2007年5月3日木曜日

青色片岩


 赤色チャートと同様に,神居古潭帯によく見られる岩石.
 この街では,やはり「神居古潭帯」からの岩石を庭石に使うひとが多いのです.

 似たような岩石に「緑色片岩」・「黒色片岩」などがあり,いずれも堆積岩が低レベルな変成作用を受けた岩石です.「変成作用」とは,「熱と圧力」によって,もとの岩石とはちがう鉱物ができたり,構造が変えられてしまうような作用の総称です.うすく剥げるような「片理」をもっている弱変成岩を「片岩」といいます.変成帯の中央部へ行くにしたがって,もっと高度な変成岩になりますが,「片岩」はふつうの堆積岩と変成岩の境目あたりの岩石と考えたらいいでしょうか.

 では,「黒色」・「緑色」・「青色」などの色のちがいは何なのでしょう.
 「黒色片岩」は,よく見ると,黒だけではなく「黒と白」の縞模様になっているのが判ります.ところで,砂粒サイズの「砂岩」から泥・粘土サイズの「泥岩」までがリズミカルに積み重なっている様子を表現して「砂泥互層」といっています.これは海底の斜面にふつうに見られる堆積岩です.実は,黒色片岩はこの「砂泥互層」が変化したものなんです.黒は泥岩の部分が変化したもの,白は砂岩の部分が変化したものでした.
 「緑色片岩」の「緑色」は,火山噴出物(とくに「塩基性のもの」)が変化して緑色の鉱物ができ,弱い変成作用をうけて「片理」が加わったものです.
 つまり,日本のような大陸と海洋の境目あたりにある地域では,よく見られる岩石が変成作用を受けるとその変成帯の縁辺部にみられるのが,「黒色片岩」・「緑色片岩」ということになります.

 では,「青色片岩」は?
 「青色片岩」の「青」は,変成作用によってできたまったく新しい鉱物の色です.困ったことに,この青色の鉱物は「黒色片岩」や「緑色片岩」とはまったくちがった条件でしかできないのです.言ってみれば,「黒色片岩」や「緑色片岩」は変成帯の縁辺部の「低温・低圧」でふつうにできる変成岩と考えることができますが,「青色片岩」の青い鉱物は,「低温(ですが),高圧」の条件でないとできないものなのです.
 そうすると,変成帯の縁辺部に「低温(ではあるが),高圧」という,特殊な環境を考えなければならなくなります.しかし,「青色片岩」は「黒色片岩」や「緑色片岩」とにたような場所にでてくるのです.これはいったいどういうことなのでしょう.

 むかしは,山脈ができる中央部が変成帯の中心部で「高温高圧」,外側に向って徐々に「低温低圧」になり,一番端はふつうの堆積岩になっていると考えられていたのですが,「青色片岩」の存在は,そうではないことを「無言」で訴え続けてきたわけです.

 現在では,海底に降り積もった堆積岩が,プレートの移動によって大陸の下に引きずり込まれたためにできたと考えられています.大陸の縁辺部で沈み込む海洋プレートは「温度が低く」,沈み込むために「圧力が高い」.ということで,「青色鉱物」の誕生が説明できるわけです.

 おかしいなと思ったひと.あなたは偉い.
 まだ,「青色片岩」が「黒色片岩」や「緑色片岩」とにたような場所にでるということが説明できてませんよね.
 「赤色チャート」のところで,斜面を滑り落ちて「グチャグチャ」になったのを「メランジ」というと説明しましたが,これは「堆積性のメランジ」のこと.べつに,「構造性のメランジ」というものもあって,大陸プレートと海洋プレートの境目などで,地層がもみくちゃにされて,もとの構造がわからなくなったものを指しています.これで,別な条件の下でできた岩石も「同居」できるというわけです.(ふー,なんとか説明できた(^^;)

 最後に言い訳しときますと,私はまだ「地向斜造山論」の世界で生きてる「生きている化石」((^^;)なので,この部分のプレート・テクトニクスによる説明がプレート論者による説明と一致してるかどうかは知りません.専門家に訊いてもなかなか教えてもらえない部分です.