2012年2月27日月曜日

貧乏再生産の法則

公共施設などの屋根に溜まった雪が,施設そのものを押しつぶす事故になって,新聞紙上を賑わせている.

われわれの学生時代,あまり裕福な仲間はいなかった.
普通は,学生の引っ越しといえば,リヤカー一台あれば,充分間に合った.そんな時代だった.
現代のように,あまりに家財道具が多いので,一度入居したら卒業までは引っ越すことがないのが普通というのが信じられない.

そんな時代に造った言葉が一つ.
「貧乏再生産の法則」

お金がないからといって必要なお金を使わずに,適当に間に合わせていると,後でもっと余計な出費を余儀なくされることをいう.

このことを自虐的に,かつ得意げに友人に話したら,それは「貧乏拡大再生産の法則だ」という.
貧乏は貧乏を産むのではなく,もっと非道い貧乏を産むというわけだ.

壊れた施設の管理者のいい分を聞いていて,このことを思いだした.
曰く「予算がないので」.
曰く「現在は使用していないので」
曰く「危険を察知したので,近日中に雪下ろしをする予定だった」

管理者の都合なんか関係なく,雪は降り積もり,放置された施設は押しつぶされてゆく.
余計な出費を余儀なくされる.

まさに,貧乏拡大再生産の法則だ.

我が町にも雪は降り続く.
住宅街の車道は両側で一車線に.
歩道は既にない.
歩行者は危険な車道を歩くか,元の路面より50cm以上は積み上げられた雪の上を歩くしかない.

悪質な業者が,歩道に雪を積み上げ,橋の上から雪を投棄する.
庶民は,住宅の隙間に,雪を積み上げてゆくしかない.

いずれ,大きな出費(もしくは,それに近いもの)を余儀なくされるだろう.
  

2012年2月24日金曜日

あぶないよ

今朝(5/17),日課の除雪中のこと.

登校中の児童が,ふざけて二三人道路へ飛び出した.
どうするべきか迷ったが,ほぼ反射的に「道路で遊んじゃあぶないよ」といってしまった.
その児童は,こちらをふり返ったが,相変わらずふざけながら遠ざかってゆく.

やっぱ,いうんじゃあなかったなあと思ったとき,T字路を斜めに横断しようとしたかれらは相変わらずふざけて絡み合っていたが,通行中の車を二台止めてしまった.
もちろん,車が止まらなければ,かれらは轢かれていたはずである.

思わず,大きな声で「道路で遊ぶんじゃないといっただろ!」と怒鳴ってしまった.
登校中のほかの児童はみんなこちらを見ていた.

大事には至らなかったので,思わず大きな声を上げたこちらが恥ずかしくなった.そして,なにもなかったかのように,時間の流れが元に戻った.

もう,今度はちゃんと歩くだろうな,と思って眺めていると,こちらの声が届かないくらい少し離れたところで,またふざけて,歩道で転がっている児童がいる.
そして,そのたびに横を通過する車が急ブレーキをかけている.


子どもたちの登校のピークが過ぎたので,我が家の除雪に戻ったが,どうしても気になるので,家に戻り小学校へ電話した.

だが,結果は残念なことだったようだ.

教頭「どうも不愉快な目にあわせまして」
私「不愉快なんじゃなくて,目の前で事故は見たくないから,指導をお願いしますといってるんですが…」

実は,昨年末頃にも,同じT字路で児童の飛び出しがあり,横からきた車が急ブレーキをかける事態を目撃している.その時にも,教頭に電話して,事態を伝え,指導をお願いしている.
しかし,登校時の児童の態度はどんどん悪化してきているように思える.

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と,書いておいたのが,一週間前.
本日もまた,ふざけて道路に飛び出す子らが….
なんの指導もなされていないか,通り一遍で「跳びだしちゃダメですよ~~」,「は~~ぃ」で終わっているのだろう.
排雪にこないので,交差点はますます見えにくくなってきている.
市内ではいくつかの建物が雪に押しつぶされたという.

私としては,もう,心配するのはやめた.
なにがおきようが,見て見ぬふりをすることとしよう.

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と書いたのが今朝.
先ほど,用事があって,学校の周りを歩いていたら,歩道がない!.
あっても,高さ50cm+の雪山の上を通っている!.車道もほぼ両側で一車線.

これでは「歩道をちゃんと歩きなさい」なんて指導しても,意味ないわな….というか,理解できない子どもがでるわな….
学校の周りぐらい除雪しろよ.革新市長さんよ.確信犯なのか?
民主党関係者は,ダメだな.
 

2012年2月23日木曜日

最近のベストバイ

ICレコーダーとアクティブスピーカーを買いました.

一応,“ピュアオーディオ”(?)に該当するコンポももっているのですが,あまりにも古いので(音はいい),操作性がいまいち.に.さん.し.
そのため,たくさんためた(たまった)ジャズのCDを聞こうと思っても,ついつい,聞き慣れたのを選んでしまうことになります.

それで,一計を案じ…((^^;),「ICレコーダー」と「アクティブスピーカー」をセットで買うことにしました.
ICレコーダーには,16GBのmicroSDHCをいれ,Macに貯め込んだCDを,ほぼ全曲移動しました.
こうすると,ジャンル別・アーティスト別・アルバム別にならんでいるので,CD一枚分を聞き飽きたら,次のCDへというやり方で,いままで眠っていたCDが聞きやすくなります.

昔聞いた思わぬ曲がかかって,思わず懐かしんだり,昔聞いた番組のテーマ曲がながれて「ああ,これだったのか」と,世界が広がってゆきます.

そう感じたときに,CDを引っ張り出してきて,古オーディオで聞き直したりすると,また,いちだんとステキな世界が広がります.

一応,下記にそのシステム(というほど,大げさなものではないですね(^^;)をあげておきます.

