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2015年1月22日木曜日

エンレイソウ属

 
先日,エンレイソウ属(genus Trillium)の話題がFBであり,「学名の意味が怪しい」と発言してしまいました.
理由は,以前調べたら「わからなかった」からです.

ある日本人が著した「植物学ラテン語辞典」には,Trillium=Tres+Lilium,ということで,「三つの」+「ユリ」であると載っているらしいです.詳しくはどう書かれているのかは未見なのでわかりません.
どうやら,その“辞典”では「Trillium」を最初に使用した学者についても,引用はしていないようです.つまり,「植物学ラテン語辞典」の著者の解釈ということらしいです.

しかし,この説が正しいとするとTri-LiliumなのでTrililiumになるはずです.Trilliumにはなりません.
気になったので,調べてみました.
以前調べた時には,ネット上の情報に限界があって,調べられなかったのですが,今回は少し前進.

まず,エンレイソウ属の学名は(genus Trillium)でよろしいようです.
で,Trilliumの原著者は…予想したとおり,リンネでした.
つまり,genus Trillium Linnaeus, 1753ということです.
以前はここで限界でした.今回ネット上の情報をサーフィンしてみると,Linne (1753)がpdf.化されているのが見つかり,そこから画像を拝借しました.

表紙


問題のTrilliumは,その339-340頁に載っています(解像度が悪いのはご勘弁).

p. 339


p. 340


残念ながら,etymologyについては,載ってませんね.
これが,混乱の原因でしょう.だから,「解釈」せざるを得ないのね.
日本では,Trilliumの解釈は,前出の「三つのユリ」説が主のようですが,外国ではスウェーデン語のtrilling(=3)が語源であり,それにラテン語語尾の-iumを付加したものというのが主なのです(つまり,「小さな三/三つのもの」).

しかし,どちらも「解釈」なのに,解釈であることを明言していないようです.
さて,そうなると探索は,ここで行き止まり.

考えられるのは,外国でいわれているスウェーデン語のtrillingのラテン語化(リンネはスウェーデン人)か,誤植かです.ただし,書籍の方ではTRILLIUMというのは複数回でてきますから,単純な誤植ではないと考えるべきでしょうね.

むかし,イチョウの学名が,なぜ Ginkgo であって Ginkyo でないのかを疑問に思った地質学者が,原標本のラベルを調べに外国までおもむいた話を思いだしますが,わたしにはそんな力はありませんので,ここまでですか((^^;).


ところで,リンネ以前はなんと呼ばれていたかというと,Solanum triphyllum (=三葉のナス)のようですね.リンネ分類ではエンレイソウ属はナスの仲間ではなく,ユリの仲間なので属名を創設したということですね.

2013年2月17日日曜日

Scaphitesの展開(Ⅸ)

 
1980年,アルゼンチンの地質学者ブラスコ=デ=ヌロほかによって「アルゲントスカファイテス[genus: Argentoscaphites Blasco De Nullo, Nullo, et Proserpio, 1980]」が提唱されています.


「アルゲント・[Argento-]」は,ラテン語で「銀」を意味する「アルゲントゥム[argentum]」を語根化したもの.
したがって,「アルゲント・スカファイテス」は「銀のスカファイテス」という意味.

これは,標本が銀色だったからということではなく,産地がアルゼンチンだからつけられた名前でしょう.

それでは,「アルゼンチン」の由来を一節.
日本では「ラプラタ川」と呼ばれているアルゼンチンを流れる川.これはスペイン語で「リオ・デ・ラ・プラタ(Río de la Plata)」といいます.意味は「銀の川」.スペイン人はこの川の上流に「銀の鉱床」があると信じていたからついた名です.
もちろん,スペイン人がここを目指したのは,銀を強奪するため.

アルゼンチンがスペインから独立したときに,その圧政の記憶を消すために,スペイン語からラテン語の「銀= argentum」に置き換え,女性形・形容詞語尾の「・イーナ[-ina]」を足してできたのがargent-ina = Argentinaという国名です.
これを英語化したのが,Argentineというわけ.
「アルゲンティーナ[argent-ina]」は形容詞ですから,男性形も中性形もあります.順に「アルゲンティーヌス[argent-inus]」,「アルゲンティーヌム[argent-inum]」.形容詞で使われるときには,もともとは「銀からなる,銀に関係する」という意味ですが,もちろん,「アルゼンチンの」という意味でも使われます.


さて,種名として用いることができる「銀の」というラテン語形容詞はいくつかあります.
まずは,「~状の」という形容詞語尾「・アートゥス[-atus]」を合成した「アルゲンタートゥス[argent-atus]」=「銀のような」.これは男性形で,女性形は「アルゲンタータ[argentata]」,中性形は「アルゲンタートゥム[argentatum]」になります.

次に,「~製の」を意味する形容詞語尾「・エウス[-eus]」を合成した「アルゲンテウス[argent-eus]」=「銀製の,銀白色の」.これは男性形.女性形は「アルゲンテア[argent-ea]」,中性形は「アルゲンテウム[argent-eum]」です.


「~産の」を意味する「・エンシス[-ensis]」をつけて,「アルゲンチネンシス[argentinensis]」という種名も使われているようです.

この話,ここで一応終了
 

2013年2月13日水曜日

Scaphitesの展開(Ⅷ)

 
1953年には,スパス氏がインドスカファイテス[Indoscaphites Spath, 1953]という属名を提唱しています.
これも,もちろん,スカファイテスの仲間.

インド・[Indo-]は,もちろん,英語でインディア[India]のこと.
ギリシャ語では「インドス[Ίνδός]」=「インダス川」,「インドの」であり,これからラテン語のインドゥス [Indus]になり,インディア[India]は,Ind- =「インダスの」という語根に《所属・関係》,《状態》,《国名》,《病気》を表す接尾辞[-ia]を合成したもので,Ind-iaとなり「インダスの大地」という意味になります.
英語はこれを借りたものですね.


ラテン語のインドゥス [Indus]は「インダス川」を示す名詞です(複数形はインディー[Indi];なお,この複数形は「インド人たち」もあらわします)が,「インドの」という形容詞でもあります(系統的な勉強をしたわけではありませんが,こうなると,ラテン語に本当に「名詞」とか「形容詞」とかの区別があるんだろうかと悩む;とくに形容詞なのに,この場合頭文字は大文字ですからねえ).
形容詞の変化は「インドウス[Indus],インダ[Inda],インドゥム[Indum](順に,男性形,女性形,中性形)」.
「インドの」をあらわす形容詞では,別に「インディクス[Indicus],インディカ[Indica],インディクム[Indicum]」(順に,男,女,中)」というのもあります.

