2010年10月30日土曜日

小山内煕さん

 
 例によって,古いノートを整理しています.
 穂別地域の地質についてメモしているノートが出てきました.

 最初に書いてあるのが,つぎの論文でした.

小山内煕・石山昭三・松下勝秀・三谷勝利・高橋功二(1967)石狩炭田南部穂別炭鉱地域の地質.
北海道地下資源調査資料, 109号.

 報告書の内容は,表題の通り,穂別炭鉱付近の地域地質について,です.
 この地域は,地質学史から見ても重要な地域です.まだうまくまとまっていませんけど.


 わたしが学生のころ,小山内さんにはアルバイトで大変にお世話になりました.
 アルバイトの雇い主でした.
 このころは,某・地質コンサルタントの偉い人でした.古いタイプの地質屋の臭いのする人で,とてもすてきな人でした.地質屋には,こういう魅力的な人たちがたくさんいたので,わたしは一生地質にかかわって生きていたいと考えてたんですけどね….

 小山内さんは,この報告書のころは,道立地下資源調査所(現・道立地質研究所)にいらしたのですね.どうして,地質コンサルタントに転職されたのでしょうか.北大で教授をやってても不思議はない人だと思いますけどね.
 亡くなられてから,もうだいぶ経ちますね.生没年もわからない….地質図の生みの親といわれるスミスと英国地質学会の関係を想い出します.

 どうせなら,小山内さんの業績をまとめておこうと,論文・報告書などを検索すると…,出るわ出るわ,凄まじい量です.簡単にはまとまりそうもない.これは,おいおいやってゆくことにします.
 小山内さんは,道内のたくさんの五万分の一地質図幅および説明書に関係していらっしゃいますし,地下資源調査所の報告書類も毎年のように出されています,そのどれもが北海道の地質にとって重要な資料です.それは「論文」ではなくて「報告書」.いかにも北大地鉱教室出身.ライマンの末裔ですね.
 たぶん,これらをまとめたら,北海道の一時代の地質研究史が浮かび上がってくると思います.楽しみのひとつです.


 あるとき,小山内さんがポツリと,こうつぶやきました.
 「俺は,息子に裏切られた」
 “へ?”と思いながら,小山内さんの顔を見ると,別に裏切られて悔しいと思っている人の顔ではなかったような気がしますが….
 そのときのわたしには,それがどういう意味だったのかは,理解できませんでした.
 いまは,なんとなく.


 小山内さんの息子さんは,現在,某大学大学院の教授をなさっています.日高山脈中軸部の変成岩類の研究で著名な方です.
 「日高造山運動」なるものは存在せず.
 日高山脈は,ただ,プレートのせめぎ合いによって偶然できたものに過ぎないと塗り替えられていった時期に,日高山脈の地質を研究されていた方です.いまも生き残っているのだから,どういう立場の人かは理解できるでしょう.

 そして,小山内・父といえば,湊・舟橋両教授の健在なころの北大地鉱教室出身.もしかしたら,親子二代で地向斜造山論からPT論への葛藤があったのかもしれません.
 小山内・父子は二人とも日高山脈周辺の地質を研究されてますからね.
 そのあたりは,小山内・ジュニアに記録を残しておいてもらいたいものです.当分,公表はしないにしても….


 わたしは,小山内さんがうらやましいです(わたしには,路を開いてくれた親もいなければ,志をついでくれる子もいない:雑草は雑草ということ).
 地質学に一生を捧げられただけではなく,親を乗り越えてゆく立派な息子まで育てたのですからね.小山内さんの「俺は,息子に裏切られた」という言葉は,むしろ,「息子は俺を越えていった.その息子を誇りに思う.」という意味だったのかもしれません.
 

2010年10月28日木曜日

「お馬鹿タレント」と「東大タレント」続き

 
 大学入試は制度疲労をおこしてるみたいですが,大学そのものも制度疲労をおこしているようです.

