2012年1月23日月曜日

「陰陽道の神々」

最近,また,オカルトに凝っています.
といっても,別に新興宗教に入ったり,怪しいことをやってるわけではありません((^^;).

最近,斎藤英喜氏の「陰陽道の神々」を読みました.

      

中世の公的「陰陽道」と大衆に支持された別の「陰陽道」があるそうです.
現代に至っても,われわれが,さまざまな場合において方位にこだわる理由は,安倍晴明が著したといわれる「簠簋内伝」にそのルーツがあるといわれていますけど,これが実は偽書.晴明が書いたものではないというのが通説です.
つまり,現在でも頻繁におこなわれている「恵方に向かって」なんてのは,誰が書いたのかすらわからない偽書から,すべてが発しているわけです.その背景には,公的ではない「陰陽道」があるんだそうです.


ここまで読んで,「なにか」と「なにが」わたしの頭の中で結びつきました.
たとえば,「占星術」は,王族がみずからの国家の安泰を願い,維持するために発達させたものです.だから,たくさんの学者を傭い,精密な天文学が形成されています.現代天文学のルーツです.
一方,庶民だって,安定した生活がしたい.イヤな出来事はできればさけたい.だから,王族がやっている「占星術」を,できればやってみたい.しかし,庶民ですから,それほどお金があるわけじゃあない.

占星術師を商売としても,手間がかかるだけで,もうけは少ない.
そこで,占星術の「大衆化」が起きます.
占ってほしい人の,生まれた時のすべての星の位置を特定するのではなく,そのときに,ある星座の中に太陽があることをもって簡略化してしまえばいい.そうすると,12程度のわけ方で,すべての人の運勢がわかることになる.そうして生まれたのが「星座占い」です.
簡単だし,占いの結果に,たいした根拠がいるわけでもない.占星術に比べれば「星座占い師」は非常に仕事が楽なわけです.

理解できます?
星座間での太陽の移動は連続しているはずなのに,隣り合った星座同士でも異様に“運勢”が違うことが普通にあることを.


同じことが,風水術でも起きます.
風水術も古代科学の一種で,安全な土地に「都」を置きたいという考えから,発達したものです.安全な土地というのは,自然災害からでもあり,周囲の異民族からでもあります.
だから,風水は,砂漠地帯や大平原,山間部や島国とか,風水土が異なれば,基本になる考え方も違う.しかし,個々の例を見れば,非常にリーズナブルなことがたくさんあります.

皇帝ならば,たくさんの科学者=風水師を傭って綿密な風水を判定することができます.
しかし,庶民は違う.
「風水」が悪いからといって,簡単に引っ越すことはできませんね.身分制度で移動を縛られている時代がありました.家のローンが残ってます.借家住まいだと,造作を変えることもできません.
そこで,風水の大衆化がおきます.
どっちかの方角に(これは,大衆化陰陽道からの借り物です)金色のものを置けとか,枕元に緑色のもの(植物)をおけとか,庶民でもできる(ほとんどわけがわからない)ことが“対応法”として示されます.
現代風水はそうしてできあがったものです.

仏教も神道も同じことが起きています.仏教も神道も一時期,国家の管理におかれたことがありますから,単に大衆化が起きただけではない.あっちこちに歪んでいます.

こういったものは,「ひとつの道」を通ってきたものではないので,現代のわれわれから見ると歴史的に重なってしまったものを見ていることになります.宗教・占い同志が重なっている場合もある.そうすると,一筋縄ではいかない,ひどく複雑なものとして,われわれの目に写ることになります.

けっこういろんな分野(宗教・占い)の本を読みました.しかし,伝説上の聖職者と実際に身の回りにいる「坊主ども」には,呆れるほどのギャップがあるように,「かれら」が書いたものを読んでも,「現状」は理解できないものでした(仏教を理解するのに,坊主の書いたものを読んでも意味がない).
「陰陽道の神々」を読んで,ようやく上記のことどもが,納得できた次第.名著です.

さて,そうすると,「(現代)科学が大衆化」した場合は,一体どんなことが起きるのでしょうね….

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