレベルの分類群単位に属名をもってくるだろうかという疑問はありますが).
そうすると,
ACANTHODII = acanthod-ii=「 Acanthodes の」+《不詳》
ACANTHODEI = acanthod-ei=「 Acanthodes の」+《不詳》
となって,解析不能になります.
つまり,属名Acanthodesをもとに造られた名称ではない可能性が高いことになります.
なお,Acanthodesは,ギリシャ語の[ἀκανθώδης]=「棘の多い」《男女・対格・複数》,[ἀκανθώδες]《男女・呼格・単数》もしくは[ἀκανθώδης]《男女・形容詞》と一致しますが,《対格》《呼格》《形容詞》を「属名」として使うことは推奨されていませんので,一応論外ということにしておきます.ここで,《男女・形容詞》は,そのままの形で,《名詞》扱いされることがありますので,採用された可能性があります.
--
ということで,
ACANTHODII = acanth-odii=「棘のある」+「~に類するもの《男複》」=「棘魚類(?)」
ACANTHODEI = acanth-odei=「棘のある」+《不詳》
という形を考えます.
acanth-は,ギリシャ語の[ἡ ἄκανθα]=《女》「棘,針」を,ラテン語の《合成前綴》化したものです.
-odiiは,-odius (-ōdius)(オーディウス)= -ōd-ius= -ōdes-ius=「~に類する」+「~の.~(に)属する,~(に)関係する」の《複数形》です.そうすると,acanth-odiiは《形容詞》《複数》ということになりますが,《名詞》化して=「棘に類するもの《男複》」として使われているのだと判断できます.
和訳は「棘魚類」となっています.
一方,-odeiは解析不能.
いろいろ探ってみると,ギリシャ語の[ἀκανθώδει]=《形容詞》《双数》「棘の多い,刺々しい」は,ラテン語綴り化すると,acanthodeiになります.しかし,ギ-ラ変換の習慣によると[ει (ei)]は (i)になるのが普通なので,acanthodeiではなくacanthodiになり,おまけに《双数》を使う意味が分かりません.
したがって,-odeiは文法ミスの可能性が高いのです.
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この名称は,もっと明瞭になるように,class(綱)ならば,ACANTHOD-I-MORPHA,orderならば,ACANTHOD-IFORMESとすべきでしょう(実際,最近はそういう言葉も使用されているみたいです).
(2011.08.22:修正)
(2011.08.27:修正)
CLADOSELACHII
(clade unknown) CLADOSELACHII (author unknown)
1909: subclass 3. † CLADOSELACHII: Goodrich, (Berg, 1940, p. 348)
1930: subclass CLADOSELACHII: Goodrich, (Berg, 1940, p. 351)
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CLADOSELACHII = cladoselach-ii=「Cladoselache属の」+《不詳》
CLADOSELACHII = clado-selachii=「枝の」+「~鮫に属するもの《男複》」=「枝鮫類」
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CLADOSELACHIIは,本来Cladoselacheを模式属とする「科」の上位分類群として設定されたもののはずです.
しかし,この文法的構造には問題があります.
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まずはCladoselacheの意味から.
Cladoselache = clado-selache=「枝の」+「サメ[σελάχη]《中複》」=「枝鮫属」
clado-はギリシャ語の[ὁ κλάδος]=《男》「枝,分枝」が,ラテン語の《合成前綴》化したもの.「枝の,分枝の」という意味です.強引に「(口が)裂けた」という意味に解釈する例があるようですが,無理じゃあないでしょか….
-selacheは,ギリシャ語の[τά σελάχη]=《中》《複》「サメの類」ですが,サメ一般を示しているのか,サメの中のあるグループを指しているのか辞典の記述では不明です(正直な話,ギ語辞書・ラ語辞書は欠陥だらけだと思います).
あわせて,「枝のサメども」という意味で,属名として使われています.これは,ちょっと違和感があって,本来ならばCladoselachus = clado-selachus=「枝のサメ《単主》」が採用されていたはずだと思うのですが,経緯がわからないので,なんとも.
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で,合成語Cladoselachusの語根はcladoselach-になりますので,これに《科》を意味する-idaeが合成されて…,
CLADOSELACHIDAE = cladoselach-idae=「Cladoselachus」+《科》
という風になります.
ところが,亜綱として提案された名称はCLADOSELACHIIなので,cladoselach-を語根としては解析ができなくなります.
CLADOSELACHII = clado-selachii=「枝の」+「~鮫に属するもの《男複》」=「枝鮫類」
これは「枝の鮫類」であって,「Cladoselachus (Cladoselache)類」ではないのです!.
