チャップマン, C. R. & モリソン, D.(1989)「コスミック・カタストロフィー(上・下:山崎・川合,1991訳)」吉岡書店
上下巻,合わせて372頁の大著.
訳者は,二人を「惑星科学者」として紹介しています.
話の中心は,宇宙からの訪問者が,地球の生命の運命を握っているというもの.バックボーンは「斉一説vs.激変説」です(やっぱり〜(^^;).
「地質学史は『斉一論者』と『激変論者』の戦いの歴史である」という話が昔からありました.然し,それは幻想であることが,最近になってしばしば指摘されています.こういう「神と悪魔の戦い」みたいな話は,わかりやすいのでよく使われるのですね.
いくつか調べると,「斉一説」にしても,「激変説」にしても,よくいわれているようなこととは違うことがすでに指摘されています.
あ,これは,「『ハットン神話』と『ライエル神話』」(2008.02.07.)で少し触れてますね.
グールド,S. J.(1987)「時間の矢・時間の輪(渡辺政隆,1990訳)」工作舎
実は,グールドもすでに議論してました.
話を戻します.
チャップマン & モリソンの論点は,宇宙から巨大な隕石が落ちてくるという現象は「激変説」に対応するというものです.「巨大な」隕石だけを取り上げてみればその通りなんですが,宇宙から地表に落ちてくるものは「巨大な」隕石だけではないですね.サイズはバラバラです.
TNT火薬20 キロトン未満に相当する爆撃(もちろん,隕石の地球に対する)は年一回ぐらいの確率で起きているそうです.ツングースカ級(〜50メガトン)の爆撃は1000年に一回程度で,「確実に地球規模の大変動を起こすような爆撃」は100万年〜1,000万年に一度は起きるのだそうです(チャップマン & モリソン;1989, p. 356).
そうすると,地球生物史上での五大絶滅ぐらいの事件が起きるのは,やはり1億年に一回ぐらいなのでしょうか.
よ〜く考えてください.これは「地球を爆撃する隕石のサイズは,時間に比例する」ことを示していて,“爆撃そのもの”はいつも起こっていることをしめしているのです.
そしたら,爆撃は「激変説」に属するものではなく,「斉一説」に属するものじゃあありませんか?
こんなとこが,「地質学史は『斉一論者』と『激変論者』の戦いの歴史である」という歴史観に「?」と疑問を抱かせるはじまりですね.
さて,天文学者が「恐竜絶滅」を含めて,「地球の生命」に大きな影響を及ぼしているという主張は,日本人学者にもあります.
それは,
籔下 信(1988)「巨大分子雲と恐竜絶滅」地人書館
です.
こちらは,隕石が地球を爆撃するという話ではなく,太陽系そのものが,銀河の中心面に対し上下運動するために,銀河の回転面上にある物質の濃厚な場所=巨大分子雲の密集地を通過するために,地球環境に様々な影響を及ぼすというものです.
もちろん,「恐竜絶滅」をはじめとする「大絶滅」もそう.
薮下さんは,
籔下 信(1980)「彗星と生命」工作舎
では,「彗星」がその原因であるとしてましたが,その彗星の発生も「巨大分子雲」の密集地を通過するためにおこる,としているので,これから発展した理論といえるでしょう.
ここで,我に返る((^^;)
これらの議論は,地質学の範疇には入りません(何が地質学かということも,そのうち議論したいですね).だから,わたしにはこれらの議論が現実に合っているか,いないかということはわかりません.
いってみれば,「衝突するベリコフスキー」とどれぐらい違うのかもよくわかりません.正直言うと,「どちらも面白い話ですねえ」ぐらいにしか考えていないのですが,正統派天文学者からは,ベリコフスキーはオカルトにも等しいと考えられています(蛇足すると,あたしには,もちろん,判断できません).
ヴェリコフスキー,I.(1950)「衝突する宇宙(鈴木敬信,1974訳)」法政大学出版局
うん.ほんとに面白い((^^;).
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