2008年6月13日金曜日
Yezosaurus mikasaensis OBATA et MURAMOTO
Yezosaurus mikasaensis OBATA et MURAMOTO
今朝,北海道新聞に“エゾミカサリュウ”についての記事がありました.
中身は,今更ながら,「“エゾミカサリュウ”は海トカゲの新種でした」というもの.発見後,30数年もたって,ようやく“あたりまえ”になったという感じ?
いえいえ.新聞記事にはおかしなことがたくさん載ってました.
まずは,「当初の鑑定も含め,論文などでの正式発表はなく,学術的に『未判定』だった」とあります.
エゾミカサリュウは,図版つきですでに出版されています.
村本喜久雄(1977)「恐竜への道=エゾミカサリュウの発見=」北苑社.
すでに絶版あつかいですが,アマゾンでも取り扱っています(現在マーケットプレイスでも在庫なし).
図版はこの記事の最初にのせたものです.
かなり奇妙なもので,記載論文として扱えるかどうかは微妙なものですが,とにかく印刷物として残っています.
新聞記事には「近く米国の科学専門誌に発表する」とありますが,この本は無視してすすめられるのでしょうか.もっとも“エゾミカサリュウ”は話題になるたびに,「近く正式に論文になる」といわれて30数年経った過去があります.
「今度もならない」とはいえませんが,疑問があります.
それは,“エゾミカサリュウ”は天然記念物に指定されていて,鑑定のために傷をつけることはおろか,その位置を移動するにも「文化庁」の許可が必要だといわれてきました.いったいどうやって「鑑定」したのでしょうかねえ.
そもそも,なんだか正体のわからないものを「天然記念物」とした「文化庁」にも「?」なんですが,こんどは研究のためにとはいえ「クリーニング(骨格の形状を確かめるためにバラすこと)」を「天然記念物」の解除を許可したんでしょうかねえ.
「天然記念物」の扱いって,そんなに軽いものなんでしょうか?
それから「海トカゲ」って新聞にはでてましたが,昔から使われている「滄龍類」という学術用語があります.「長頸竜」も「クビナガリュウ」などというマスコミ用語がしばしば使われていますが,JK語じゃあないんだから,勝手につくってほしくないですね.
さて,問題の“エゾミカサリュウ”はタニファサウルス属の一種だとでていました.
綴りは,Taniwhasaurusですね.
Taniwhaというのはニュージーランドは,マオリ族の伝説に登場する「海の怪獣」のこと.もちろん,最初のTaniwhasaurusはニュージーランドの上部白亜系から発見されています.マオリ族はなんと発音しているのかわかりませんが,その発音を英語化したものでしょう.本来は学名に使用する場合はラテン語化しなければならないのですが,そのまま使っているようです.
なぜなら,ラテン語に「w」という綴りはなく,「u」を使うからです.従って,「タニウハサウルス」というのがラテン語的呼び方.タニファと読ませたいのなら,「Tanifa」と綴るべきでした.
でも,いっぺん印刷物になってしまった学名は変えることができません.残念.
日本産の滄龍類については,最近どんどん再検討が進んでいるようで,私が論文化したTylosaurus sp.も現在では「?」だとされているようです.当時は,比較標本もなく,過去に報告された論文を入手するのも大変でしたが,最近は,海外へ出かけて,実物そのものを見てくることが当たり前のようにできるようになりました.
うらやましい限りです.
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