ICレコーダー:SONY ステレオICレコーダー ICD-SX813/B

   

これは,もともと,うちの近所で,電柱のてっぺんの金属部をたたくアカゲラさんの啄音を採りたくて購入しようと考えてたものです.
いわゆる,ポータブルオーディオにしなかったわけは,上記の理由が一つと,Amazonでカスタマーレビューを見ていたら,ICレコーダーを二つ買って,自分のレコーダで妻の好きな音楽を録音し,病院で寝たきりの妻のICレコーダーにそのmicroSDHCを入れるという話があって,ものすごく感動したからです.

Macを使ってる都合上,そのICレコーダーそのものは,選択の範囲には入らなかったですが….

アクティブスピーカー:SONY アクティブスピーカーシステム SRS-TD60(B)

   

スピーカーは,どれにしようかとかなり悩みました.
それこそピンからキリまであるし,もちろん,高いからいいとは限らない.
いい音にこだわると,どんどん大きなものになってゆきますしね.
昔あったような大型ラジカセに,ICレコーダーを繋ごうかとも考えたのですが,第一に,その大型ラジカセそのものが存在しなくなってました.

いろいろ悩んだあげく,選択を失敗してもいいぐらいの値段のアクティブスピーカーを見つけました.
それが上記.
買って,直後に聞いたときは.「あ,失敗した」と思いました.
音が悪いし,あまり大きな音にならない.目一杯あげても「こんなモンかい」というぐらい.もちろん,大きな音を出したいわけではないのですが,レコーダーもスピーカーもフルパワーでというのはどうもね….
それが,しばらく鳴らし続けたら,音の悪さが気にならないぐらいよくなったし,最初のころより大きい音が出るようになりました.
エージングなんて,眉唾だと思ってたんですが,どうやらあるようです.

てなわけで,今日も,いろんなCD(CDからメモリカードにうつしたものですが)を聴きながら,文章を書いています.
昼寝もしやすくなった…(いい音楽は,心地よい眠りを誘う)(^^;

2012年2月14日火曜日

陰陽道のお勉強

ここしばらく,陰陽道に関する本をまとめて読んでました.

しばらく放り出している間に,わかりやすい「陰陽道」および「安倍晴明」関連の本がたくさん出ていました.
例の「晴明ブーム」のおかげで,大量のオカルト本が出版されたわけですが,これらがあまりにもひどいので,まじめな研究者の側から,この流れを修正すべく出版が相次いだようです.

もっとも,まじめな研究者の側も,かなり「ブーム」にのった様子が認められますが…((^^;).

最初に読むべきは,やはり,前に紹介した田中貴子「安倍晴明の一千年=「晴明現象」を読む=」でしょう.取っつきやすいので,あっという間に読めるかと.
ただし,これでは,もちろん,「陰陽道」そのものに関しては,あまりよくわかりません.しかし,「晴明ブーム」で定着した「安倍晴明」の姿は虚像であることはよくわかります.

    

次に,読むべきは鈴木一馨「陰陽道=呪術と鬼神の世界=」でしょうか.

    

ただし,わたしはこれを読んでいて腹を立ててました((^^;).
ちょっと難しいことは軽く流してあるし,簡単なことは回りくどく説明してあるので,イライラします.ひょっとして職業は坊主なのかなと,思わせました.それなら,「肝心なことは曖昧に,簡単なことは回りくどく」という文章も理解できます(いいすぎかな(^^;).
しかし,この本が「陰陽道」について,オカルトを離れて客観的に記述した,ほぼ最初の一般向きの本であるというのは評価すべきことで,文章の癖はガマンして読むしかないですね.
それにしても,もっと文章を推敲してほしいし,推敲する余地がたくさんあると思います.
そんな本です.

上記二冊は講談社選書メチエから.
学研のエソテリカ・シリーズとはひと味違う((^^;).

さて,概略がつかめて,陰陽道および安倍晴明が理解でき始めたら,斎藤英喜にチャレンジすべきです.
「安倍晴明ー陰陽の達者なりー」および「陰陽道の神々」を,よめば,かなりの「通」になれます.残念ながら,わたしの頭脳はin-outの効率がすごく悪くなっているので,もう「通」にはなれないみたいです.

      


いま,村山修一「日本陰陽道史話」を読みなおしていますけれど,読み終わったら,もう一度,上記の本を読み直し,それから藪内清やニーダムの本に戻ってみようと考えています.
結局,古代中国地質学史の勉強に戻ることになるな.

    

      

2012年2月11日土曜日

動物名考(14) ウサギ

ウサギ


ウサギはもともと「ウ」だったのだそうです.古事記の“因幡の白兎”には「裸菟伏也(はだかなる「う」ふせり)」とあるので,古代には「う」と呼ばれていたのだろうと推測されています(中村浩「動物名の由来」).しかし,その「う」がなにを意味していたのかは,すでに失われてしまってわからないそうです.
ところで,「因幡の白兎」は,なんで「白兎」なんでしょうね.私たちは,「カイウサギ」を普通に見ていますから「白兎」を普通に思っていますけど,野生のウサギは褐色であり(降雪地域では冬期間,冬毛=白になるものもある),古代に白兎が普通にいたとは思えないのです.つまり,「白」であることは,なんかの意味がある.

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旭山動物園で展示されているウサギ類で,農協キャラに使われているウサギには「エゾユキウサギ」と「カイウサギ」がいます.
ちょっと,話が錯綜するので,先にウサギ科以上の上位分類から.

ordo: LAGOMORPHA Brandt, 1855[兎型類]
 familia: LEPORIDAE Fischer, 1817[ウサギ科]

と,まあ,実に簡単.DNA分析が進めば,亜科とか族とかに細分され,関係がもっとはっきりするのでしょうけど,現在のところは,ウサギ科という大家族におさまっています.

さて,LAGOMORPHAはlago-morphaという構造です.
lago-は,ギリシャ語の[ὁ λαγός]=《男》「ウサギ」が,ラテン語の《合成前綴》化したもの.
-morphaは,(なんどもでてきますが)ギリシャ語の「モルプェー[ἡ μορφή]」=《女》「形」が,ラテン語の《合成後綴》したものです.この場合は「~様のものども《中複》」という意味です.
合わせて,「ウサギ様のものども」=「兎形類」です.

