かねてから,学名の記載者名が省略形なわけをづーっと考えてました.
ま,「省略形」などころか,「記載者名」そのものすら明記しないことが,ほとんどなんですけどもね.
この「省略する習慣」ために,原著を確認することができないばかりか,誰が定義した「分類群名」なのかもわからないので,実際に何を意味しているかもわからずに“分類”が行われているという,わけのわからない事態がしょっちゅう起きているわけです.
本当に困ったことです.
話を戻します.
記載者名の省略形とは,たとえば有名なLinne (Carl von Linné),ラテン語名Linnaeus (Carolus Linnaeus)の名前がLinn.と略されるようなことです.
Linneならば,現代的分類記載法の創設者ですから,誰でも知ってますが,そうではなくて,誰も知らないようなマイナーな記載者名まで,こういう省略形を使う習慣があるようです.
学名をキチンと書いてある図鑑なんてのもほとんどありませんが,まれにでもあるそういう図鑑を見ていただくと,記載者名には,そのような省略形が多いのに気付きますよ.
ひどいときには,Tak.なんてのがありました.これはなんと,Takahashiという日本人名なんですが,そんなの誰が知ってるかい!(特に外国人は)
こんな悪習が,普通にあるのが不思議でした.
以前紹介した小倉博行(2007, p. 24)を読んでいて気がつきました.
古代ローマ人の個人名は,「実にバリエーションに乏しく,せいぜい20ほどしかありませんでした」とあります.つまり,最初の数文字を記してしまえば,そのフルネームがすぐにわかってしまったというわけです.つまり,フルネームを示す意味があまりない.
この話は非常に面白いので,ぜひ原著を読んでほしいと思います.ギリシャ神話などで,たとえば,オーケアノスの子どもたちを,まとめてオーケアニデスなどと呼ぶ習慣があることを想い出します.
つまり,こういう個人名にはあまり意味が無く,「何々一族の男」とか,「誰々の何番目の娘」とかいういい方のほうが,一般的だったのですね.だから,個人名は省略形がおおいのです.
リンネは,スウェーデン人で,スウェーデン風の名前を持っているのにもかかわらず,ラテン語風にアレンジした名前を使用していました.なんか,現代の子どもの名前に欧米風の名前をつけることが多くなっているのと重なってしまいます.こてこての日本人顔なのに….
つまるところ,無意識な,リンネへのあこがれ,ラテン語を使うことへのあこがれみたいなものが,分類学者の中にもあるということなんです.
アイドルの髪型をまねる若者みたいな軽薄さが….
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