ワシミミズク(鷲木菟)
Bubo bubo (Linnaeus, 1758)
[Eurasian Eagle Owl]
ワシミミズクの上位分類は,フクロウと同じなので,そちらを参照のこと.
「ミミズク」という言葉は,一般に角のように見える「羽角(角羽?,どちらが正確なのかわからない)」のあるものを指しますが,これは系統分類やDNA分類と関係があるという情報はなく,「羽角」の存在がなにを意味しているのかは不明です.
つまり,ミミズクは分類用語としては意味がない.
その上で,日本で見られるフクロウの仲間で“ミミズク”といってもいい鳥には,以下の属種があります(ただし,「羽角」か「角羽」かがはっきりしない様に,この「羽角」も典型的な場合は,目視で判断ができるけど,単に盛り上がっている程度のものをそう判断すべきかどうかはわかりません).
genus: Asio Brisson, 1760 [type: Strix otus Linnæus, 1758]
Asio otus (Linnaeus, 1758) [トラフズク; Long-eared Owl]
Asio flammeus (Pontoppidan, 1763) [コミミズク; Short-eared Owl]
genus: Otus Pennant, 1769 [type: Otus bakkamoena Pennant, 1769]
Otus scops (Linnaeus, 1758) [コノハズク; Eurasian Scops-owl]
Otus lempiji (Horsfield, 1821)[オオコノハズク; Sunda Scops Owl]
Otus elegans (Cassin, 1852)[リュウキュウコノハズク; Ryūkyū Scops Owl]
つまるところ,どれかの種あるいは属に「ミミズク」という言葉を当てはめることも不可能のようです.ただし,和俗語で「~ミミズク」は「ワシミミズク」と「コミミズク」だけのようですけどね.
和漢三才図会の「木菟」の記載は「ワシミミズク」を指しているようですが,専門家はどう判断するのでしょうか.訊いてみたいところです.
なお,三属とも,ほかに世界中にたくさんの種が分布しています.面白いのですが,割愛.
ミミズクもメンコイ((^^;)
属Buboは,ラテン語のbubo (būbo)=《男》「フクロウ;ミミズク」をそのまま学名としたもの.
模式種はStrix bubo Linnaeus, 1758ですから,ワシミミズクそのものが模式種です.
Strix bubo Linnaeus, 1758は,Bubo Duméril, 1805の模式種ですから,Bubo bubo (Linnaeus, 1758)に訂正されてます.こういう,同じ単語を重ねるのは,学名では希にありますが,この場合,種名のほうは属格を使ってBubo bubonis もしくはBubo bubonusのほうがスマートなような気がします.現行だと「ミミズク・ミミズク」ですが,訂正すると「ミミズク(の中)のミミズク」で,「属名を種名が説明する」=「名詞を形容詞が修飾する」という原則に従っているからです.
ただ,“性の一致”にはうるさいのに,他の文法的不都合や誤字・誤植はそのまま使うという不思議なルールがあるので,修正は無効として扱われるでしょうけどね.
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【蛇足】
属Asioは,ラテン語のasioが語源で,英語では[horned owl]といいますから,「ミミズク」そのものを指しているようです.
種名otusは,ギリシャ語の[τό οὖς]」=《中》「耳」の属格で[τοῦ ὠτός]」=「耳の」をラテン語綴り化したもの.属名と合わせて,「耳のミミズク」という意味.この場合は「耳のフクロウ」のほうがいいかもしれません.
種flammeusは,「火炎の,引火性の」という意味のラテン語.属名と合わせると「火炎のフクロウ」という意味.胸のあたりの模様が「火炎」のように見えないでもないですが,色は「火炎」とは….
蛇足2
属Otusは,上記種名に使われたotusを属名にしたもので,「耳」ですね.やっぱり,「ミミズク」なんだ((^^;).
種scopsは,ギリシャ語の[ὁ σκώψ]をラテン語綴り化したもので,意味は「小型のミミズク;とくにOtus scops (Linnaeus, 1758)」を表します.つまり,ギリシャ語で呼ばれていたものをそのまま学名としたわけですね.
種lempijiは,不詳.-iがついていますから,通常は人名の形容詞化ですが,その人物が不詳です.
種elegansは,ラテン語の「エーレガンス[elegans]」=「優雅な,完全無欠の」です.属名と合わせると,「優雅な耳」という意味になります.
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