2011年1月15日土曜日
鉄道と機関車
「鉄道」と「機関車」は,じつは別のものです.
というか,別に発達してきたものです.
本来の鉄道は,重量物を運ぶために引かれた「鉄製の軌道」のことです.その上を走る(重量物を運ぶための)台車は人が押そうが,牛馬が引こうが,或いは蒸気機関車が引こうが,ディーゼルカーが引こうが,電車が引こうがちがいはありません.「鉄道」なのです.
一方,われわれが「鉄道」といって思い浮かべる(鉄道の上を走る)「機関車」は,当初が「蒸気機関車」であり,これは今の自動車のように(軌道上ではなく)自由に走るものでした.舗装が整備されていない当時の道路では,重いだけの蒸気機関車は無用の長物にひとしいものでしたが,これを「鉄道」と結びつけることによって世界が変わったのです.
日本には,すでに「鉄道」と結びついた「機関車」が明治になってから入ってきましたので,日本人には「鉄道」と「機関車」がべつなものだなんて,ほとんどの人は気付いていません.これを指摘したのは,わたしの知る限りでは,牛沢信人(1982)「茅沼「はじめての鉄道」論争」ぐらいです.
なんだか,このパタン,日本人には「科学」と「技術」そして「科学技術」の区別がつかないという話によく似ています.西洋でべつなものとして生まれ,発達したものが,ジョイントして新たなものに生まれ変わり,その後,日本に入ってきたから,日本人は「おなじもの」と思ってしまうのですね.
日本の都市には「科学館」なるものがよくありますけど,中身は「科学技術館」ですね.本来の科学=自然科学は「科学館」ではなく,なぜか「博物館」にあります.これは,科学史を勉強しないと,理解ができない現象です.
話を戻します.
日本で最初の「鉄道」は,北海道にありました.それは,江戸時代の茅沼炭山で石炭を運び出すために設けられたものでした.牛沢氏の論文を見ると,一時は茅沼炭山で日本最初の蒸気機関車が走っていたと誤解されていたこともあるようです.
一方で,「茅沼鉄道(茅沼軌道と改ざんされてたりもする)」は「日本最初の鉄道」であるのは間違いないのに,日本最初の鉄道は,明治に入ってから,新橋-横浜間につくられた「鉄道+蒸気機関車」であるというのが,日本史上の定説になっています.妙なことですが.
一説によると,新しいことはなんでも明治政府が始めたことにしておきたいという圧力があるんだそうで,江戸幕府が将来を見つめて新しい科学技術を導入していたという事実はタブーと化しているのだそうです.
うん.なんか思い当たる.
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