2011年5月31日火曜日

なにかが疲労している

 
寄付しても
 寄付しても来る
  振込め用紙

溜まる金
 日銭に困る
  被災地との差



未だにというか,震災は進行中ですが,振り込み用紙がしばしば舞い込みます.
少し勉強しました.
怪しげな団体経由では,一切寄付しませんから.

と思って,「○赤」経由で振り込んだら,業務が一切停止してるとか.処理してるらしいけど,現場にはとどかないとか.
なんにしても,被災現場は日銭にも困っているらしい.困ったもんだ.なにかが疲労している.

これからわれわれは,東電や無能政治家のツケをたくさん払わされるんだから,少しシブチンにならなきゃね.
え? 経済が悪化する?
わたしらの考えることではないわな.
 

2011年5月30日月曜日

魚の分類(5)Regan (1906)

 
ベルグが4番目に示したのがレーガン, C. T. (Regan, 1906)の分類です.
レーガンの分類は,現生種の骨学的研究に基づくものです.
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C. T . Regan, 1906, A classification of the Selachian fishes. Proc. Zool. Soc. London, 1906, pp. 722-768.
C. T . Regan, 1909, The classification of Teleostean fishes. Ann. Mag. Nat. Hist. (8), III, 1909, pp. 75-86.
C. T . Regan, 1928, The skeleton of Lepidosteus, with remarks on the origin and evolution of the lower Neopterygian fishes. Proc. Zool. Soc. London, 1928, pp. 445-461.
C. T . Regan, 1929, Fishes. Encycl. Britan., 14 ed., IX, 1929, pp. 806-828.

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class MARSIPOBRANCHII
 order HYPEROTRETI
 order HYPEROARTII
class SELACHII
 subclass TREMATOPNEA
  order PLEUROTREMATA (NOTIDANOIDEI, GALEOIDEI, SQUALOIDEI)
  order HYPOTREMATA (NARCOBATOIDEI, BATOIDEI)
 subclass CHASMATOPNEA
  order HOLOCEPHALI
class PISCES
 subclass PALAEOPTERYGII
  order † ARCHISTIA (PALAEONISCIDAE, PLATYSOMIDAE, CATOPTERIDAE)
  order † BELONORHYNCHII
  order CHONDROSTEI
  order CLADISTIA (POLYPTERIDAE)
 subclass NEOPTERYGII
  ordor PROTOSPONDYLI (AMIIDAE etc. † )
  order GINGLYMODI (LEPIDOSTEIDAE)
  order † HALECOSTOMI
  order ISOSPONDYLI
  order HAPLOMI
  order INIOMI
  order GIGANTUROIDEA
  order LYOMERI
  order OSTARIOPHYSI
  order APODES
  order HETEROMI
  order SYNENTOGNATHI
  order MICROCYPRINI
  order SALMOPERCAE
  order SOLENICHTHYES
  order ANACANTHINI
  order ALLOTRIOGNATHI
  order BERYCOMORPHI
  order ZEOMORPHI
  order PERCOMORPHI
  order SCLEROPAREI
  order HYPOSTOMIDES
  order HETEROSOMATA
  order DISCOCEPHALI
  order PLECTOGNATHI
  order MALACICHTHYES
  order XENOPTERYGII
  order HAPLODOCI
  order PEDICULATI
  order OPISTHOMI
  order SYMBRANCHII
subclass CROSSOPTERYGII
 ordor † RHIPIDISTIA
 order † ACTINISTIA
 order DIPNEUSTI
 

DIPNEUSTI

(clade unknown) DIPNEUSTI (author unknown)

1906: order DIPNEUSTI: Regan, (Berg, 1940, p.347)
1923: subclass DIPNEUSTA: Jordan, (Berg, 1940, p. 349)

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DIPNEUSTI = di-pneusti=「二つの」+「呼吸をするもの」(=「二呼吸類(肺魚類)」)
DIPNEUSTA = di-pneusta=「二つの」+「呼吸をするもの」(=「二呼吸類(肺魚類)」)

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di-は,ギリシャ語の[δίς]」=「二回,二度,二倍」が,ラテン語の《合成前綴》化したもの.

-pneusti, -pneustaはギリシャ語の[πνευστός]=《形容詞》「鞴による風;吹奏楽器;呼吸」が,ラテン語の《合成後綴》化したものです.しかし,[πνευστός]は辞書により,記述がないか,非常に曖昧な書き方がしてあります.たとえば,《形容詞》としてあるのに,訳語が名詞形とか….

辞書の記述はリーズナブルではないので,以下のように考えました.

[πνευστός]をラテン語の《合成後綴》化します.本来ならば,-pneustosですが,慣習により-pneustusになります.

-pneustus = -pneust-us=-「呼吸の」+《形容詞語尾》

形容詞は《三性変化》しますので…,
《合成後綴》《形容詞》-pneustus, -pneusta, -pneustum =「~呼吸の」

形容詞は《複数》をサポートしますので…,
《合成後綴》《形容詞》《複》-pneusti, -pneustae, -pneusta =「~呼吸の」

これらは,おのおの《名詞》化して,=「~呼吸:~呼吸をするもの」の意味になります.

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したがって,-pneustiは《男複》形,-pneustaは《中複》形ということですね.
不思議なのは,pneusis《ギ転》<[ἡ πνεῦσις]=《女》「吹くこと.呼吸」や,pneuma 《ギ転》< [ἡ πνεῦμα]=《中》「風;呼吸;生命;霊」など,辞書に明瞭に書いてある言葉があるのに,なぜこんなあいまいな言葉を選んだのでしょうか.
ただ,昔はこちらのほうが明瞭な言葉だったのかもしれませんけどね.

(2011.09.06.:修正)


ACTINISTIA

order ACTINISTIA Cope, 1871 

1906: order † ACTINISTIA: Regan, (Berg, 1940, p.347)
1923: order ACTINISTIA: Jordan, (Berg, 1940, p. 349)

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ACTINISTIA = actin-istia=「放射状の」+「帆《中複》」=「放帆類」

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actin-は,ギリシャ語の[ἡ ἀκτίς]=《女》「光.光線.放射線」をラテン語の《合成前綴》化したもの.

-istiaは,ギリシャ語の[τό ἱστίον]=《中》「帆(小さな織物)」の変異形で,《合成後綴》《中複》-istia=「~帆;帆を持つもの」の意味.

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したがって,ACTINISTIA は actin-istiaという構造をもち,「放射状の」+「帆《中複》」という意味です.日本語訳としては「放帆類」とでもいうべきでしょうか.

(2011.8.29.:修正)

RHIPIDISTIA

order RHIPIDISTIA (author unkonwn)


1906: ordor † RHIPIDISTIA: Regan, (Berg, 1940, p.347)
1923: order RHIPIDISTIA: Jordan, (Berg, 1940, p. 349)

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RHIPIDISTIA = rhipid-istia=「(小さな)扇の」+「(小さな)帆をもった《中複》」=「扇鰭類」

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rhipid-は,ギリシャ語の[ἡ ῥῑπίς]=《中》「火扇,(女性用)扇」の縮小形である[τό ῥῑπίδιον]=《中》「(小さな)扇」が,ラテン語の《合成前綴》化したものです.

-istiaは,ギリシャ語で「小さな織物;帆」をあらわす[τό ἱστίον]=《中》が,ラテン語の《合成後綴》化した「-istius = -isti-us=「帆の」+《形容詞》」の変異形.《中性》《複数》が名詞化したもので,「(小さな)帆をもった」を意味します(istionの本来の意味は「小さな織物」を意味するらしく,それがなぜ「帆」になるかは謎).
あわせて,「(小さな)扇の(小さな)帆をもったものども」という意味で,どうやら,“小さな鰭をもっている”ことを示したかったらしいですね.日本語では「扇鰭類」という訳があるようですが,意味的にも文法的にも「小鰭類」のほうが適切なようです.

(2011.09.19.:修正)


HAPLODOCI

order HAPLODOCI (author unknown)


1906: order HAPLODOCI: Regan, (Berg, 1940, p.347)

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HAPLODOCI = haplo-doci=「単一の」+「梁をもつもの《男複》」=「単梁類」

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haplo-は,ギリシャ語の[ἁπλόος]=「単純な」が,ラテン語の《合成前綴》化したもの.

-dociは,ギリシャ語の[ὁ/ἡ δοκός]=「(木製の)梁,棒.ガード」がラテン語の《合成後綴》化したものの変化形です.
《合成後綴》《男性》《複数》形ですね.

あわせて,「単一の梁をもつもの《男複》」=「単梁類」.
解剖学的な特徴なんでしょうけど,説明がないのでわかりません(残念).

(2011.09.09.:修正)

XENOPTERYGII

order XENOPTERYGII (author unknown)


1906: order XENOPTERYGII: Regan, (Berg, 1940, p. 347)
1923: order XENOPTERYGII: Jordan, (Berg, 1940, p. 349)

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XENOPTERYGII = xeno-pterygii =「異種の」+「~翼をもつもの《男複》」=「異翼類」

xen-は,ギリシャ語の[ὁ ξένος]=「お客,見知らぬ人;異国人;異種,普通でないもの」が,ラテン語の《合成前綴》化したもの.

-pterygiiは,ギリシャ語の[ἡ πτέρυξ]=《女》「翼」がラテン語の《合成後綴》化した-pterygiusの変化形.《形容詞》《男性》《複数》形が名詞化したもので,「~翼をもつもの」の意味.

あわせて,「異種の翼をもつものども」の意味で,「異翼類」と訳すことができます.

(2011.09.25.:参照)

MALACICHTHYES

order MALACICHTHYES (author unknown)


1906: order MALACICHTHYES: Regan, (Berg, 1940, p.347)

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MALACICHTHYES = malac-ichthyes=「軟らかい」+「魚《男複》」

order MALACICHTHYES はgenus Malacichthysの上位分類群として設定されたようです.
ハッキリしないのですが,Malacichthys はBoulenger et Ogilvie-Grant (1883)が示した綴りですが,優先権のあるDöderlein (1883)は,Malakichthysと綴っているようです.
これが正しいとすれば,order MALACICHTHYESは成立せずに,order MALAKICHTHYESということになります.本当に,著者名を明記しない魚類分類学の習慣は困ったものだと思いますね.

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ギリシャ語で「軟らかい」を意味する言葉が[μαλακός]です.素直にラテン語化すれば,malakosなのですが,変換時には[-κ-](-k-)を(-c-)と,[-ος](-os)を(-us)とつづる習慣があるようですので,通常はmalacusと綴ります.
逆に言えば,malak-はギリシャ語的で,malac-はラテン語的といえるかもしれません.

また,ギリシャ語で「魚」を意味する言葉が[ὁ ἰχθύς]=《男》「魚」で,この複数が[οἰ ἰχθύες]=《男複》「魚」.これらをラテン語に変換すれば,単数はichthysで,複数はichthyesとなります.

つまり,order MALACICHTHYESもorder MALAKICHTHYESも,「軟らかい魚ども」という意味ですが,後者はギリシャ語色の強い言葉ですが,前者はごちゃ混ぜの中途半端な言葉ということになります.

(2011.09.12.:修正)

DISCOCEPHALI

order DISCOCEPHALI (author unknown)


1906: order DISCOCEPHALI: Regan, (Berg, 1940, p.347)
1923: order DISCOCEPHALI: Jordan, (Berg, 1940, p. 349)

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DISCOCEPHALI = disco-cephali=「円盤の」+「~頭;~頭をもつもの」=「円頭類」
Berg (1940)はこのグループを order ECHENEIFORMES に書きかえています.これには「コバンザメ」が含まれています.“円盤頭”ですね((^^;).

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Genus Discocephalus Ehrenberg, in Hemprich and Ehrenberg, 1828[1831] 
という属があり,DISCOCEPHALIは,この属を冠にした合成語なのかなと思いましたが,こちらは原生動物.まったく関係ないようで.
たぶん,このことがわかって,DISCOCEPHALIは使用されなくなったのでしょう.

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disco-は,ギリシャ語の[ὁ δίσκος]=《男》「円盤」が,ラテン語の《合成前綴》化したもの.

-cephaliは,ギリシャ語の[ἡ κεφαλή]」=《女》「頭.頭蓋」が,ラテン語の《合成後綴》化したものの変化形です.
もとは《形容詞》形-cephalus = -cephal-us=-「頭の」+《形容詞化語尾》

形容詞は《三性変化》しますので…,
《合成後綴》《形容詞》-cephalus, -cephala, -cephalum =「~頭の」(私的解釈)

形容詞は《複数》をサポートしますので…,
《合成後綴》《形容詞》-cephali, -cephalae, -cephala =《複》「~頭の」(私的解釈)

これらは,おのおの《名詞》化して,=「~頭;~頭をもつもの」という意味になります.
《合成後綴》-cephali は《男性》《複数》ということですね.