一方,LEPORIDAEはlepor-idaeという構造で,lepor-は,ラテン語のlepus, leporis =「ウサギ」が,《合成前綴》化したものです.つまりは「ウサギ科」.
lepusはギリシャ語の語源をもつようなのですが,辞典の記述が曖昧なので,不詳.


ついでに書いておくと,日本に住んでいるLAGOMORPHAの科は,ほかにfamilia: OCHOTONIDAE Thomas, 1897があります(います?).
これに属しているのは,ご存じ「ナキウサギ」.ただ,ナキウサギは飼育が不可能なので,動物園キャラにはなりっこないですね.

ordo: LAGOMORPHA Brandt, 1855[兎型類]
 familia: OCHOTONIDAE Thomas, 1897[ナキウサギ科]
  genus: Ochotona Link, 1795 [type: Ochotona minor Link, 1795 (= Lepus dauuricus Pallas, 1776)]
   Ochotona hyperborea (Pallas, 1811) [キタナキウサギ; Northern Pika]
    Ochotona hyperborea yesoensis Kishida, 1930 [エゾナキウサギ; Yezo Pika]

亜種yesoensisは認めないのが普通ですが,一応示しておきます.
なお,yesoensisyezoensisの誤記.北海道の古名=「蝦夷」はezo, yezo, emisi, ebisuなどの変異はありますが,yesoというのはありません.

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ユキウサギ


Lepus timidus Linnaeus, 1758


[Mountain hare]


エゾユキウサギ


Lepus timidus ainu Barrett-Hamilton, 1900


[Yezo hare]



まずは「エゾユキウサギ」について.ちょっと,微妙ですが.
エゾユキウサギの学名はLepus timidus ainu Barrett-Hamilton, 1900とされているのが一般的です.だだし,これは亜種を認める立場.
亜種に意味があるかないかは,いつも議論になります.まあ,ほとんど「ない」のでしょうけど.そうすると,分類学的には「エゾユキウサギ」という言葉は無意味になります.大陸のユキウサギと同一種ですから.
ちなみに,和俗語では「ユキウサギ」ですが,英俗名は「ヤマウサギ[Mountain hare]」で,こちらのほうが言葉としては正確.なぜなら,草原から森林まで広い環境に住みますけど,どちらかというと山地を好むからです.
一方,ブラキストンラインをはさんで南側の日本には,下記のニホンノウサギ(「日本の兎」ではなく「日本野兎」)が住んでいます.困ったことに「野兎」なのに,こちらも草原よりは「山地」を好む((^^;).ま,もっとも,北海道ならともかく,本州には,そう,草原なんかないでしょうけどね.

種名のtimidusは,ラテン語の形容詞「臆病な」です.したがって,ヤマウサギは「臆病なウサギ」.でも,かれらは臆病というよりは「慎重」なんだともいます.野兎を飼ったことがありますけど,カイウサギより懐いて大胆でしたよ.

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ニホンノウサギ


Lepus brachyurus Temminck, 1844


[Japanese hare]


こちらは,北海道にはいない本州以南のウサギ.二種は典型的なブラキストン=ライン指示種ということですか.

種名brachyurusは,brachy-urusという構造です.
brachy-は,ギリシャ語の[βραχύς]=「短い」が,ラテン語の《合成前綴》化したもの.
-urusは,ギリシャ語の[ἡ οὐρᾱ]=《女》「尻尾」が,ラテン語の《合成後綴》化したもので,この場合は《形容詞》です.
合わせて,「短い尾の」という意味.しかし,「長い尾のウサギ」っているのだろうか…((^^;).

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アナウサギ


Oryctolagus cuniculus (Linnaeus, 1758)


[European rabbit]


カイウサギ


Oryctolagus cuniculus (Linnaeus, 1758)


Oryctolagus cuniculus f. domesticus (Gmelin, 1778)


Oryctolagus cuniculus ver. domesticus (Gmelin, 1778)


[Domestic rabbit]


こちらはいわゆる“移入種”.
原産地はヨーロッパおよびアフリカ北部のもの.野生種は「アナウサギ」ですが,飼育されて品種が増えたものを「カイウサギ」としています.
domesticusの前に,f.とかvar.が入っている場合があるかもしれません.この場合の f. は formaの略で「品種」のこと.var.はvarietasの略で「変種」を意味します.

属名Oryctolagusは, orycto-lagusという構造で,「掘られた穴の」+「~ウサギ」という意味です.つまり,和俗名「アナウサギ」は,この学名からきていることになります.

cuniculusは,ギリシャ語の[ὁ κύνικλος]=《男》「地下道,穴;ウサギ」をラテン語綴り化したもの.-culus, -ulusは《縮小詞》としてよく使われる語尾ですが,だからといってcuni- [κύνι-], cunic- [κύνικ-]に「なにか意味がある」と書かれていある辞書も無いので,別に「小さな(なにか)」を示しているのではないようです.
ただし,ギリシャ語の[κυνικός]は「イヌ様の」という意味ですので,これだとすれば,「小さなイヌ様の」の意味.ただし,通常のラテン語綴り化ではcynicosになってしまいます.したがって,cyniculusという綴りになるはず.

でも,「地下道,穴」と「ウサギ」が同じ意味だとは,なにか謂われがありそうです.もちろん,「穴を掘るもの」>「ウサギ」という関係は明らかですけどね.

亜種名domesticusは,domes-ticusという構造です.
domes-は,ラテン語の「ドムス[domus]」=「家,家庭」が《合成前綴》化したもの.
-ticusは,形容詞化語尾の一つですが,「所有,従属」関係を示すものとされています.
したがって,「家庭(のもの)の;国内の;その土地産の」という意味です.飼育種には,種名,亜種名に頻繁に使われる名前です.

前記したように,このウサギは家畜として輸入されたものですが,各地で野生化し,名前の通り穴を掘って生活するので,そのために起きる土壌流出が深刻化し,害獣扱いされています.
 