おまけに,このCLADOSELACHIIは誰が提案した名称なのか,サッパリわからないという不思議….
一方で,現在はcladoselach-を語根とした目名CLADOSELACHIFORMESが使われています(こちらも,誰が提案した名称なのか,わからないのですが…).
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(参考までに)
order CLADOSELACHIFORMES (author unknown)
family CLADOSELACHIDAE Dean, 1894
genus Cladoselache Dean, 1894
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(2011.09.04.:修正)
PLEURACANTHODII
(clade unkown) PLEURACANTHODII (author unknown)
1909: subclass 2. PLEURACANTHODII: Goodrich, (Berg, 1940, p. 348)
1930: order PLEURACANTHODII (ICHTHYOTOMI): Goodrich, (Berg, 1940, p. 351)
注:上記は,名称の比較だけで,定義に関する比較はおこなっておりません.
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PLEURACANTHODII = pleur-acanth-odii=「側面の」+「棘のある」+「~に類する」=「側棘類」
PLEURACANTHODII = pleuracanth-odii=「Pleuracanthusの」+「~に類する」=「Pleuracanthus類」
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PLEURACANTHODIIはgenus Pleuracanthusを冠とする分類群名称の一つです.
Pleuracanthus = pleur-acanthus=「側面の」+「棘のあるもの」=「側棘属」
Pleuracanthusの語根はPleuracanth-です.このPleuracanth-に,分類名称用語尾がついて,分類用語を造り出します.
PLEURACANTHIDAE = pleuracanth-idae =「Pleuracanthusの」+《科》=「側棘科」
PLEURACANTHODII = pleuracanth-odii=「Pleuracanthusの」+「~に類する」=「側棘類」
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ところで,Pleuracanthus は,Agassiz (1837)が定義したもので,上記の分類群名称が一時的に使われていましたが,Pleuracanthusは,すでにPleuracanthus Gray, 1832(甲虫らしい)が使用していました.
したがって,Pleuracanthus Agassiz, 1837は無効になり,Xenacanthus Beyrich, 1848が再定義されたようです.ということで,現在はXenacanthus を冠とする分類群名称が使用されているようです.
subclass PLEURACANTHODII > subclass XENACANTHI (atuthor unknown)
order PLEURACANTHODII > subclass XENACANTHIFORMES Fritsch, 1889
genus Pleuracanthus Agassiz, 1837 (invalid) > genus Xenacanthus Beyrich, 1848
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(2011.09.17.:修正)
CHONDRICHTHYES
class CHONDRICHTHYES Huxley, 1880
1909: subgrade 1. CHONDRICHTHYES: Goodrich, (Berg, 1940, p. 348)
1923: A. CHONDRICHTHYES: Berg, (Berg, 1940, p. 349)
1930: subgrade CHONDRICHTHYES: Goodrich, (Berg, 1940, p. 351)
1933: class CHONDRICHTHYES: Romer, (Berg, 1940, p. 352)
1937: Class CHONDRICHTHYES: Watson, (Berg, 1942, p. 353.)
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CHONDRICHTHYES = chondr-ichthyes=「軟骨(質)の」+「魚《男複》」=「軟骨魚(類)」
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chondr-は,ギリシャ語の[ὁ χόνδρος]」=《男》「小片.穀粒.(麦)ねり粉.軟骨」が,ラテン語の《合成前綴》化したものです.
ichthyesは,ギリシャ語の[οἰ ἰχθύες]」=《男複》「魚」が,ラテン語綴り化したもの.
[ἰχθύες]は,ラテン語綴化すると,本来は,(ikhthues)ですが,ラテン語変換時に[k]→[c], [u]→[y]一般的になるようです(じつは,一般的なのか,ルールとしてあるのか,一部の(言語学者)の説なのか,よくわからないところがありますけど).
あわせて,「軟骨(質)の」+「魚《複》」なので「軟骨魚(類)」と訳すことができます.
なお,ほかの例でいくと,ギリシャ語の変化形をラテン語化するのではなく,ギリシャ語の原形を《合成前綴》化もしくは《合成後綴》化してから,ラテン語化するのがほとんどなので,この場合は特殊な例といえるかもしれません.
強引にやってみると,
[οἰ ἰχθύες]>《合成前綴》化>ichthy-
ichthy->《形容詞》化>ichthy-us
《合成後綴》《形容詞》化:-ichthyus, -ichthya, -ichthyum=「~魚の」
さらに《複数》化:-ichthyi, -ichthyae, -ichthya=「同上《複数》」
しかし,こういう例は(そんなに経験はないですが(^^;)見たことがありません.