(2011.09.06.:修正)

HETEROSOMATA

order HETEROSOMATA (author unknown)


1906: order HETEROSOMATA: Regan, (Berg, 1940, p.347)
1923: order HETEROSOMATA: Jordan, (Berg, 1940, p. 349)
1932: order HETEROSOMATA: Woodward, (Berg, 1940, p. 350)

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HETEROSOMATA = hetero-somata=「異・」+「体をもつもの《中複》」=「異体類」

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heter- は,ギリシャ語で「異なった,異種の」という意味の[ἕτερος](ヘテロス)が,ラテン語の語根化したもの.heter-, hetero- (ヘテル・,ヘテロ・)=「異・,異種の」という意味を持ちます.

-somataは,ギリシャ語の[τό σῶμα]=《中》「体」がラテン語の《合成後綴》化した-somatusの変異形.《中性》《複数》形です.「~体;~体をもつもの」の意.
同時に,ギリシャ語の[τό σῶμα]の複数形[τά σῶματα]を,ラテン語風につづったものでもあります.

あわせて,「異った体をもつもの《中複》」という意味で,「異体類」と訳すことができます.

(2011.09.09.:修正)

HYPOSTOMIDES

order HYPOSTOMIDES (author unknown)


1906: order HYPOSTOMIDES: Regan, (Berg, 1940, p. 347)
1923: order HYPOSTOMIDES: Jordan, (Berg, 1940, p. 349)

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HYPOSTOMIDES = hypo-stom-ides=「下・」+「口の」+「一族」

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hypo-は,ギリシャ語で「(の)下部に.下方に,(→次元の,減じた)」を意味する[ὑπό]が,ラテン語の《合成前綴》化したもの.

stom-は,ギリシャ語の[τό στόμα]《中》「口;舌,言語;顔;出口;裂け目;先端;前」が,ラテン語の《合成前綴》化したものですが,連結形の場合は,stomat-, stomato- =「口の」にほうが一般的で,stom-, stomo-はむしろ例外的です.

-idesは,《父祖からの一族・種族の名》をあらわすギリシャ語の[-ιδης]をラテン語綴りにしたもの.

あわせて,「下方口の一族」(意味不明(^^;).「下方口類」とでも訳しておきますか.
なお,本来は,hypostomaides (hypo-stoma-ides)もしくはhypostomatoides (hypo-stomato-ides)なんだろうと思います.

(2011.09.10.:修正)

SCLEROPAREI

order SCLEROPAREI (author unknown)


1906: order SCLEROPAREI: Regan, (Berg, 1940, p.347)

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SCLEROPAREI = sclero-pare-i=「硬い」+《不詳》-i

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ギリシャ語からpare-になる言葉は複数あり,特定できません.
日本語では「カサゴ類」と訳される場合があります.

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とりあえず,可能性が高いのは,ギリシャ語の[ἡ παρειά]=「頬」なんですが,これはラテン語綴り化するとpareiaです.
これを《合成後綴》化すると,-pareius = -parei-us=「頬の」+《形容詞化語尾》

形容詞は《三性変化》するので,
《合成後綴》《形容詞》-pareius, -pareia, -pareium =「頬の」

形容詞は《複数》をサポートするので,
《合成後綴》《形》《複》-pareii, -pareiae, -pareia =「頬の」

となり,これらがおのおの名詞化して「~頬;~頬をもつもの」の意味になります.
これが一番可能性が高いと思うのですが,語尾が一致しない.語尾を一致させようとすると,pareiaの語根はpare-となってしまいます(実際はparei-).
原著者が活用を間違えたのか,あるいはまったく別なギリシャ語の単語が元になっているのか,それは原著にあたらないとわからないのですが,例の如く,原著者が引用されていないので,調査不能.
原著者を引用しないという習慣は困ったものです.

(2011.09.20.:修正)

PERCOMORPHI

order PERCOMORPHI (author unknown) 


1906: order PERCOMORPHI: Regan, (Berg, 1940, p.347)
1923: order PERCOMORPHI: Jordan, (Berg, 1940, p. 349)

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PERCOMORPHI = perco-morphi=「暗い色の」+「~様のもの《男複》」=「暗色様類」

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perco-は[περκνός]=「暗い色の.暗い斑紋の」の語根.たぶん,[πέρκη]=「perch, スズキの類」のつもりなのでしょうけど,それならばperci-=「スズキ類の」のはずです.
(注)辞典類の記述からの解釈です.辞典が間違っていたら,話にならない.

(2011.09.15.:修正)

ZEOMORPHI

order ZEOMORPHI (author unknown)


1906: order ZEOMORPHI: Regan, (Berg, 1940, p.347)

(2011.09.25.:削除)order ZEIFORMES;参照


BERYCOMORPHI

order BERYCOMORPHI (author unkown)

1906: order BERYCOMORPHI: Regan, (Berg, 1940, p.347)
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(2011.09.02.:削除)BERYCIDAE,参照

ALLOTRIOGNATHI

(clade unknown) ALLOTRIOGNATHI (author unknown)

1906: order ALLOTRIOGNATHI: Regan, (Berg, 1940, p.347)
1923: order ALLOTRIOGNATHI: Jordan, (Berg, 1940, p. 349)

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ALLOTRIOGNATHI = allotrio-gnathi=「異種の」+「~顎;~顎を持つもの《男複》」=「異顎類」

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allotrio-は,ギリシャ語の[ἀλλότριος]」=「他に属する.異種の.無関係な.不思議な」が,ラテン語の《合成前綴》化したもの.

-gnathiは,ギリシャ語の[ἡ γνάθος]」=《女》「顎,口」が,ラテン語の《合成後綴》化したものの変化形です.
-gnathus = -gnath-us=+「顎の」+《形容詞化語尾》
《形容詞》は《三性変化》しますので,
《合成後綴》《形容詞》-gnathus, -gnatha, -gnathum =「顎の」

《形容詞》は《複数》をサポートしますので,
《合成後綴》《形容詞》《複数》-gnathi, -gnathae, -gnatha =「顎の」

これらは,そのままの形で,《名詞》化し,=「~顎:~顎を持つもの」の意味になります.

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したがって,ALLOTRIOGNATHI は allotrio-gnathi という構造で,「異種の」+「~顎;~顎を持つもの《男複》」という意味を持ち,「異顎類」と訳すことができます.

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まれに「アカマンボウ目」と訳されている場合がありますが,適切な訳語なのかどうかは疑問です.

(2011.08.30:訂正)

SOLENICHTHYES

order SOLENICHTHYES (author unknown)


order SOLENICHTHYES: Regan, 1906 (Berg, 1940, p.347)

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SOLENICHTHYES = solen-ichthyes=「管のある」+「魚《男複》」(=「管魚類」)

solen-は,ギリシャ語の[ὁ σωλήν]=「水路,溝;管,円筒形の容器;ある種の貝,ある種の魚」が,ラテン語の《合成前綴》化したもの(ただし,この辞典の解説はぐるぐる回っています.

-ichthyesは,ギリシャ語の[ὁ ἰχθύς]=《男》「魚」の複数形[οἰ ἰχθύες]=《男複》「魚」をラテン語綴り化したもの.通常はギリシャ語の「原形」をラテン語化し,その変化形をつくるものですが,ギリシャ語の複数形を使う珍しい例です.

あわせて,「管のある魚ども」の意味で,「管魚類」とでも訳すのでしょうか.

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なお,辞典の解説は,「管」に該当する言葉があって,「管状に見える貝や魚」の名前になったのか,それとも「管状の生物から>管という言葉が生まれたのか」がわかりません.標記の言葉が存在するなら,「管」に該当する言葉があって,管状の生物にその言葉をつけたように思えますが,どうなんでしょうかね.

(2011.09.22.:修正)

SALMOPERCAE

order SALMOPERCAE (author unknown)


1906: order SALMOPERCAE: Regan, (Berg, 1940, p.347)
1923: order SALMOPERCAE: Jordan, (Berg, 1940, p. 349)

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SALMOPERCAE = salmo-perc-ae=「Salmoの」+「スズキの」+「~に関係する」
SALMOPERCAE = salmo-percae=「Salmoの」+「スズキの類《複》」

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かなり理不尽な用語です.SALMOPERCAEが示す内容・定義ではなく,用語法のことですが.
salmo-は,ラテン語のsalmo, salmonis (salmō, salmōnis)=「タイセイヨウサケ(サルモー)」の語根.ギリシャ語でsalmoを表す言葉は見つかりませんでした.

-percaeは,もとはギリシャ語で[ἡ πέρκη]=《女》「perch, スズキの類」の《複数形》[αἱ πέρκαι]=《女複》「同前」をラテン語化したものです.ギリシャ語をそのままラテン語綴りにすると,percai ですが,慣習により[αι](ai)は(ae)になりますので,ラテン語化したときには,percaeになります.

この時点で,この言葉は《ラ語》+《ギ語》という余りやるべきでないミスを犯しています.しかし,まあ,perca, percaeは「ラテン語」であるとして,目をつぶって《ラ語》+《ラ語》の構造であることにしてきましょう.

そうすると,(それにしても)これは「Salmoのスズキの類ども」という,ちょっと意味の通じにくい言葉になります.
たぶん,「salmoの仲間とスズキの仲間」ということを示したかったのだと思いますが,そういう意味になってるのかどうかはわたしにはわかりません.もっと別な言葉があるだろうという気がします.

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ところで,SALMOPERCAEは,「サケ・スズキ類」と訳されることがあります.これは誤訳なので,使わないほうがいいでしょう.「タイセイヨウサケ・スズキ類」ならば,まだましですが,salmon (Salmo)はサケではないので,誤訳であることにはかわりありません.

(注)「Salmon」を「サケ」と訳すのは,問題があります.
「Salmon」は大西洋(&欧州の河川)にいるものです.これはSalmo属.ヨーロッパ人にとっては,川で生活するものがtroutで,海に降りるものがsalmonでしたが,どちらも同じSalmo属.
一方,太平洋にいるのは昔から(日本では)「サケ」とよばれてきました.これはOncorhynchus属です.別属です.
ヨーロッパ人が北米大陸に侵出したときに,ヨーロッパでtrout-salmonと呼んでいたSalmo属に割と似た魚を見つけ,これを自分たちの言葉で呼んでしまったのです.言葉がないですからね.ネイティブ・アメリカンの言葉を使えば問題はなかったのですが,ヨーロッパ系人はしなかったわけですね.
日本人はといえば,欧米のものはなんでも有り難がる人たち(学者なんかには特に多い)が,よく考えずに欧米の言葉を優先してしまった結果,まったく別な属を同じ「~サケ」と表現してしまうことになってしまいました.

(2011.09.20.:修正)

MICROCYPRINI

order MICROCYPRINI (author unknown)


1906: order MICROCYPRINI: Regan, (Berg, 1940, p.347)

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MICROCYPRINI = micro-cyprini=「小さな」+「コイ《男複》」=「小鯉類」

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micro-は,ギリシャ語で[μῑκρός]」=「小さい」がラテン語の《合成前綴》化したもの.

-cypriniは,ギリシャ語で[ὁ κυπρῖνος]=《男》「コイ」がラテン語の《合成後綴》化した-cyprinusの変異形.《男性》《複数》形が《名詞》化したもので,「コイ」を意味します.

あわせて,「小さなコイ」を意味し,「小鯉類」と訳すことができます.

(2011.09.13.:修正)

SYNENTOGNATHI

order SYNENTOGNATHI (author unknown)


1906: order SYNENTOGNATHI: Regan, (Berg, 1940, p.347)
1923: order SYNENTOGNATHI: Jordan, (Berg, 1940, p. 349)

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SYNENTOGNATHI = syn-ento-gnathi=「共に」+「内部の」+「~の顎を持つもの《男複》」=「合内顎類」

syn-は,ギリシャ語の[σύν]」=「共に,同時に」が,ラテン語の《合成前綴》化したもの.

ento-は,ギリシャ語の[ἐντός]=「内部に」が,ラテン語の《合成前綴》化したもの.

-gnathiは,ギリシャ語の[ἡ γνάθος]=《女》「顎,口」が,ラテン語の《合成後綴》化した-gnathusの変化形で,《形容詞》《男性複数》形が名詞化したもの.「~顎;~の顎を持つもの」の意味.

あわせて,「共に内部の顎を持つものども」の意味.「合内顎類」と訳しておきます.

なお,synento-の原形と思われるギリシャ語がいくつかあり,だいたいが「一緒にする;合わせる」の意味を持つのですが,どれが原形なのか,辞典の記述ではわからないので,ペンディングにしておきます.

(2011.09.23.:修正)

LYOMERI

order LYOMERI (author unknown)


1906: order LYOMERI: Regan, (Berg, 1940, p.347)

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LYOMERI = lyo-meri =「緩めた」+「~腿をもつもの《男複》」=「緩股類」

---
lyo-は,ギリシャ語の[λΰω]=「ゆるめる.解き放つ.解く.破壊する.溶かす」がラテン語の《合成前綴》化したもの.

-meriは,ギリシャ語の[ὁ μηρός]=「大腿」が,ラテン語の《合成後綴》化した-merusの変異形が名詞化したもの.
《合成後綴》《男性》《複数》形で,「~腿をもつものども」の意.