 歪んだ大学入試が高校の授業を歪め,たくさんの教科が選択になりました.
 そのため,ほとんどの大学では,第一年目の学生に高校の補習授業を行っているそうです.なぜって,なんの話をしても,「あ,日本史とってない」とか「あ.世界史とってない」とか,「あ,物理とってない」とか,「あ,生物とってない」という学生が必ずいて,授業にならない(もちろん,地学を選択した学生なんて皆無に等しい).
 学生のレベルを合わせないと,大学でやるような多少なりとも専門的な授業は不可能ということです.

 某大学で,しばらくの間,地学系の授業の非常勤をしてましたが,近代地質学の成立の話をしたら,授業についてのアンケートに「なんで,地学で歴史の話をするのか」と抗議の声がありました.
 わたしとしては,「西欧では産業革命が近代地質学を成立させた」,「日本に近代地質学が入ってきたのは,明治維新前のことで,この北海道が最初である」という話を授業のイントロに使ったつもりですが,高校では歴史が選択科目になってるので,基礎知識がなく,感情的に拒否反応を起こしたものらしいと,いまは思っています.

 たぶん,それとおなじ様なことが,すべての分野で起こっているのでしょう.
 大学レベルの授業を行おうとしたら,まず,高校程度の授業をやりなおして,学生のレベルをそろえてからでないと授業にならない,ということなんでしょう.


 就職氷河期といわれてい久しい現在,酷いことに,大学生は四年生になると,大学の授業なんかそっちのけで就職活動をはじめるそうです.
 つまり,四年生大学で大学レベルの授業を行えるのは,たった二年間ということになります.大学の短大化ですか.

 やってたのが非常勤で,それをしなくなってからも久しいので,実情は噂で聞くばかりですが,なにか,大学で授業をするというのは,わたしにとって非常に「おもしろいこと」だったのですが,「また機会があったらやってみたい」というその「欲」がなくなっている自分に気付きました.

 と,いいつつ,たのまれればなんでもやりますけどね((^^;).
 

2010年10月27日水曜日

「お馬鹿タレント」と「東大タレント」

 
 一時期の「お馬鹿タレント」ブームは過ぎ去ったようですが,「お馬鹿タレント」といわれた人たちは,相変わらず活躍してるようで,ご同慶の至りでございます.
 って,私の方には関係ないか((^^;).

 彼らは,「お馬鹿」といわれている割には,才能豊かで,頭の回転も速く,「頭がよいとはどういうことか」を考えるについての,すごく良い材料だと思いますね.
 彼らは,本当は「頭がいい」のだと思いますね.
 あの,頭の回転の速さは,だだものではありませんね.
 ただ,「学門方面」については,ほとんど訓練がなされてないので,その回転の速さも正解に結びつかず,突拍子もない結論に結びつき,そのギャップが笑いを誘うということですかね.

 彼ら,あるいは彼女ら自身が好きなことについては,とんでもない知識を持っていそうです.ただ,TV(こちらこそ「お馬鹿TV」ですよね)では,それを披露しても,うけそうもないので,やらないということですか.

 小学校・中学校時代は,どのように過ごしていたのでしょうか.気になるところです.
 彼らは,一種の天才なので,普通の授業では,頭に入らなかったのかもしれません.現在の義務教育の画一的な授業のあり方を考える材料にもなりそうです.


 さて一方で,我が国の“最高学府である東大”の学生あるいは卒業生がTVタレントとして,時々出ているようですが,彼らの,思ったより(東大ということで)頭の回転の悪さ,常識のなさに,「オヤッ」と思った人はいないでしょうか?
 最近は,特にその思いを強くしています.

 これは,大学の入試制度のせいだと思います.

 現行の入試制度は,受験生の現在の能力を測るものではなく,受験生の将来性を測るものでもないからです.
 ひたすら,受験テクニックを「細かく」測定するものでしかないのですね.
 それは,親が金をかけて,家庭教師を付けたり,塾に通わせたりすれば,身につくものです.本人の素質ではない.

 共通一次やその末裔が,学問の滅びにいたる道筋をつけている.しかも,今やかなり巨大な路になっている.
 そんな感じですね.

 もうすでに,かなりの数の,受験テクニックだけで東大に入り,お役所に入って,高級官僚になった人が出ているはずですから,お役所,国のやることがちぐはぐなのも….
 悲しいね.間違いであって欲しい.