なぜ,[ὁ ἰχθύς]」=《男》「魚」だけが,ギリシャ語の変異形からラテン語化されるのか不思議です.
ま,もっと,例を集めれば,なにかわかるかもしれませんけどね.
(2011.08.22:修正)
(2011.08.28:修正)
GNATHOSTOMATA
1909: BRANCH II. GNATHOSTOMATA: Goodrich, (Berg, 1940, p. 348)
1930: branch GNATHOSTOMATA (AMPHIRHINA): Goodrich, (Berg, 1940, p. 351)
1936: division II. GNATHOSTOMATA: Stensiö, (Berg, 1940, p. 351)
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GNATHOSTOMATA = gnatho-stomata=「顎の」+「口《中複》」=「顎口類」
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gnatho-は,ギリシャ語で,[ἡ γνάθος]=《女》「顎,口」が,ラテン語の《合成前綴》化したもの.
stomataは,ギリシャ語で, [τά στόματα] =《中複》「口;舌,言語;顔;出口;裂け目;先端;前」のことで,あわせると「顎の口(ども)」ですが,別の以下のように考えることもできます.
-stomata = -stom-ata=「口の」+「~した.された.~をもった.~状の.~化の」=「口をもった」《女単》もしくは《中複》
上記は《形容詞》ですが,そのままの形で《名詞》化すると,「~口の特徴を持つもの」の意味を持ち,こちらも《女単》もしくは《中複》です.この場合は,《中複》と考えるのが適切でしょう.
したがって,あわせると「顎の」+「~口の特徴を持つものども」=「顎(のある)口をもつものども」=「顎口類」となります.
(2011.08.27:修正)
PETROMYZONTIA
(clade unkown) PETROMYZONTIA (author unknown)
1909: subclass 2. PETROMYZONTIA: Goodrich, (Berg, 1940, p. 348)
1930: subclass PETROMYZONTIA: Goodrich, (Berg, 1940, p. 351)
1927: order 3. PETROMYZONTIA: Stensiö, (Berg, 1940, p. 351)
(2011.09.15.:削除)PETROMYZONTIFORMES;参照
CYCLOSTOMATA
1857: order CYCLOSTOMI: Agassiz, (Berg, 1940, p. 347).
1909: branch I and class CYCLOSTOMATA: Goodrich, (Berg, 1940, p. 348)
1930: class CYCLOSTOMATA: Goodrich, (Berg, 1940, p. 351)
1932: subclass 2. CYCLOSTOMI: Woodward, (Berg, 1940, p. 350)
1937: order CYCLOSTOMATA: Watson, (Berg, 1942, p. 353.)
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CYCLOSTOMATA = cyclo-stomata=「円の」+「口《複》」=「円口類」
CYCLOSTOMI = cyclo-stomi =「丸い」+「~の口をした生物《複》」=「円口類」
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cyclo-は,ギリシャ語の[ὁ κύκλος]=「円.輪」が,ラテン語の《合成前綴》化したもの.
-stomataは,ギリシャ語の[τό στόμα]=《中》「口;舌,言語;顔;出口;裂け目;先端;前」の《複数形》.
したがって,CYCLOSTOMATA は cyclo-stomata という構造で,「円の」+「口《複》」と訳され,日本語学術用語では「円口類」が使われています.
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-stomiは,上記ギリシャ語の[τό στόμα]=《中》「口;舌,言語;顔;出口;裂け目;先端;前」が,ラテン語の《合成後綴》化したもので,-stomusになります.
-stomus = -stom-us=「口の」+《形容詞化語尾》
《形容詞》は,《三性変化》を行いますので,
《合成後綴》《形容詞》-stomus, -stoma, -stomum =「口の」
《形容詞》は《複数形》もサポートしますので,
《合成後綴》《形容詞》-stomi, -stomae, -stoma =《複》「口の」
となります.
これが,《名詞》化して=「~口」をあらわします.
上記,-stomi は,すなわち,《合成後綴》《名詞》《男性》《複数》をあらわしているわけです.
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そこで,CYCLOSTOMI は cyclo-stomi という構造で,「丸い」+「~の口をした生物《複》」という意味になり,「円口類」と訳されています.
結局は,CYCLOSTOMATAもCYCLOSTOMIも「円口類」という意味ですが,前者は《中性》で,後者は《男性》という違いがあります.
(2011.08.26.:修正)
2011年6月9日木曜日
酔仙酒造
「陸奥産金」および「烔屋製鉄」の文献調べのために「陸前高田市史(第十巻)産業編」を借り出しました.
文献としては,(申し訳ないですが)力作とはいいかねるものでした.
でも,口絵写真に「酔仙酒造株式会社」の写真がありました.
