2010年5月11日火曜日
「或る地質屋の記」・続
大久保雅弘(2010)「或る地質屋の記」(丸源書店).
一通り,読みました.
とても興味深い本でした.
前半の自伝部分も,その時代は興味深いものでしたし,後半の「古生層研究史」は南部北上山地の話がたくさんでてきて,懐かしかった.
もっと,湊正雄の悪口やいいことが出てくるかと思ったら,そうでもなかった. ま,あまり具体的なこともかけないでしょうしね.
地質屋はもっとこういうものを書いていいと思います.
そうでないと,江戸時代末期から明治初めにかけて西洋から地質学が導入されたのはいいけれど,その後,長い空白期があって,昭和末期にプレートテクトニクスが導入されて,地質学が滅びたという話にしか見えない.
それでは「地質学史」が成立しない.
ただ,一般の読者向けにはもう少し砕かないといけません.さまざまな用語や事件が,読者は知っているということを前提として書かれています.もちろん,大久保氏は読者は地質屋である前提で書かれているのでしょうから,「しったことか」といわれそうですが,もう少し解説を加えれば,十分に一般読者の知的好奇心の対象になると思います.
もちろん,地質学に興味を持つ若者にも(もう,そんな人たちはいないか…).
本文の末尾の方に,「日本列島地質構造発達史」(英語版)の編集時の話が出てきますが,その時に,デザイナーから出された疑問のエピソードがあります.
それは,「地質学者の図は,真上からみるか真横からみるかのどちらかですね.斜めにみるということはしないのですか?」というもの.
そう,確かに地質学史も「真上からみる」か,「真横からみる」か,しかしてこなかったようですね.
「或る地質屋の記」は…,斜めからみた地質学史です.それ故に….
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2 件のコメント:
いつも参考にしております。
また遊びにきます。
ありがとうございます。
お目にとまりまして,光栄でございます.
じつは,なんの役にも立っていないんじゃあないかと,落ち込み気味で,ブログ更新が滞っております.
少し,元気が出ました.
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