明瞭に「インド産の」という意味を持たせたければ,「・エンシス[-ensis]」という形容詞語尾を合成して 「インデンシス[Ind-ensis],インデンシス[Ind-ensis],インデンセ[Ind-ense]」ができますが,これはあまり使われないようです.
理由は不明ですが,たぶん,元の意味が「インダス川の」ですから,あまりにも範囲が広すぎるのが原因かと考えます.どちらかというと,「・エンシス」はローカルな地名に使われた方がしっくりきますね.

たとえば,「日本(産)の」を考えた場合,「ヤポネンシス[japon-ensis]」より「ヤポニクス[japon-icus]」のしっくりきますよね.逆に,「夕張(産)の」ならば「ユバリクス[yubar-icus]」よりも「ユバレンシス[yubar-ensis]」のほうがしっくりきます.
もっとも,命名は個人のセンスに負うところが多いですから,「それは違う」といわれたら,反論のしようも無いですけど(こんなことを説明しているギリシャ語ラテン語の解説書って,ないですからね).


さて,「インド・」がついた学名ってのはたくさんあります.その中のいくつかを紹介しましょう.
まずは,中新世の北米・アフリカ・ユーラシアにいた「インダルクトス[genus Indarctos Pilgrim, 1913]」.
これは,「インドゥ・[Ind-]<[Ίνδός]」+「アルクトス[-arctos]<[ἄρκτος]」という合成語で,「インドの」+「クマ」という意味.

インドの恐龍ならば,「インドサウルス[genus Indosaurus Huene et Matley, 1933]」.これは,後期白亜紀のインドに実在した恐龍.
もう一つ,「インドスークス[genus Indosuchus Huene et Matley, 1933]」と恐龍が産出してますが,こちらは「インドのワニ」という意味.ですが,ワニの仲間ではなく,獣脚類に属する立派な恐龍の一つです.
「スークス[suchus]」はラテン語化したもので,もとはギリシャ語の「ソウーコス[σοῦχος]」.こちらは,エジプトのある地方に住む「ワニ」を示す言葉だったらしいのですが,いつの間にか「ワニ一般」をしめすようになったみたいです.

同時代の「インドケラス[genus Indoceras Noetling, 1897]」は,パキスタン産のアンモナイト.記載された頃のパキスタンは,まだインドと分離していなかったからでしょうね.
これはもちろん,「インドの角」という意味でした.

 

2013年2月8日金曜日

Scaphitesの展開(Ⅶ)

 
1953年には,ライト[Wright, C. W.]氏がプテロスカファイテス[Pteroscaphites Wright, 1953]という属名を提唱しています.もちろん,スカファイテスの仲間.


接頭語「プテル・/プテロ・[pter-/ptero-]」は,ギリシャ語の「プテロン[πτερόν]」=「羽,翼」をラテン語合成前綴化したもの.
翼竜の「プテラノドン[Pteranodon Marsh, 1876]」で有名ですね.ほかにも,たくさんの動物・植物の学名に使われている語根です.

ちなみに,「プテラノドン」は「プテル・[pter-]」+「・アノドン[-anodon]」の合成語で, 元はギリシャ語の「プテロン [πτερόν]」+「アノドーン[ἀνόδων]」=「翼」+「歯無し」という構造.つまり,「翼があって,歯が無い」ということです.


話を戻しますと,プテロスカファイテスは,図を見ればわかるように,殻の開口部にヒラヒラのフランジを持っていますね.これを「翼」と表現したのでしょう.
だから,プテロスカファイテスは「翼をもったスカファイテス」ということ.

なお,模式種は「スカプイテース・アウリクラートゥス[Scaphites auriculatus Cobban, 1952]」として記載されました.
種名「アウリクラートゥス[auriculatus]」は,ラテン語の「アウリクラ[auricula]」=「耳朶;耳」に「・アートゥス[-atus]」=「~を持った」という形容詞化語尾をつけたもの.つまり,「耳たぶを持った」という意味です.
ですから,もともとは,「耳たぶを持ったスカファイテス」という意味の学名でしたが,ライト氏が別属として,プテロスカファイテスを設定し「プテロスカプイテース・アウリクラートゥス[Pterocaphites auriculatus (Cobban, 1952)]」が成立しました.そこで,「耳たぶを持った,翼のスカファイテス」となった訳です.意味が二重になってしまいましたね.
 

2013年2月7日木曜日

Scaphitesの展開(Ⅵ)

 
1952年には,コバン氏[William A. Cobban]が,クリオスカファイテス[Clioscaphites]という属名を提唱しています.


この「クリオ・」という接頭辞の意味は,定かではありません.
考えられるのは,ギリシャ神話に出てくるオーケアヌスの娘の一人,クレイオー[Κλειώ](=歴史のミューズ神と云われる)です.これは,ラテン語化して「クリーオー[Clio]」になるわけです.
クリオスカファイテスは,図のように非常にキレイな形態をしています.しかし,なぜ「歴史のミューズ神」に結びつけられたのかは…,謎です.
これが正しいとすれば,ラテン語的には「クリーオー・スカプァイテス」と発音することになります.

このクリーオーは,あのクリオーネ(バッカルコーンで有名(^^;)の語源とも云われています.
ただし,「クリーオー[Clio]」がどうやったら「クリオーネ[Clione]」に変化するのかは謎です.説明が見つかりません.
辞典類には,この例は載っていないので,単なる俗説なのかもしれません(原著に記述はありませんでした).

ちなみに,「バッカルコーン」は《英》buccal-coneのことで,buccalは《ラ語》の「ブッカ[bucca]」=「頬」から,coneは《ラ語》の「コーヌス[conus](元は《ギ語》のコーノス[κῶνος])」=「松笠;円錐体」から借用した言葉です.
 

2013年2月4日月曜日

Scaphitesの展開(Ⅴ)

 
1947年には,スカファイテス群の先祖形と思われるエーオースカファイテス[Eoscaphites Breistroffer, 1947]が記載されています.「発見されています」と書きたいところですが,発見から記載までは「間」があるのが当たり前.研究には時間がかかるんです.
「研究なくして知識なし[No study !, no knowledge !]」(私の造語です(^^;)というわけです.
形から見ると,とてもスカファイテス群には見えませんが(あとから記載された方, 1d, eは別),たぶん,アンモナイトの分類に重要であるとされる縫合線の形が共通しているんでしょう.

