2011年4月26日火曜日

苦しい時代に(1)

 
 苦しい時代です.

 さて,巨大な海サソリをはじめとする無脊椎動物に追い詰められた我々の先祖=“無顎類”は,海域から河口付近へ,さらには陸上の淡水域へと生息域を移動していきました.
 そこには陸上から運ばれたミネラルや有機物が生み出す豊富な食物があったこともあります.

 しかし,そこはさらなる地獄でもありました.

 多くの小さな原始魚類は干涸らびて死に,絶滅してゆきましたが,一部のあきらめない連中は生き延びました.

 陸域(淡水域)での生活をあきらめた連中は海に戻り,サメ類となりました.陸上で苦しんだ分,サメには優秀な運動能力と大きな脳が備わったため,それまで海域を支配していた無脊椎動物に伍するようになりました.と,いうよりは,以来,海域はほとんどサメ類の天下といってよいほどになります.

 一方,淡水域での生活をがんばった連中は,硬い骨と原始的な肺を獲得します.
 かれらは,のちにあらゆる水域を制覇し,魚類といえば,普通にかれらを思い浮かべるような硬骨魚類になります.

 さらに,かれらの一部は乾燥に耐えるようになります.
 常に体表を水にさらしていなくても生活できるようになります.そして長い道のりのあとに…,われわれに…なったのです.

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 デボン紀という乾燥気候に見舞われた時代に,追い詰められた原始的な魚類が,苦しみの果てに陸上動物を生み出してゆくというお話しを「大人の童話」に仕立て上げようと画策中です.
 ところが,原始魚類の分類が極端に混乱していて,一筋縄ではいかないことがわかりました.

 たとえば,有名なプテラスピス[Pteraspis]は属の記載者すらはっきりしません.
 たとえば,魚類全体をまとめるタクサであるピスケース[PISCES]はLinnaeus (1758)が定義したものとはまったく異なるのに,現在でも普通につかわれているとか….

 苦しい時代こそ,そこを乗り切れば,新しい世界が拡がる…,そういう話にしたいのですが…ね.
 

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