2009年8月6日木曜日
辞書の展開(8)
●新体系の「ANAGALIDA」から
grandorder ANAGALIDA(アナガレ大目)
├ ANAGALIDA incertae sedis … family ANAGALIDAE Simpson, 1931 (アナガレ科)
├ mirorder MACROSCELIDEA (Butler, 1956) McKenna & Bell, 1997(大脛中目*)
├ mirorder DUPLICIDENTATA (Illiger, 1811) McKenna & Bell, 1997(双歯中目)
│ ├ order MIMOTONIDA Li et al., 1987(ミモトナ目)
│ └ order LAGOMORPHA Brandt, 1855 (兎型目)
│ ├ family OCHOTONIDAE Thomas, 1897(ナキウサギ科)
│ └ family LEPORIDAE (Fischer, 1817) Gray, 1821(ノウサギ科*;ウサギ科)
└ mirorder SIMPLICIDENTATA (Weber, 1904) McKenna & Bell, 1997(単歯中目)
├ order MIXODONTIA Sych, 1971(混歯目)
└ order RODENTIA Bowdich, 1821 (齧歯類)
├ RODENTIA incertae sedis
├ suborder SCIUROMORPHA Brandt, 1855(栗鼠形亜目*)
│ ├ SCIUROMORPHA incertae sedis
│ ├ Infraorder †THERIDOMYOMORPHA (Wood, 1955) McKenna & Bell, 1997(獣鼠形下目*)
│ └ Infraorder SCIURIDA (Carus, 1868) McKenna & Bell, 1997(影尾下目)
├ suborder MYOMORPHA Brandt, 1855(鼠形亜目*)
│ ├ infraorder MYODONTA (Schaub, 1955) McKenna & Bell, 1997(鼠歯下目)
│ ├ infraorder GLIRIMORPHA (Thaler, 1966) McKenna & Bell, 1997(山鼠形下目)
│ └ infraorder GEOMORPHA (Thaler, 1966) McKenna & Bell, 1997(堀鼠形下目)
├ suborder ANOMALUROMORPHA Bugge, 1974(異尾形亜目*)
├ suborder SCIURAVIDA McKenna & Bell, 1997(栗鼠様亜目*)
└ suborder HYSTRICOGNATHA Woods, 1976(山嵐顎亜目*)
http://taxonomicon.taxonomy.nl/Default.aspx
注:原文は英語.各分類群の名称は私的和訳.
●アナガレ大目
新体系では,このグループの代表にアナガレ類をもってきています.
アナガレ科自体は,アナガレ大目所属位置不詳のアナガレ科になっていますので,なにか不自然に見えますが,まあいいでしょう.
アナガレ類は,東南アジアの「古成紀」(パレオジーン=以前の“古第三紀”:暁新世から漸新世まで)に繁栄した絶滅グループです.
●大脛中目
次の中目:MACROSCELIDEAは,その筋では“ハネジネズミ類”としているようですが,たぶん漢字で“跳地鼠”とかいたものをカタカナ化したものでしょう.この訳は,原語を反映していず,しかもカタカナ化すると意味がわからず不自然ですので,ここでは使いません.
また,「目」ぐらいのランクになると,具体的な動物(種あるいは属)が想像できるような命名は不都合ですので,一般にそのグループ全体を示すような言葉が選ばれています.これを尊重し,ここでは「大脛中目」を採用します.
大脛類は,アフリカ大陸の「新成紀」(ネオジーン=以前の“新第三紀”:中新世から鮮新世まで)に繁栄し,アフリカの各地に生き延びています.
●双歯中目
次の中目:DUPLICIDENTATAは,その筋では“重歯類”としているようですが,「重」はこれを意味する単語が多すぎて,混乱を招きますし,「dupli-」自体は「二重の」を意味する言葉ですので,ここでは「双歯」類を使います.あるいは「二重歯」類の方がいいかもしれません.
これは,もちろん,次のSIMPLICIDENTATA (単歯中目)に対応する言葉で,門歯の後にもう一組の歯があるかないかの違いを示しています.要するに,兎の仲間とその先祖ですね.
双歯中目には,ミモトナ目と兎形目が含まれています.
ミモトナは,もともと兎型類の中に入れられているのが普通ですが,兎型類の先祖として「目」を設定し,位置づけられているようです.
なお,兎形目はしばしば,兎目と訳されています.
現世生物のみを論じるときには,たいして問題も起きませんが,原語は明らかに「兎『形』目」ですし,ウサギ科[family LEPORIDAE Fischer, 1817]もウサギ類になってしまうので,「兎形目」と正確な訳を使用した方がいいでしょう.
●単歯中目
次のSIMPLICIDENTATAは,単歯類と訳されていますが,上述のように「単一」の意味ではなく,「二重歯」に対応する「一重歯」の意味と思われますので,「一重歯類」を使用した方がいいかもしれません.
単歯中目には,混歯類[MIXODONTIA]と齧歯類[RODENTIA]が含まれています.
●混歯目
混歯類は,実態がはっきりしませんが,これに入れられている一属である Gomphos は,一時はミモトナ科として,Eurymylus, Rhombomylusはエウリュミュルス科として,アナガレ目に入れられていたこともあるようです.
●齧歯目
齧歯目は旧体系でも巨大なグループでしたが,新体系でもそれは同じです.
これを“ネズミ目”と呼ぶように指導されたこともありましたが,直感的にも“ネズミ”とはいえないような動物がたくさん入っていて,このような呼び方はナンセンスだということは素人にも(素人なら,なおさら)わかるはずです.