さて,「エーオー・」は,ギリシャ語のエーオース[ἠώς]=「曉の女神;朝焼け,曙光」のことで,「始めの,新しい」という意味で使われる接頭辞です.しばしば「エオ・」と使われますが「エーオー・」が正しい.
この「エーオー・」は,日本語では始新世と訳されている地質時代のエーオ・シーン[Eocene]にも使われています.

エーオース(Ἠώς from Wikipedia)

アンモナイトでは,ほかにもエーオー・グンナリテス[Eogunnarites Wright et Matsumoto, 1954],エーオー・マドゥラシテス[Eomadrasites Matsumoto, 1955],エーオー・ラーエボセラス[Eorhaeboceras Alabushev, 1989]などに使用されています.
日本では,順に「エオグンナライテス」,「エオマドラサイテス(エオマドラシテス)」,「エオラエボセラス」と表記するのが一般的ですかね.

恐龍でも,エーオーブロントサウルス[Eobrontosaurus Bakker, 1998]とか,エーオーケラトプス[Eoceratops Lambe, 1915],エーオーラムビア[Eolambia Kirkland, 1998],エーオーラプトル[Eoraptor Sereno et al., 1993]など,祖先形と思われるものに使うのが一般的です.
[続く]

 

2013年2月3日日曜日

Scaphitesの展開(Ⅳ)

 
1927年には,リーサイド氏[John B. Reeside, Jr.]が,スカファイテスの仲間として,デスモスカファイテス[Desmoscaphites]という属名を提唱しています.もちろん,ラテン語的には「デスモ・スカプァイテス」と発音します.

「デスモ・」はギリシャ語のデスモス[δεσμός]から.デスモスは「紐,帯」などの「縛るもの,束ねるもの」を意味する言葉です.これが,“罪人を縛るもの”から>「投獄」や「ドアの鍵」という意味になったりもします.一方で,「束ねたモノ」>「束」も意味するようになります.
スケッチの標本は一部欠けているようですが,「束ねたモノ」のように見えますかね?

同じアンモナイトでは,デスモセラス[Desmoceras Zittel, 1885]や,デスモフィライテス[Desmophyllites Spath, 1929]にも使われています.
「デスモセラス」は「デスモ・ケラス」,「デスモフィライテス」は「デスモ・プィライテス」がラテン語的発音.


「デスモ・」をつかった学名では,新生代の海生哺乳類「デスモスチルス[Desmostylus]」が日本では有名ですね.
「デスモ・スチルス」は,ギリシャ語の[δεσμός]+[στῦλος]=「束の」+「柱」という合成語をラテン語綴り化したもの.図はマーシュ氏が1888年に,最初に記載した時のデスモスチルスの歯のスケッチです.「束ねた柱」の様でしょう?
マーシュ氏は,このときはカイギュウの仲間と考えていました.

[続く]
 

2013年2月2日土曜日

Scaphitesの展開(Ⅲ)

 
1911年には,ノワク氏[Jan Nowak]がスカファイテスの仲間として,アカントスカファイテス[Acanthoscaphites]とホプロスカファイテス[Hoploscaphites]という属名を提唱しています.

「アカント・」は,ギリシャ語のアカンタ[ἄκανθα]=「棘,針」をラテン語化して接頭辞としたもの.
「ホプロ・」もギリシャ語で,ホプロン[ὅπλον]はもともと「道具の類」を意味する言葉でしたが,転じて「楯」などの防具,さらにその「防具で身を固めた兵士」を意味するようになりますが,一方で,攻撃用の「武器」なども意味します.
アカントスカファイテスは確かに棘をもっていますし,ホプロスカファイテスは硬そうに(?)見えます(かね?(^^;).

アカントも,ホプロも,化石の名前によく使われる表現ですので,憶えておくとよいかも.

たとえば,「アカント・」では,アンモナイトの仲間に有名なアカントケラス[Acanthoceras Neumayr, 1875]に使われています.棘,ありますね.

ほかにも,デボン紀後期に現れた両生類のアカントステガ[Acanthostega Jarvik, 1952]や,恐竜のアカントプォリス[Acanthopholis Huxley, 1867]にも使われています.


アカントステガの頭骨と全身.後頭部の棘がわかりますか?
 

2013年1月31日木曜日

Scaphitesの展開(Ⅱ)

 
1871年になって,ミーク氏[Fielding B. Meek (1817-1876)]が,スカファイテスに似たディスコスカファイテス[Discoscaphites]という属を提唱しています.ミークは米国の地質学者であり古生物学者だった人.たくさんのアンモナイトを記載しています.

ディスコスカファイテスは,ギリシャ語のディスコス[δίσκος]=「円盤」をラテン語化(ディスクス[discus])し,接頭辞「ディスコ・[disco-]」としたもの.
スケッチを見てもらうとわかりますが,確かに「円盤形のスカファイテス」ですね.

ラテン語化したディスクスは,さらに英語化してディスカス[discus]になっていますので,なじみ深いかと.

アンモナイトの仲間では,有名はパキディスクス[Pachydiscus]が,この語を使っています.意味は「厚い円盤」.円盤投げの円盤にそっくりですね.北海道でも,大型のこの仲間が化石として産出します.

パキディスクスは,1884年にチッテル氏[Karl A. von Zittel (1839-1904)]によって提案された属名です.チッテル氏は独逸の古生物学者で,古生物に関する教科書をたくさん書いています.
パキディスクスについては,後日また詳しくやる予定.

ディスコサウルス[Discosaurus Leidy, 1851]という属名も提唱されています.
「・サウルス」がついていますけど,こちらは海棲爬虫類.
しかも,米国・アラバマ州産の部分的な尾椎から創設されたもので,一部はエラスモサウルスの仲間と考えられ,残りは新属新種とするにはあまりにも部分的すぎると云うことで,「ノーメン・ドゥビウム[nomen dubium]」=「疑わしい名前」とされ,属名自体も「ノーメン・バーヌム[nomen vanum]」=「意味のない名前」として,使用されていません.残念.
 

2013年1月30日水曜日

Scaphitesの展開(Ⅰ)

 
スカファイテス(もしくはスカフィテス)[Scaphites]というアンモナイトがあります.
数字の「6」みたいな形をしている不思議なヤツです.


なにが不思議って,この形からは,こいつの人生は「ここで終わり」ってことが想像されてしまうからです.アンモナイトは開口部から軟体部が出ていて生活しているはずです.そうすると,軟体部が最初の巻いた殻の部分にぶつかっているはずですから,これ以上成長できないわけです.
だから,彼の人生はこれでお終い!.