ただし,-meri(・メリ)は-mēri(・メーリ)であって,ギリシャ語の[τό μέρος]=「部分」と混同されていることが多々あるようです.したがって,「緩んだ部分をもつもの」の意味かもしれません.

(2011.09.12.:修正)

GIGANTUROIDEA

order GIGANTUROIDEA (author unknown)


order GIGANTUROIDEA: Regan, 1906 (Berg, 1940, p.347)

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GIGANTUROIDEA = gigant-ur-oidea=「巨大な」+「尻尾のある」+「~類似の形からなる」=「巨尾類」

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gigant-は,ギリシャ語で[ὁ Γίγας]=《男》「巨人族」が《形容詞化》し,「巨大な」という意味を持った上で,ラテン語の《合成前綴》化したもの.

ur-は,ギリシャ語の[ἡ οὐρᾱ]=《女》「尻尾」が,ラテン語の《合成前綴》化したもの.

-oideaは,ギリシャ語の [τό εἶδος]=《中》「見られるもの;形.種類」が,ラテン語綴り化し,《形容詞化》したものの変化形.
-oideus = -oid-eus=「~類似の」+「~からなる」
《合成後綴》《形容詞》-oideus, -oidea, -oideum=「~類似の形からなる」
《合成後綴》《形容詞》-oidei, -oideae, -oidea=《複》「~類似の形からなる」
>《名詞化》=「~類似の形からなるもの」

つまり,「~類似の形からなる」という意味を持つ《合成後綴》《形容詞》《中性》《複数》形.

あわせて,「巨大な尾のある(ものの)類似の形からなるもの」=「巨尾類」

(2011.09.08.:修正)

INIOMI

order INIOMI (author unknown)


1906: order INIOMI: Regan, (Berg, 1940, p.347)
1923: order INIOMI: Jordan, (Berg, 1940, p. 349)

---
INIOMI = ini-omi=「後頭骨の」+「~肩をもつもの《男複》」=「後頭骨肩類(項肩類)」

---
ini-は,ギリシャ語で[τό ἰνίον]=《中》「後頭骨」が,ラテン語の《合成前綴》化したもの.

-omiは,ギリシャ語で[ὁ ὦμος]=《男》「肩」が,ラテン語の《合成後綴》化した-omus = -om-us=「肩の」+《形容詞》の変異形です.《男性》《複数》形ですね.

あわせて,「後頭骨の肩をもつもの」という意味ですが,意味不明ですね.「後頭骨肩類」と訳しておきます.「項肩類」と訳されている場合があるようです.

(2011.09.11.:修正)

ISOSPONDYLI

order ISOSPONDYLI (author unknown)


1906: order ISOSPONDYLI: Regan, (Berg, 1940, p.347)
1923: order ISOSPONDYLI: Jordan, (Berg, 1940, p. 349)
1932: order ISOSPONDYLI: Woodward, (Berg, 1940, p. 350)

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ISOSPONDYLI = iso-spondyli=「等しい」+「~脊椎をもつもの《男複》」=「等椎類」

---
iso-は,ギリシャ語の[ἴσος]=「等しい」が,ラテン語の《合成前綴》化したもの.

-spondyliは不詳.
ギリシャ語の[ὁ σφονδύλος]=《男》「脊椎;脊柱」は,ラテン語綴り化するとsphondylosとなり,spondylosにはなりません.もともとは,[ὁ σφονδύλος]だったものが,ラテン語化してspondylosになり,逆に現代ギリシャ語でも[σπόνδυλος]となってしまったようです.
しょうがないので,-spondyl-が存在するものとして話を進めます.

-spondyl-が形容詞化して,
-spondyl-us (=「脊椎の」+《形容詞化語尾》)= -spondylus

《形容詞》は《三性変化》するので,
《合成後綴》《形容詞》-spondylus, -spondyla, -spondylum =「脊椎の」

形容詞は複数をサポートするので,
《合成後綴》《形》《複》-spondyli, -spondylae, -spondyla =「脊椎の」

これらがおのおの《名詞》化して=「~脊椎;~脊椎をもつもの」という意味になります.

あわせて,「等しい脊椎をもつもの」という意味で,「等椎類」と訳すことができます.

(2011.09.11.:修正)

HALECOSTOMI

order † HALECOSTOMI (author unknown)


1906: order † HALECOSTOMI: Regan, (Berg, 1940, p.347)
1932: order † HALECOSTOMI: Woodward, (Berg, 1940, p. 350)

---
HALECOSTOMI = haleco-stomi=「魚醬の(鯡の)」+「~の口をしたもの《男複》」=「鯡口類」

haleco-は,ラテン語のhalec, halecis (hālēc, hālēcis)=《中》「魚醬」の語根.
本来は「魚醬」の意味であるが,この場合は,「魚醬」の原材料である小魚,特に「ニシン」を示しているらしい.

-stomiは,ギリシャ語の[τό στόμα]=《中》「口;舌,言語;顔;出口;裂け目;先端;前」が,ラテン語の《合成後綴》化したものの変化形.
「~口.~の口をしたもの」という意味の《男性》《複数》形です.

あわせて,「魚醬の(鯡の)口をしたもの《男複》」=「鯡口類」
う~~ん.何かおかしい….

(2011.09.08.:修正)

GINGLYMODI

order GINGLYMODI (author unknown)


order GINGLYMODI (LEPIDOSTEIDAE): Regan, 1906 (Berg, 1940, p.347)

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GINGLYMODI = ginglym-odi=「蝶番の」+《不詳》

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ginglym-は,ギリシャ語で[ὁ γιγγλυμος]=《男》「蝶番」が,ラテン語の《合成前綴》化したもの.

-odiという《合成後綴》は,管見の範囲内では存在しません.
これはたぶん,-odiiの間違いだと思われます.

-odiiは,《合成後綴》-odius (-ōdius)(オーディウス)= -ōd-ius= -ōdes-ius=「~に類する」+「~の.~(に)属する,~(に)関係する」の《変化形》.

《接尾辞》《形容詞》-odius, -odia, -odium=「~に類する」
《接尾辞》《形容詞》《複》-odii, -odiae, -odia=「~に類する」

さらにこれが,《名詞》化したもの.つまり,《男性》《複数》形.
あわせると,「蝶番に類するもの」=「蝶番関節類」

---
(LEPIDOSTEIDAE)は,Regan (1906)が示したものか,Berg (1940)が付加したものか説明がないので詳細不明.
とりあえず,訳は….
LEPIDOSTEIDAE(=「鱗骨科」)

(2011.09.08.:修正)

PROTOSPONDYLI

ordor PROTOSPONDYLI (author unknown)


ordor PROTOSPONDYLI (AMIIDAE etc. † ): Regan, 1906 (Berg, 1940, p.347)
order PROTOSPONDYLI: Woodward, 1932 (Berg, 1940, p. 350)

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PROTOSPONDYLI = proto-spondyli =「原初の」+「~脊椎をもつもの《男複》」=「原椎類」

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proto-は,ギリシャ語の[πρῶτος]」=「最初の.元の」([πρό]の最上級)が,ラテン語の《合成前綴》化したもの.

-spondyliは不詳.
ギリシャ語で「脊椎」を意味する言葉は[ὁ σφονδύλος]=《男》「脊椎;脊柱」で,ラテン語綴り化するとsphondylosになります.綴りが違う.
現代ギリシャ語辞典には,逆に[σπόνδυλος]が載っていることがあります.こちらは,spondylosになります.

一方で,[ὁ σφονδύλος]はラテン語化していて,こちらの綴りは,spondylus =《男》「脊椎;貝柱;筋肉」.こちらには,異綴りがあってsphondylus =「同上」.

多少の混乱があるようです.
どうやら,古い時代には《ギ語》と《ラ語》では,綴りが違い,意味もかなり違っていたようです.しかし,現代では,現代ギリシャ語では綴りがラテン語に引っ張られてしまいますが,意味は古い時代と同じ.
ラテン語は,ギリシャ語での意味を吸収して綴りも変化ということらしい.
辞典では,このあたりをクリアーに説明していないので,よくわかりませんがね.

しょうがないので,spondylosとsphondylos(ギ語綴りでも同じ)は同じと仮定して,話を続けます.

-spondylus = -spondyl-us=「脊椎;脊柱」+《形容詞形》

形容詞は《三性変化》するので,
《合成後綴》《形容詞》-spondylus, -spondyla, -spondylum =「脊椎の」

形容詞は《複数》をサポートするので,
《合成後綴》《形》《複》-spondyli, -spondylae, -spondyla =「脊椎の」

これらが,おのおの名詞化して「~脊椎;~脊椎をもつもの」の意味になります.

あわせて,「原初の脊椎をもつものども」の意味.「原椎類」と訳すことができます.

(2011.09.18.:修正)

CLADISTIA

order CLADISTIA (author unknown)

1906: order CLADISTIA: Regan, (Berg, 1940, p.347)
1923: order CLADISTIA: Jordan, (Berg, 1940, p. 349)

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CLADISTIA = clad-istia=「分枝の」+「~帆《中複》」=「分岐鰭類」

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clad-は,ギリシャ語の[ὁ κλάδος]=《男》「枝,分枝」が,ラテン語の《合成前綴》化したもの.

-istiaは,ギリシャ語の[τό ἱστίον]=《中》「帆(小さな織物)」が,ラテン語の《合成後綴》化したもの.
《合成後綴》《中性》《複数》の形です.この場合,「鰭」を「小さな帆」に見立てているのでしょう.

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したがって,CLADISTIA は clad-istiaという構造で,「分枝の」+「~帆《中複》」という意味で,「分岐鰭類」と訳せます.

(2011.09.04.:修正)

BELONORHYNCHII

order? BELONORHYNCHII (author unknown)

order † BELONORHYNCHII: Regan, 1906 (Berg, 1940, p.347)

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BELONORHYNCHII = belono-rhynch-ii=「針の」+「嘴の」+《不詳》(=「針嘴類」?)

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BELONORHYNCHIIは下記のBelonorhynchusの上位分類群として設定されたものと思われます.

family BELONORHYNCHIDAE Woodward, 1888
 genus Belonorhynchus Broun, 1858

現在では,Belonorhynchusそのものが,別属の同物異名と考えられていますので,この名称をいただいた上位分類群名も消滅しています.

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Belonorhynchus = belono-rhynchus =「針の」+「~嘴のあるもの」

belono-は,ギリシャ語の[ἡ βελόνη]=《女》「矢尻,針;ヨウジウオ.ダツ」の,ラテン語の《合成前綴》化したもの.

-rhynchusは,ギリシャ語の[τό ῥύγχος]=《中》「嘴,鼻,吻状突起,吸嘴」の変化形です.
[τό ῥύγχος]のラテン語の《合成前綴》化したものが,rhynch-, rhyncho-.これに《名詞形語尾》の-usを合成して《合成後綴》を造ります…,
-rhynch-us=-「嘴の」+《名詞》=「~嘴;~嘴を持つもの」

あわせて,Belonorhynchusは「針の(ような)嘴を持つもの」という意味.

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Belonorhynchusを語根化すると,Belonorhynch-となり,これにさまざまな語尾をつけて造語することができます.
たとえば,《科》の場合には,模式属の語幹に《合成後綴》-idaeをつけて,
BELONORHYNCHIDAE = belonorhynch-idae=「Belonorhynchusの」+《科》

《目》の場合には,《合成後綴》-iformesもしくは-idaをつけて,
BELONORHYNCHIFORMES = belonorhynch-iformes=「Belonorhynchusの形態をしたものども《男女複》」
BELONORHYNCHIDA = belonorhynch-ida=「Belonorhynchusの一族ども《中複》」
(ただし,上記は誰も提案していない名称ですので,お間違えのないように)

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ところで,BELONORHYNCHII の語尾-rhynchiiは,今のところどうやっても合成不可能なものなので,解説不能です.

(2011.09.01.:修正)

ARCHISTIA

(clade unkown) ARCHISTIA (author unkown)

1906: order † ARCHISTIA (PALAEONISCIDAE, PLATYSOMIDAE, CATOPTERIDAE): Regan, 1906 (Berg, 1940, p.347)

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ARCHISTIA = arch-istia=「古い」+「帆《中複》」

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arch- は,ギリシャ語で「始め.始源」を意味する[ἀρχή](アルケー)が,ラテン語の語根化したもの.arch-, archi-, archo- (アルク・,アルキ・,アルコ・)=「原の,古い」という意味を持ちます.

ギリシャ語で「編み物,織物」を意味する言葉が[τό ἱστος](イストス).
これの縮小形が[ἱστίον](イスティオン)=「小さな編み物.織物」.これが,ラテン語の語根化して,isti-, istio-=「(小さな)帆の」という意味を持つといいます.

《合成後綴》-istiaは,《中性》《複数》《形容詞》ですが,これが《名詞》化して=「~帆;~帆を持つもの」のい.

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したがって,ARCHISTIA は arch-istiaという構造をもち,「古い」+「帆《中複》」という意味です.日本語に訳すと「古帆類」とでも訳せましょうか.

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なお,上記( )内は,Regan (1906)がARCHISTIAの構成員として示したものか,Berg (1940)が付記したものか,説明がないので不詳.