 

2010年10月25日月曜日

そこそこオーディオ pt. ii

 
 復活させたステレオシステムの音には満足してるのですが,なにしろ20年近く前のものです.自分では,けっこう贅沢したつもりの機器です.しかし,時代に合わないこと,はなはだしいのですね.とくに入出力関係が….しからば,なにか適当な機械はないものかと…あさってみるのですが,よくわからない.

 オーディオの特集を組んでいる雑誌を何冊か購入して読んでみると…,もっと酷いことになりました.どれも,わたしの身分で購入できるような金額じゃあないのですね.オーディオ評論家なるひとたちがいて,凄まじいことをいっています.CDプレーヤー,アンプ,スピーカーの最低限のシステムでも30万円はかけないと音にはならないそうで,普通で50万円は必要だとか.それだけではダメで,専用のオーディオルームも必要だとか.
 なにが評論家かね.そんだけの金額を出したら,いい音が聞こえてあたりまえなんで,別に評論家の意見を聞く必要もないですね.
 おまけに,いっていることがよくわからない.
 なにか,疑似科学やオカルトのひとたちの言葉使いに,非常によく似ているような気がします.
 一見科学的な言葉を使ってるようですが,なにかちがう.理解できる言葉・論理が,ほとんどないんですね.明らかに「おかしなこと」も出てくる.

 しからばと,「オーディオ」と「オカルト」でGoogleすると,出るわ出るわ.
 そうか.オーディオ界とは,オカルトの世界だったんだ.
 と,納得(ためしにやってみてください(^^;).

 ま,趣味の世界ですから,お金をかけたい人は,それは好きにやってもらってかまわないんですが(たとえば,スピーカーコード:一本ン万円とか(・0・) (O_O) (@_@;)),わたしが思っているような,「リーズナブルな音と金額の最低限はどれか」などということガイドしてくれるオーディオ評論家はいないようで(ひょっとして,わからないということかな?).

 たとえば,某商品価格サイトで,売れ筋のオーディオ機器を調べてみると2~3万円というところで(もちろんこれは,ミニコンポ,セットコンポといわれるものですね),たまに4~5万円.かなり贅沢してるかなというところで10万円程度ですね.
 評論家さんと現実とは,大きなかい離がありますね.
 結局,アンプ一台50万円なんてものを購入するのは,わかっていてやっている「よっぽどの好き者」か,あるいは「洗脳されたかわいそうな人」ということになるのでしょうか.

 これでは,コンポーネントステレオで音楽を聴こうという人はいなくなって,みな,イヤホンにメモリカードというスタイルになるもの無理はありませんね.これなら,本体は1万円そこそこで入手できるし,あとの予算はソフトウェアの購入に回すことができますからね.

 もうしばらくたてば,必然的に,スピーカーを普通にならす,なんて技術は死に絶えてしまうかもしれませんね.
 

2010年10月24日日曜日

そこそこオーディオ

 
 最近,ますますTVがつまらなくなってきたので,独りでいるときはTVを消して音楽を聴いていることが多くなりました.

 最近のTV番組は,どうしてこんなにつまらなくなってしまったのでしょうね.
 ッて,原因は明らかですね.不況をいいわけに,お手軽番組しか作らなくなってしまったからですね.音楽番組もないし.映画も新作宣伝用以外は,ほとんどなくなった,ドキュメンタリーなんて,最近は見たこともない.科学番組・教育番組と称するもののほとんどは,あるある系ですしね.
 お笑いタレント集めて,お笑いではなく,スタントマン代わりをさせて,戸惑う姿を写して喜んでいるなんて,作る側も見る側も最低ですね.お笑いをさせろ!お笑いを!

 TVには,まったくお金を使いたくありませんが,地デジ騒ぎで,強制的に使わされてしまいましたね.まったく不愉快ですね.今度はどんな手で無駄なお金を使わせる気でしょうね.企業代表政府は….エコカー補助金(=無駄な政策)は,おわってよかった.どこが「エコ」なんだ?


