2011年11月16日水曜日

KIAERASPIDOIDEA

KIAERASPIDOIDEA (Stensiö, 1932)(たぶん,「目」)
下に,[Mikko's Phylogeny Archive]に表示されているものを,編集したものを示しておきます.
悲しいかな,これは分類ではなく,進化系統をあらわしたクラディズムのようです.
どうもクラディズムは,しっくり来ない(^^;.

ま.単に構成員のリストとして理解しておきます(判断に困る場合も多々ありますが…).

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KIAERASPIDOIDEA (Stensiö, 1932) Afanassieva, 1991
├ † Didymaspis
└ † Kiaeraspididae Stensiö, 1932
  ├ † Kiaeraspis L.Dev. Spits.
  └ ? † Norselaspis glacialis Janvier, 1981 (sedis mutabilis)
    └ † AXINASPIDOIDEA Janvier, 1981a
     ├ † Nectaspis L.-M.Dev. Spits.
     └┬ † Axinaspis L.Dev. Spits.
      └┬ † Acrotomaspidinae Janvier, 1981a
       ├ † Acrotomaspis L.Dev. Spits.
       └ † Gustavaspis

---from [Mikko's Phylogeny Archive]

Sansom (2009)にKIAERASPIDOIDEAの構成員の復元図がでていたので引用しておきます.やっぱりなにか,微笑ましいです((^^)).




さて,Kiaeraspisは「Kiaer, J.」+「丸い楯」の合成語です.
Kiaer, J.は,ノルウェー人古生物学者らしいですが,不詳です.(いわゆる)“無顎類”についての論文をたくさん出しているようです.

学名に(属にも,種にも),人名が使われるのはよくあることです.
しかし,いろんな意味で,あまりセンスがよろしいとは思われませんね.
普通は何らかの献辞として使われるのですが,良く意味を考えてみてください.この場合は,「Kiaer, J.」+「丸い楯」ですよ.-aspis=・「(小さな)丸い楯」は,“無顎類”の全体の形状からよく使われる「言葉」で,この場合は「ある種の“無顎類”」そのものを意味していますが,その意味からいえば Kiaer氏は(古生物学者なのに)「丸い楯」をもっているわけです.

おなじようなセンスの命名に,アモンナイトでよく使われる「~ケラス」というのがあります.
-cerasは「~の角」という意味で,人名にくっつけると,(たとえば)Mantellicerasは白亜紀の地層に多産する特徴的なアンモナイトですが,これはもちろん,Gideon A. Mantell (1790-1852) への献辞として造られた属名です.
ところが,その意味を考えると,「マンテルの角」となり,マンテル氏には「角」があったことになり,本当に献辞なのか皮肉なのか,よくわからないという気持ちになります.

国際動物命名規約にも,「属グループの名称の複合名に人名を用いることは好ましくない」(ICZN, add. D-15.)とありますが,常識的にいっても恥ずかしい命名の仕方だと思いますね.
既成事実として,どんどん使われてますしね.

とかく,人名を学名に用いるのは,さまざまな問題を引き起こしますし,命名センスからいっても「どうかな?」とい感じるのが多いですね(感じるのは人の勝手だといわれればそうですけど(^^;).
一方で,アマチュア・化石ハンターの世界では「発見した人には,名前をつけてもらう権利がある」などという妙な“伝説”があり,関係した研究者が「あっけ」にとられる場合も少なくないと聞きます.「新種である」という根拠もないのに,上司から「~さんの名前をつけろ」と強要された学芸員もいるとか.
いろんなところから「圧力」がかかる((--;).


ついでに,意味がわかる学名のいくつかについて.
まずは,Didymaspis.
Didymaspis = didym-aspis=「二連の」+「丸い楯」
こういう命名の仕方では,その形がイメージできますね.残念ながら,復元図の良好なものは見あたりませんでしたが,Müller (1985, p. 35)には,その一種の復元図が示されており,それでは,わずかに「ひょうたん型」をした形が示されています.この「ひょうたん型」が「二連の」を意味しているのかもしれません.

つぎに,Norselaspis.
英語で,Norselandは「Norse人の国」という意味ですが,これは「ノルウェー(Norway)の異称」だそうです.
つまり,Norselaspisは「ノルウェーの」+「丸い楯」ということ.「ノルウェー産の“無顎類”」という意味でしょうね.

三番目は,Axinaspis.
Axinaspis = Axin-aspis=「斧の」+「丸い楯」
Sansom (2009)の図に,Axinaspisの一種がでていますけど,「斧」に関係あるように見えるでしょうか?
石器時代の「石斧」に見えないこともないですけど….

最後は,Acrotomaspis.
Acrotomaspis = acrotom-aspis=「切り離された」+「丸い楯」
「希語辞典」には[ἀκρότομος]は「鋭く切り離なされた;断裂の」というような意味ででていますが,acro-<[ἄκρος]は「頂点」で,tom-<[τόμος]は「切ること」ですから,「(頂点があると考えられるものの)頂点を切った(形)」と考えるのが妥当なんでしょう.
Sansom (2009)の図のにAcrotomaspisの一種が描かれていますが,そういう風に見えるかどうか
なお,Sansom (2009)の図にでているのは「頭甲部」のみで,本来は下側に尾の部分がついているべきものです.接合部が多いので,化石としては外れていることが多いのでしょう.復元図も,だいたい省略されていることが多いですね.お間違えのないよう.

ほかは,判らないので,ご容赦.

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