とりあえず,以下に「訳」を示しておきます.

PALAEONISCIDAE(=Palaeoniscusの科)
PLATYSOMIDAE(=Platysomusの科)
CATOPTERIDAE(=Catopterusの科)

(2011.08.31.:修正)

PALAEOPTERYGII

(clade unknown) PALAEOPTERYGII (author unknown)


1906: subclass PALAEOPTERYGII: Regan, (Berg, 1940, p.347)

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PALAEOPTERYGII = palaeo-pterygii=「古い」+「翼のもの《男複》」=「古翼類(古鰭類)」

palaeo- は,ギリシャ語で「古い」を意味する[παλαιός](パライオス)が,ラテン語の《合成前綴》化したもの.palae-, palaeo- (パラエ・,パラエオ・)=「古い,旧の」という意味を示します.

-pterygii は,ギリシャ語で「翼」を意味する[πτέρυγος](プテリュゴス)が,ラテン語の《合成後綴》化した-pterygiusの変化形.《男性》《複数》が名詞化したもので「羽のもの,翼のもの」という意味を持ちます.

あわせて,「古い翼のものども」という意味ですが,魚の翼は鰭なので,とりあえず,「古鰭類」としておきます.

(2011.09.14.:修正)

HYPOTREMATA

order HYPOTREMATA (author unknown)


order HYPOTREMATA (NARCOBATOIDEI, BATOIDEI): Regan, 1906 (Berg, 1940, p.347)

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HYPOTREMATA は hypo-tremata からなる合成語です.

hypo- は,ギリシャ語で「(の)下部に.下方に,(→次元の,減じた)」の意味をもつ[ὑπό](ヒュポ)が,ラテン語の語根化したもの.hyp-, hypo- (ヒュプ・/ヒュポ・)=「下・,次・,不全・,やや」という意味を持ちます.

-tremata は,ギリシャ語で「穿孔.打ち抜き.穴.抜け口」を意味する[τρῆμα, τρῆματος]が,ラテン語の《合成後綴》化した-trematusの変化形です.《中性》《複数》形で,「~孔;~孔のあるもの」を意味します.

あわせて,「下方に孔のあるものども」という意味ですね.「下孔類」とでも訳しておきます.

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なお,( )内は,Regan (1906)がHYPOTREMATAの構成員として示したものか,Berg (1940)が付記したものか,説明がないので不詳.

とりあえず,以下に「訳」を示しておきます.
NARCOBATOIDEI(=ネムリ・エイ類)
BATOIDEI(=エイ類)

(2011.09.10.:修正)

PLEUROTREMATA

order PLEUROTREMATA (author unknown)


order PLEUROTREMATA (NOTIDANOIDEI, GALEOIDEI, SQUALOIDEI): Regan, 1906 (Berg, 1940, p.347)

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PLEUROTREMATA = pleuro-tremata =「側面の」+「~孔のあるもの《中複》」=「側孔類」

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pleuro- は,ギリシャ語で「肋骨,側面」を意味する[πλευρόν](プレウロン)が,ラテン語の《合成前綴》化したものです.pleur-, pleuro-=「肋骨の.傍~」という意味を持ちます.

-tremata は,ギリシャ語で「穿孔.打ち抜き.穴.抜け口」を意味する[τό τρῆμα]が,ラテン語の《合成後綴》化した-trematusの変異形.《中性》《複数》が名詞化したもので,「~孔;~孔のあるもの」を意味します.

あわせて,「側面の孔のあるものども」という意味です.「側孔類」とでも訳しておきます.

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なお,( )内は,Regan (1906)がPLEUROTREMATAの構成員として示したものか,Berg (1940)が付記したものか,説明がないので不詳.そのまま記しておきます.

とりあえず,以下に「訳」を示しておきます.
NOTIDANOIDEI(=カグラザメ類)
GALEOIDEI(=兜類:不詳>order GALEODES: Agassiz, 1857 (Berg, 1940, p. 347).)
SQUALOIDEI(=ツノザメ類)
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(2011.09.17.:修正)

TREMATOPNEA

(clade unkonwn) TREMATOPNEA (author unknown)


1906: subclass TREMATOPNEA: Regan, (Berg, 1940, p.347)

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TREMATOPNEA = tremato-pnea=「孔のある」+《不詳》

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tremato- は,ギリシャ語で「穿孔.打ち抜き.穴.抜け口」を意味する[τρῆμα, τρῆματος]が,ラテン語の語根化したものです.trem-, trema-, tremat-, tremato-(トゥレム・,トゥレマ・,トゥレマトゥ・,トゥレマト・)=「孔(穴)のある」を意味します.

ギリシャ語で「空気.呼吸」を意味する[πνεῦμα](pneuma)(プネウマ)があります.
このプネウマと同じ意味の(あるいは省略形か?辞典の記述が曖昧で関連がわからない)[πνοή, πνοιή] (プノエー,プノイエー;前者が普通形で,後者が変異形らしい;辞書の記述が曖昧でわからない)もあります.
[πνοή]は,ラテン語綴り化すると,本来はpnoeですが,末尾の[-η](-e)は,変換時に(-a)となる習慣があるので,pnoaになります.
[πνοιή]は,ラテン語綴り化すると,本体はpnoieですが,二重母音[οι](oi)は,変換時に(oe)となる習慣があるので,pnoeaになります.

どちらにしても,-pneaにはならないのですが,これが英語系大辞典だと「-pnoeaは-pneaの異形」であると普通に書かれています.もしかしたら,-pneaは《英語》なのかもしれません.文法学者の意見を聞いてみたいところです.

---
とりあえず,あわせると,「孔のある呼吸(法)」となりますが,意味不明ですね.
TREMATOPNEA とCHASMATOPNEA(= chasmato-pnea=「口の開いた呼吸(法)」)とをセットとしてclass SELACHIIを二分していると考えると,理解しやすいかもしれません. 

(2011.09.24.:修正)

CROSSOPTERYGII

[clade unknown] CROSSOPTERYGII Huxley, 1861


1861: [clade unknown] CROSSOPTERYGII Huxley,
1906: subclass CROSSOPTERYGII: Regan, (Berg, 1940, p.347)
1923: subclass CROSSOPTERYGII: Jordan, (Berg, 1940, p. 349)
1930: division CROSSOPTERYGII: Goodrich, (Berg, 1940, p. 351)
1932: order CROSSOPTERYGII: Woodward, (Berg, 1940, p. 350)
1934: II-B. 1. CROSSOPTERYGII: Säve-Söderbergh, (Berg, 1940, p. 351)
1936: sub-branch 1. † CROSSOPTERYGII: Stensiö, (Berg, 1940, p. 351)

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CROSSOPTERYGII = crosso-pterygii=「房毛(総毛)の」+「翼《複数》」=「房翼類」(=「総鰭類」)

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crosso-は,ギリシャ語で[οἰ κροσσοί]=《男・複》「飾り房.房状のもの.ふさ毛」をラテン語の《合成前綴》化したもの.

-pterygiiは,ギリシャ語の[ἡ πτέρυξ]=《女》「翼」をラテン語の《合成後綴》化したしたもので,《男》《複》の《形容詞》形「~翼の」を経由して,《男》《複》《名詞》「~翼:~翼をもつもの」になっているようです.
「翼」がもとの意味ですが,魚の翼といえば「鰭」のことですね.
したがって,「総毛のような鰭をもつものども」の意.

(2011.08.25.:修正)


(2011.09.05.:修正)

NEOPTERYGII

(clade unknown) NEOPTERYGII (author unknown)


subclass NEOPTERYGII: Regan, 1906 (Berg, 1940, p.347)

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NEOPTERYGII = neo-pterygii =「新しい」+「~翼をもつもの《男複》」=「新翼類(新鰭類)」

neo-は,ギリシャ語の [νέος]=「新しい,未知の」が,ラテン語の《合成前綴》化したもの.

-pterygiiは,ギリシャ語の[ἡ πτέρυξ]=《女》「翼」が,ラテン語の《合成後綴》化した-pterygiusの変化形.《男性》《複数》が名詞化したもので,「~翼をもつものども」の意.

あわせて,「新しい翼をもつものども」という意味です.「新翼類」と訳せますが,魚の翼は鰭ですから「新鰭類」と訳すのが適当でしょう.

(2011.09.14.:修正)

CHASMATOPNEA

subclass CHASMATOPNEA (author unknown)

1906: subclass CHASMATOPNEA: Regan, (Berg, 1940, p. 347)

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CHASMATOPNEA = chasmato-pnea=「口の開いた」+「呼吸(法)」

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chasmato- は,ギリシャ語で「割れ目,裂け目.湾.開いた口」を意味する[τό χάσμα](カスマ)が,ラテン語の語根化したもの.chasm-, chasmo-, chasmat-, chasmato-=「口の開いた」を意味します.

一方,-pneaは語源不詳.
ギリシャ語で「(風が)吹く.呼吸する」を意味する[πνέω](プネオー)という動詞があります.
この動詞から派生した名詞が[πνοή](プノエー),[πνοιή](プノイエー)で,ともに「風.呼吸」を意味します.「風,空気.呼吸.生命,魂.インスピレーション.霊,霊魂.精霊」を意味する[ἡ πνεῦμα](プネウマ)はこれから派生したものらしいです.

さて,[πνοιή](プノイエー)のほうは,ラテン語綴化する際に,二重母音[-οι](-oi)は,ラテン語化して[-oe]になり,末尾の[-η](-e)は[-a]になるという(不思議な)習慣がありますので,pnoie > pnoeaになります.

このpnoeaが《合成後綴》化して,-pnoea =-「呼吸.呼吸法」という意味を持つようです.
某英和大辞典には,「-pneaと-pnoeaは同じもの」とありますが,なぜ同じかは,もちろん説明がありません(これが成り立つなら,[o]は省略してかまわないということになってしまう(^^;).

とりあえず,あわせると,「口の開いた呼吸(法)」となりますが,意味不明ですね.
TREMATOPNEAを参照のこと.

(2011.09.03.:修正)

2011年5月25日水曜日

当世,流行言葉集

 
「安全です」:あぶないことを誤魔化したあとの結びの言葉.「御名御璽」と使用法が似ている.疑問を発すると,不敬罪で捕まるとか.
「T電」・「T電力」:無責任サイクルの第一次生産者.
「政治屋」:無責任サイクルの第二次消費者.普段は第一次生産者に寄生している.非常時は被害を拡大する.
「国民」:無責任サイクルの第三次消費者.結局,最後は国民が責任をとらなきゃならない.
「ババ抜き」:原発事故のこと.解決よりも,責任の押し付け合いが優先される.
「T大る」:根拠のないことを,さも科学的に説明すること.「T工大る」も,ほぼ同じ用法.これにさからうと「無知」もしくは「非科学的」のレッテルを貼られる.「安全だ」教の陰の教祖.
「K大助教」:危険性を大声でしゃべってもだれも聴いてくれないこと.もしくは人.昔,高木仁三郎という同じタイプの人がいた.
「政府首脳」:知識もないのに事故の責任をとらなくてはならず,右往左往する人たち.
「J民党」:火種をまいたのに,事故の時には政権にいなかった.ものすごく運のよい人たち.「K明党」も同じ用法.
「M主党」:同じ穴のムジナか,希代の指導者か,運命の分かれ道に立つこと.
「安全院」:無責任サイクルの一部.「安全委員会」もほぼ同じ.
「マスコミ」:相変わらず「大本営発表」体質を基本にもつ.「安全だ」教,布教係といわれている.
「日本国」:さまざまな未来的事象の実験場.

(宮武無い骨:責任編輯)


 

2011年5月22日日曜日

魚の分類(4)Boulenger (1904)

 
ベルグが,三番目に示したのが,Boulenger (1904)の分類です.
ブウレンジャーはいわゆるTeleostean(=真骨魚類)を13の亜目に分けています.以下.

G. A. Boulenger, 1904, A synopsis of the suborders and families of the Teleostean fishes. Ann. Mag. Nat. Hist. (7), XIII, 1904, pp. 161-190
G. A. Boulenger, 1904, Cambridge Naturel History, VII, Fishes, London, 1904, pp. 541-727.

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Teleosteans



suborder MALACOPTERYGII (PHOLIDOPHORIFORMES + CLUPEIFORMES + MORMYRIFORMES)
suborder OSTARIOPHYSI (CYPRINIFORMES)
suborder SYMBRANCHII
suborder APODES (ANGUILLIFORMES)
suborder HAPLOMI (a heterogenous assemblage)
suborder HETEROMI (a heterogenous assemblage)
suborder CATOSTEOMI (a heterogenous assemblage)
suborder PERCESOCES (a heterogenous assemblage)
suborder ANACANTHINI (PLEURONECTIFORMES)
suborder ACANTHOPTERYGII (PERCIFORMES)
suborder OPISTHOMI (MASTACEMBELIFORMES)
suborder PEDICULATI (LOPHIIFORMES)
suborder PLECTOGNATHI (TETRODONTIFORMES)

*( )内はBergの見解です.
**各亜目はBoulenger (1904)が再定義しているはずですが,記述されていないので,なんとも.一応,そう考えておきますが,先人の定義をそのまま使用している可能性もあります.
***各用語の訳はリンクへ.
 