 物置に放り込んだままだったステレオシステムを,今年の二月に,10数年ぶりに仕事部屋に復活させたら,ほぼ同時期に,血圧がドラスティックに下がったという不思議な現象がありました.以来,若いころに買ったアナログレコードのCD化版をさがして購入するということをやってました.
 さがせばいろいろあるモンです.
 こういうときは,「ネットで通販」は強い味方ですね.

 ジャズのCDは,だいたい満足するぐらいあって,とりあえずは購入する気はないのですが,若いころに聞いていたレゲエは,ほとんどアナログレコードしかもっていなかったので,さがしてみました.そうするとボブ・マーレィの復活盤なんて,大量にでてるじゃあないですか!.思わず,たくさん,あさってしまいました.
 「Kaya」なんか,聴いてると涙が出てきますね.
 「Exodus」,「Survival」は,元気が出る(カラ元気に近いですが…(^^;).
 ライブのCDがこんなにでているとは思いませんでした.これはむかしもっていたアナログレコードと同じものだけじゃあなくて,いろいろ購入((^^;).「Africa」はちょっと録音が残念だけど,「In Japan」や「at the Roxy」は十分満足できます.とくに「at the Roxy」のdisc twoはいい.
 もちろん,本家本元の「at the Lyceum」は鳥肌が立つくらい.「Babylon by Bus」もいいなあ((^^;).
 Bob Marley 万歳!

  

  




 サード・ワールドもいくつか発見しましたが,入手不可能なものも多いです.一番聴きたいのが,ない!(悲しい).
 しょうがないので,それはベスト盤をプラスしてガマン((--;)

  

 スティール・パルスは,むかしもっていたアナログレコードと同じものはとりあえず入手しました.

  


 そんなことをやっていたら,ついに,まずいものを発見してしまいました.
 それは,カルメン・マキ&OZの「ライヴ」(アナログレコードのときは「ラスト・ライヴ」だったと思いますが…).ロックはあまり聴かないのですが(とくに和製ロックは,ただのうるさい歌謡曲ですからねえ…),これは別((^^;).ロックです!(ただの,「思い込み」,「思い入れ」のたぐいですけどね(^^;).
 気がついたら,買ってました((^^;).

  


 あ,肝心の「そこそこオーディオ」に行き着かなかった((^^;)

 

2010年10月20日水曜日

アモンナイトに関するノート

 
 本棚付近が乱雑になってきたので,整理していたら,むかしやっていた「アモンナイト*分類に関するノート」がたくさんでてきました.

 博物館に勤めるようになってから,まもなくでしたが,大学の先輩から電話があって,「アンモナイトに関する普及書を書いてみないか」と誘われたのでした.いっしゅん食指が動きました.「博物館に勤めたら,当然そういう仕事ができるんだろう」と期待していたからです.
 でもその頃はすでに,就職した“博物館”が博物館としての機能をもっていず,「普通の博物館として存在する」までにも,相当時間がかかるだろうと思い始めていたころでしたから,「残念だけど…」と,断ってしまいました.

 それでも,いつかはそんなことができるようになるだろうと,あきらめきれずに,密かに空き時間を見ては,書きためていたノートでした.その博物館は長頸竜化石の発見を発端としてつくられた博物館でしたから,当然,同時代の古生物である「アモンナイト」も大量に“保管”されていました.
 「収蔵」といわずに「保管」としたのは,分類・整理もされずに「ただおかれて」いただけだったからです.採取地や採取者も判然としない「化石」が乱雑に積み上げられていたのでした(ただの納骨堂ですね).(ちなみに,研究もせずに,発見された資料を展示しているだけの博物館を「墓標型博物館」といいます.「~~文学館」とか「~~記念館」ってのは,たいていその典型です)

 これを「博物館に収蔵されている」といえるようにするまでには,実際に仕事を始められるようになってからも,3~4年かかりました.実際にというのは,なにせ,「収蔵品の整理・管理は博物館(=学芸員)の仕事である」ということを館長をはじめ教育長など役場の人たちは,まるで理解してなかったから,できなかったのです.
 学芸員の仕事といえば,図書館長と町史編纂室長を兼ねている博物館長の雑用係と考えられていました.だから,本来の博物館(=学芸員)の仕事である収蔵品の研究や整理,それからそれが進んでゆけば,当然考えられてくる系統的な資料の収集なんてことは,当初は夢のような状態でした.
 化石の採集に山に入っていたら,役場では「学芸員は遊んでばかりいる」と噂になっていたのにはビックリしました(誰が噂の元かは見当がつきますね.同様に,化石の整理のために論文を読んでいたら「学芸員は研究ばかりしている=役場職員としての仕事をしていない」といわれたものです:しょうがないので,こういうことは,ほとんど自宅で夜にやりましたね).