2012年2月8日水曜日

動物名考(13) カピバラ

カピバラ(Kapiyva),オニテンジクネズミ


Hydrochoerus hydrochaeris (Linnaeus, 1766)


(Capybara, Capibara)


カピバラは,英俗名の日本語表記です.
元は,南米先住民の言葉で[Kapiyva]=「草原の主」という意味らしい.それが,ポルトガル語では[Capivara]になり,スペイン語では[Capibara]と表記されるようになったようです.その後,英語化して[Capybara]になったわけですね(Wikipedia &ウィキペディア).
別の説では,やはり南米先住民の言葉で「カピグワラ[kapigwara]」=「草喰い」が,ポルトガル語表記の「カピバラ[capibara]」になり,さらにそれが英語化して「[Capybara]」になったといいます(新英和大辞典第6版).
さて,どちらを信じるべきでしょう(^^;.
印刷物である後者を優先すると,現地語の「カピグワラ[kapigwara]」(正確には,なんと発音するのかわからない)を採用すべきと思います.

別な和俗名で,「オニテンジクネズミ」というのがあります.
「テンジクネズミ」は,テンジクネズミ科に属する(下記)からでしょうけど,“オニ”はどうも….和俗名は,小さければ,“ヒメ”とか,“チビ”とか,大きければ,“オニ”とかつけることが多いのですが,センスが….疑っちまう….

さて,カピグワラの上位分類は以下のようです.

ordo: RODENTIA Bowdich, 1821[齧歯目]
 subordo: HYSTRICOMORPHA Brandt, 1855[豪猪形類(山嵐形類)]
  infraordo: HYSTRICOGNATHI Tullberg, 1899[豪猪顎類(山嵐顎類)]
  infraordo: CAVIOMORPHA Wood, 1955[天竺鼠形類]
   familia: CAVIIDAE Fischer de Waldheim, 1817[テンジクネズミ科]
    subfamilia: HYDROCHOERINAE J. E. Gray, 1825[カピバラ亜科]
     genus: Hydrochoerus Brisson, 1762 [Type: Sus hydrochaeris Linné, 1766]

familia: CAVIIDAEまでは,モルモットと同じなので省略.

亜科HYDROCHOERINAE は,hydrochoer-inaeという構造です.hydrochoer-は,属Hydrochoerusを語根化したもの.つまり「Hydrochoerusの亜科」ですね.

Hydrochoerusは,hydro-choerusという構造です.
hydro-は,ギリシャ語で[τό ὕδωρ]」=《中》「水」をラテン語の《合成前綴》化したもので「水の」という意味.
choerusは,ギリシャ語の[ὁ/ἡ χοίρος]=《男/女》「豚;子豚」をラテン語綴り化したもの.本来は,choirosですが,ラテン語転記の際,二重母音[-οι](-oi)は[-oe]になり,末尾が[-ος](-os)の場合,[-us]になるという「奇妙な」習慣があります.これは,ICZN:付録Bに「そうするように」という勧告がありますので,それに従うと,choirosはchoerusになるわけです(一方,ラテン語レキシコンにはchoerosという単語が明記されていますが,その変化を含めて解説は曖昧です).
合成すると,Hydrochoerusは「水のブタ」という意味.カピグワラが水好きである様子をよくあらわしていますね.

模式種はリンネが記載したSus hydrochaeris Linné, 1766なのですが,原記載の属名をみればわかるように,Susはラテン語で「ブタ」の意.カピバラは「ブタ」の仲間に見られてた!

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さて,genus: Hydrochoerus Brisson, 1762に属するとされる種を下記に,

genus: Hydrochoerus Brisson, 1762
 Hydrochoerus hydrochaeris (Linnaeus, 1758) [カピバラ、オニテンジクネズミ; capybara]: SA.
 Hydrochoerus isthmius Goldman, 1912 [lesser capybara]: CA.
 Hydrochoerus gaylordi MacPhee, Singer & Diamond, 2000(extinct) : Up. Plioc. SA.

hydrochaerisは,hydro-chaerisという構造です.
が,-chaerisという語はギリシャ語にもラテン語にも見あたりません.通常,hydro-が[τό ὕδωρ]=《中》「水」というギリシャ語ですから,-chaerisも,もとはギリシャ語のはずなのですが.
これは,実は,[ὁ/ἡ χοίρος]=《男/女》「豚;子豚」をラテン語綴り化するときの誤記もしくは誤植だろうといわれています.
[χοίρος]は上記したように,本来はchoirosになるはずですが,我々にはわからないルールによってchoerusと,ラテン語綴り化されます.ところが,リンネはしばしば-chaerisの綴りを使っているようなのです.

たとえば最近,帰化植物(外来種)として,あちこちに目立つ“タンポポモドキ”あるいは“ブタナ”という植物がありますが,この学名がHypochaeris radicata Linnaeus, 1753.
このHypochaerisの語根-chaerisは,しばしばその由来が話題になっています.
これも,誤記・誤植説が有力なのですが,複数あるということは誤記や誤植であるより,リンネがそう記述してある辞典を所持していた可能性のほうが高いのではないかと思いますが,どうでしょう.
なお,誤植だとしてHypochoerisと訂正してある論文・書籍もあるのだそうですが,そうすると,こんどは,どうしたら[χοίρος]をchoerisと綴ることができるのかということが説明できない.

手持ちの植物図鑑でブタナの学名を確認してみてください.
Hypochaeris radicata Linnaeus, 1753になっていたら,その図鑑は信用できないと判断していいでしょう.
ま,たぶん記載者名もしめされていないか「L.」となっていると思いますね.それは,学名の意味も知らず,いわゆるコピペでつくった「いい加減な図鑑」であるという証拠です.

話を戻します.
で,Hydrochoerus hydrochaerisは,強引に訳して,「水のブタ,水のブタ」.う~~ん.センスが….

種名isthmiusは,ギリシャ語の[ὁ Ἰσθμός]=《男》「首,細道;隘路,地峡」をラテン語綴り化したもので,どうやら,この種の模式地がパナマ地峡であることからきているらしいです.合わせて,「地峡の水ブタ」.凄い名前だなあ.

種名gaylordiは,不詳.
たぶん,古生物学者のGeorge Gaylord SimpsonのGaylordをとったものだと思いますが,原著に当たれないのでなんとも.
なお,この種は化石種です.
 

