2008年6月4日水曜日

Be Gentleman



「この学校の前身である札幌学校には極めて細密な規則があって,生徒達の一挙一動を縛っていたようであるが,その内容に非難すべき点は一つもない.然し,自分が主宰するこの学校では,その凡てを廃止することを宣言する.」

「今後,自分が諸君に臨む鉄則は只一語に尽きる.
    " Be Gentleman "
         これだけである.」

「ゼントルマンというものは,定められた規則を厳重に守るものであるが,それは規則に縛られてやるのではなくて,自己の良心に従って行動するのである.」
「学校は学ぶところであるから…(中略)….」
「出処進退,すべて正しい自己の判断によるものであるから,この学校にはやかましい規則は不必要だ.」
        (大島正健「クラーク先生と その弟子たち」より)

 ご存知,W. S. Clark 師の言葉です.
 我が母校も,最近はやたら「細密な規則」が横行しているようですが,ことあるごとに伝統として引っ張りだされる「札幌農学校」にはそんなものはなかったんですね.

 増補分には面白いことが書いてあります.
 クラーク師が打ち立てた札幌農学校の校風が,いかにして曲げられていったか.軍国主義に突入していく明治政府の方針に" Be Gentleman " だとか," Boys, be ambitious " とかいうクラーク師の言葉は合わなかったんですね.明治中頃から,意図的に抹殺されたようです.
 これが,いまだに「クラーク師は" Boys, be ambitious "などとは言わなかった」などと言われる理由でしょうか.
 そして「…アメリカの影響を払拭し,ドイツ型の技術者養成専学単芸型の教育機関に転身し,もって国家の要請に応える人材を養成し,ひいては北海道帝国大学に昇格してゆく路線を選択したことであった」そうな.

 北海道で先駆的に始まったライマン型の地質学(アメリカ型の実用地質学)が,大学ではいつの間にか忘れ去られ,東大を中心とするドイツ型地質学(象牙の塔型地質学)が導入されていったことと,なにか平行していますね.

 それはさておき,某自治体では,生徒のみばかりでなく,教師まで規則(ほんとに規則と言えるかどうか怪しいが)でがんじがらめにして「教育」と称しているようですが,特殊な古歌を強制して紳士が育てられるかはどうかは怪しいものですね.すでに,明治の初めに答えは出ていたというのに.

 「面従背腹」の人たちが増えて,日本という国家は破綻するのが目に見えています.
 全く権力者という連中は…….

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