まったく,生き物の世界というのは不思議なことがありすぎます.
+++

さて,このスカファイテスから,学名についての雑学を探ってみたいと思います.
その前に,スカファイテスを最初に記載した人ですが,ジェームス=パーキンソン[James Parkinson (1755 - 1824)]といいます.Parkinsonは英国の薬学者で外科医,博物学者で政治活動家でもありました.
要するに,当時の知的階級というヤツですね.
パーキンソン氏は「パーキンソン病」の発見者でもあります.

なお,この学名は日本では「スカファイテス」と表記されるのが一般的なようですが,もとは「舵手」を意味するギリシャ語[σκαφ_ίτης]ですから,「スカプイテース」となるのが正しいはずです.
なお,英語的には「スカ・ファイ・テス」と発音しているようです.つまり,現在の日本で使われているのは,カタカナ化英語ということですね.

ギリシャ語のスカプイテース(=舵手)ですが,なぜこの名前が選ばれたのかは,パーキンソンの原著にも書いてありませんので不明です.

ちょっと探ってみます.
ギリシャ語の「スカプェー[σκάφη]」は「えぐり掘られたもの」という意味で,小舟(たぶん丸木舟)を意味します.これに接尾辞「・イテース[-ιτης]」=「《化石.鉱物.塩類.製品.身体の部分の属性》などを示す」が合成されたものですから,スカプイテースは「小舟の舵手」だったのだろうことが推測できます.
しかし,たぶんですが,パーキンソンはそうではなく,「えぐり掘られたもの」に「石(化石)」を意味する語尾をつけて合成語をつくったのだろうと想像します.
6の字型の内側が「えぐり掘られたように」見えるからです.

パーキンソンは模式種を指定していません.ま,昔のことですから,記載もいい加減だったんでしょう.
1813年になって,サービィ[Sowerby, J.]が模式種[Scaphites equalis]を指定しているようです.
種名[equalis]は意味不明.たぶん,ラテン語の[aequalis]=「等しい」なのでしょうけど,「等しいスカファイテス」って意味不明.
まあ,そんなことも,間々あります.

[続く]
 

2011年10月29日土曜日

今日の《希語》《羅語》:台風

「つむじ風」のことをギリシャ語で,「テュプォース[τυφώς]」というらしい(羅語綴り化すると typhos).
これを擬人化(擬神化)したのが「テュプォース[Τυφώς]」.またの名を「テュプォーエウス[Τυφωεύς] 」.さて,「テュプォーエウス[Τυφωεύς] 」をラテン語風に綴ると,Typhoeusです.

とりあえず,固有名詞の頭文字は「大文字」で示しておきます.(もっとも信用できるとされる)辞典にそう書いてあるから.
でも,古代ギリシャ語は,すべて大文字で綴ったので,こんな区別はなかったそうです.なぜ「大文字」しかなかったかというと,文字は「石」に刻んだので,鑿で刻みやすいように「カクカク」した形だったのです.
これが,のちに柔らかい紙や革に手書きするようになると,「丸っこい」文字ができる.
こちらを「小文字」と呼び,元の「カクカク」した文字を「大文字」としたので,「大文字」と「小文字」が同時に使われるということは,なかったようなのです.
だから,ほんとうは固有名詞の頭文字を「大文字」で綴る,なんてのは「嘘っぱち」のようです.


話を戻します.
擬人化された「テュプォーエウス(Typhoeus)」もしくは「テュプォース(Typhos)」は,じつは,「ガイア[Γαῖα]」と「タルタロス[Τάρταρος]」の末子.「百の頭をもつ巨神」だったそうです.ガイアは大地,タルタロスは冥府です.
ギリシャでは,つむじ風は多かったのですかね.「百もある」というのですから.
それにしても,「大地と地獄」の息子が「風」というのは,すごいセンスですね.

さて,Typhoeusの息子が「テュープォーン[Τῡφῶν]」.ラテン語綴りにするとTyphon.かれは,たくさんの「風」の父親ということになっています.その娘たちの名が「テュプォーニス(Typhonis)」.
う~~ん,「風」だらけですね.

さて,このTyphonが中国語の「台風[tai fung]」とまじりあってできた言葉が,英語の「タイフーン(typhoon)
」.
昔どこかで(って,学校でしょうけど)「台風」が英語化したって習いましたけど,じつはギリシャ神話が大元だったわけです.

たしかに「台風」は地獄の孫.今年は,そんな年でしたねえ.


そういえば,日本で吹いた「神風」で沈んだ「元」の船(実際に攻撃してきたのは,元に支配された朝鮮半島あたりの民族だったらしいですが)がつい最近発見されましたね.
あれって,損害賠償請求できないんでしょうかね(^^;.
 

2011年10月20日木曜日

今日の《希語》《羅語》:サル

ギリシャ語で,「サル」のことを「ピテーコス[ὁ πίθηκος]」といいます.

で,なんの不思議もないのですが,ちょっと奥があります.
「希英辞典」で見ると,「ピテーコス」は,「ape」であり,「monkey」です.
日本人にとっては,「サル」は「サル」で,いろんなサルがいるだろうぐらいのことはわかりますが,サルが二分別されるなんてことは,まったく頭にありませんね.

「英和辞典」を見ると,「ape」は,「尾のない大型サル(類人猿)」であり,「monkey」は「尾のある小型サル」のことです.

ということは,(古代)ギリシャ人は,日本人のように「サル」に区別をしていなかったと考えていいのでしょう.

ところが,「羅英辞典」を見ると,このあたりは,とたんに曖昧になります.
ある辞典には,「ピテークス(pithecus)」(ギリシャ語の「ピテーコス[ὁ πίθηκος]」がラテン語化した言葉)という見出しがあり,その解説には「ape」とかかれています.別の辞典には,「ピテークス(pithecus)」いう見出しそのものがない.

しょうがないので,「英羅辞典」から,「ape」を引くと,そこには,(simia, simius)とあります.「monkey」を引くと,こちらにも「simia」がある.
どちらの解説も不親切ですが,simia と simius は同じもので,simiaが《女性形》で,simiusが《男性形》です.意味は「サル」と書いてありますが,どうも疑問.

これは,ギリシャ語の「シーモス[σῑμός]」=「獅子鼻の,平べったい鼻の」が,ラテン語の語根化した「シーム・(sim-)」=「獅子鼻の」から造られた《合成語》「シーミウス(simius)」=「獅子鼻の」が名詞化したものくさい.