2012年2月7日火曜日

タニタの…

タニタの活動量計を使用しています.
購入してから,三ヶ月で3kg体重が減りました.

   


ただ活動量計をつけて,毎朝50g単位まで測れる体重計で体重を量っているだけです.とくに,ダイエットといえるようなことは,なにもしていません.

いえるのは,これをつけていると,自分がどれくらい動いているのかが把握できることです.
万歩計の機能がありますから,一万歩/日あるけば,たしかに使用すべきカロリーは消費することができます.しかし,一万歩あるくのは,けっこう大変なことです.体力よりも,時間が.
で,たくさん歩いたつもりでも,消費したカロリーは驚くほど少ないことにも気付きます.
一方,なにもしなくても,消費すべきカロリーは,けっこう消費されています.

結局,意識的に時間をとってウォーキングやジョギングをするよりも,日常の生活で,こまめに動いた方が,カロリーは消費されているみたいです.
これが理解できるので,つまるところ,この活動量計をつけていると,こまめに体を動かす習慣がつきますし,ご飯も少なめになるし,間食も余りしなくなるというわけです.
くわえて,微細な変動がわかる体重計で,自分の体重を把握しておくことが必要ですが.

結果,筋肉がついて,腹回りの脂肪が減りました.
と,いうよりも病気前の体形・体重に戻った.

血液検査の数値も,徐々に問題ない値を示すようになってきています.
気を抜けばきっとすぐに戻っちまうのでしょうけど.


皮肉なことに気がついてしまいました.
家を作るときなどに,家事の動線を考えて,調理台-冷蔵庫置き場-シンクの配置を考えるとか,いうように,システマチックにやると,無駄が省ける,無駄な動きがなくなるとか(>だから,いい.やるべきだと),いわれてきました.
でも,体のことを考えると,「無駄な動き」は「必要な動き」だったわけです.
いいシステムやリーズナブルなシステムより,無駄な動きを強制するシステムや不合理なシステムのほうが,実は人間という動物には,必要なものだったという不思議.

便利は不便.
不便は便利.
なにか,不思議な哲学.これって,陰陽思想?

動物名考(12) モルモット

モルモット


Cavia porcellus (Erxleben, 1777)


[Guinea pig, Cavy]


「モルモット」は困った言葉です.
モルモットは,実は日本語としかいいようがないのです.

“モルモット”が,日本に初めて輸入されたとき,まったく別の生きものである「マーモット[Marmot]」と勘違いされたうえで,訛って「モルモット」になったという説があります.したがって,この生きものは,英語でも「マーモット[Marmot]」とはいいません.
同様に,英俗名の「ギニアブタ[Guinea pig]」も,アフリカ経由の船でヨーロッパに持ち込まれたための誤解であり,“ギニア・ピッグ”はギニアには生息しません.
なんちぅ,不幸な動物だ((^^;).
和俗名は,別に「テンジクネズミ」ともいいます.こちらのほうが競合する名前,および混乱を誘発する名前がないのでいいのですが,困ったことに,「天竺」(=インド)に生息しているわけではないので,適切な名称とはいいがたい.
なんちぅ,不幸な動物だ((^^;).

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ちなみに,マーモット(アルプスマーモット)の分類は以下.

ordo: RODENTIA Brandt, 1855[齧歯類]
 subordo: SCIUROMORPHA[リス様類]
  familia: SCIURIDAE Fischer von Waldheim, 1817[リス科]
   subfamilia: XERINAE Osborn, 1910[ジリス亜科]
    tribus: MARMOTINI Pocock, 1923[マーモット族]
     genus: Marmota Blumenbach, 1779 [type: Mus marmota Linnaeus, 1758]
      Marmota marmota (Linnaeus, 1758)[アルプスマーモット; Alpine marmot]以下略

marmotは,もともと,ラテン語のmus montanus=「山のネズミ」だったのですが,ロマンシュ語の murmontを経由して,フランス語のmarmottになり,英語のmarmotになったといわれています.
それが,なぜ,属名すなわちラテン語化したときにMarmotaになったのかは不明.Musは《男性名詞》ですから,本来種名はmarmot-usだと思うんですが
蛇足しておけば,語尾-aは《女性形》.

どこかに間違いがあるのですかね….

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さて話を戻して,モルモットの上位分類は以下のようです.

ordo: RODENTIA Bowdich, 1821[齧歯目]
 subordo: HYSTRICOMORPHA Brandt, 1855[豪猪形類(山嵐形類)]
  infraordo: HYSTRICOGNATHI Tullberg, 1899[豪猪顎類(山嵐顎類)]
  infraordo: CAVIOMORPHA Wood, 1955[天竺鼠形類]
   familia: CAVIIDAE[テンジクネズミ科]
    subfamilia: CAVIINAE[テンジクネズミ亜科]
     genus: Cavia Pallas, 1766 [テンジクネズミ属]

目RODENTIAは,“ネズミ”目などとされている場合がありますが,RODENTIAという語のどこにも「ネズミ」の意味はありません.こういう混乱を起こすようなことは,やめてほしいと思うものです.
Bowdich (1821)の原著が入手不能ですので,どういう意味でつけたのか正確なところはわかりませんが,元は,ラテン語の「ロード[rodo]」=「齧る」と,《合成前綴》「デントゥ・[dent-]」=「歯の」を組み合わせたものに,《接尾辞》-ia=《中複》「~に属するものども」を合わせたものだと思います.したがって,昔から使われている「齧歯類」が正しい.

亜目HYSTRICOMORPHAはhystrico-morphaという構造です.
《合成前綴》hystrico-は,元はギリシャ語の[ὁ/ἡ ὕστριξ]」=《男女》「ヤマアラシ(porcupine)」で,その属格形[τοῦ/τῆς ὕστριχος]をラテン語綴り化したもの.
《合成後綴》-morpha《中複》も,元はギリシャ語で[ἡ μορφή]=《女》「形」をラテン語綴り化した上で,《中性・複数》語尾化したもの.
合わせて,「ヤマアラシ形類」ですが,ここでは漢字を使って「豪猪形類」としてみました.
「豪猪(やまあらし)」もしくは「箭猪(やまあらし)」は中国語らしいのですが,よくわかりません.
和漢三才図会にでている「豪猪」は(これは「本草綱目」からの引用ですが),絵はほとんどイノシシですが,「豪猪」を「やまあらし」と読ませていますし,説明は「ヤマアラシ」です.