PEDICULATI

(clade unknown) PEDICULATI (author unknown)


1904: suborder PEDICULATI: Boulenger, (Berg, 1940, p. 347)
1906: order PEDICULATI: Regan, (Berg, 1940, p.347)
1923: order PEDICULATI: Jordan, (Berg, 1940, p. 349)

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PEDICULATI = pedicul-ati =「小さい足(柄)」+「~した.された.~をもった.~状の.~化の《男複》」

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pedicul- は,ラテン語 pediculus, pediculi (=「小さい足(柄)」)の語根.
pedi-culus =「足の;柄の」+「小さなもの」という構造.

-ati は,ラテン語《接尾辞》の -atus=「~した.された.~をもった.~状の.~化の」の変異形です.その《男性》《複数》形で,「~の特徴を持つもの」の意.

あわせて,「小さい足(柄)の特徴をもったものども」と訳されます.日本語では「有柄類」と訳されることがあるようです.もうひとつ,「アンコウ類」と訳される場合がありますが,これは訳ではありませんね.

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Berg (1940)は,PEDICULATI: Boulenger, 1904は LOPHIIFORMES Berg, 1940と同じものと判断しています.

(2011.09.15.:修正)

OPISTHOMI

(clade unknown) OPISTHOMI (author unknown)


1904: suborder OPISTHOMI: Boulenger, (Berg, 1940, p. 347)
1906: order OPISTHOMI: Regan, (Berg, 1940, p.347)
1923: order OPISTHOMI: Jordan, (Berg, 1940, p. 349)

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OPISTHOMI は opisth-omi からなる合成語です.

opisth- は,ギリシャ語で「後に」を意味する[ὄπισθεν, ὄπισθε](オピステン,オピステ)が,ラテン語の《合成前綴》化したもの.opisth-, opistho- (オピストゥ・,オピスト・)=「後ろの」という意味を持ちます.

-omi もギリシャ語で「肩」を意味する[ὦμος](オーモス)が,ラテン語の《合成後綴》化した-omusの変化形です.この《男性》《複数》が名詞化したもので,「~肩をもつもの」という意味.

あわせて,「後の肩をもつものども」と訳せます.意味不明ですね((^^;).とりあえず,「後肩類」と訳しておきます.

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Berg (1940)は,OPISTHOMI: Boulenger, 1904は MASTACEMBELIFORMES Berg, 1940と同じものと判断しています.

(2011.09.14.:修正)

ACANTHOPTERYGII

order ACANTHOPTERI Müller, 1844 (Berg, 1940, p. 346).

1844: order ACANTHOPTERI Müller, (Berg, 1940, p. 346).
1904: suborder ACANTHOPTERYGII: Boulenger, (Berg, 1940, p. 347).
1909: suborder 10. ACANTHOPTERYGII: Goodrich, (Berg, 1940, p. 348)
1932: order ACANTHOPTERYGII: Woodward, (Berg, 1940, p. 350)

---
ACANTHOPTERI = acantho-pteri =「棘の,棘のある」+「~翼《男複》」
ACANTHOPTERYGII は acantho-pterygii =「棘の,棘のある」+「~翼《男複》」

--
acantho-は,ギリシャ語で「棘,針」を意味する[ἄκανθα](アカンタ)をラテン語語根化したもの.acanth-, acantho- (アカントゥ・,アカント・)=「刺の,刺のある」という意味を持ちます.

-pteri は,もとはギリシャ語で以下のように変化した結果です.
ギリシャ語の[τό πτερόν]」=《中》「羽,翼」が,ラテン語の《合成前綴》化し,pter-, ptero- =「翼状の」となります.これに《形容詞》化語尾の-usがついて,-pterus = -pter-us=「羽の,翼の」となります.《形容詞》は《三性変化》するので…,
《合成後綴》《形容詞》-pterus, -ptera, -pterum =「羽の,翼の」

《形容詞》は《複数》をサポートするので…,
《合成後綴》《形容詞》-pteri, -pterae, -ptera =《複》「羽の,翼の」
となります.

上記,-pteriはこの《男性複数》形です.
したがって,ACANTHOPTERI は acantho-pteri という構造で,「棘の,棘のある」+「~翼《男複》」という意味を持ち,「棘鰭類」と訳すことができます.


--
上記の-pteriに対し,-pterygii は以下のように変化した結果です.

ギリシャ語で「《女》翼」を意味する[ἡ πτέρυξ] (プテリュクス)が,ラテン語の《合成前綴》化し,pteryg-, pterygo- =「翼の」という意味を持ちます.

この《合成前綴》の《所属・関係》をあらわす《合成後綴》-iusが合成されて,
-pterygius = -pteryg-ius=「翼の」+《所属・関係》:「翼の」の《形容詞》形.

《形容詞》は《三性活用》しますので,
《合成後綴》《形容詞》-pterygius, -pterygia, -pterygium =「羽の,翼の」

《形容詞》は,《複数》をサポートしますので…,
《合成後綴》《形容詞》-pterygii, -pterygiae, -pterygia =《複》「羽の,翼の」

つまり,-pterygiiは「羽の,翼の」をあらわす《男複》形.

こちらも「棘鰭類」と訳すことができます.
語源となったギリシャ語が若干違うということですね.

---
なお,[ἡ πτερίς]=《女》「オシダ」を語源とするpterisの変化形は,しばしば(市販の辞典などでも)混同され,「シダ,翼」とゴッチャになっていることがあります.

これは,(たぶん)ですが,
pteris = pter-is [πτερ-ις]=「羽の,翼の」+《近い関係》=「シダ」
という変換式があり,「シダ」の形状が「翼」に似ていることからできた名前が,ラテン語変換の過程でゴッチャにしてしまった言語学者がいるということなんだと思います.

(2011.08.29:修正)

PERCESOCES

(clade unknown) PERCESOCES (author unknown)


1904: suborder PERCESOCES: Boulenger, (Berg, 1940, p. 347).
1932: order PERCESOCES: Woodward, (Berg, 1940, p. 350)

---
PERCESOCES = perc-esoces=「スズキの類の」+《不詳》

---
perc- は,ギリシャ語で「perch, スズキの類」を意味する[ἡ πέρκη](ペルケー)が,ラテン語の語根化したもの.perc-, perci-=「スズキ類の」という意味を持ちます.
ちなみに,[ἡ πέρκη]の《属格》は[τῆς πέρκης]で,ラテン語綴り化すると,percesになります.

ギリシャ語で「サケに似た魚」を意味する[ὁ ἴσοξ](イソックス)は,esox, esicis =「カワカマスの類」という形でラテン語化しています.
ちなみに,[ὁ ἴσοξ]の《複数》形は[οἰ ἴσοκες]で,ラテン語綴り化すると,isoces.

---
PERCESOCESの後半部分-esocesに該当するギ語もラ語も存在しませんが,ギリシャ語の《複数》isocesの最初の綴りをラテン語風になおせば,-esocesになります.現在の《ギ語》辞典,《ラ語》辞典には,存在していない単語ですが,1900年代初頭の辞典にはこういう単語が載っていたのかもしれません.それは,わたしにはわからないところです.

強引に解析すれば,
PERCESOCES = perc-esoces=「スズキの類の」+「カワカマスの類《男複》」=「スズキ・カワカマス類」と訳することが可能でしょう.文法的にはメチャクチャですが.

---
Berg (1940)はPERCESOCESは「(分類学的に)異質な集合体」であると評価しています.

(2011.09.15.:修正)

CATOSTEOMI

suborder CATOSTEOMI (author unknown)

1904: suborder CATOSTEOMI: Boulenger, (Berg, 1940, p. 347).

---
CATOSTEOMI = cat-oste-omi =「下へ」+「骨の」+「~肩《男複》」

---
cat- は,ギリシャ語で「下に,下へ」を意味する[κατά](カタ)が,ラテン語の語根化したもの.cat-, cata-, cato-=「下方・」という意味をもちます.

oste-も,ギリシャ語で「骨」を意味する[ὀστέον](オステオン)が,ラテン語の語根化したもの. oste-, osteo- (オステ・,オステオ・)=「骨の.骨のように硬い」という意味をもちます.

-omi は,ギリシャ語で「肩」を意味するὁ [ὦμος](オーモス)の複数形が,ラテン語の《合成後綴》語根化したものの《男複》形.

---
したがって,CATOSTEOMI は cat-oste-omi という構造で,「下へ」+「骨の」+「~肩《男複》」という意味からなります.訳すると,「下方骨の肩ども」とでもなりますか(意味不明;(^^;).

たぶん,HAPLOMI, HETEROMIと三者でセットになっているのでしょうけど,原著が入手できないのでなんとも.Berg (1940)はCATOSTEOMIは「(分類学的に)異質な集合体」であると評価しています.

(2011.09.02.:修正)

HETEROMI

(clade unknown) HETEROMI (author unknown)


1904: suborder HETEROMI : Boulenger, (Berg, 1940, p. 347).
1906: order HETEROMI: Regan, (Berg, 1940, p.347)
1923: order HETEROMI: Jordan, (Berg, 1940, p. 349)

---
HETEROMI = heter-omi =「異・」+「~肩をもつもの《男複》」(=「異肩類」)

---
heter- は,ギリシャ語で「異なった,異種の」という意味の[ἕτερος](ヘテロス)が,ラテン語の語根化したもの.heter-, hetero- (ヘテル・,ヘテロ・)=「異・,異種の」という意味を持ちます.

-omi は,ギリシャ語で「肩」を意味する[ὦμος](オーモス)が,ラテン語の《合成後綴》化した-omusの変化形.その,《男性》《複数》形で「~肩;~肩をもつもの」という意味.

あわせて,「異なった肩をもつもの《男複》」で,「異肩類」とでも訳しますか.

---
具体的にどのような魚を示しているのかは不明.
ところで,Berg (1940)はHETEROMI: Boulenger, 1904は「(分類学的に)異質なものの集合体」であると評価しています.

(2011.09.09.:修正)

HAPLOMI

(clade unknown) HAPLOMI (author unknown)


1904: suborder HAPLOMI: Boulenger, (Berg, 1940, p. 347).
1906: order HAPLOMI: Regan, (Berg, 1940, p.347)
1923: order HAPLOMI: Jordan, (Berg, 1940, p. 349)
1932: order HAPLOMI: Woodward, (Berg, 1940, p. 350)

---
HAPLOMI = hapl-omi=「単一の」+「肩をもつもの《男複》」=「単肩類」

---
hapl- は,ギリシャ語の「単純な」を意味する[ἁπλόος](ハプロオス)が,ラテン語の語根化したもの.hapl-, haplo- (ハプル・,ハプロ・)=「単一の」という意味を持ちます.

-omi は,ギリシャ語で「肩」を意味する[ὦμος](オーモス)が,ラテン語の《合成後綴》化した-omusの変化形.《男性》《複数》形で,「~肩;~肩をもつもの」という意味.

あわせて,「単一の肩をもつもの《男複》」ですので,「単肩類」とでも訳しますか.

---
具体的にどのような魚を示しているのかは不明.
ところで,Berg (1940)はHAPLOMI: Boulenger, 1904は「(分類学的に)異質なものの集合体」であると評価しています.

(2011.09.09.:修正)

APODES

order APODES C. Linnaeus, 1758

1758: order APODES C. Linnaeus,
1904: suborder APODES: Boulenger, (Berg, 1940, p. 347).
1906: order APODES: Regan, (Berg, 1940, p.347)
1923: order APODES: Jordan, (Berg, 1940, p. 349)
1932: order APODES: Woodward, (Berg, 1940, p. 350)

---
APODES = a-podes =「無・」+「足《男複》」

---
a-は,否定の接頭辞.

-podesは,ギリシャ語の[ὁ πούς]=《男》「足」の《複数形》[οἰ πόδες]=《男複》「足」のこと.
もしかしたら,ギリシャ語自体にαπόδες (α-πόδες)という言葉があるのかもしれません.

一般に,分類用語の展開は,ギリシャ語をラテン語に変換してから,合成して,変異形をつくるのが普通ですが,これは,ギリシャ語の変異形をラテン語化してあるという,珍しい例ですね.

---
「無足類」という意味の合成語をつくりたいのなら,APODI, APODAEとか,APODAとか,いくつかあるかと思いますが,ものが「足がない」という単純な発想だけに,あてはまる動物群があまりにも多く,たぶん「カブった」んだと思いますね.それで,ギリシャ語の変異形を使用するということをしたのでしょう.
たぶん,そのせいだと思いますが,Berg (1940)は,これにANGUILLIFORMES(=「ウナギ形類」)という名称を与えています.

