2011年11月2日水曜日

ワラジムシとダンゴムシ pt. II


さて,ついでですから,学名の意味を探っておきましょう(こっちが,わたしの興味あるところ).

いわゆる「ホンワラジムシ」と呼ばれているOniscus asellus C. Linnaeus, 1758から.

Oniscusは,もとはギリシャ語で「オニスコス[ὁ ὀνίσκος]」がラテン語化したもの.その意味は「(海に住む)タラ」のこと(意外!).別に,「woodlouse」の意味とあります.「woodlouse」は「woodlice」の複数形で,意訳すると「木のシラミ」で,具体的にはギリシャ付近に生息する“ワラジムシ”のことを指しているといいます.もっと,深い意味があるかどうかは記述がありません.
もう一つ,「windlass, crane」という意味がありますが,これは「巻き揚げ器」とでもいいますか,梃子/滑車の応用で,少ない力で重たいものを持ち上げる道具を指しているらしい.

こんなに違う三つの意味があるということは,何か元々の意味がありそうですが,「一番信用できる」とされるこの「ギ英辞典」にはなにもでていません.
これは,じつはわれわれが悪い.
「辞典」というと「言葉の意味」が書かれていると思いがちですが,「ギ英辞典」としばしば訳されるこの“辞典”は,ほんとうは「Lexicon」なのです.
言葉通りの「レキシコン」は「ディクショナリー」ではなくて,「古典」のどこにその言葉が使われているかという「リスト」に過ぎないので,たまたま見つかっているその「古典」の著者が,言葉の誤用をしていたとしても,「レキシコン」の編集者には責任がないというわけです.
で,われわれは「レキシコン」と「ディクショナリー」の区別をつけずに,「辞典」と訳して使っているわけです.

そんなわけで,「オニスコス[ὁ ὀνίσκος]」が示す意味は曖昧.
さて,この「オニスコス[ὁ ὀνίσκος]」はラテン語化していて,oniscosもしくはoniscusとして使われていたようです.
ギリシャ語からラテン語化した場合,語尾の[-ος](-os)は[-us]になりますが,両方の形があるということは,古い形を残しているということかもしれません.
しかし,「ラ英辞典」では,その意味は「wood-louse, milleped」しかありませんので,「希語」と一対一ではない.あ,「wood-louse」は上記してありますが,「milleped」は,もちろん「ヤスデ」のことです.
ということは,古代ローマ人には「ワラジムシ」も「ヤスデ」も,区別をつける必要の無いものだったということですかね.
ちなみに,「ワラジムシ」も「ヤスデ」も腐食性で,ヤスデも脅すと「丸まる」性質のあるものがいますよね.

話を戻します.
Oniscus asellusの種名の方のasellusは….
こちらは,ラテン語で「子ロバ,若ロバ」のことですが,不思議なことに,ここでも「タラ,コダラ」という意味が出てきて,古代ローマ人が「好んで食した」というようなことが書いてあります.
「ワラジムシ」と「タラ」の不思議な関係が成立していますね.

ちなみに,asellusはasinusの派生語でasellus = as-ellus=「ロバの」+「小さいもの」という構造.asinus は as-inus=「ロバの」+「所属するもの」という構造ですから,as-は「ロバ」を意味する語根.
英語のass=「ロバ」はこれを借りているわけですね.

も一つちなみに,asellusはこれを属名とする生物がいるようです.
それはAsellus aquaticus (C. Linnaeus, 1758)といい,ネット上で画像を検索すると,これもワラジムシそっくりで,ヨーロッパに分布する水棲甲殻類だとのこと.なるふぉど,「水棲のワラジムシ」という意味ね.

話を戻します((^^;).
さて,そういうことで(何が?(^^;),Oniscus asellusは「子ロバのワラジムシ」….
意味がわからん(--;.なにか,深~~~い意味が,まだありそう.
 

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