下目は,上記したように二説あり.わたしにはどちらがリーズナブルなのか判断できませんので併記してあります.
HYSTRICOGNATHIはhystrico-gnathiという構造で,上記《合成前綴》hystrico-に,《合成後綴》-gnathi《男複》を合成したもの.意味は「ヤマアラシの顎を持つものども」です.ここでは,漢字を使って「豪猪顎類」にしてみました.
CAVIOMORPHAはcavio-morphaという構造です.cavio-は不詳.元はポルトガル語のsavia = ratが語源とか.語源はネズミですが,これは「テンジクネズミ属」に与えられた属名Caviaなので,「テンジクネズミの」として扱います.-morphaと合わせて「天竺鼠形類」としておきます.

科名CAVIIDAEは,もちろん,cavi-idaeで「天竺鼠の科」ですが,科レベルまで下がると,漢字表記はどうかと思いますので,「テンジクネズミ科」にしておきます.

CAVIIDAE-CAVIINAE-Caviaは同じ語源なので省略.

なお,Caviaが語源の英俗名Cavyは,Caviaには用いられていず,クイやヤマクイに用いられているという不思議.

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Cavia Pallas, 1766は,模式種が [type: Cavia cobaya Pallas, 1766]となっています.ところが,C. cobaya Pallas, 1766はMus porcellus Linnaeus, 1758の同物異名と判断されているらしく,結局,模式種はCavia porcellus (Linnaeus, 1758)になります.
なお,消えてしまった種名cobayaは不詳.
南米原住民の言葉で,Cavia porcellus (Linnaeus, 1758)そのものを指す言葉らしいです.それだったら,和俗名は「コバヤ」にするべきですよね.

porcellus は,ラテン語で「飼いブタ」意味する「ポルクス[porcus]」に《縮小詞語尾》-ellusがついたもの.つまり,「子ブタ」です.
属名のCaviaの語尾が-aなので,一見女性名詞のように思え,種名と“性の不一致”をおこしているように見えます.しかし,Caviaはもともとラテン語ではないので,判断不能.
下に,Caviaに属するとされる種のリストを挙げておきますけど,種名が《男性形》と《女性形》が入り乱れていますね.こんな場合は,属名Caviaを提案した人が,その属名が男性なのか女性なのかを指示してあるはずなのですが,原著が入手できなければ,こんなこともおきますね.さて,原著ではどうなっているのでしょうかね.

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Caviaに属する種については,下記のものがあるとされています.怪しげなのもあるようです.

genus: Cavia Pallas, 1766 [type: Cavia cobaya Pallas, 1766 (= Mus porcellus Linnaeus, 1758)]「テンジクネズミ属」
 Cavia porcellus (Linnaeus, 1758) [モルモット ; Domestic Guinea Pig]: wild ancestor unknown
 Cavia aperea Erxleben, 1777 [Brazilian Guinea Pig]: widespread east of the Andes
 Cavia fulgida Wagler, 1831 [Shiny Guinea Pig]: eastern Brazil
 Cavia tschudii Fitzinger, 1867 [Montane Guinea Pig ]: Peru south to northern Chile and north-west Argentina
 Cavia guianae Thomas, 1901[often considered a synonym of C. porcellus]: Venezuela, Guyana, Brazil
 Cavia anolaimae Allen, 1916 [often considered a synonym of C. porcellus]: Colombia
 Cavia magna Ximenez et al., 1980 [Greater Guinea Pig]: Uruguay, south-east Brazil
 Cavia intermedia Cherem et al., 1999 [Intermediate Guinea Pig]: Moleques do Sul islands, Santa Catarina, Brazil, first described in 1999
 

2012年2月5日日曜日

東大話法

東大話法なるものがあるそうだ.
面白そうなので,購入しようかと思ったが,そんなのを憶えて,つい,使ってしまったら,恥ずかしくて死にたくなるに決まっている.

     


ニヤニヤ笑いながら,人を見下した態度で「素人はこれだから困る」とやるような人間にはなりたくないモンね.

p.s. カスタマーレヴュー上の論争も面白い!

2012年2月4日土曜日

動物名考(11) ワシミミズク

ワシミミズク(鷲木菟)


Bubo bubo (Linnaeus, 1758)


[Eurasian Eagle Owl]


ワシミミズクの上位分類は,フクロウと同じなので,そちらを参照のこと.
「ミミズク」という言葉は,一般に角のように見える「羽角(角羽?,どちらが正確なのかわからない)」のあるものを指しますが,これは系統分類やDNA分類と関係があるという情報はなく,「羽角」の存在がなにを意味しているのかは不明です.
つまり,ミミズクは分類用語としては意味がない.

その上で,日本で見られるフクロウの仲間で“ミミズク”といってもいい鳥には,以下の属種があります(ただし,「羽角」か「角羽」かがはっきりしない様に,この「羽角」も典型的な場合は,目視で判断ができるけど,単に盛り上がっている程度のものをそう判断すべきかどうかはわかりません).

genus: Asio Brisson, 1760 [type: Strix otus Linnæus, 1758]
 Asio otus (Linnaeus, 1758) [トラフズク; Long-eared Owl]
 Asio flammeus (Pontoppidan, 1763) [コミミズク; Short-eared Owl]

genus: Otus Pennant, 1769 [type: Otus bakkamoena Pennant, 1769]
 Otus scops (Linnaeus, 1758) [コノハズク; Eurasian Scops-owl]
 Otus lempiji (Horsfield, 1821)[オオコノハズク; Sunda Scops Owl]
 Otus elegans (Cassin, 1852)[リュウキュウコノハズク; Ryūkyū Scops Owl]

つまるところ,どれかの種あるいは属に「ミミズク」という言葉を当てはめることも不可能のようです.ただし,和俗語で「~ミミズク」は「ワシミミズク」と「コミミズク」だけのようですけどね.
和漢三才図会の「木菟」の記載は「ワシミミズク」を指しているようですが,専門家はどう判断するのでしょうか.訊いてみたいところです.

