2019年4月14日日曜日

北海道地質学史に関する文献集(13)

北海道地質学史に関する文献集(13)

佐々保雄(1962)北海道地質図変遷史(一). 
佐々保雄(1964)北海道地質図変遷史(二). 
佐々保雄(1965)北海道地質図変遷史(三).

 北海道における地質学の巨人のひとり・佐々保雄による「北海道地質図変遷史」である.38+36+68頁の大著.

 章立ては以下の通り.

一,諸言
二,北海道の地質調査と地質総図
三,明治初期・北海道開拓使時代の地質図
四,明治中期・北海道庁鉱物調査時代の地質図
五,明治末期ー大正期・地質調査所「鉱物調査」時代の地質図
六,昭和期・北海道工業試験場時代の地質図
七,昭和二〇年以降・第二次大戦後の地質図

 北海道の開拓前夜から第二次世界大戦後,本書発刊当時の1960年代までが網羅され,各地質図を詳述の上,その地質図に対する評価も述べられている.この大業に付け加えることは何もないであろう.

 その緒言を示しておく.
 北海道に関する地質図は、その大小精粗を問わないとすると、明治初葉から今日にいたるまで、公刊されたものがかなりの数に達している。その中、部分図は別として、地質総図(General Geological Map)、すなわち北海道全体を一つにまとめた地質図だけを見ても、決して少い数ではない。総図としての性質上、縮尺は五〇万分台から三〇〇万分の一台の大縮尺のものが多いので、地質の詳細にわたつては描かれていないが、大局的に地質構成がどうなつているかを理解することが出来る。地質総図の目的もまたそこにある。
 しかし、それらを、時代を追つて一つ一つ点検していくと、その間に自ら移り変りがあつて、ある時は多少づつ、ある時は著しく違つて居り、道の地質が次第に明らかになり、今日の知識に近づく過程を現わし、その時々の進歩の跡をとどめていると同時に、当時の日本の地質学界の趨勢をも反映している。言わば、北海道地質調査進捗の歴史の一断面を如実に示している、と言うことができる。
 本文は、この地質総図の主なもの、即ち北海道を主としたものを第一にとり上げ、また日本全体の地質図の中で北海道をまとめてあるもののうち、主要なものをも含め、公刊の順序を追つて挙げて、その大要を述べるとともに、各々の間の変遷を見、どのように北海道の地質が明らかになつて行つたか、を知ろうと試みたものである。

 なお,佐々は北海道の地質調査史を以下の六つに分けて詳述している.

 イ、幕末期ー北海道開拓使以前
 口、明治初期ー北海道開拓使時代
 ハ、明治中期ー北海道庁鉱物調査時代
 二、明治末期・大正期―地質調査所「鉱物調査」時代
 ホ、昭和初期ー北海道工業試験場時代
 へ、昭和二〇年以降ー第二次大戦後時代

 さて,この大著を読んだ感想を一つ.
 地質図は,その当時の学問・学者のレベルによって進化・変遷するものである.神保小虎が先頭に立って引き起こしたライマン地質学へ批判は,視野狭窄の戯言でしかないことがよくわかる.これら帝大地質学者たちの戯言は,もちろん,薩長土肥の明治政府が進めた“ネオ尊皇攘夷”への忖度だったのかも知れないが.


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