2010年10月15日金曜日

キノコ

 
 今年は「毒キノコ」騒ぎが多く,今朝も朝のニュースで特集をやっていました.
 それで,博物館時代の不愉快な出来事を想い出してしまいました.腹が立つので記憶の奥に封印してたヤツです.

 大学院を追い出されて,某博物館に学芸員補として勤め始めて,まもなくのことでした.
 朝一番に事務のお姉さん(アルバイト)から…「苫小牧のキノコの専門家とおっしゃる方から電話です」.
 その博物館に勤めてから,そんなに時間も経っていないし,苫小牧にも,キノコの専門家にも知り合いはいないはずなので,戸惑いましたが,“まあ,しょうがない,とりあえず用件を聞いておくか”と,電話を回してもらいました.

 ちょっと聞き取りづらかったですが,先方はかなり怒っている様子.
 「え~と,うちの博物館が鑑定したキノコが間違っているということでしょうか?」
 「Yes」
 「うちの博物館が鑑定したという記事が新聞に載っている?」
 「Yes」

 というわけです.
 お姉さんも,だいぶ怒られたらしい.

 「え~とですね.うちの博物館には,化石と地質の専門家しかいないので,キノコの鑑定などたのまれてもしませんが…」と,受け答えしていると,事務のお姉さんが朝刊をもってきました.
 確かに,○○町立博物館が「非常に珍しいキノコ」を見つけたという記事が載っています.館長のコメントも.

 苫小牧在住のキノコの専門家曰く,「記事に載っているキノコは知らない人には珍しいが,比較的よくある食用にもよく使われるキノコである」とのこと(ここでは丁寧に書いてますが,実際はほぼ罵倒されています(^^;).
 「この件に関しては,わたしはまったくタッチしておらず,これはなにかの間違いと思われますので,前後関係を調査してご連絡申しあげます.」ということで,いったん電話を切りました.

 もちろん,前後関係は推測がつきます.
 館長のコメントが載っているからです.苫小牧在住のキノコの専門家は「館長とは何者か」と,ここに一番ご立腹の様子.
 「館長は,役場から派遣されている一般事務職(管理職)で学芸員の資格はありませんし,キノコどころか,なんの専門家でもありません.」

 ここからが,腹が立つところですが,館長にこの件に関して質問したところ,質問途中で「逆ギレ」(この当時は「逆ギレ」なんて言葉はなかったですね(^^;)して,わけの判らないことを怒鳴り出しました.
 わたしは,それまで若干腹が立ってましたが,逆に冷静になって「この人には,何を言っても無駄だな」と判断しました.しかし,館長の逆ギレはおさまらず,それ以後,数々の「いやがらせ」をされることになりますが,そのことは想い出したくない((^^;).

 折り返し,苫小牧在住のキノコの専門家さんに電話.
 「館長に問い質したところ,間違いを認め,反省しております(ウソです.(^^;)」
 「当館では,専門家不在なので,今後,キノコの鑑定を引き受けるつもりはありませんが,今後その様なことがあった場合,相談に乗ってくれないでしょうか.毒性のあるものもありますからね.(ホントです(^^;)(ただし,そのあと,○○町立博物館は「古生物の専門館」であることを前面に打ち出してゆきますので,キノコの鑑定など依頼されることはありませんでした)」
 苫小牧在住のキノコの専門家さんは機嫌を直して,協力を約束してくれました.


 ま,館長も実はかわいそうな人であることは,確かなのです.
 役場の人事異動で“館長”にはなったけど,「博物館とは何か」とか,まったく知らないわけですから.
 館長として,館長と呼ばれるようなことをしようと思ったら,あっという間に「フライイング」だったというわけです.この件に関しては,あとで少し冷静になったときに「今後こういうことは絶対にやらない」と約束させました.実は,ほかにも二・三(もっとかな(^^;)やってるんですが,それは別の機会に…(あまり想い出したくないですね(^^;).

 われわれ学芸員は,専門の学問分野を学ぶのに短くても二~三年,長ければ10年以上かけてますし,それとはまったく関係がない学芸員資格をとるのにも数年かけています.
 ところが,役場職員は辞令をもらったその日から「館長」なのですから…,ある意味たまらんでしょうね.この問題館長は就任期間が結構長かったですが,館長のポストは役場人事の緩衝材的なところがあり,頻繁に替わります.
 しょうがないので,人事があるたびに,数日あるいは数ヶ月かけて「博物館の意味」とか「仕事」とか「存在意義」について解く必要がありました.若いころはそれでも,「この博物館を世界的なレベルに!」と思ってましたから,邪魔されては困るので熱心にやりましたが,あるとき病気をして体力をなくしてから,気力もなくして…何があっても笑顔でというわけには,いかなくなりました.
 だって,館長どころか,教育長まで「博物館なんかいらん」と職員の前で公言する町でしたからね…(外部から博物館をほめられると態度が豹変するんですが…ね).

 問題館長の本音を聞いたことがあります.
 おなじ建物に図書室が併設され,博物館長は図書館長も兼ねていました.図書館には,もちろん正式な「司書」がいます.この司書と館長が,露骨に仲が悪かった.
 「あの女,資格を持ってるから,威張ってやがる.」(わたしにいうな!(^^;)(二重に差別ですね.性差別に,有資格者差別)
 これが,役場(事務)職員の本音らしいです.
 自分は図書館長も兼ねているのに,図書館でトラブルが起きると,すべて仕事はわたしに回ってきました(わたしは博物館の仕事で忙しいっちゅうに).もっとも,司書のほうも「(館長の)顔も見たくない」と公言してました.

 あ,いくらでも想い出しそうだ((^^;).
 封印!封印!

 キノコには後日譚があります.
 収蔵庫で収蔵品の整理中(赴任したときには,収蔵目録もリストもなかった!)に,問題のキノコが腐った状態でみつかりました.腐った小鳥も一緒に(もっと酷いものも…).
 今度は冷静に.
 それをネタに交渉して,収蔵庫の管理権を学芸員のものにしました.それまでは,ものの出入りは学芸員を無視しておこなわれていました.そのせいで,さまざまなトラブルがあったのです.
 博物館協力会が販売していた物品も収蔵庫にあるという不思議な状態で,これを撤去させるにはかなり時間がかかりましたが,最終的には解消しました(後日聞いたことですが,販売物品の出し入れに面倒だということで,鍵をかけていなかった時期もあったそうです:もちろん,そのせいで起こるべきことも起きていたとか).

 あ,これでまた,記憶を封印できるかな((^^;)
 

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