(2011.08.31.:修正)

SYMBRANCHII

(clade unknown) SYMBRANCHII (author unknown)


1904: suborder SYMBRANCHII: Boulenger, (Berg, 1940, p. 347).
1906: order SYMBRANCHII: Regan, (Berg, 1940, p.347)

(2011.09.23.削除)SYNBRANCHIFORMES:参照


OSTARIOPHYSI

(clade unknown) OSTARIOPHYSI (author unknown)


1904: suborder OSTARIOPHYSI: Boulenger, (Berg, 1940, p. 347).
1906: order OSTARIOPHYSI: Regan, (Berg, 1940, p.347)
1932: order OSTARIOPHYSI: Woodward, (Berg, 1940, p. 350)

OSTARIOPHYSIは,白亜紀~第四紀(オーストラリアを除く全世界),現世(南極を除く全世界)に生息していました(います).

---
OSTARIOPHYSI = ostario-physi =「小骨の」+「膨らんだもの《男複》」

---
ostario- は「骨」を意味するギリシャ語の[ὀστέον](オステオン)の縮小形[οσταριον](オスタリオン)=「小さな骨」が,ラテン語の《合成前綴》化したもの.ostari-, ostario- =「小さな骨の」という意味を持ちます.

-physi はギリシャ語の「鞴,膨らますこと」を意味する[φῦσα](プューサ)をラテン語《合成後綴》化した-physusの変異形です.《男性》《複数》形が名詞化したもので,「膨らんだもの」という意味をもちます.魚類関係では「浮き袋=鰾」に意味を限定しているようです.

あわせて「小骨の膨らんだものども」という意味になってしまいますが,意図としては「小骨と膨らんだもの(浮き袋)ども」という意味.日本語では,「骨鰾類」と訳されています.
どうやら,この仲間は(ほとんど)すべてが「浮き袋」をもち,体表の細胞に“微細な棘状の突起”(=これを“オスタリオン”と表現しているらしい)をもつことが特徴なので,このネーミングがなされたようです.

---
Berg (1940, p. 347)によればOSTARIOPHYSI: Boulenger, 1904 = CYPRINIFORMES: Berg, 1940と判断しているそうです.

(2011.09.14.:修正)

MALACOPTERYGII

(clade unknown) MALACOPTERYGII (author unknown)


1904: suborder MALACOPTERYGII: Boulenger, (Berg, 1940, p. 347).

---
MALACOPTERYGII = malaco-pterygii=「軟」+「翼《男・複》」=「軟翼類(軟鰭類)」
からなる合成語です.

malaco- は,ギリシャ語で「柔らかい」を意味する[μαλακός](マラコス)が,ラテン語《合成前綴》化したもの.malac-, malaco-, malach-, malacho-=「やわらかい」を意味します.

-pterygii は,ギリシャ語で「翼」を意味する[ἡ πτέρυξ]=《女》「翼」が,ラテン語《合成後綴》化した-pterygius = -pteryg-ius=「翼の」+《所属・関係》の変化形です.その《男性》《複数》が名詞化したもので,「~翼」の意味.

あわせて,「軟らかい翼のものども」を意味します.「軟鰭類」と訳されることがあるようです.

---
Berg (1940, p. 347)によれば,MALACOPTERYGII = PHOLIDOPHORIFORMES + CLUPEIFORMES + MORMYRIFORMESと判断しているそうです.

(2011.09.13.:修正)

Teleosteans

 
Teleosteans

Teleosteanは英語.Teleosteansはその複数形.
具体的にはTELEOSTEIを示しているはず.だから,本来はTELEOSTEI: Boulenger, 1904と示されるべき.

今のところ,TELEOSTEI を定義したのは,Müller, 1844 のようですから(Berg, 1940, p. 346),

subclass II. TELEOSTEI Müller, 1844 (Berg, 1940, p. 346)
order TELEOSTEI Müller, 1844: Boulenger, 1904 (Berg, 1940, p. 347)

としておきます.
 

2011年5月21日土曜日

こんなのあるといいね(2)

 
 金属アレルギー気味なので,腕時計をする習慣がなくなりました.
 それで,もっぱら懐中時計を愛用しています.

 しかし,以前はけっこう気に入った懐中時計もおおかったのですが,最近の懐中時計は「ごっつくて低機能」か「ファッション時計」の二系統がほとんどです.

 そこで,腕時計のバンドを革製プレートに取り替えて,「ぶら下げ時計」にできるような換え部品を販売してくれないかと思います.
 眼があまり良くないので,近くで見られるように,「紐に取り替えるパーツ」(=懐中時計として使用できる)もあったらうれしいです.

 そうすると,プロトレックのぶら下げ時計とか,懐中時計とかにできる((^^;).
 もちろん,腕時計なら,さまざまな用途のものが出てるので,それを懐中時計として流用ができるようになる.非常にありがたい.
 腕時計の日焼けあとが気になる人にもお勧め.
 どうでしょう.
 

2011年5月18日水曜日

魚の分類(3)Agassiz (1857)

 
次に,ベルグが引用したのは,Agassiz (1857)の "Essay on classifications”です.
それは,以下に.

なお,四つの綱に分けられていますが,これをまとめて“魚類”とかよんでいるわけではないことに注意.同等のランク(class)には,ほかにAmphibia, Reptilia, Aves, Mammalia(両生類,爬虫類,鳥類,哺乳類)がならんでいます.

class PISCES は,構成員が減ってしまい,減った部分はそれぞれ独立してしまったわけです.
この時点で,全体を“魚類”とよぶ分類群は(科学的には)無い,ということが示されたことになるわけですが,後続の研究者からの評価は低かったようです.

class I. MYZONTES
  order MYXINIDES
  order CYCLOSTOMI
class II. PISCES
  order CTENOIDEI
  order CYCLOIDEI
class III. GANOIDEI
  order COELACANTHIDA
  order ACCIPENSERIDA
  order SAUROIDEA
  order SILURIDA
  order PLECTOGNATHI
  order LOPHOBRANCHII
class IV. SELACHII
  order CHIMAERAE
  order GALEODES
  order BATIDES

なお,各分類群の定義者が明示されていないので,記述からの推測になりますが,Agassiz (1857)が定義しなおしたと考えるべきでしょう.ベルグは,アガシが初めてMYZONTESを独立させたことが興味深いといっています.
各用語の和訳については,リンクで.
 
また,各分類群名に,こちらで調べた定義者名を付加してありましたが,調べれば調べるほど矛盾が出てくるので,あきらめて付加しないことにしました.
原著が入手できる立場にあればいいんですけどね~~.
 

BATIDES

order? BATIDES (author unknown)
order? BATOIDEI (author unknown)

1857: order BATIDES: Agassiz, (Berg, 1940, p. 347).
1923: order BATOIDEI: Jordan, (Berg, 1940, p. 349)

注:上記の定義については,原著が入手不能のため検討しておりません.検討したのは「名称」についてのみですので,お間違えのないように.

---
BATIDES = bat-ides =「Batisの」+「一族」=「エイ類」
BATOIDEI = bat-oidei=「Batisの」+「~類似の形からなる(もの)」=「エイ類」

---
Batis は,ギリシャ語で[ἡ βατίς]=「平たい魚;ガンギエイ,エイ;エイの類」のこと.
これの,《合成前綴》がbat-.
Batisは過去に「エイの仲間」の一属として名称が使用されていたことがあるようなのですが,無効名とされたのか,情報が残っていません.ちなみに,現在は鳥類や植物の仲間にBatisが使用されているようです.

-idesは「息子・子孫であること」,「類似であること」をあらわすギリシャ語語尾[-ιδης]のラテン語風つづり.これの複数形が-idaeで,現在は「科」をつくる語尾として使われています.

あわせて,「エイの一族」となります.

---
-oideiは,《合成後綴》-oideusの《名詞形》《男性》《複数》形.意味は「~類似の形からなるもの」.

したがって,BATOIDEIは「エイ類似の形からなるもの」の意味.

(2011.09.01.:修正) 


GALEODES

order GALEODES (author unknown)


1857: order GALEODES: Agassiz, (Berg, 1940, p. 347).

---
GALEODES = gale-odes =「兜の」+「~に類する」

---
gale- は,ラテン語で「兜,(革製)ヘルメット」を意味する galea, galeae の語根.もともとはギリシャ語の[γαλέη](ガレー)だという話ですが,この意味はなぜか「イタチ」.なにか深い理由があるんだと思いますが,わかりません(残念).

-odes (・オーデース)はギリシャ語形で,-odius(・オーディウス)がラテン語形で,「~に類する」という意味である,と,辞書に書いてありますが,どうもしっくり来ないですね.説明が,まったく意味不明なのです.

とりあえず,あわせて「兜類」と訳しておきます.

---
ところで,GALEODES は Galeodes として,すでに,あるクモ類に使われていたらしいので,無効名ですね.現在は使われておりません.

(2011.09.07.:修正)

CHIMAERAE

order CHIMAERAE (author unknown)

(2011.09.03.:削除)CHIMAERIFORMES,参照

SILURIDA

order SILURIDA (author unknown)


order SILURIDA: Agassiz, 1857 (Berg, 1940, p. 347).

---
SILURIDA は genus Silurus Linnaeus, 1758 を冠とする分類群名称の一つです.

---
Silurus = silur-us=「ナマズの」+《名詞化語尾》

silur-は,ギリシャ語の[ὁ σίλουρος]=《男》「ナマズの類」が,ラテン語の《合成前綴》化したもの.意味は「ナマズの類の」.

-usは,この場合,《名詞化語尾》.あわせて,「ナマズの類(属)」

----
この,Silurus の語根は silur-で,この語根に,分類群名称をあらわす語尾が合成されて,各分類群名称になります.

-idaは,ラテン語接尾辞.動物の「目」名をつくるときに使われます.たぶん,もとは形容詞形接尾辞の-idus(・イドゥス)=「《類似;動作の状態,性質》を示す」の女性形なんだろうと思いますが,詳しいことは不明.

あわせて,「ナマズの類の類」.「鯰類」としておきます.

《合成語》《科名》SILURIDAE = silur-idae=「ナマズの類の」+《科》
《合成語》《目名》SILURIFORMES = silur-iformes=「ナマズの類の」+《目》
など.

標記:SILURIDAは,
《合成語》《目名》SILURIDA = silur-ida=「Silurusの」+《一族の:中複》=「ナマズ類」
ですが,《合成後綴》-idaは,(たぶん)《一族・種族の名称をあらわす》-ides[-ιδης]の変化形-idusの《中性複数形》です.
昔は,「動物分類で《目》を合成するときに使われ」たそうですが,現在は-iformesが多数派.それでも,旧分類名称として生き延びているものもあるようです.基本は,定義者名を明記しないという習慣があるので,再定義が困難だからだと思われます.

(2011.09.22.:修正)

SAUROIDEA

order SAUROIDEA (author unknown)


order SAUROIDEA: Agassiz, 1857 (Berg, 1940, p. 347).

---
SAUROIDEA = saur-oidea =「トカゲ(形)の」+「~類似の形からなる(もの)」

---
saur- は,ギリシャ語で「トカゲ」を意味する[ὁ σαῦρος](サウーロス)が,ラテン語《合成前綴》化したものです.saur-, sauro- (サウル・,サウロ・)=「トカゲ(形)の」という意味を持ちます.

なお,saurus(サウルス)というラテン語は見あたりません.
saurusは,上記 saur- という語根に,-usというラテン語語尾がついた合成語と考えるべきでしょう.意味は《形容詞》「トカゲ(形)の」,《名詞》「トカゲ(形)のもの」.
また,“サウラ[saura]はサウルス[saurus]の女性形”などということがいわれることがありますが,“サウルス”というラテン語がないのだから,“サウラ”というラテン語もありません.これは,ギリシャ語の[ἡ σαύρᾱ](サウラー)([ὁ σαῦρος]の女性形)をラテン語風につづったものです.お間違えのないように.

---
-oidea は,現在では「動物分類上,主に「上科」の語尾に使われる」ことになっています.
もともとは,ギリシャ語の「形.種類」を意味する[εἰδος](エイドス)が,ラテン語の語尾化し,-oides (・オイデース)になったものと考えられています.形容詞で意味は「~類似の」になります.
一方で,ラテン語風語尾もあり,こちらは-oideus(・オイデウス)で,-oideus, -oidea, -oideumと変化します.《複》が-oidei, -oideae, -oidea.
つまり,ラテン語風語尾の《女性》《単数》形と《中性》《複数》形が,綴りが同じ-oideaになるわけです(説明している本人が,サッパリわかんね~(^^;).

合成語は,「トカゲ類形類」となります.“魚類”で“トカゲ類”は困った言葉ですね.そのせいか,現在は,ほとんど使われることはないようです.

(2011.09.20.:修正)

ACCIPENSERIDA

order ACCIPENSERIDA: Agassiz, 1857 (Berg, 1940, p. 347).

---
ACCIPENSERIDA は accipenser-ida からなる合成語です.

ラテン語でacipenser, acipenseris (アキペンセル,アキペンセリス)は「チョウザメの類」を意味するのことばです.
一方,このラテン語は,もとはギリシャ語の[ἀκκιπήσιον](アッキペーシオン)=「チョウザメの類」からラテン語化(accipesion)したものでしょうけど,綴りが若干変化しています.
ACCIPENSERIDA に使用されている accipenser- は,二つの中間的な綴りという不思議な状態ですが,ギリシャ語からラテン語化する途中にこのような綴りがあったのかもしれません(ただの想像です).

