2011年11月4日金曜日

ワラジムシとダンゴムシ pt. IV

Porcellio scaber Latreille, 1804は,日本では「ワラジムシ」と呼ばれています.

porcellioは,英語では「woodlouse, sowbug」を意味するラテン語で,日本語に訳すとこれは「木シラミ,ブタ虫」ですが,現地の「ワラジムシ」を意味する言葉です.
ただし,ラテン語のporcellio自体が何を意味しているかは,例によって「レキシコン」には書かれていません.


ちょっと違った方向から,考えてみます.
ラテン語では porcusは「ブタ」を意味しています.
Porcus marinusならば「海のブタ=イルカ」なんだそうです(注:これは学名ではなく,ラテン語の熟語です).

「紅の豚」の主人公(主豚公?)は「Porco Rosso」.
これはイタリア語ですが,日本語になおすと「紅いブタ」(英語ならば「Pork Red」?).もちろん,porco は porcus から来ているのでしょう.英語のporkもね.

porcus の語根は porc-.
これに《縮小辞》の-ulusをつけたものが,porc-ulus = porculus=「ブタの」+《縮小詞》=「ブタの小さなもの」.
たとえば,porculus marinus は,「海の若ブタ」=(やっぱり)「イルカ」.

porcus の語根は porc-.
これに別の《縮小辞》である-ellusをつけたものが,porc-ellus = porcellus =「ブタの」+《縮小詞》=「ブタの小さなもの」.こちらも同じ.

ここで,porcellusを語根化するとporcell-ですが,前出 porcellioの語根でもありますね.
そうすると,porcell-io = porcellio=「ブタの小さなものの」+《行為,その結果》という構造になりますが,ちょっと意味がイメージできません.-ioが《動詞》につくなら,イメージできるのですがねえ.
もしくは,-ioではなく,-ionならば,porcell-ion = porcellion=「ブタの小さなもの」+《縮小詞》=「本当にと小さいブタ」….
なにか,判りそうで判らない,もどかしさ.
古代ローマ人は,「ブタ」というと,なにをイメージするのか.それが判れば,なにかヒントがつかめそうですが….


しょうがないので,先に進みます.
種名のscaberはラテン語の《形容詞》で,「ザラザラした」という意味の《男性形》です.特殊な意味で「疥癬にかかった」という意味で使われる場合もあるようです.

ということは,Porcellio scaber=「属名」と「種名」をあわせて,「ザラザラしたワラジムシ」もしくは「ザラザラした子ブタ」.一番それらしいのは,「疥癬にかかった子ブタ」.
う~~ん.あまりセンスのいいネーミングとはいいがたい.それとも,なにか深い意味があるのか….
 

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