つまり,
simius = sim-ius=「獅子鼻の」+「《形容詞》~に属する」
《合成語》《形容詞》simius, simia, simium =「獅子鼻の;獅子鼻に属する」
《合成語》《形》《複》simii, simiae, simia =「同上」
(それぞれ,順に,《男性形》《女性形》《中性形》)
これが,おのおの名詞化して,=「獅子鼻;獅子鼻に属するもの」になります.これらは,おのおの,羅英辞典の《女性形》simia, simiae,《男性形》simius, simiiに対応しています.

ということは,simiusは,もともと「サル」ではなくて,「獅子鼻の」という形容詞が,「獅子鼻のもの」という名詞化して,「(獅子鼻の)サル」に変化したのだということが考えられるわけです.
ということは,古代ローマ人には「サル」という言葉が無くて,古代ギリシャ語から借りたということになりますね.さらに,古代ローマ人は「獅子鼻のサル」しか知らなかったということになりそうです.
ま,サルの分類は,なかなか難しいので(使われている言葉と分類とがきれいに一致しない),そう簡単ではないかもしれませんが….


ところで,「ピテーコス[ὁ πίθηκος]」はどうなったのでしょうか?
「ピテーコス[ὁ πίθηκος]」は,(ほかの単語もだいたいそのような傾向があるのですが)そのままラテン語化せずに,ラテン語の「語根化」しています.
だから,信頼できる羅英辞典ではpithecusという見出しが無くて,pithecium = pithec-ium=「小さなサル」のように「語根」として使われた「語」しか,見出しにないということらしいです.

じゃあ,なぜ,(怪しい形)ラ語辞典にはpithecusという見出しがあるのか.
それは,たぶん,pithecusが学名の一部として現在も使われるため,辞典編集者が項目として取り入れたものなのでしょう.実際,どう考えても《NL》= New Latinには,学名からきたとしか考えられないものが散見されます.
ただし,これらはわたしの私見に過ぎないので,信用しないように.
 

2011年10月14日金曜日

今日の《希語》《羅語》:サウルス

サウルスについては,「学名で遊ぶ」で一度紹介したのですが,再度.

サウルス(saurus)というラテン語はありません.
サウルスは,ギリシャ語の「サウーロス[ὁ σαῦρος]」=《男》「トカゲ」から作られた合成語です.

[σαῦρος]をギリシャ語・アルファベータからラテン語・アーゼータ(正確にはなんと呼ぶのかシランですが,一般的には「アルファベット」と呼ばれるヤツです)に変換すると,saurosになります.

ものの本には,ギリシャ語からラテン語に変換すると,自動的に末尾の[-ος]は -usに変化すると書いてあります.わたしも始めはそれを信じていましたが,いろいろ見ていくと,どうも違うような気がします.
ギリシャ語に関する本とか,ラテン語に関する本はありますが(日本語で読めるもの),ギリシャ語とラテン語の関係について書かれた本は無いので,自己流に(機械的に)解釈することにしました.
その方が,簡単なので.

ラテン語化されたsaurosの語根はsaur-です.これに(ラテン語の)形容詞化語尾である-usを合成します(不思議なことに,ラテン語の-usは名詞化語尾でもあります.これについては後で…).そうすると,saur-us = saurus=「トカゲの」ができあがります.語尾-usは,ラテン語の中では典型的な変化をしますので,

saurus = saur-us=「トカゲの」+《形容詞》
《合成語》《形》《単》saurus, saura, saurum=「トカゲの」
《合成語》《形》《複》sauri, saurae, saura=「トカゲの」

ができます.順に《男性形》《女性形》《中性形》です.
sauraがsaurusの《女性形》とかいわれるのは,このあたりからですね.

なぜ,こんなのが必要かというと,実用ラテン語のことは知りませんが,学名ラテン語では,《属名》が《名詞》,《種名》が《形容詞》であらわされ,「赤いイヌ」とか「白いネコ」みたいな形であらわされるのですが,《名詞》の《属名》にも《性》があり,それを形容する《種名》はそれに引っ張られて,「同じ《性》であらわされる」というみょうなルールがあるからです(だから,《男性形》《女性形》《中性形》を作らなければならない.また,「できる」ということでもあります).
これは,実用ラテン語の尾を引いているということなんでしょう.
また,現在では,「種」が生物分類の基本単位とされていますが,このルールが成立したころは,「属」が基本単位で,「種」は,それを形容する「違い」をあらわす名前だったことが推測できます.

この《性》のルールについては,キチンと整理ができていないようです.一方で,《性の統一》については,しばしば「原著者が間違っているので,訂正を」という報告もしばしばあるようです.《性のルール》について,キチンとしたものが公開されていないのだから(とくに,英語を介してでしか,ギリシャ語やラテン語が理解できない日本では…),《性の統一》なんかやめてしまえば…と思いますが,こういう伝統(レガシー;どちらかというとPC界の用法です.もう役に立たないのに「残っている」というような)のあるものは,意味が無くても,なかなか訂正されませんね.

話を戻します.
じつは,ギリシャ語にもラテン語にも,現代文法でいうような《名詞》とか《形容詞》とかの区別はないような気がします.ちゃんと説明できませんけど.それで,上記の《形容詞》は,そのままの形で《名詞》になってしまいます.ギリシャ語だと《冠詞》がつけば《名詞》だと,すぐにわかりますが,ラテン語に冠詞はないそうです.
辞典などでは-usは《名詞化語尾》とも,《形容詞化語尾》とも書いてありますが,なぜ「名詞」も「形容詞」も同じなんでしょうかね.たぶん,「同じ」だからですね.
この《名詞化》については,《合成後綴》として考えた方が理解しやすいかもしれません.

-saurus = -saur-us=「トカゲの」+《名詞化語尾》
《合成後綴》《単》-saurus, -saura, -saurum=「~トカゲ」
《合成後綴》《複》-sauri, -saurae, -saura=「同上」

という形ですね.

たとえば,-us=《行為とその結果》《性質》の代わりに,-ius =「~の.~(に)属する,~(に)関係する」を合成すると,

-saurius = -saur-ius=「トカゲの」+「~の.~(に)属する,~(に)関係する」
《合成後綴》《形》《単》-saurius, -sauria, -saurium=「~トカゲの;~トカゲに属する」
《合成後綴》《形》《複》-saurii, -sauriae, -sauria=「同上」
となり,これが名詞化すると同じ形で,それぞれが=「~トカゲ;~トカゲに属するもの」という意味になります.
恐龍類を意味するDINOSAURIAはdino-sauriaで「恐ろしい」+「トカゲに属するものども《中性複数》」という意味だったことがわかりますね.
 