なお,三属とも,ほかに世界中にたくさんの種が分布しています.面白いのですが,割愛.

ミミズクもメンコイ((^^;)

Buboは,ラテン語のbubo (būbo)=《男》「フクロウ;ミミズク」をそのまま学名としたもの.
模式種はStrix bubo Linnaeus, 1758ですから,ワシミミズクそのものが模式種です.
Strix bubo Linnaeus, 1758は,Bubo Duméril, 1805の模式種ですから,Bubo bubo (Linnaeus, 1758)に訂正されてます.こういう,同じ単語を重ねるのは,学名では希にありますが,この場合,種名のほうは属格を使ってBubo bubonis もしくはBubo bubonusのほうがスマートなような気がします.現行だと「ミミズク・ミミズク」ですが,訂正すると「ミミズク(の中)のミミズク」で,「属名を種名が説明する」=「名詞を形容詞が修飾する」という原則に従っているからです.
ただ,“性の一致”にはうるさいのに,他の文法的不都合や誤字・誤植はそのまま使うという不思議なルールがあるので,修正は無効として扱われるでしょうけどね.

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【蛇足】
Asioは,ラテン語のasioが語源で,英語では[horned owl]といいますから,「ミミズク」そのものを指しているようです.
種名otusは,ギリシャ語の[τό οὖς]」=《中》「耳」の属格で[τοῦ ὠτός]」=「耳の」をラテン語綴り化したもの.属名と合わせて,「耳のミミズク」という意味.この場合は「耳のフクロウ」のほうがいいかもしれません.
flammeusは,「火炎の,引火性の」という意味のラテン語.属名と合わせると「火炎のフクロウ」という意味.胸のあたりの模様が「火炎」のように見えないでもないですが,色は「火炎」とは….

蛇足2
Otusは,上記種名に使われたotusを属名にしたもので,「耳」ですね.やっぱり,「ミミズク」なんだ((^^;).
scopsは,ギリシャ語の[ὁ σκώψ]をラテン語綴り化したもので,意味は「小型のミミズク;とくにOtus scops (Linnaeus, 1758)」を表します.つまり,ギリシャ語で呼ばれていたものをそのまま学名としたわけですね.
lempijiは,不詳.-iがついていますから,通常は人名の形容詞化ですが,その人物が不詳です.
elegansは,ラテン語の「エーレガンス[elegans]」=「優雅な,完全無欠の」です.属名と合わせると,「優雅な耳」という意味になります.

2012年2月3日金曜日

市立大学の夢

新年度から,東海大学旭川キャンパスが募集停止になる.
いい機会だから,設備を貰いうけて,旭川市立大学を開校するといいと思う.

道内でも,人口の多い市には市立大学がある.函館,名寄,釧路など.しかし,“道内二番目の人口を誇る”(市のエライさんはそういういい方をする)という我が市には市の大学がない.

医大と教育大があるが(もちろん,これは市の持ち物ではない),これはある意味大学ではなく,医師養成所と教員養成所である(失礼は十分承知です(^^;).旭川(あるいは上川)という地域を支える学府ではない.
はっきり言わせてもらうと,旭川では,大学を出たうえで地域に尽くそうなどと考えても,医者と教員しか職業を選べないのだ(しかも,実際の学生のほとんどは,旭川あるいは上川出身者ではない:原因はセンター試験).

旭川市立大学だから,旭川市民であれば学費は半額だな.倍払ってもいいというのであれば,よその地域から来てもいいことにする.上川盆地内・富良野盆地内・名寄盆地内出身であれば,2/3ぐらいの学費?

学部は既成のものではなく,旭川あるいは道北の自然と環境を生活と産業に結びつけることができる新しい学問体系とする.旭川学,北海道学など.
観光やら自然ガイドなんかも,体系化すべきだろうな.

今後重要な輸出品目となるだろう芸術・文化もいいな.アイドル養成課とかお笑い養成課は必須でしょう.
アニメや映画,ゲーム作成も有望でしょうね.

などと妄想していると,旭川に戻ってきた直後のことを思いだしてしまった.
旭川に新しい短大ができるということで建物ができた.直後,パチンコ屋に改造され,その後,葬儀屋になった.まさか,旭川の将来を予言しているのじゃあ…と,思った.
文化のない街だものなあ….

粉雪…

粉雪が
 降らぬが如く
  降るが如く

宮武無骨


窓から外を眺めると,曇天だが雪は降っていないように見える.
しかし,よく見ると,細かい雪が気配も見せずに静かに落ちている.

最近あまりに寒いので,雪も結晶をつくる暇がないのか,サラサラの粉雪が静かに落ちてきます.
除雪の必要もないぐらいしか溜まりませんが,集めてみると,意外と多い.
こんな日は,外にいると,顔が痛くなってくるし,指が痺れてくる.靴が鳴る.
それにしても,子どもたちは元気だなあ….
 

2012年2月2日木曜日

鎚の音…

鎚の音
 空き家が消えて
  賃貸へ

宮武軟骨


地方都市(いなかまち)では,住民の高齢化が進み,あちこちに空き家が目立っていました.このあたりは,市内では比較的古い住宅街なものでね.

数年前から,空き家だった古い住宅が壊され,次世代の住宅が建つのかと思っていたら,建つのはまず100%のところ「~~建託」のアパートです.
旅だった子どもたちは,みな大都市に流れ,生まれた土地には戻ってこない.子ども時代の思い出はあるから,なかなか手放しにくいということはありますが,親が死んだら,残った土地は税金がかかる負担があるだけ.
だから,「~~建託」は渡りに船のわけです(たぶん,子ども世代にとっても危険な罠じゃあないかという気はしますけどね).
おかげで,一軒家より,アパートのほうが,はるかに多くなってしまった.

