2012年8月13日月曜日

アイヌ伝説と石炭

十勝の川々


十勝の平原を流れている川に男と女とがある.太陽の出る方向から流れて来るのは男の川で,音更川やトミサンペツはそれであり,札内川など西からくる川は女の川である.十勝川の水源には,十勝川を監視しているシーペッヘニウンカムイシセという神様がいて,男の川には山にある宝物を送ってよこすので,音更川の奥から石炭とか硫黄とかがでるのだ.

(音更町・細田カタレ姥伝)


音更川は,石狩岳の隣峰音更山を水源とし,上士幌町-士幌町-音更町を通って,帯広市街で十勝川と合流する川.
一方,「トミサンペツ」は,悲しいかな,現在は地名が残っていません.

音更川は北から南へ流れているので「太陽の出る方向」というのはしっくりきません.
一方,札内川は確かに,西から流れています.
だから,伝説の前半は「?」です.「男の川」・「女の川」の意味も不明.
十勝川の水源にいる神様が音更川の奥に「山にある宝物を送ってよこす」というのも,意味が分かりません.

この伝説で唯一意味が通るのは,「音更川の奥から石炭とか硫黄とかがでる」ということ.

しかし,石炭はこの流域には見あたりません.可能性があるのは第四系「池田層」に夾在する亜炭層.もちろん,炭鉱としては成立していませんが,品質のよいところから採取して暖をとるぐらいは可能かもしれません.

もっと,困ったのが「硫黄」のこと.
硫黄鉱山や鉱床があったという記録は見いだせません.
可能性があるのは,隣の美里別川上流にある「芽登温泉」が硫黄泉だということで,これと間違えているか,あるいは尾根一つの違いですから,小規模の硫黄の気があった可能性はあります.

音別の炭川


釧路音別町の尺別川の隣りに、パシウシュベという小川がある.昔この附近の海上で,鯨と海馬とが争いを起し,鯨の方が負けそうになったので,この小川へ逃げ込んでしゃにむに川上へ向って泳ぎ上り,どうやら海馬からの難をのがれることが出来たが,さて海に戻ろうとしたが,あまり勢いよく突込んだ為,体を廻すことも後戻りすることもできなくなって,そのまま川をうずめてしまった為に,川は炭のように真黒くなってしまったという.ハシとは木炭のことでウシュは沢山あるところ,ベはものという意で,炭の沢山ある川ということである.

(中田千畝「アイヌ神話」)


「音別の炭川」については,「アイヌ伝説と化石」でも紹介しましたが,これは「釧路炭田」の一部を示しているものと思われます.でも,前述したとおり,釧路炭田の詳細な地質図を所持していませんので,検討不可能.
探索はまだまだ続く….
 

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