-idaは,ラテン語接尾辞.動物の「目」名をつくるときに使われます.
たぶん,もとは形容詞形接尾辞の-idus(・イドゥス)=「《類似;動作の状態,性質》を示す」の《女性》形《複数》が名詞化したもの.

あわせると,「チョウザメの類の類《女複》」となります.

(2011.08.29:修正)

COELACANTHIDA

order COELACANTHIDA (author unknown)

1857: order COELACANTHIDA: Agassiz,: Berg, 1940, p. 347.

(2011.09.05.:削除)COELACANTHIFORMES:参照

CYCLOIDEI

order CYCLOIDEI Agassiz, 1857


1857: order CYCLOIDEI Agassiz, (Berg, 1940, p. 347).

---
CYCLOIDEI = cycl-oidei =「丸い」+「~類似の形からなるもの《男複》」

---
cycl- は,ギリシャ語で「円.輪」という意味の[κύκλος](キュクロス)が,ラテン語語根化したもの.cycl-, cyclo-=「丸い.輪の.環の」という意味を持ちます.

-oideiは,ギリシャ語の[τό εἶδος]=《中》「見られるもの;形.種類」の変化形.
[τό εἶδος]の《合成後綴》[-οειδης]がラテン語化するときに,本来は-oeidesのはずですが,-oidesになります.この-oidesの形容詞形が-oideus = -oid-eus=「~類似の」+「~からなる」

《形容詞》は《三性変化》するので,
《合成後綴》《形容詞》-oideus, -oidea, -oideum=「~類似の形からなる」

《形容詞》は《複数》をサポートするので,
《合成後綴》《形容詞》《複》-oidei, -oideae, -oidea=「~類似の形からなる」

これらが,おのおの《名詞化》して=「~類似の形からなるもの」を意味します.
それで,-oideiはこれらのうちの,《男性》《複数》形になります.

---
あわせて,「円の類似の形からなるもの」という意味になりますが,意訳して「円鱗類」と訳されていることがあります.なぜなら,鱗の周囲が単純でスムースだからだといいます.
CTENOIDEI=「櫛鱗類」とペアで使われているようです.
鱗の周囲の形が,魚の系統関係を表しているとは…,とっても思えないですけどね((^^;).

(2011.09.06.:修正)

CTENOIDEI

order CTENOIDEI Agassiz, 1857.


1857: order CTENOIDEI Agassiz, (Berg, 1940, p. 347).

---
CTENOIDEI = cten-oidei =「櫛の」+「~類似の形からなるもの《男複》」

---
cten- はギリシャ語で「櫛」を意味する[κτενός](クテノス)が,ラテン語語根化したものです.cten-, cteno- =「櫛の」という意味になります.

-oideiは,ギリシャ語の[τό εἶδος]=《中》「見られるもの;形.種類」の変化形.
[τό εἶδος]の《合成後綴》[-οειδης]がラテン語化するときに,本来は-oeidesのはずですが,-oidesになります.この-oidesの形容詞形が-oideus = -oid-eus=「~類似の」+「~からなる」

《形容詞》は《三性変化》するので,
《合成後綴》《形容詞》-oideus, -oidea, -oideum=「~類似の形からなる」

《形容詞》は《複数》をサポートするので,
《合成後綴》《形容詞》《複》-oidei, -oideae, -oidea=「~類似の形からなる」

これらが,おのおの《名詞化》して=「~類似の形からなるもの」を意味します.
それで,-oideiはこれらのうちの,《男性》《複数》形になります.

---
あわせて,「櫛の類似の形からなるもの」という意味になりますが,意訳して「櫛鱗類」と訳されていることがあります.なぜなら,鱗の周囲が櫛のようにギザギザしているからだといいます.
CYCLOIDEI=「円鱗類」とペアで使われているようです.
鱗の周囲の形が,魚の系統関係を表しているとは…,とっても思えないですね((^^;).

(2011.09.06.修正)

MYZONTES

class MYZONTES Agassiz, 1857


1857: class I. MYZONTES Agassiz, (Berg, 1940, p. 347).

---
MYZONTES はギリシャ語の[μύζων]=《男》《単》「吸うこと;吸うもの」 の複数形[μύζοντες]=《男》《複》「吸うこと;吸うもの」をラテン語綴り化したものです.

つまり,「吸うものども」ですか.漢字には訳しにくいですね.「吸着類」とでも訳しておきます.
現在は,こういう用語の作り方はしないですね.

(2011.09.13.:修正)

MYXINIDES

(clade unknown) MYXINIDES (author unknown)


1857: order MYXINIDES: Agassiz, (Berg, 1940, p. 347).
1909: subclass 1. MYXINOIDEA: Goodrich, (Berg, 1940, p. 348)
1923: class 1. MYXINI: Berg, (Berg, 1940, p. 349)
1927: order 3. MYXINOIDEA: Stensiö, (Berg, 1940, p. 351)
1930: subclass MYXINOIDEA: Goodrich, (Berg, 1940, p. 351)

*上記は,名称を比較しただけで,定義は比較しておりません.
---
MYXINIDES = myxin-ides=「Myxineの」+《一族の名》=「Myxine一族(ヌタウナギ類)」
MYXINOIDEA = myxin-oidea=「Myxineの」+「~類似の形からなるもの《中複》」=「Myxine類(ヌタウナギ類)」
MYXINI = myxini=「Myxineに所属するもの《男複》」=「Myxine類」=「ヌタウナギ類」

---
ギリシャ語の「粘液排泄物」を意味する[μύξα](ミュクサ)が,ラテン語《合成前綴》化し,myx-, myxo-=「粘液の」という意味を持ちます.

Myxine はmyx-ine=「粘液の」+「~に似た.~に関する.~性(質)の」という意味からなり,「粘液質の」という形容詞を名詞化したもの(=「粘液質のもの」という意味)で,《属名》として用いられています.このMyxineが語根化したものが,myxin-です.

語根myxin-が,さまざまな《合成後綴》と結びついて,いくつかの分類用語を造り出します.

《一族の名》をあらわす-idesと結びついて,
MYXINIDES = myxin-ides=「Myxineの」+《一族の名》=「Myxine一族(ヌタウナギ類)」

「~類似の形からなる(もの)」を意味する《合成後綴》-oideaと結びついて,
MYXINOIDEA = myxin-oidea=「Myxineの」+「~類似の形からなるもの《中複》」=「Myxine類(ヌタウナギ類)」

また,myxin-を《合成後綴》化した-myxinusの《男性》《複数》形が-myxiniで,これをそのまま分類群名とした,
MYXINI = myxini=「Myxineに所属するもの《男複》」=「Myxine類」=「ヌタウナギ類」

などです.

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現在は,どれも,あまり一般的ではない名称なので,使用されることは無いようです.下に《現在よく使われている分類の例》を記しておきます.

《現在よく使われている分類の例》
Classis: MYXINI (auctor ignotus)
 Ordo: MYXINIFORMES (auctor ignotus)
  Familia: MYXINIDAE (auctor ignotus)
   Subfamilia: MYXININAE Nelson, 1976
    Genus: Myxine Linnaeus, 1758 [type: Myxine glutinosa Linnaeus, 1758]

(2011.09.13.:修正)

2011年5月17日火曜日

平将門

 
 安倍族のことが,あまりにわからないので,「急がば回れ」ということで,平将門について調べてみることにしました(どういう関連かは,自分でもよくわからない(^^;).

 まずは北山茂夫(1993)平将門.朝日選書467,朝日新聞社.237+頁.

  


 面白いのだけれど,なにか違う.途中で飽きてしまいました.

 次は,川尻秋生(2009編)将門記を読む.「歴史と古典シリーズ」,吉川弘文館,240頁.

  


 こちらも大筋は,前記・北山と同じ.史料の解釈.ところが,いくつか違うことがあります.それは,「武器・武具」について検討していること.なるほど,将門がどんな人物であれ,闘争に必要な「武器・武具」を揃えられないでは,話になりません.イヤ,戦いになりませんね.

 じゃあ,戦費・食料はどうしたんだろう.

 別な著者が続きます.海水準変動や炭素同位体比の検討から,「平安時代の温暖期」が将門の軍事力を支えたであろうことを議論していること.温暖化は,なにかを生み出すようです.歴史の本で,こういう検討をしているのを見るのは初めてです.歴史学も科学を使うようになったんですね.

 将門は,なぜ戦い続けたのか,よくわからなかったんですが,というよりは,「将門の乱」や「平将門という人」そのものが,よくわかっていないんです.戦乱があったこと以外は….これは,たぶん,「わからないということ」そのものがヒントの様です.
 天皇制に戦いを挑んで負けたら,存在そのものが抹殺されて当然ですね.でも,庶民は「将門伝説」として伝え続けた.
 天皇制に巣くう悪徳官僚が地方出張にゆくと,ボロもうけをして中央に帰って行くわけです.そのたびに,地方は疲弊する.どうやら,これが,平将門を生み出した原因らしい.
 君が代を強制しても,尊敬は勝ち取れないわけですね.ね,関西の人たち.

 続いて,福田豊彦(1981)平将門の乱.岩波新書黄版168,岩波書店,218頁.

  


 じつはこの本を読むために,平将門関連書籍を読み始めたんです.平将門関連書籍は掃いて捨てるほどあります.我が市の図書館でさえ.大部分は,空想歴史小説類なので,選択が大変ですけどね.
 で,何が読みたかったかというと,第二章の「関東の鉄と馬」です.

 「たたらは飽きた」んですが,「たたら」でない製鉄があったんですね.しかも,関西ではなく,関東に.いずれ「みちのくの鉄と金」の再検討を始めることになるだろうという気がしてますが,これは,その一歩になるでしょう.
 さて,もう少し記述が詳しいらしい「福田豊彦(1995)東国の兵乱ともののふたち.吉川弘文館,265頁」,というのが出版されていることがわかりましたので,早速注文することにしました.

  


 腐敗した天皇制と,そのために疲弊する東日本.これは昔の話?
 天皇が東京に移った今,大量のエネルギーを消費する大都会・東京が,東北を搾取する構図?
 原発事故は,平将門を生み出すでしょうか….まさかね.
 

2011年5月16日月曜日

驚いた

 
 いまだに,“安全だ”教の幹部が,朝のTV番組(ニュース風の番組)で“安全だ”教の布教をしている.

 今度は,「メルトダウン」の定義を変えるそうだ.
 「メルトダウン」は,ただの「溶けた」という意味しかないそうだ.これまで,日本人のみんなが「原子炉の炉心(燃料棒)が熔融する異常事態」という意味で使ってきたのにね.

 まだ,異常事態終息に向けて努力する人よりも,異常事態を起こした上に,それを隠蔽しようとする“原発システム*”の維持に努力する人たちのほうが,うじゃうじゃいるなんて….

 こんな話は,もうしたくないんだけどね.
 ただの一市民が,危険な原発システム(エゴシステム)の運営を阻止できなかったという,無理な注文に対しても,心を痛めて「こんな世の中にしてゴメン」と子どもたちに謝ったというのにね.

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*原発システム:原子力発電所のシステムではなく,反対があっても強引に原発をつくって運営してゆくシステムのことです.電力会社・お役所・政治家・御用学者・マスコミ….

 

2011年5月14日土曜日

AMPHIOXINI

order AMPHIOXINI Müller, 1844

1844: order AMPHIOXINI Müller, (Berg, 1940, p. 346).
1923: order AMPHIOXI: Jordan, (Berg, 1940, p. 349)

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AMPHIOXINI = amphi-ox-ini =「両方の」+「鋭い」+「~からなるもの《男複》」=「両鋭類」
AMPHIOXI = amphi-oxi=「両方の」+「鋭いもの《男複》」=「両鋭類」

--
amphi- はギリシャ語の「両側に.回りに」という意味を持つ[ἀμφί](アムプイ)が,ラテン語の語根化したもの.amph-, amphi-(アムプ・,アムプィ・)=「両方の.両側の.周囲の」という意味を持ちます.

【寄り道】AMPHIBIA =「両生類」は, amphibius =「水陸両生の」というラテン語からできたものです.
amph-は,amphibole =「角閃石」にも使われています.こちらは,[ἀμφί]-[βῶλος]=amphi-bolosが語源で,「両義性をもつ」<「曖昧な」の意味が強く,「曖昧な土塊」が意味.その構造の多様性からつけられたといいます.なお,ギリシャ語をそのままラテン語綴り化すると,amphi-bolosですが,ラテン語風綴りではamphi-bolusとなり,フランス人が造ったので「フランス語」とされ,英語化してamphiboleになったとそうです.

ox- もギリシャ語で,「鋭い.酸っぱい」という意味を持つ[ὀξύς](オックシュス)が,ラテン語の語根化したもの.ox-, oxo-, oxy- (オックス・,オックソ・,オックシュ・)=「鋭い,尖った.酸っぱい」という意味を持ちます.

-iniは,現在では分類群「族」の用語を造るときに使われる語尾になっていますが,もともとは,[-ιονς]=「~の,~から成る;関係する」という意味の接尾辞の変化形です.変化の道筋は割愛しますが,これの《合成後綴》《男性》《複数》で《所有・従属関係》を示しています.