齧歯目は「齧歯目所属位置不詳」,「栗鼠型亜目」,「鼠型亜目」,「異尾形亜目」,「栗鼠様亜目」,「山嵐顎亜目」に分けられています.もちろん,暗黙の内に,このように進化(分化)してきたということが意図されていますね.
●“齧歯目所属位置不詳”
“齧歯目所属位置不詳”には,旧体系(たとえば,Carroll, 1988)でも「齧歯目所属位置不詳」とされた分類群のいくつかが入れられています.この“よくわからなかった部分”が齧歯目の先祖形と位置づけられているのですね.しかし,すべてがそう位置づけられているわけではなく,大部分はよくわかっていません.かなりの部分が「無視」されていますね(はっきり言ってしまえば,新分類とて,すべてを説明できているわけではないということになりますか).
一方で,Carroll (1988)以降に創設された「科」がいくつかあり,最近の新しい発見が新体系の確立に大きな役割を果たしているということですか.
● 栗鼠型亜目
栗鼠型亜目[SCIUROMORPHA]の和訳はリス亜目になっている場合がありますので,原語を反映していないので注意しましょう.記載者名[Brandt, 1855]を見る限りでは,定義に変更はないようです.
● 鼠型亜目
鼠型亜目[MYOMORPHA]も,リス型亜目と同様に,ネズミ亜目になっている場合があります.同様に,記載者名[Brandt, 1855]を見る限りでは,定義に変更はないようです.
しかし,亜目以下の細部に関しては,変更があります.というか,McKenna & Bell, 1997による修正があります.McKenna & Bell, 1997は入手していないので検討は後日に回します.
●残り三つの亜目は,比較的最近になってから,創られたものですね.
● 異尾形亜目
異尾形亜目[ANOMALUROMORPHA]は,(たぶん)Carroll (1988)では齧歯目・栗鼠顎亜目・下目未確立に入れられていた異尾上科[superfamily ANOMALUROIDEA]を拡張再定義したものと思われます.正確なところは,Bugge, 1974の論文を入手して,検討しなければなりませんが,今のところそこまでする気はありません.
分類学というのは,難しいというよりは,こういった文献収集が「めんどくさい」んです.いきおい,大学などの図書が充実しているところでしか,研究ができないという障害になってしまいます.ま,今大学では「分類学」なんて学問はやってないんですけどね.
● 栗鼠様亜目
栗鼠様亜目[SCIURAVIDA]はMcKenna & Bell, 1997が定義しています(すべての鍵はMcKenna & Bell, 1997の入手にかかっているようですね).
栗鼠様亜目は,Carroll (1988)では齧歯目・栗鼠顎亜目・原齧歯形下目・強鼠上科*に入れられていた栗鼠様科[SCIURAVIDAE]を(たぶん)拡張・再定義したものと思われます.
事実,栗鼠様亜目の栗鼠様科(新体系)と栗鼠様科(Carroll, 1988)を構成する属はほぼ同じです.も少し,詳しい検討が必要ですが,それは別の機会に.
● 山嵐顎亜目
山嵐顎亜目[HYSTRICOGNATHA]は新旧それほど変わりがないようです.
●齧歯目・旧体系に戻ってみます.
order RODENTIA(齧歯目)
├ suborder SCIUROGNATHI(栗鼠顎亜目)
│ ├ infraorder PROTROGOMORPHA(原齧歯形下目)*
│ ├ infraorder SCIUROMORPHA(栗鼠形下目)
│ ├ infraorder CASTORIMORHA(海狸形下目)
│ ├ infraorder UNNAMED*
│ ├ infraorder MYOMORPHA(鼠形下目)
│ └ infraorder INDETERMINAE
├ suborder HYSTRICOGNATHI(山嵐顎亜目)
│ ├ infraorder BATHYGEROMORPHA(不詳**)?Bathyergomorpha***
│ ├ infraorder HYSTRLCOMORPHA(山嵐形下目)
│ ├ infraorder PHIOMORPHA(プィオミュス下目****)
│ └ infraorder CAVIOMORPHA(天竺鼠形下目)
└ order RODENTIA incertae sedis
from carroll (1988)
*
・齧歯目は「栗鼠顎亜目」と「山嵐顎亜目」に大別され,そのほかに齧歯目・分類位置不詳のグループがあります(した).
この「分類位置不詳」のグループは,新体系ではそれぞれ,あるグループの先祖形として位置づけられていることが多いようですが,大部分はまだはっきりとしていません(はっきり言ってしまえば,新分類とて,すべてを説明できているわけではないということになりますか).
「栗鼠顎亜目」と「山嵐顎亜目」は,下顎と門歯の関係によって分けられていたようです.もちろん,新分類ではこの指標は採用されていませんが,採用されない理由がしっかりと説明されている文献が見つからないもので,私にはよくわかりません.
ま,何となく変わってしまうというのは,科学の世界でも,実はよくあることです.「勝ち馬にのる」のが原因ということですかね.
●反省
新分類での「大目」というグループを単位にして,グループの概略を把握しようとしたのですが,失敗でした.単位がちょっと大きすぎたのと,情報不足が原因ですね.
いずれまた,調べ直して再チャレンジしたいと反省しております.
ここは調査中のメモ書きですから,多少マニアックに見えてもしかたないと考えております.「北海道化石物語」に転記するときには,もっと理解しやすくすることを心がけましょう((^^;).
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