 あ,また血圧があがってきた((^^;).

 話を戻します.
 そんな中で書きためたものですから(いまから見れば非常に中途半端なものですが,書き込みをみると必死なようすがわかります(^^;),棄てるに棄てられず,とりあえず,いま,PDF化しています(役に立つ日が来るんだろうか.もう,すでに「日暮れて路遠し」の状態だというのに(^^;).
 そんな中に,松本達郎九州大学名誉教授からきた手紙が入っていました.あるアモンナイトを調べているときに,どうしても記載論文がみつからず,直接,松本名誉教授に問い合わせたときの返事です.
 それには,「それはnomen nudum**で,そのまま使っており,すべてわたしの責任です」と書かれてありました(やべ!,逆鱗に触れたかな(^^;:だれも,若いころは怖いもの知らずなモンですね).

 その後,博物館を訪れたアモンナイトの研究者の一人は,「アモンナイト分類の再編成を早急に行わなければならないのだが,M教授存命のうちは不可能だろう」といってました(理由はご想像ください).
 松本名誉教授は,昨年なくなられましたが,アモンナイトの分類が整理改訂されるとは思っていません.なぜなら,時代が変わって地質学が滅びたから,生層序学(とくに大型化石による)なんて,もう学問のうちに入ってませんし,地層の時代を知りたければ,微化石か物理化学的手段で行われるのが科学的(現代的)と思われているからです.
 したがって,いま,正当な職場についているアモンナイト研究者なんて存在するのかどうか….いたとして,アモンナイト分類の再検討なんていう研究が,研究として認められるはずはないと思われますしね.

 よっく,考えてほしいのですが,アマチュアでアモンナイトに興味を持っている人は,まだ,たくさんいますし,子どもたちが最初に科学に興味を持つのは,化石を集めるとか,鉱物を集めるとか,昆虫を集めるとか…,そういう「博物学的」行為からなのです.
 科学技術立国をめざすなら,最先端科学を優遇するのもいいのかもしれませんが,まず,基盤をしっかりさせないとね.そんなんだから,たくさんのひとたちが,科学の世界からはじき出されて,どんどん増殖している疑似科学やオカルトの餌食になってしまうのですね.

 IT長者になりたがる子らより,何げない自然の不思議に気がついて,目を輝かせている子どもたちのほうが好きですね.

 「飛び出せ!科学くん」エライッ!
 田中,ガンバレ!
 しょこたん,ガンバレ!!((^^;)

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* アモンナイト:一般的には「アンモナイト」と表記されていますが,これは“和製”英語(もしくはただの日本語).Ammoniteですから,「アッモーン・アイト」が本当ですが,英語では「アモナイ」,もしくは「アモンナイト」のほうがより正確なのです.

** nomen nudum:記載無しで使われている学名.本来あり得ない事態ですが,科学的でない事情により,しばしば「ある」ことでもあります.
 

2010年10月15日金曜日

キノコ pt. ii

 
 キノコといえば,博物館時代におもしろい先生にであいました.
 地元の高校の先生として赴任していらした方です.

 出会いはといえば,そこの不良高校生が,我が家のテント式の車庫に入り込み,たばこを吸ってあちこちに穴を開けたので学校に注意をうながしたら,あやまりにやってきたのがその先生だったのです.
 地元の子どもたちの名誉のためにいっておけば,その不良高校生は地元の子供たちではありません.学生数の減少した地域は廃校にするという道の方針があり,そのための対策として,他地域では受け入れられない高校生を入学させたためです.
 そして,その高校生のための通学バスの待合場所が,なぜか我が家の前だったということです.

