ハットンとライエルの業績とされていることに異議があることを知ったのは,都城秋穂「科学革命とは何か」を読んだ時でした.
正直な話,学生時代にかれらが近代地質学をつくったという風に教えられた私は,その学生時代につくられた常識からなかなか離れることができませんでした.つまり,まあ,そのことが書かれている文章を読んでも,なかなか理解ができなかったわけですね.また,個々についての間違いが指摘されて,それを理解しても,つながりが理解できない.つまり,地質学史の中での位置付けが,頭の中でシックリこないというわけです.
都城秋穂という人は「ホイッグ的歴史観」を否定するわりには,ホイッグ的に筆が滑る人ですから,「何だろうなあ」と思いながらも,読み棄てるしかなかった訳です.
では,ハットンやライエルは実際に何をいい,どういうことをやっていたかを調べようとしましたが,まるで取っ掛かりがない.なにせ,有名な割りには本物は誰も見たことがないというありがちないわゆる“古典”なんですね.日本語のそれも抄訳がでたのが,2005年(大久保雅弘編)というわけで,たぶん地質学者を肩書きとする人たちは,ほとんど読んだことがないでしょう(「あんたもだろう」って言わないでください.なにせ,日本では大学あるいは国公立の研究所に勤めている人以外は科学者とはあつかわれませんから,もちろん,私は「地質学者」じゃあ無い).
そんなわけで,なかなかなぜ「神話」だと言われるのかが理解できませんでした.では,原著を入手して読んでやろうかとも考えましたが,それじゃあ,まるで「学者」だ.そこまでする必要はないべ.
ちなみに,この時に調べたら,海外ではまだ "Principles of Geology" by Lyell, C.が販売されていました.こんな時が,彼我の国力の差を感じる時ですね.
話は変わりますが,化石の研究をしていると,どうしても進化論が気にかかります.
で,ヒマな時に,関連の本を読むわけですが,ダーウィン(とダーウィン主義者)はどうも胡散臭くてかかわる気がしなかった.そんなわけで読んでいなかった本に,松永俊男さんの一連のダーウィン関連の本があります.ある時フと気が変わって,図書館から一冊取り寄せて読んでみました.
自分の間違いに気がつきました.
現在市販されているものは,すべてAmazonに注文し,それ以外のものも,古書店で入手できるものはすべて入手しました.「ハットン神話」・「ライエル神話」の歴史的位置付けが,明瞭に描かれているのです.残念なことに,松永さんは科学史家ではありますが,生物学に足場を置いているので,「地質学史」としては見ていません.でも,地質学史家よりはよっぽど,当時の地質学について理解しているようです.
ありがたい.原著を読まずにすんだ(^^;.
ようやっと,「ハットン神話」・「ライエル神話」が腑に落ちました.
おかげで,これまでたくさん読んだ関連書籍の言いたいこともわかるようになってきました.
ま.歳のせいで頭が悪くなってますから,このあとも間違えそうですが,ここに書いてあることは覚えておこう(^^;.
それにしても,地学史(ローカル&グローバルを含めて)が気になって,調べてますが,歴史というヤツは簡単に偽造されてしまうんですね.怖いです.
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