2011年10月12日水曜日

今日の《希語》《羅語》

ブログがまったくストップしておりますが,体調不良なわけではありません.

魚類の分類名称の検討をおこなっていたら,今まで作ってきた「MY学名語源辞典」の見なおしが必要になりまして,-a~ωまで訂正中なのです.なにせ,データーが膨大なので,やっと[L]に到達したところ.
ヒマがあれば,やってますので,ブログ更新できないのです.

この間,某「生物学名概論」で“定本”とされたLiddell & ScottのA Greek-English Lexiconや,LewisのA Latin Dictionaryなどのオンライン版を入手しまして,検討を続けてました.

思うに,これは,ダメですね.

これらの辞典は,英語とギリシャ語もしくは英語とラテン語に「精通」している人にでないと,意味がないようです.
第一に,省略が多すぎて,辞典を引いているのに,ほとんど謎解き状態.
第二に,英語を経由するわけですが,これらの辞典の著者はギリシャ語やラテン語に精通しているのかもしれないですが,英語はどうもそうではないようです.基本的に説明がヘタ.とくに言葉のえらび方に疑問があります.
辞典の解説文なのに,使われている単語が,しばしば多義性の言葉であって,英語経由で日本語になおすと,どんどん意味が広がって曖昧になってしまうことがあります.古典ギリシャ語,古典ラテン語のプロが直接日本語になおしてくれないと,辞書としてはつねに「?」状態です.

もっとも,日本で販売されている希語辞典,羅語辞典の元本は,どうやら上記の本なようで,ときどき「みょうな訳」(明白な「間違い」も)があるわけがわかりました.

考えてみれば,
「古典ギリシャ語」>「古典ラテン語」化>「英語」化さらに>「日本語」化
もしくは「古典ギリシャ語」>「英語」化さらに>「日本語」化
もしくは「古典ラテン語」>「英語」化さらに>「日本語」化
してるわけで,何重もの言葉(文化)のフィルターがかかっているわけですから,どの言語についてもヅブの素人であるわたしには「ちんぷんかんぷん」な時のほうが多いわけです.

第三に,希語も羅語も「変化形」が多くて,しかも重要といわれているのに,「変化形」がわかるように示されていない.
わたしのような素人には,「原形」がわからないので,辞典を引くことも困難なわけです.

しかし,これら辞典をオンライン化デジタル化した人がいまして,わたしのような素人にでも,「変化形」から辞書を引くことが可能になったわけです.すごく助かります.
残念なのは,ギリシャ文字に「外字」を使用していて,ギリシャ語は直接検索することができません(相当昔に作られたものなのでしょう).一度,ラテン語(綴り)化してからでないと引けないわけです(ラテン語綴り化は,いくつか法則があるようですが,統一されてはいないようです;だから,引きなおしが必要).もったいない.
 

2011年9月25日日曜日

ZEIFORMES

order ZEIFORMES (author unknown)


1940: order 97. ZEIFORMES: Berg, p. 468.

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ZEIFORMESはgenus Zeus Linnaeus, 1758を冠とする分類群名称の一つです.

Zeusは,一般にはギリシャ語の[ὁ Ζεύς]=「ゼウス大神」からきているとされていますが,どうも疑問があります.
ギ語辞典には,[ὁ Ζεύς]が魚に関係があるような記述はないのに対し,ラ語辞典には「zeus, zei (zēus, zēī)は,“魚の一種”であり,ギリシャ語では[ζαιός](zaios)もしくは [ζαζαιός](zazaios)という」と記されているからです(残念ながら,[ζαιός], [ζαζαιός]についての説明はありませんけど).
したがって,genus Zeusの語源は,ギリシャ語の[ὁ Ζεύς]ではなく,ラテン語の(zēus, zēī)であると判断したほうがよさそうです(だいたい,欧米人が「神」の名につながる「名」を魚につけるとは思われませんからね).

そうすると,ze-, zeo-を語根とする系列と,ze-, zei-を語根とする系列があるようであることが理解できます.ze-, zeo-のほうは,ギリシャ語の[ὁ Ζεύς]を語源とし(間違い),ze-, zei-のほうは,ラテン語の(zēus, zēī)を語源としている(正当)と考えるとスッキリするからです.

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以下,ze-, zeo-を語根とする系列と考えられる分類群名称.
《合成語》《亜目》ZEOIDEA = ze-oidea=「Zeusの」+「~類似の形からなる《中複》」=「Zeus類」
《合成語》《目名》ZEOMORPHI = zeo-morphi=「Zeusの」+「~様のもの《男複》」=「Zeus様類」
《合成語》《目名》ZEOIDEI = ze-oidei=「Zeusの」+「~類似の形からなる《男複》」=「Zeus類」

以下,ze-, zei-を語根とする系列と考えられる分類群名称.
《合成語》《属名》Zeus = ze-us =「zēusの」+《名詞化語尾》=「マトウダイ属」
《合成語》《科名》ZEIDAE = ze-idae =「Zeusの」+《科》
《合成語》《亜目》ZEIOIDEI = zei-oidei =「Zeusの」+「~類似の形からなるもの《男複》」=「マトウダイ類形類」
《合成語》《目名》ZEIFORMES = ze-iformes =「Zeusの」+「~の形をした《男女複》」=「マトウダイ形類」
違うかもしれませんけど((^^;).

(2011.09.25.)

2011年9月23日金曜日

TELEOSTEI

subclass TELEOSTEI Müller, 1844


1844: subclass II. TELEOSTEI Müller, (Berg, 1940, p. 346)


1904: order TELEOSTEI Müller, 1844: Boulenger, (Berg, 1940, p. 347)


1909: order 3. TELEOSTEI: Goodrich, (Berg, 1940, p. 348)


1923: superorder TELEOSTEI: Jordan, (Berg, 1940, p. 349)


1932: subclass 7. TELEOSTEI: Woodward, (Berg, 1940, p. 350)


1930: order TELEOSTEI: Goodrich, (Berg, 1940, p. 351)



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TELEOSTEI = tele-ostei =「完全な」+「~骨をもつもの《男複》」=「完骨類(完骨魚類・全骨魚類・真骨魚類)」



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ギリシャ語で「終わりに達した.完全な,真の」を意味する言葉が[τέλεος](テレオス).これをラテン語の語根としてtele-, teleo- (テレ・,テレオ・)=「完全な,全くの」の意味で使用します.



tele-は「遠い」という意味だと誤解されがちですが,そちらはギリシャ語の[τῆλε](テーレー)が語根化したtel-, tele- (tēl-, tēle-)のほうです.こちらは発音は「テール・,テーレ・」になりますので,望遠鏡は「テーレ・スコープ」,電話は「テーレ・プォーン」が正確です(英語じゃあないですよ).