 話を戻します.

 その先生は植物の専門家で,とくにキノコが好きだったらしい.

 その先生によれば,毒キノコというものはほとんどなく,ほとんどのキノコは食べられるのだといいます.ただし,食べてもうまくないキノコが多いのも事実だそうです.

 毒キノコかどうか知りたければ,食べてみるのが一番だといいます.
 口に含むと,毒キノコは「苦い」か「しびれる」のだそうです.そしたら,吐き出せばよいということです.飲み込んではいけません.
 口に含んだだけで即死,なんてキノコは日本ではまだ発見されていず(世界ではどうか知りませんが),吐き出してうがいをしておけば大丈夫といいます.

 それよりも,名も知られていないキノコで意外な効果のあるものが間々あり,それを体験するのがおもしろいといいます.
(すごいな.このひとは研究者でしょ.高校の先生にしておくのはもったいない.)

 いわゆる麻薬はもちろん,その辺に生えているタイマやケシ*は法律で栽培を禁止されてますし,野生のものをもってるだけでもやばいことになりますが,キノコはほとんど研究されてないので,明確に禁止もされていないとか(その当時の話で,現在はどうなっているか知りません).
 そういうのを体験してみるのがおもしろいのだとか.学者だなあ.わたしにはまったくマネができません.

 キノコといえば,山歩きの最中にしばしば見かけましたが,とる気がしないし,もちろん食べる気もしないですね.自分でとったものは.
 キノコはすごく奥が深いのですね.ある地域で食用にされるものが,別な地域では毒キノコだとされて食されることはない,などということもあるそうです.
 唯一自分でとって食べたのは「マツタケ」だけです.
 え?,あるんですよ.某地域には.
 本州でいうマツタケとは少し種類が違うそうですが….

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*タイマやケシ:タイマはともかく,ケシはその辺には生えてないだろとお思いのあなた.ありますよ.何年か前に見かけて,保健所に連絡したことがあります.保健所もお役所なのか,なにかまったく反応がなく,信頼できなかった(「対処する」といわない.なぜだろ?HPでは「見つけたら連絡を」とか書いてあるのにね)ので,警察に再連絡したら,すぐに跳んできました.図鑑を見せて説明したらすぐに対処してくれました.
 

キノコ

 
 今年は「毒キノコ」騒ぎが多く,今朝も朝のニュースで特集をやっていました.
 それで,博物館時代の不愉快な出来事を想い出してしまいました.腹が立つので記憶の奥に封印してたヤツです.

 大学院を追い出されて,某博物館に学芸員補として勤め始めて,まもなくのことでした.
 朝一番に事務のお姉さん(アルバイト)から…「苫小牧のキノコの専門家とおっしゃる方から電話です」.
 その博物館に勤めてから,そんなに時間も経っていないし,苫小牧にも,キノコの専門家にも知り合いはいないはずなので,戸惑いましたが,“まあ,しょうがない,とりあえず用件を聞いておくか”と,電話を回してもらいました.

 ちょっと聞き取りづらかったですが,先方はかなり怒っている様子.
 「え~と,うちの博物館が鑑定したキノコが間違っているということでしょうか?」
 「Yes」
 「うちの博物館が鑑定したという記事が新聞に載っている?」
 「Yes」

 というわけです.
 お姉さんも,だいぶ怒られたらしい.

 「え~とですね.うちの博物館には,化石と地質の専門家しかいないので,キノコの鑑定などたのまれてもしませんが…」と,受け答えしていると,事務のお姉さんが朝刊をもってきました.
 確かに,○○町立博物館が「非常に珍しいキノコ」を見つけたという記事が載っています.館長のコメントも.

 苫小牧在住のキノコの専門家曰く,「記事に載っているキノコは知らない人には珍しいが,比較的よくある食用にもよく使われるキノコである」とのこと(ここでは丁寧に書いてますが,実際はほぼ罵倒されています(^^;).
 「この件に関しては,わたしはまったくタッチしておらず,これはなにかの間違いと思われますので,前後関係を調査してご連絡申しあげます.」ということで,いったん電話を切りました.

