2008年6月6日金曜日

巨大隕石

松井孝典(1998)「巨大隕石の衝突」PHP研究所
磯部琇三(1998)「巨大隕石が地球に衝突する日」河出書房新社

 どちらもほとんど同じ内容.
 宇宙から隕石が降ってきて,地表の生物が死滅するというもの.

 違いは,副題に現れていて,前者は=地球大異変の歴史を読み解く=であり,後者は=人類最大の危機を回避するために=となっています.
 これは,松井氏は専攻が惑星物理学であり,磯部氏の専攻は天文学であることによるものですね(磯部氏は「日本スペースガード協会会長」だそうです).
 だから,同じ恐竜絶滅事件のことを扱っていても,松井氏の方が終章を飾る「大事件」として取り扱われているし,磯部氏の方はイントロとして小さく扱われているのにすぎません.
 両者とも,チチュルブ=クレーターが発見されたあとですから,鼻息が荒い.この時点では(現在でもそうだと思いますが),「地下構造の解析から,どうもクレーターの痕跡と思われる」というのが正確だと思いますが.

 さてこれらは,正確にいうと,地質学の本じゃあありません((^^;).
 だから,第三者的に「おー,面白い,面白い」といいながら読める本です.地質学的な記載や古生物に関することがでてくると,「どれも仮説ジャロ」突っ込みを入れたくなることがありますが,相手が地質屋じゃあないのでしょうがないですね(地質屋がこういう題材で本を書くとは思えませんが).

 さて,松井氏は,チチュルブ=クレーターの実際の調査行も本にしています.
松井孝典(1997)「地球大異変=恐竜絶滅のメッセージ」WAC株式会社
 ただ,肝心なその調査行は,クレーターがあるというユカタン半島には入れず,メキシコ湾周辺で「津波堆積物」があるということだけでした.
 その他のことは,ほかの本にも書いてあるので,地質屋の端くれとしては少しがっかり.コストパフォーマンスは最低でした((^^;).

 さて,古生物屋の端くれとしての私は,(隕石衝突による大絶滅説は)周期的に地表に降ってくる隕石が,生態学的空白を生み出し,それが進化の原因であるというを示しており,ダーウィンをはじめとする「進化論」にこそ,大きな痛手を与えていると思うのですが,その辺りを整理している本はないのでしょうかね.

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