“ライマン展”関連です.
アンチセルはThomas Antisellなので,アンチセルと表記します.アンティセルでもいいかと思いますが,そういう表記をしているのは見あたりません.ところが,結構「アンチッセル」と表記しているのが目に付きます.
さて,アンチセルの仕事として有名なのは,1)野生ホップの発見と2)札幌軟石の発見があるといわれています.
このうち“野生ホップの発見”というのは,どうも眉唾のようですね.
これを記録した文献はまだ見つけていません.しょうがないので,Googleしたら,結構たくさん出てきますが,「野生ホップを発見した」という記事には,たいてい「といわれている」と続き,引用文献などが出ているものにはまだ当りません.
もう一つの記事は「アンチセルはカラハナソウが自生しているのを見出した」というものです.この記事にはその後,「アンチセルはこれを野生のホップと勘違いし,これでビールをつくったが失敗した」という記事が続くのが普通です.どうもこちらの方が真実のようです.と,いうのは,こちらの記事にはホップ(セイヨウカラハナソウというらしい)およびカラハナソウの学名がならび,裏付けがしっかりしているように思われるからです.
続いて,「ホップに良くにたカラハナソウが生育するのだから,ホップも育つだろうと,ホップの苗が輸入され,北海道で本格的なビール製造が始まった」とされています.
これを,アンチセルが勧めたものかどうかはチョット分かりませんが,どちらにしても「アンチセル」-「野生ホップ」は一種の伝説のようですね.
もちろんこれ自体は,地質学史となんの関係もありません.でも,アンチセルに地質学的な業績があれば,+αとしてのエピソードには使えそうなんですが.
それでは,2)の札幌軟石の発見についてはどうでしょう.
こちらもなかなか,「アンチセルが発見した」という記録は見つけられません.原因はボスであるケプロン将軍がアシスタントとして連れてきたアンチセルを嫌い,アンチセルの業績を抹殺しようとした形跡があるからだといわれているようです.普通に見られるアンチセルの報告はさっぽろ文庫19「お雇い外国人」(札幌市教育委員会編)にしかないようです.
それには,アンチセルは札幌に首都をつくるのは無謀だという意見を述べており,とても,石山辺りにいい石材があるから,それを使って町を造ろうと述べたことがあるとは思えませんね.
こちらも“伝説”のようです.
なお,アンチセルを地質学者だとしている記述がママ見られますが,アンチセルはワシントン化学会の初代会長をやっています.器用な人ではあるようですが,地質学者だというのは語弊があるようです.開拓使を追い出されてからは,造幣局でインクの研究をしていたとか.
また,ケプロン将軍を囲んでいる四人(全部で五名)の写真が有名ですが,この写真の解説(人名)はしょっちゅうまちがっています.真ん中でそっぽを向いているのがアンチセルです.原因はたぶん,「新撰北海道史」での解説がまちがっているからだと思います.
さて,なんにしろ,アンチセルにはまだまだ不明な部分が多いので,もっと調べる必要がありそうです.
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