 もちろん,前後関係は推測がつきます.
 館長のコメントが載っているからです.苫小牧在住のキノコの専門家は「館長とは何者か」と,ここに一番ご立腹の様子.
 「館長は,役場から派遣されている一般事務職(管理職)で学芸員の資格はありませんし,キノコどころか,なんの専門家でもありません.」

 ここからが,腹が立つところですが,館長にこの件に関して質問したところ,質問途中で「逆ギレ」(この当時は「逆ギレ」なんて言葉はなかったですね(^^;)して,わけの判らないことを怒鳴り出しました.
 わたしは,それまで若干腹が立ってましたが,逆に冷静になって「この人には,何を言っても無駄だな」と判断しました.しかし,館長の逆ギレはおさまらず,それ以後,数々の「いやがらせ」をされることになりますが,そのことは想い出したくない((^^;).

 折り返し,苫小牧在住のキノコの専門家さんに電話.
 「館長に問い質したところ,間違いを認め,反省しております(ウソです.(^^;)」
 「当館では,専門家不在なので,今後,キノコの鑑定を引き受けるつもりはありませんが,今後その様なことがあった場合,相談に乗ってくれないでしょうか.毒性のあるものもありますからね.(ホントです(^^;)(ただし,そのあと,○○町立博物館は「古生物の専門館」であることを前面に打ち出してゆきますので,キノコの鑑定など依頼されることはありませんでした)」
 苫小牧在住のキノコの専門家さんは機嫌を直して,協力を約束してくれました.


 ま,館長も実はかわいそうな人であることは,確かなのです.
 役場の人事異動で“館長”にはなったけど,「博物館とは何か」とか,まったく知らないわけですから.
 館長として,館長と呼ばれるようなことをしようと思ったら,あっという間に「フライイング」だったというわけです.この件に関しては,あとで少し冷静になったときに「今後こういうことは絶対にやらない」と約束させました.実は,ほかにも二・三(もっとかな(^^;)やってるんですが,それは別の機会に…(あまり想い出したくないですね(^^;).

 われわれ学芸員は,専門の学問分野を学ぶのに短くても二~三年,長ければ10年以上かけてますし,それとはまったく関係がない学芸員資格をとるのにも数年かけています.
 ところが,役場職員は辞令をもらったその日から「館長」なのですから…,ある意味たまらんでしょうね.この問題館長は就任期間が結構長かったですが,館長のポストは役場人事の緩衝材的なところがあり,頻繁に替わります.
 しょうがないので,人事があるたびに,数日あるいは数ヶ月かけて「博物館の意味」とか「仕事」とか「存在意義」について解く必要がありました.若いころはそれでも,「この博物館を世界的なレベルに!」と思ってましたから,邪魔されては困るので熱心にやりましたが,あるとき病気をして体力をなくしてから,気力もなくして…何があっても笑顔でというわけには,いかなくなりました.
 だって,館長どころか,教育長まで「博物館なんかいらん」と職員の前で公言する町でしたからね…(外部から博物館をほめられると態度が豹変するんですが…ね).

 問題館長の本音を聞いたことがあります.
 おなじ建物に図書室が併設され,博物館長は図書館長も兼ねていました.図書館には,もちろん正式な「司書」がいます.この司書と館長が,露骨に仲が悪かった.
 「あの女,資格を持ってるから,威張ってやがる.」(わたしにいうな!(^^;)(二重に差別ですね.性差別に,有資格者差別)
 これが,役場(事務)職員の本音らしいです.
 自分は図書館長も兼ねているのに,図書館でトラブルが起きると,すべて仕事はわたしに回ってきました(わたしは博物館の仕事で忙しいっちゅうに).もっとも,司書のほうも「(館長の)顔も見たくない」と公言してました.

 あ,いくらでも想い出しそうだ((^^;).
 封印!封印!

