2010年3月28日日曜日

Velocipes の展開

 
 学名辞典(恐龍編)いじり(その10)です.

 Velocipes gürichi Huene, 1932 という恐龍がいました.

 「いました」というのは,現在,分類学上では,この標本は無視されているからです.
 標本は,左足の腓骨(脛の骨の細い方)の近位部分だけ.

 それで,Velocipesと名付けるというのは! いろんな意味で,すごいですね((^^;).

 Velocipesのveloci-は,《ラテン語》のvelox (ウェーロークス)=「速やかな」の《合成前綴》veloc(i)-です.後半の-pesは《ラテン語》のpes (ペース)=「足」.
 合わせて,「速やかな足」という意味.(腓骨の一部でねえ….しつこいな(^^;)


 種名のgürichiは人名Gürichの形容詞化で「G. J. E. Gürichに属する」という意味ですが,めんどくさいので「G. J. E. Gürichの」と略しておきます.
 G. J. E. Gürichとは,Georg Julius Ernst Gürich (1859.9.25-1938.8.?)のことで,ドイツの地質学者で,古生物学者でした.

 さて,原著ではgürichiになっていますが,[ü]の使用はNG.ICZN (32-c-i)により,自動的に[ue]に訂正されます.したがって,gürichiguerichi

 著者のHuene については「Halticosaurus の展開」を参照してください.


 あとは推測のみ.
 標本の産地はシレジア地方(ポーランド-チェコ国境あたり)ということです.時代はヒットラー政権下で,Gürichはドイツの支配下にあったポーランドの古生界の研究で有名ということですから,標本はGürichが発見したものかもしれませんね.

 

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