2009年8月15日土曜日

辞書の展開(10)

●キーモレーステース目[order CIMOLESTA McKenna, 1975]

 キーモレーステース目の名称の元になっているCimolestesは北米の後期白亜紀から前期暁新世にかけて生息していた哺乳類.食肉目の先祖形と考えられている一方で,その位置づけはあいまいでした.
 ちなみに,cimolestesの語源は,はっきりしませんが,cimoがギリシャ語の「キマス[κιμάς]」=「引き裂かれた肉」だとすると,「裂肉強盗」になり,いかにも野獣の代表ということになりそうですね.

 MaKenna (1975)はこのCimolestesをはじめとする多種多様な生物をまとめてキーモレーステース目[order CIMOLESTA McKenna, 1975]を設定しました.大部分は絶滅したグループですが,現世の穿山甲[genus Manis Linnaeus, 1758; genus Phataginus Rafinesque, 1821]などが含まれる恐ろしく多種多様なグループです.

 簡単には把握できないので,詳細は別の機会に.
 とりあえず,亜目レベルののリストだけ.

order CIMOLESTA McKenna, 1975(キーモレーステース目)
├ CIMOLESTA incertae sedis
├ suborder †DIDELPHODONTA McKenna, 1975(二子宮歯亜目)
├ suborder †APATOTHERIA (Scott & Jepsen, 1936) McKenna, 1975(擬獣亜目)
├ suborder †TAENIODONTA (Cope, 1876) McKenna, 1975(紐歯亜目)
├ suborder †TILLODONTIA (Marsh, 1875) McKenna, 1993(欠歯亜目)
├ suborder †PANTODONTA Cope, 1873(汎歯亜目)
├ suborder †PANTOLESTA McKenna, 1975(汎盗亜目*)
├ suborder PHOLIDOTA (Weber, 1904) McKenna & Bell, 1997 (穿山甲亜目)
└ suborder †ERNANODONTA Ding, 1987(通小歯亜目*<エルナノドン亜目)

*は例によって,私的和訳.

 穿山甲亜目だけは現生種が入っているので,すこし紹介しておきます.

suborder PHOLIDOTA (Weber, 1904) McKenna et Bell, 1997(有鱗亜目<穿山甲亜目)
├ PHOLIDOTA incertae sedis
├ family †EPOICOTHERIIDAE Simpson, 1927(エポイコテーリウム科)
├ family †METACHEIROMYIDAE Wortman, 1903(メタケイロミュース科)
└ family MANIDAE Gray, 1821(センザンコウ科)
  ├ subfamily MANINAE (Gray, 1821) Pocock, 1924(センザンコウ亜科)
  └ subfamily SMUTSIINAE (Gray, 1873) Pocock, 1924(オオセンザンコウ亜科)
    ├ tribe SMUTSIINI (Gray, 1873) McKenna et Bell, 1997(オオセンザンコウ族)
    └ tribe UROMANINI (Pocock, 1924) McKenna et Bell, 1997(オナガセンザンコウ族)

http://taxonomicon.taxonomy.nl/Default.aspx

 穿山甲類はこれまで,化石種を含めてセンザンコウ科一科にまとめられるか,せいぜい,現生種を含むセンザンコウ科と化石種が中心の別科の二つぐらいにしか分けられていませんでしたが,ひどく複雑になっています.
 過去の分類は,ほんのいくつか見ただけでも,研究者間でひどく異なっており,相当混乱していたのだろうということがわかります.
 どれを見ても,属-種のデータがひどく少ないので,比較がなかなか困難です.
 ただ,新分類では,生息地域(大陸)によって別系統と認識し,それによって各属を独立させるというやり方を取っているようです.

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