2009年5月27日水曜日
「鑪と刳舟」
ある知り合いが,この本の存在をおしえてくれました.
前から,その存在はなんとなく知ってはいたのですが,「鑪」はともかく「刳舟」には興味がないので,抛ってあったものです.
古書店にあったので,購入して読んでみました.
お笑いですが,「鑪」と「刳舟」には,やはりなんの関係もありませんでした.
別々の系統のエッセイ集を二つ同じ本にいれたというだけのことです.これで,¥6,000もするなら,別々の本にして半額にしてほしいところです((^^;).
さて,読んでみると,どんどん失望感が膨らんでゆきます.
いわゆる“たたら本”に書いてあるようなことが,延々と書いてあります.説明のない特殊な用語が頻出し,確認しようもない事柄が続きます.すでにこのブログで疑問を呈したたくさんの事柄が,新しい事実もなく書かれているわけです.
いい加減,飽きがきた,そのときです.
「鑪探訪記」という章に入ると,目が覚めました.実は,これはリアルタイムの「たたら」のルポルタージュだったのです.
そうすると,この本は,私が今まで読んできた,いわゆる“たたら本”のネタ本,元本ということになります.この著者は,この当時のたたら関係の著書といえば,自然科学の分野では俵国一の「古来の砂鉄精錬法」と榊藤太による短い一冊,人文系では結城・磯貝の「中国地方に於ける砂鉄精錬法の史的研究」,福士幸次郎の「原日本考」,宍戸儀一の「古代日韓鉄文化」ぐらいしかなかったといっています.そして,著者が専攻する民俗学の分野では,柳田國男の「地名の研究」や「海南小記」などに地名や火の神に関する文章があるだけだったとしています(俵のは自然科学系というよりは技術系だと思いますけどね).
これまで読んだ多くのいわゆる“たたら本”の著者は,ほとんどの場合引用文献を明示していず,まるで自分が調べたか,自分が創作したかのように著述していましたが,「おおもと」は,ここにあったわけです.
この「鑪探訪記」は昭和19年から20年にかけて現地を踏査して集めたものです.
しかし,印刷を控えたこの原稿は東京大空襲により焼失.手元に残されていた原稿をもとに書き直したものだといいます.そして,発行されたのが1996年(!).
約50年もの間,宙に浮いていたとすれば,いったいどうやってその内容が流出したのでしょう.“たたら研究”は不思議なことばかりですね.
いくつか,主だった“たたら本”を集めて,その記述と記述年代を比較検討すれば,系統発生が見いだせるかもしれません.しかし,丸写しなのに,引用文献をのせない世界は「科学」とはいいたくありませんし,読んでて不愉快になりますね.
ま,引用が明記されてない本は,信用しないことです.
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6 件のコメント:
こんにちは
以前一度書き込んだことがあるものです。
たたら研究会誌50号に砂鉄の分類についての論文が出ています。
きっと興味を持つと思いますので、コピーしてお送りしたいと思います。
どのようにして送ればよいのでしょうか?
コメントありがとうございます.
コピーはどのような形式ですか?
pdf.ならばメール添付で,紙製ならば郵送になると思いますが….
本をコピーしますので郵送したいのですが、どこかにメールを送る場所がありますか?
確認いたしました
ありがとうございました.
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