一見したところ「新しい住人が移入してきて,街に活気が戻るかな」と思ってたら大間違いで,街(コミュニティ)がどんどん壊れてゆきます.新しい住民はコミュニティに参加しない.挨拶すらしない.一方で,昔から町内会が整備してきた環境を当然のように使用する.
ここでは,老人が若者のお世話をするボランティアと化しています.
道・市公報の配布.ゴミステーションの管理.下水道の掃除.街灯の整備,電気代の徴収・支払い.市道の管理.
お役所は町内会を市の下部組織のように扱う.いろんな雑用が舞い込む.しかし,ほぼ限界で,町内会を把握していても住民を把握しているとはいえない状態にある.

「建託」がどんどん増えているので,新築でないと借り手がないようになりつつあります.
たくさんあるアパートのほとんどが,空室状態なのです.
ただでさえ,若い夫婦は共働きで,日中は街に人がいない.
町内会の仕事で訪問しても,室内に人のいる気配がしても,返事はないのが普通です.かといって,夜の訪問も,明らかに迷惑がられる.
アパートの周りは,ゴミだらけ,雑草だらけ.踏み分け道をつくる以外は除雪しないから雪の山ができる.管理業者は,たまにアパートの駐車場の排雪をしているが,その雪はすぐそばの歩道に積み上げるか,橋の上から川に投げる(おかしなことだが,重機に「市委託」のプレートがついてたりする).
自然,古くからの住人と,アパートの住人とは,なんとなく敵対関係が生じる.

「時代の流れ」と,いってしまうのはたやすいですが,では,新しいタイプのコミュニティができあがりつつあるのかというと,そうではない.単なる無法地帯と化しつつあるのです(あるいはスラム化?).
3.11のような地震や,その他自然災害など起きたら「絆」などといっておられるのだろうか.と思わせます.

「限界集落」は“ド田舎”にだけあるのではなく,地方都市の住宅街も「ほぼ限界集落」なのです.
住民はいるというのに.
 

2012年2月1日水曜日

動物名考(10) エゾフクロウ

エゾフクロウ(蝦夷梟)


Strix uralensis japonica (Clark, 1907)


[Yezo owl]


エゾフクロウは,かなり困った言葉です.
Clark が1907年に,この亜種を記載したとき,Jesso(蝦夷=北海道)産のフクロウにSyrnium uralense japonicum Clarkとし,Hond(本土=本州;この場合の模式地はIwaki)産のフクロウをSyrnium uralense hondoense Clarkとしたようです.
まあ,蝦夷産のものをjaponicumとするセンスも困ったものですが,島ごとに亜種を創ろうという細分主義も困ったものです.
標本から,亜種を判定する明瞭な方法も見あたらないし….

ということで,「エゾフクロウ」というものは存在しないという前提で進めさせていただきます.つまり,以下.

フクロウ(鴞・鴟・梟)


Strix uralensis Pallas, 1771


[Ural owl]


まずは,genus Strix Linnaeus, 1758の上位分類についてですが,下記をご覧になればわかるようにきれいにそろっていますね.

ordo: STRIGIFORMES Wagler, 1830
 familia: STRIGIDAE Vigors, 1825
  subfamilia: STRIGINAE Vigors, 1825
   genus: Strix Linnaeus, 1758 [Type species: Strix stridula Linnaeus, 1758]

リンネが属Strixを創ったときの模式種はStrix stridula Linnaeus, 1758らしいのですが,これは,Strix aluco Linnaeus, 1758 [Tawny Owl]のシノニムとされているらしい.どうやら,alucoのほうが先の頁に書かれているということで,Strix aluco Linnaeus, 1758が生き延びているようです(正確なところは,記載論文が見つからないので不詳).そうだとすれば,誰か修正案をキチンと論文にしとけや!

さて,属名Strixは,ラテン語のstrixをそのまま学名としたものです.
ただし,ラテン語の辞書には,strix = screech-owl=「コノハズク類のミミズク」とありますが,フクロウは通常,角毛のないものを指しますので,辞典には齟齬があります.ラテン語のstrixは,ギリシャ語の[ἡ στρίξ]=「フクロウ」を語源とするもので,こちらは単に「フクロウ」になっています.
英語ではフクロウとミミズクは区別しないようですから,ラテン語辞書>英語辞書>和訳という経路に無理があるので,区別すると間違いが入りこむのかもしれません.

《合成語》《属名》Strix = strix=「フクロウ(属)」
《合成前綴》には,strixの属格であるstrigisの語根strig-=「Strixの」が使われます.

以下,
《合成語》《亜科》STRIGINAE = strig-inae=「Strixの」+《亜科》
《合成語》《科名》STRIGIDAE = strig-idae=「Strixの」+《科》
《合成語》《目名》STRIGIFORMES = strig-iformes=「Strixの」+「~の形をした」=「フクロウ形類」

種名uralensisは,もちろん「Ural産の」という意味.
実際には,ヨーロッパ・アジアに広く分布し,東はサハリン・日本・朝鮮半島,西はスカンジナビア半島までいるといいます.それほど移動が激しい鳥とも思えませんので,地域によって遺伝子の偏りはあるのかもしれませんね.しかし,それが亜種を設定できるほどの違いかどうかは,論文が見あたらないのでわかりません.

Strix uralensisの和俗名は「フクロウ」です.
和漢三才図会の項目は「鴞」となっていて,別名「梟鴟(きょうし)」などがあげられています.しかし,本文(解説)中には「梟」が使われていて「梟の字は鳥の首を木の上にのせる」とあります.フクロウは“親不孝”な鳥なので,木の上にさらすからだそうです.わたしには,単に木の上に止まったまま動かない鳥であることを示しているような気がします.
北方では,不吉な鳥としてこれを怪しむが,南方では家禽として飼育し,ネズミを捕らせると猫よりも獲ると評価されています.人間の評価なんて勝手なモンです.

フクロウはメンコイですよね((^^;).
なお,genus Strixの日本産種はStrix uralensisだけなので(亜種は無視します),genus Strix所属種は無視します.