2011年8月21日日曜日

PHYLLOLEPIDA

order PHYLLOLEPIDA Stensiö, 1934


1934: order PHYLLOLEPIDA Stensiö,
1936: order PHYLLOLEPIDA: Stensiö, (Berg, 1940, p. 351)

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PHYLLOLEPIDA = phyllolep-ida=「Phyllolepisの」+《一族の名;目》
Phyllolepis = phyllo-lepis=「葉状の」+「鱗」

PHYLLOLEPIDAはgenus Phyllolepisを冠とする分類群名称の一つです.
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phyllo-は,ギリシャ語の[τό φύλλον]」=《中》「葉」が,ラテン語の《合成前綴》化したもの.

-lepisも,ギリシャ語の[ἡ λεπίς]」=《女》「上皮の薄片.鱗.鱗片」で,この場合は「鱗」を意味しているようです.
あわせて,《合成語》Phyllolepis = phyllo-lepis=「葉状の鱗《女単》」

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Phyllolepis類似のグループを表すためにつくられた言葉がPHYLLOLEPIDA.
Phyllolepisを語根化してphyllolep-.これに-idaをくわえたもの.

-idaは,「英和大辞典」などには,「動物の「目」をつくるときに使われる」などと書いてありますが,「語」の説明になっていませんね.

あくまで私的解釈ですけど,-idaは,-idusが語源だと思います.
-idusは-id-usで,もとは(たぶん)-ides-us.
-idesは辞典には《「父祖からの一族・種族の名」をあらわす》となってますが,なんのことだかわかりませんね.これはギリシャ・古代ローマの習慣に関係あるようです.当時の文書では,女性の名前というのは特別な場合を除いて出てきません.たとえば「オーケアノス[Oceanos: Ὀκεαός]の娘たち」は一括して「オーケアニデス[oceanides: ὡκανίδς]」と呼ぶらしいのですが,その-idesですね.

さて,-idusという語尾が成立すれば,これは《形容詞》として扱うことができます.つまり,
《形容詞》-idus, -ida, -idum=「一族の,子孫の」
という変化が起きます.で,-ida=《女単》=「一族の(もの)」という名詞化が起きて,PHYLLOLEPIDAは「Phyllolepisの一族のもの」という意味になります.あるいは,《形容詞》のママで,「Phyllolepisの一族の」order (Ordo)という構造だったのかもしれません(ここは,当時の分類名称を造るルールというものがどういうものだったかの記録がないので「推測」です).

さて,当然《形容詞》には《形容詞》《複》をつくるルールがありますので,
《形容詞》《複》-idi, -idae, -ida=「一族の」
が成立します.
ここで,《女複》が名詞化すると-idaeという語尾ができます.これは,これは現在の動物分類学では無条件で「科」の語尾に使用することになっています.
元は,「~の一族,子孫」という意味だったんだということがわかります.

蛇足しておくと,こんなことは「辞典」にも,「文法書」にも出ていません.
「点」と「点」を結んだ,わたし個人の探索行の記録です.

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なお,Phyllolepisを冠とする分類群名称には《科名》として,
PHYLLOLEPIDAE = phyllolep-idae=「Phyllolepisの」+《科》
のほかに,
PHYLLOLEPIDIDAE = phyllolepid-idae=「Phyllolepisの」+《科》
があります.
同様に,上記《目名》PHYLLOLEPIDAのほかに,
PHYLLOLEPIDIDA = phyllolepid-ida=「Phyllolepisの」+《目》
PHYLLOLEPIDIFORMES = phyllolepid-iformes=「Phyllolepisの」+《目》
などが,見られます.

つまり,phyllolep-のほかに,phyllolepid-という語根があることになります.
これは大変に困ることです.なぜなら,phyllolepid-はphyllolepidusの語根であり,Phyllolepisの語根ではないからです.そもそもが,Phyllolepis を冠とした分類群名称として成立していない.
phyllolepid-は,たぶん,《属格》形なんだと思われますが,こういう混乱をまねくようなことはしてはいけないと思いますね.しかし,残念ながら,行われているのが実情のようです.

ちなみに,phyllolepidusだと,「葉状の楽しいもの」と訳されてしまいますね.

(2011.09.16.:修正)

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