じつは卒論で,この陸前高田市の川上にあたる住田町八日町に居たことがあります.足のない(免許はあったが車をもっていなかった)わたしは,あまり出歩きませんでしたが,卒論調査は長丁場なので,北上山地を研究フィールドとする大学生・院生がたまに遊びにきます.そうすると,たいてい「酔仙」をかついできて,「まあ,いっぱいやるべや」ということになります.
けっこうお世話になったわけです.
悲しいことに,今回の地震による津波で,酔仙酒造の社屋は壊滅したとニュースでやってました.
こういう古くからある酒蔵には,独特の酵母菌が住み着いているのが普通で,今回のような無からの完全な復元は難しいとか聞きます.
でも,負けずにがんばって,あの味を復元してほしいものだと思います.
2011年6月8日水曜日
理由?
イベントは
するもやめるも
理由が震災
「震災」を掲げると,なんでもよろしいようで.
「震災復興」のためにという理由で,よくわからないイベントが強行されてますし,「そんなことをしている場合じゃあない」という理由で各種イベントが取りやめになっています.
結局,やりたいことをやるために「震災」だし,やりたくないことをやめるのも「震災」が理由のようで.
まあ,背後には資材が集まらないとか,「うちは関係ない」という意識だとか,いろいろあるんでしょうけどね.
2011年6月4日土曜日
スペシャル?
今日もまた
二時間番組
目白押し
よく見りゃただの
水増し番組
TV局もいよいよ辛くなってきたのか,二時間・三時間番組が目白押しです.
別にいいのですが,昔と違って,この為につくった“特別番組”というわけではなく,ちゃんと編輯すれば,「45分に収まるだろ」というものばかり.
中身もほとんどないので,昔の編集者なら25分ぐらいに編集しただろうと思う.
同じ場面を繰り返して水増ししたり,使いようもないつまらない場面に「ヘェー」とか,「アハハ」とか(「笑いを足す」とかいうんだそうですが),頻繁に使われる.
見ていて悲しくなる.
衝撃映像=Uチューブとか….
特別ゲスト=番宣とか….
不況で,広告料が入らないのに,地上波アナログと地上波デジタルの両方を流さなきゃならないとか,BSに手を出したりとかで,経営が苦しいんだろうと思います.
見ている方からすれば,ほとんどどこも同じことやってるのだから,FテレビかNテレビのどちらか一方を淘汰してもいいんじゃあないかと思う.
さて,M.・デイヴィスでも,聴こうっと….
あ,娘の定期テスト前だ.悲しい(- -;
政治屋たち
政治家は
突込みどころが
多すぎて
ネタにしたって
つまらないなり
「政治家はウソをついてはならない」って大声で叫んだ人,あんたの「引退宣言」は,なんだったの?
「恥を知るべきはだれなの?」とかいう気はないけど(「恥」とかいう言葉は知らないみたいだし),「あんたがいうか」ぐらいはいいたいですね.
この人たちの「言葉」は普通の言葉とは違うので,われわれはだまされたと思うけど,かれらはだましたつもりはないようです.というか,かれらのいう言葉は,たとえば“国民”は「(自分に投票してくれる)国民」というように,みな括弧付きなのです.
今下半身問題で話題のJ民党議員などが典型で,恥ずかしいことが話題になったりすると「党の役員」はやめたりしますが,議員そのものはやめない.「責任をとる」のは「党(+その支持者)」に対してで,(すべての)国民に対してではないのですね.いつもそうです.
つまらなさでは,高級官僚もほぼ同じで,ホントにつまらない.
「ナントカ安全委」とかが,またデータ隠匿をしていたようですが,ウンザリですね.
カミさん曰く,「「宿題はやったんだけど,もってくるの忘れた」という小学生並のいいわけ」.
わたし,「この人たちの人生は,高級公務員試験に合格したところで終わってるのさ」あとは,ひたすら金を稼ぐだけの人生.年金みたいなものですね.それにしては高すぎると思うけど.
2011年6月2日木曜日
政治屋たち
口上は
被災地のため
永田町
いつの間にやら
政治ゲームか
(センス,ねーなあ(^^;)
日本の政治家は幸せですね.
外国だったら,たぶん軍人がクーデターを起こしてるころだと思う.
強制で
尊敬をスクイズ
大阪府
やったところで
面従腹背
小人は
選挙で勝ったら
独裁者
東京に嗣ぎ
浪速の地でも
維新の会
威信をかけた
起立法
ほかにやること
ないのかい
大阪では,東北大震災とか,原発事件とか眼中にないみたいですね.
そういえば,東京では「天罰」発言があったっけ.