 キノコには後日譚があります.
 収蔵庫で収蔵品の整理中(赴任したときには,収蔵目録もリストもなかった!)に,問題のキノコが腐った状態でみつかりました.腐った小鳥も一緒に(もっと酷いものも…).
 今度は冷静に.
 それをネタに交渉して,収蔵庫の管理権を学芸員のものにしました.それまでは,ものの出入りは学芸員を無視しておこなわれていました.そのせいで,さまざまなトラブルがあったのです.
 博物館協力会が販売していた物品も収蔵庫にあるという不思議な状態で,これを撤去させるにはかなり時間がかかりましたが,最終的には解消しました(後日聞いたことですが,販売物品の出し入れに面倒だということで,鍵をかけていなかった時期もあったそうです:もちろん,そのせいで起こるべきことも起きていたとか).

 あ,これでまた,記憶を封印できるかな((^^;)
 

2010年10月11日月曜日

レアアースって?

 
 最近世間を騒がせている“レアアース”っていうマスコミ用語ですが,あれ,どうにかなりませんかね?

 マスコミでつかう“レアアース”っていう言葉は,よくわかりませんが,ニュースで示しているその「もの」は,「レア・アース・エレメント[rare earth element]」もしくは,「レア・アース・メタル[rare earth metal]」のことのようです.どっちを示しているのかは判りませんが.
 業界の人は,長ったらしい名前をつかうのを嫌う傾向がありますから,符丁として「レアアース」と呼んでいるのでしょうけど,それをそのままニュースでつかうのはどうなのでしょうかね.
 「レアアース」だけでは「地球にめずらしい」という意味にしかなりません.そういうものは,数限りなくありますけどね.マスコミが好きな「絶滅危惧種」なんてのも“レアアース”のひとつといってもいいんじゃあないでしょか.

 たぶん,しばらくしたら,したり顔の解説者が「「レアアース」というのは正しい言葉じゃあなくて,「レア・アース・エレメント」もしくは,「レア・アース・メタル」のことを言います」とか,いうんでしょうね(元NHKアナ.の「なんでも知ってるおじさん」とかが(^^;).
 でも,だいたい,言葉の乱れなんて,マスコミが発生元ですけどね.そのくせ,言葉の乱れを指摘するのもマスコミという不思議.いわゆるマッチ・ポンプですね.

 たとえば,「ナイト・ゲーム[night game]」というのをいやがって「ナイター」などといったのはマスコミですし,「それは英語ではない」と指摘するのもマスコミです.
 「UFO」にいたっては,もともと軍事用語で「Unidentified Flying Object[未確認飛行物体]」のことです(だいたい最初にレーダーでみつかるので,それがなんだか目視で確認されるまでは,みな「UFO」と呼ばれる)が,マスコミでは勝手に「宇宙人の乗り物」という意味でつかっています.「UFO」に火星人が乗っていることが確認されたら,それは,「UFO」ではなくて「火星人の乗り物」なんですけどね((^^;).
 もっとも,ここでは「宇宙人」という言葉そのものがおかしいのですね.宇宙空間では「人」と呼ばれるような高等生物が発生するわけはなくて,宇宙空間のどこかの星に発生するはずですから,その「星」の名前をつけなければならない.それら,個々の星にすむ「~~星人」全体を表す言葉として使っているというなら,われわれ「地球(星)人」もりっぱな「宇宙人」です.
 英語では,「a being (creature) from outer space」というそうですから,日本語に訳すと「外宇宙人(もしくは生物)」ですから,こちらなら論理的.

 さて,“レアアース”ですが,これは,もともと,化学・地球化学で使用している「希土類」という言葉がありますから,こちらを訳語として使うべきでしょう.「レア・アース・エレメント[rare earth element]」ならば「希土類元素」ですし,「レア・アース・メタル[rare earth metal]」ならば「希土類金属」です.「元素」と「金属」は別な意味を持つ言葉です.だから,別な言葉.
 希土類元素を含む混合物として輸入しているのか,純粋な希土類金属として輸入しているのか,それはわかりませんが(正確に報道してくれない;提示された映像では鉱石状のようなものも,金属様なものもありました),どっちにしても「地球にめずらしい」という中途半端なことばですましていい「もの」とは思えませんでした.

 「科学技術立国」を目指している国としては,情けない.
 ま,ノーベル賞受賞者あたりがいえば,聴いてくれるんでしょうけど….