-osteiは,「骨」を意味するギリシャ語の[ὀστέον](オステオン)がラテン語の《合成後綴》化した-osteusの変異形で,《形容詞》《男性》《複数》が名詞化したもの.「~骨:~骨をもつもの」の意.



合わせて,「完全な骨をもつものども」の意味です.「完骨類」と訳せます.


通常は「完骨魚類」・「全骨魚類」・「真骨魚類」と訳されているようです(「魚」を付加するのが適切かどうかは注意すべきでしょう).まれに「硬骨魚類」としている場合を見かけますが,これは完全な誤訳ですね(「硬骨魚類」→ OSTEICHTHYES)


(2011.09.23.:修正)


スパムが酷いので,移動します.


(2014.07.13:修正)

SYNBRANCHIFORMES

(clade unknown) SYNBRANCHIFORMES (author unknown)


1904: suborder SYMBRANCHII: Boulenger, (Berg, 1940, p. 347).
1906: order SYMBRANCHII: Regan, (Berg, 1940, p.347)
1909: suborder 6. SYMBRANCHIFORMES: Goodrich, (Berg, 1940, p. 348)
1923: order SYMBRANCHIA: Jordan, (Berg, 1940, p. 349)

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SYNBRANCHIFORMESは,genus Synbranchus Bloch, 1795を冠とする分類群名称の一つです.
Synbranchusは,文法的にはSymbranchusが正しいのですが,最初の記載が,Synbranchusという誤記だったらしいです.ところが,文法的には間違いでも,最初の記載が生きますので,Synbranchusが正しい,というやっかいなことになっています.

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Synbranchus = sym-branch-us=「共に」+《不詳》+《名詞化語尾》

もっと困ったことに,branch-に該当するギリシャ語もラテン語も見いだすことができません.
最も近いラテン語はbranchos(<もとのギリシャ語[βράγχος])ですが,これは「しわがれ声」という意味.訳せば,「共にしわがれ声をもつもの」という意味になりますが,なんのことだか….
もう一つ.Branchus(<もとのギリシャ語[Βράγχος])というものがありますが,これはギリシャ神話のアポロ(神)の息子の一人.こういうものは,原著が読めなければ,理解が不可能ですね.

たぶん,これは,branchi-の誤記だと思います.
branchi-は,ギリシャ語の[τό βράγχιον]=《中》「鰓」が,ラテン語の《合成前綴》化したもの.これならば,Symbranchiusとなり,「共に鰓をもつもの」となり(たぶん,癒合したような鰓をもっている),意味が通じます.
繰り返しますが,こういうものは,原著が読めなければ,理解が不可能です.

何が起きたのかを推測すれば,[βράγχιον]の語尾[-ιον(-ion)]は《縮小詞》と同じ形なので,これは「小さな鰓」であって「(普通の)鰓」である言葉があるのだと勘違いしたのでしょう.現存する最大のギリシャ語辞典にも,そのような言葉は(残念ながら)「ありません」でした.
もし,この解析が正しければ,原著者は(文法的には)二重の過ちを犯していることになります.
困ったことに,文法的に誤っていようが,意味のない言葉であろうが,命名法では「最初に使われた名称」が生きますので,Synbranchusは(意味不明でも)正当な分類用語となります.

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さて,Synbranchusの語根は,synbranch-です.これに,各種語尾が合成されて,分類用語が造られます.
《合成語》《科名》SYNBRANCHIDAE = synbranch-idae=「Synbranchusの」+《科》
《合成語》《目名》SYNBRANCHIFORMES = synbranch-iformes=「Synbranchusの」+《目》

以下は,ミススペルSynbranchusを訂正し,Symbranchusとしたものと思われる例.
《合成語》《亜目名》SYMBRANCHIFORMES = symbranch-iformes=「Symbranchusの」+「~の形をしたもの」

以下は,ミススペルSynbranchusを訂正し,Symbranchiusとしたものと思われる例.
《合成語》《目名》SYMBRANCHIA = sym-branchia=「共に」+「鰓をもつもの《中複》」=「共鰓類」
《合成語》《亜目名》SYMBRANCHII = sym-branchii=「共に」+「鰓をもつもの《男複》」=「共鰓類」
《合成語》《目名》SYMBRANCHII=「同上」

(2011.09.23.修正)


2011年9月15日木曜日

PETROMYZONTIFORMES

order PETROMYZONTIFORMES (author unknown)


1909: subclass 2. PETROMYZONTIA: Goodrich, (Berg, 1940, p. 348)
1923: class 2. PETROMYZONES: Berg, (Berg, 1940, p. 349)
1927: order 3. PETROMYZONTIA: Stensiö, (Berg, 1940, p. 351)
1930: subclass PETROMYZONTIA: Goodrich, (Berg, 1940, p. 351)

以上は,名称の形を比較しただけで,その定義の比較はしておりません.
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PETROMYZONTIFORMESはgenus Petromyzonを冠とする分類群名称です.

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Petromyzon = petro-myzon=「岩石の」+「吸うもの」

petro-は,ギリシャ語の[ἡ πέτρᾱ]=《女》「岩石」が,ラテン語の《合成前綴》化したもの.

-myzonは,ギリシャ語の[μύζων]=《男》《単》「吸うこと;吸うもの」が,ラテン語化し,《合成後綴》扱いになったものです.

これらをあわせて,Petromyzon = petro-myzon=「岩石の吸うもの」.意味は,よくわかりません((^^;).こんな,わけのわからない命名も珍しいですね.
だいたいが,[μύζων]という単語自体についての,辞典の説明もわけがわからんのですけどね.

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しょうがないですが,話を進めます.
Petromyzonの語根はpetromyz-のはずです.しかし,各分類群名称を検討すると,petromyzont-が採用されています.

PETROMYZONTIFORMES = petromyzont-iformes
PETROMYZONTIDA = petromyzont-ida
などです.
なぜ,こうなるのかはわかりません.が,可能性が高いのは,myzonの《属格》形が使われているのではないかと思われます.しかし,たしか,こういう合成語には《属格形語尾》
は使用してはいけないというルールがあったと記憶するですが,こう堂々と使われていると,逆に《属格形語尾》を使うんだったかな?と思ってしまいますね(わざわざそんな,混乱を起こすようなことが,推奨されるでしょうかね).
ただし,[μύζων]は,前述したように辞典の記述の意味がわからないだけでなく,その変化形もろくに示されていませんから,確たる証拠はありません.

