2012年1月8日日曜日

動物名考(2) ペンギン類およびフンボルトペンギン

ペンギン[Penguin]類


冬の散歩で有名な旭山動物園のペンギンたちについて.
でもまあ,ペンギンの散歩は運動不足の開始目的で,べつに旭山動物園にプライオリティがあるわけじゃあないですけどね.ペンギンの飼育施設では,どこでも普通にやってるとか.
それと,ペンギンにもいろいろ性格の違いがあるようで,イワトビペンギンなんかは性格がきついので,一般客の前で自由に振る舞わせることは無理なようです.

さて,ペンギンは,ペンギン目ペンギン科に属する鳥類の総称です.
現生種は,一目一科一亜科にすべて含まれていますが,化石種の大部分は別の亜科に含まれる用ですが,その分類学的位置付けは,まだ,かなり曖昧なようです.
ペンギン[Penguin]という俗称の語源は諸説あるようで不詳.残念ですね.気になる人は英語版Wikipediaで.

ordo: SPHENISCIFORMES Sharpe, 1891


familia: SPHENISCIDAE Bonaparte, 1831


subfamilia: SPHENISCINAE Bonaparte, 1831



各名称からわかるとおり,type genusはSpheniscus Brisson, 1760です.
面白いことに,genus Spheniscusそのものに,《英名》banded penguinsが当てられています.bandedは「帯模様(縞模様)を持つ」という意味ですけど,その通りで,この属に属する4種はどれもよく似た帯模様を持っています.素人目にはほとんど区別がつかないですね.本当に,分ける意味があるのでしょうかね.

genus Spheniscus Brisson, 1760 [type: Diomedea demersa Linnaeus, 1758]
 Spheniscus demersus (Linnaeus, 1758) [African Penguin]
 Spheniscus magellanicus (Forster, 1781) [Magellanic Penguin]
 Spheniscus humboldti Meyen, 1834 [Humboldt Penguin]
 Spheniscus mendiculus Sundevall, 1871[Galapagos Penguin]
の4種が構成種.このうち,「フンボルトペンギン」と呼ばれるS. humboldtiは旭山動物園在住のようですが,農協キャラには選出されていません.
属名のSpheniscusは,ギリシャ語の[ὁ σφήν]」=「楔」をラテン語綴り化し,《合成前綴》化したものです.語尾の-iscusは《縮小詞》で,この合成語の意味は「小さな楔」.
なにが,「小さな楔」なのかは,ちょっとわかりませんが,体長60~70cmのペンギンが泳ぐさまは「小さな楔」に見えるのかもしれません.
なお,リンネが命名したときのDiomedeaは,「アホウドリ属」のこと.当初はアホウドリの仲間と思われていたということでしょうかね.

種名demersusは,ラテン語で「沈んだ」という意味で,属名とあわせて「沈んだ小楔形」.なんか,海中を泳ぐペンギンの姿を彷彿とさせますね.
最初の記載の時にはdemersaだったのが,genus Spheniscusに移されたときに,語尾が-usに変わっていることに気付きましたか?
これは,属DiomedeaDiomedusの《女性形》なので,《形容詞》である種名も女性形のdemersaをとっていたのが,移されたSpheniscusは《男性形》なので,demersus《男性形》に換えられたわけです.
本来は,原著者が提案した「綴り」は尊重されなければならないのですが,ギリシャ語-ラテン語の系譜を継ぐ「学名」は「名詞」(=属名)を修飾する「形容詞」(=種名)は同じ「性」になるという文法にしたがっていますので,無条件で訂正していいことになっています.ここは,なんか「衒学」的で「ヤ」なところです.なぜって,ろくなラ語辞典・希語辞典がないのに《性》を確認する作業はけっこう大変だからです.「これを知ってるといばれるの唄」みたい(^^;.

種名magellanicusは,Magellanの形容詞形.Magellanは元は人名ですが,この場合は地名「マゼラン海峡の」という意味ですね.人名ならば,Magellan-iとなるはずですから.
属名とあわせて「マゼラン海峡の小楔形」.マゼラン海峡を泳ぐペンギンの姿が浮かんでくるよう.

フンボルトペンギン


Spheniscus humboldti Meyen, 1834


[Humboldt Penguin]


種名humboldtiは,独国の自然科学者F. H. A. Humboldtの名の形容詞化.たぶん,フンボルトが発見に関わったとかいうのではなくて,フンボルト海流が南米を洗うあたりに生息しているのだとおもいます.フンボルト海流は,別にフンボルトが発見したわけではなく,彼が最初に図示したことによるそうです.ちょっと,錯綜してますね.

種名mendiculusは,ラテン語のmendīcus =「物乞いの,貧困の,窮乏した」の縮小語.属名とあわせると,「小さな物乞いの小楔形」って,ひどいんじゃあない(-.-#).
 

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