「マンモス絶滅の謎」(P. D. =ウォード著,Newton Press)
原題,The Call of Distant Mammoths: Why the Ice Age Mammal Disappeared.
巻末の「訳者あとがき」にもありますが,マンモス(そのものについて)の本ではありません.前半半分以上は,マンモスの時代以前の絶滅について書かれており,後半はマンモスの絶滅をテーマに書かれています.
しかし,マンモスそのものに中心はなく,いわゆる「絶滅論」とか「絶滅論史」とか,抽象的な議論ばかりです.マンモスそのものについて知りたいひとは,買うと腹が立つでしょう.
著者の文章は,抽象的な「お話し」が多く,なかなか論旨についていけません.「かもしれない」とか,「らしい」が多く,個々のキーワードもいきなりでてきたりして,解説もないので面食らいます.
多分,「『うちわ受け』的なジョークなんだろか」と思います.
腹が立つので,ヴェレシチャーギン著「マンモスはなぜ絶滅したか」(東海大学出版会)を探し出してきて,今読んでいます.こちらには,マンモスそのものやマンモス動物群についても詳細に書いてあります.
もう一つ,こんな昔の本が未だに販売されてることに感動しながら.
そもそも「マンモス絶滅の謎」をなぜ読み始めたかというと,C.=コーエンの「マンモスの運命」(新評論)を読んだからなんですが.こちらも,本の題名と中身が違います.マンモス研究を題材に,「古生物学の歴史」を概観するのが目的のようです.
こちらの文章はもっとひどいです.回りくどく,何がいいたいのか,さっぱり伝わってこない.
最近特に感じることですが,この手の「普及書」は難解な文章が多くて,「読み手」を意識していないんではないかと思わせます.こういう本ばかり出版してたら,「そりゃあ本を読む人はいなくなるわな」と思わせます.
出版業界の不況は,たぶん構造的なもんなのでしょう.出版社が「書き手」と「読み手」を育ててこなかった.そのつけが今きてるんでしょうね.ついでに言えば,「訳者」も.
さて,ウォードの「マンモス絶滅の謎」のせいで,もう一冊読まなけりゃあならなくなりました.それは,ここ10万年程度の気候変動の話なんですけど,途中で放り出してあるやつです.最悪な文章なもんで(実はアマゾンの書評にもありますが,訳者が悪いらしい.文章が難解なだけではなく,単語の訳も間違っているらしい).それは,R. B.=アレイの「氷に刻まれた地球11万年の記憶」です.
気候変動ものの本は増えてきていますが,やっつけ仕事が多いのでしょうかね.
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