だから,上記は,
PETROMYZIFORMES = petromyz-iformes
PETROMYZIDA = petromyz-ida
なのでは,と思います.

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一方,現在は使われなくなった,petromyz-を冠とする分類用語に以下があります.
PETROMYZONES
PETROMYZONTIA

こちらは,なぜこの語尾を採用しているのかは,まったくわかりません.
ホントにわけのわからない分類群(名称)だこと(--;.
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(2011.09.15.:修正)


2011年9月5日月曜日

COELACANTHIFORMES

order COELACANTHIFORMES Berg, 1937


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COELACANTHIFORMESはgenus Coelacanthusを模式属とする科の上位分類群名として提案されたものの一つです.以下その例.

genus Coelacanthus Agassiz, 1836
family COELACANTHIDAE Agassiz, 1836
suborder COELACANTHOIDEI Berg, 1937
order COELACANTHIFORMES Berg, 1937
subclassis COELACANTHIMORPHA (author unknown)

order COELACANTHIDA (author unknown)
1857: order COELACANTHIDA: Agassiz,: Berg, 1940, p. 347.

order COELACANTHINI Agassiz, 1843
1843: order COELACANTHINI Agassiz,
1909: order COELACANTHINI: Goodrich, (Berg, 1940, p. 348)
1930: order COELACANTHINI: Goodrich, (Berg, 1940, p. 351)

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まずは,genus Coelacanthusから.
Coelacanthus = coel-acanth-us

coel- は,ギリシャ語の「空洞の」を意味する[κοῖλος](コイーロス)が,ラテン語の語根化したものです.本来は,coil-, coilo-の綴りのはずですが,coel-, coelo-も使用されます.
これらの語根は,本来は「空洞の」という意味ですが,「中空の」,「腹の,腹腔の」,「(くり抜いて)凹んだ」などの意味を持たせることもあるようです.

acantho-は,ギリシャ語で「棘,針」を意味する[ἄκανθα](アカンタ)をラテン語語根化したもの.acanth-, acantho- (アカントゥ・,アカント・)=「刺の,刺のある」という意味を持ちます.

-usは,ギリシャ語語尾に多い[-ος](・オス)をラテン語化するときに使われています.なぜそうなるのかは不明.一方で,これは,「《行為とその結果》《性質》を示す」名詞形接尾辞であるとか,「~の.~(に)属する.~(に)関係する」形容詞形接尾辞であるとかの説明があります.ちょっと理解不能.
なお,ICZN Add. B.では[-ος]は[-us]に換えるよう推奨されています(理由不明).
合成科学用語では,ギリシャ語に安易につけられてラテン語化されることも多いような気がします.

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さて,この合成語は「中空の棘に属するもの」とでも訳せるのでしょうか.意味不明ですね.そこで意訳して,「中空の脊椎を持つもの」(属)となります.「管椎類」と訳されている場合があります.
じつは,英語のspine(スパイン)も「棘」と同時に「脊椎」の意味を持っています.どうやら,「神経棘」が尖っていることを意味しているらしいのですが,脊椎が連続した「脊柱」を意味することもあります.それで,ギリシャ語-ラテン語の「アカンタ」-「アカンタス」も「脊椎」-「脊柱」の意味にも使うということらしいです.

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Coelacanthusが成立したので,これがcoelacanth-という語根になります.
これに,さまざまな《合成後綴》が合成されて,多様な分類群名になります.

まず,《科》を意味する《合成後綴》-idaeが合成されて,
COELACANTHIDAE = coelacanth-idae=「Coelacanthusの」+《科》

つぎに,「~の形をしたもの《男女複》」という意味で,《目》名によく使用される《合成後綴》-iformesを合成して,
COELACANTHIFORMES = coelacanth-iformes=「Coelacanthusの」+「~の形をしたもの《男女複》」

さらに,「~様のもの《中複》」という意味で,《綱》名によく使われる《合成後綴》-morphaを合成して,
COELACANTHIMORPHA = coelacanthi-morpha=「Coelacanthusの」+「~様のもの《中複》」=「Coelacanthus様(類)」

などがあります.

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一方,現在使用されていない分類群名には,
《関係》を意味する《合成後綴》《男複》の-iniを合成して,
COELACANTHINI = coelacanth-ini=「Coelacanthusの」+《関係:男複》=「Coelacanthus類」
(注:-iniは,現在は,動物分類上の《tribe(族)》の語尾に用いられる)

《家族,種族,同類》を意味する《合成後綴》《中複》の-idaを合成して,
COELACANTHIDA = coelacanth-ida=「Coelacanthusの」+《家族,種族,同類:中複》
=「Coelacanthus類」

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(2011.09.05.:修正)


2011年9月3日土曜日

CHIMAERIFORMES

order CHIMAERIFORMES Obruchev, 1953

1857: order CHIMAERAE: Agassiz, (Berg, 1940, p. 347).
1923: order CHIMAEROIDEI: Jordan, (Berg, 1940, p. 349)
1953: order CHIMAERIFORMES Obruchev,

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上記,分類群名称は,genus Chimaera から派生したものです.

Chimaeraは,ギリシャ語の[ἡ Χίμαιρα]=《女》「キマイラ」がラテン語綴化したもの.
ラテン語綴化のために,本来はChimairaですが,Chimaeraになっています(二重母音[-αι](-ai)は,ラテン語化して[-ae]になる(ICZN:付録B))

これは,そのまま属名として…,
genus Chimaera =「キマエラ」(=ギンザメ属)

《科》をあらわす《合成後綴》-idaeが合成されて,
CHIMAERIDAE = chimaer-idae=「Chimaeraの」+《科》

《目》をあらわす《合成後綴》-iformesが合成されて,
CHIMAERIFORMES = chimaer-iformes=「Chimaeraの」+《目》
などが,造られています.

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一方,現在は使われていない「目名」として,
Chimaeraの複数形をそのまま使ったCHIMAERAE(=「Chimaeraども」)や,

「~類似の形からなる」を意味する《合成後綴》-oideusの《男性複数》形-oideiを使った,
CHIMAEROIDEI = chimaer-oidei =「Chimaeraの」+「~類似の形からなる《男複》」
などがあります(これは,亜目名として,現在も使われることがあるようです).

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【蛇足】
Chimaeraの語根に《形容詞》形語尾-usが合成された
chimaer-us = chimaerusは,形容詞なので「種名」として用いられています.意味は「寓話のような.法外の,信じ難い」となっていますが,どこからその意味が出てきたのかは不明.

(2011.09.03.:修正)