 あわせて,「両方の鋭い類」.ちょっと,意味不明ですが,要するに「ナメクジウオ」を意識しているらしく,(頭をもたずに)「両方が尖っている」ということらしいです.

---
一方,AMPHIOXIの-oxiは上記[ὀξύς]がラテン語《合成後綴》化し,さらに名詞化したもので,《合成後綴》《男性》《複数》の形です.

こちらも,「両方が尖っている」ことを示す言葉です.

(2011.08.30.:修正)

HYPEROTRETI

order HYPEROTRETI Müller, 1844


1844: order HYPEROTRETI Müller, (Berg, 1940, p.346)
1906: order HYPEROTRETI: Regan, (Berg, 1940, p.347)
????: order HYPEROTRETA: (author unknown)

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HYPEROTRETI = hypero-treti =「口蓋の」+「穴の開いたもの《男複》」=「口蓋穿孔類(穿口蓋類)」
HYPEROTRETA = hypero-treta =「口蓋の」+「穴の開いたもの《中複》」=「口蓋穿孔類(穿口蓋類)」

---
hypero- は,ギリシャ語で「上にあるもの」を意味する[ὑπερῴᾱ](ヒュペローアー)が,ラテン語の《合成前綴》化したものです.解剖学的には「口蓋」を示し,hypero-=「口蓋の」という意味を持ちます.
ヒュペローアーは,「上にある.上階の」という意味の[ὑπερῷος](ヒュペローオス)から派生したもの.“上にあるから口蓋”ということですか.

-treti, -tretaは,ギリシャ語で「穴の開いた」を意味する[τρητός](トレートス)が,ラテン語の《合成後綴》化したものの変化形です.-tretiは《男性》《複数》形, -tretaは《中性》《複数》形です.

あわせて,「口蓋に穴の開いたものども」=「口蓋穿孔類(穿口蓋類)」とでも訳しておきますか.
ベルグの論文にはHYPEROTRETIしか出てきませんが,最近の論文にはHYPEROTRETAが頻出しています.しかし,定義者名を明記してるものが見つかりません(こんなんばっかりだ~~(--;).

---
補足(蛇足)しておきますと,Müller, 1844が定義したのはHYPEROTRETAであり,HYPEROTRETI はBonaparte (1846)であるという引用もあります.これが事実だとすると,Berg (1940)の記述は信用できないことになります(こんなんばっかりだ~~(--;).

(2011.09.10.修正)

HYPEROARTII

order HYPEROARTII Müller, 1844


1844: order HYPEROARTII Müller, (Berg, 1940, p. 346).
1906: order HYPEROARTII: Regan, (Berg, 1940, p.347).
1923: order HYPEROARTIA: Jordan, (Berg, 1940, p. 349)

---
HYPEROARTII = hypero-artii =「口蓋の」+「完全なもの《男複》」
HYPEROARTIA = hypero-artia =「口蓋の」+「完全なもの《中複》」

---
hypero- は,ギリシャ語の「上にあるもの」を意味する[ὑπερῴᾱ](ヒュペローアー)が,ラテン語の《合成前綴》化したものです.本来は,「上にあるロープ(帆船のロープなど)」など一般的に使われるものですが,解剖学的な話では「口蓋」を意味します.そこで,hypero-=「口蓋の」という意味を持ちます.
この言葉は,「越えて上に.過度に」という意味の[ὑπέρ](ヒュペル)と同系列の言葉ですね.ちなみに,ヒュペルはラテン語合成前綴のhyper- =「過・,過度の」という語根でよく知られています.

-artii, -artia は,ギリシャ語の「完全な.偶数の」を意味する[ἄρτιος](アルティオス)が,ラテン語の《合成後綴》化した-artiusの変化形です.「偶数」が「完全な数」とは,おもしろい発想です.ARTIODACTYLA=「偶蹄類」は,この artio- を語根にもつ,典型的な例ですね.
-artiiが《男性》《複数》形で, -artiaが《中性》《複数》形.ともに,「完全なもの」という意味です.

どちらも,あわせて「口蓋の完全なものども」という意味になります.「完口蓋類」とでも訳しておきますか.

(2011.09.10.:修正)

HOLOCEPHALI

order HOLOCEPHALI Müller, 1844


1844: order HOLOCEPHALI Müller, (Berg, 1940, p. 346).
1832: superorder HOLOCEPHALI Bonaparte,-1841: Müller, 1985.
1906: order HOLOCEPHALI: Regan, (Berg, 1940, p.347)
1909: order 2. HOLOCEPHALI: Goodrich, (Berg, 1940, p. 348)
1923: subclass HOLOCEPHALI: Jordan, (Berg, 1940, p. 349)
1923: class 4. HOLOCEPHALA: Berg, (Berg, 1940, p. 349)
1930: order HOLOCEPHALI: Goodrich, (Berg, 1940, p. 351)
1932: order HOLOCEPHALI: Woodward, (Berg, 1940, p. 350)
1934: I-3. HOLOCEPHALA: Säve-Söderbergh, (Berg, 1940, p. 351)
1936: sub-branch 3. HOLOCEPHALI: Stensiö, (Berg, 1940, p. 351)

---
HOLOCEPHALI = holo-cephali =「完全な」+「~頭をもつもの《中複》」=「全頭類/完頭類」
HOLOCEPHALA = holo-cephala=「完全な」+「~頭をもつもの《男複》」=「全頭類/完頭類」

---
hol- は,ギリシャ語の「全体の.完全な」を意味する[ὅλος](ホロス)が,ラテン語語根化したもの.hol-, holo- (ホル・/ホロ・)=「全体の.完全な」という意味を持ちます.
地質学用語の Holocene =「完新世(統)」のholo-に使用されています.

-cephali, -cephala は,ギリシャ語の「頭.頭蓋.脳」を意味する[κεφαλή](ケプァレー)が,ラテン語の《合成後綴》化したものです.-cephaliは《男性》《複数》形,-cephalaは《中性》《複数》形です.

あわせて,ともに「完全な頭をもつもの」の意味です.「全頭類」もしくは「完頭類」と訳されています.

(2011.09.09.:修正)

PLAGIOSTOMI

order PLAGIOSTOMI (author unknown)


1844: order PLAGIOSTOMI: Müller, (Berg, 1940, p. 346).

---
PLAGIOSTOMI = plagio-stomi=「横の」+「~の口をしたもの《男複》」=「横口類」

---
plagio- は,ギリシャ語の「横に(斜めに)置かれた;斜めの」という意味を持つ[πλάγιος](プラギオス)が,ラテン語《合成前綴》化したもの.plagi-, plagio- =「斜めの.横の」という意味を持ちます.日本語では,「横」と「斜め」は意味が違いますが,ギ語-ラ語では同じなのかも.
plagio-clase=「斜長石」に使われています.

-stomiも,もとはギリシャ語.「口」を意味する[τό στόμα](ストマ)をラテン語《合成後綴》化した-stomusの変化形.《男性》《複数》形が名詞化したもので「~口;~の口をしたもの」の意.

あわせて,「横の口をしたものども」となります.「横口類」と,とりあえず,訳しておきます.

(2011.09.16.:修正)

CHONDROSTEI

order CHONDROSTEI Müller, 1844


1844: order CHONDROSTEI Müller,
1906: order CHONDROSTEI: Regan, (Berg, 1940, p.347)
1909: order CHONDROSTEI: Goodrich, (Berg, 1940, p. 348)
1923: order CHONDROSTEI: Jordan, (Berg, 1940, p. 349)
1932: order CHONDROSTEI: Woodward, (Berg, 1940, p. 350)
1930: order CHONDROSTEI (PALAEONISCOIDEI, ACIPENSEROIDEI, SAURICHTHYOIDEI): Goodrich, (Berg, 1940, p. 351)

---
CHONDROSTEI = chondr-ostei =「軟骨の」+「~骨;~骨をもつもの《男複》」

---
chondr- は,ギリシャ語の「小片.穀粒.(麦)ねり粉.軟骨」を意味する[χόνδρος](コンドロス)が,ラテン語語根化したもの.chondr-, chondro- (コンドゥル・,コンドゥロ・)=「軟骨(質)の」という意味を持ちます.
chondrule, chondroitin, mitochondria などに用いられていますね.

-osteiも,ギリシャ語の「骨」を意味する[τό ὀστέον](オステオン)が,ラテン語の《合成後綴》化したもの.

[τό ὀστέον]を,ラテン語の《合成後綴》《形容詞》化すると…,
-osteus = -oste-us=「骨の」+《形容詞》

《形容詞》は《三性変化》をサポートするので…,
《合成後綴》《形容詞》-osteus, -ostea, -osteum =「~骨の」

《形容詞》は《複数》をサポートするので…,
《合成後綴》《形容詞》《複》-ostei, -osteae, -ostea =「~骨の」

これらが,おのおの《名詞》化して,
=「~骨;~骨をもつもの」の意味になります.

---
そこで,あわせて「軟骨類」と訳せます.“軟骨類”ではないことに注意.

(2011.09.04.:修正)

HOLOSTEI

(clade unknown) HOLOSTEI (author unknown)


1844: order HOLOSTEI: Müller, (Berg, 1940, p. 346)
1909: subdivision 2. HOLOSTEI: Goodrich, (Berg, 1940, p. 348)
1923: order HOLOSTEI: Jordan, (Berg, 1940, p. 349)
1930: subdivision B. HOLOSTEI: Goodrich, (Berg, 1940, p. 351)

---
HOLOSTEI = hol-ostei =「全体の;完全な」+「骨のように硬いもの《男複》」

---
hol- は,ギリシャ語の「全体の.完全な」を意味する[ὅλος](ホロス)が,ラテン語《合成前綴》化したもの.hol-, holo- (ホル・,ホロ・)=「全体の.完全な」という意味を持ちます.
地質学用語の Holocene =「完新世(統)」のholo-に使用されています.

-osteiは,ギリシャ語の「骨」を意味する[ὀστέον](オステオン)が,ラテン語《合成後綴》化した-osteusの変化形.《男性》《複数》形で「~骨;~骨のように硬いもの」という意味を持ちます.

あわせて,「全体の;完全な骨のように硬いもの」という意味で,「完骨類」もしくは「全骨類」と訳されます.

(2011.09.09.:修正)

LOPHOBRANCHII

order LOPHOBRANCHII Cuvier, 1???


1???: order LOPHOBRANCHII Cuvier, (Berg, 1940, p. 346).
1857: order LOPHOBRANCHII: Agassiz, (Berg, 1940, p. 347).

---
LOPHOBRANCHII = lopho-branchii=「鶏冠状の」+「~鰓をもつもの《男複》」

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lopho-は,ギリシャ語で「山の背.冠毛.鶏冠」を意味する[λόφος](ロプォス)が,ラテン語語根化したもの.loph-, lopho- (ロプゥ・,ロプォ・)=「鶏冠状の」という意味を示します.

-branchiiも,ギリシャ語で「鰓」を意味する[βράγχιον](ブランキオン)が,ラテン語《合成後綴》化した-branchiusの変化形.その《男性》《複数》形で,「~鰓をもつもの」の意.

あわせて,「鶏冠状の鰓をもつもの」の意.「冠鰓類」と訳しておきます.「総鰓類」と訳される場合もあるようです.

(2011.09.12.修正)

PLECTOGNATHI

order PLECTOGNATHI Cuvier, 1817


1844: order PLECTOGNATHI: Müller, (Berg, 1940, p. 346).
1857: order PLECTOGNATHI: Agassiz, (Berg, 1940, p. 347).
1904: suborder PLECTOGNATHI: Boulenger, (Berg, 1940, p. 347)
1906: order PLECTOGNATHI: Regan, (Berg, 1940, p.347)
1923: order PLECTOGNATHI: Jordan, (Berg, 1940, p. 349)

---
PLECTOGNATHI = plecto-gnathi =「編んだ」+「~顎をもつもの《男複》」=「編顎類(癒顎類・フグ類)」

---
plecto-はギリシャ語で「編んだ」を意味する[πλεκτόϛ](プレクトス)が,ラテン語《合成前綴》化したもの.plect-, plecto- =「編んだ.組んだ.捩った」という意味を持ちます.

-gnathiも,もとはギリシャ語で,「顎,口」を意味する[γνάθος](グナトス)が,ラテン語《合成後綴》化した-gnathusの変異形.《男性》《複数》形が名詞化したもので,「~顎;~の顎を持つもの」の意.

あわせて,「編んだ顎をもつものども」=「編顎類」となりますか.
「癒顎類」と訳されているようですが,こちらのほうが意味が分かりやすいですね.「フグ類」とされることもありますが,これはもちろん「訳」ではありません.

---
Berg, 1940 は,suborder PLECTOGNATHI: Boulenger, 1904はTETRODONTIFORMES: Berg, 1940と同じものであると見なしています.

(2011.09.17.:修正)

PHYSOSTOMI

order PHYSOSTOMI Müller, 1844



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PHYSOSTOMI = physo-stomi=「膨らんだ」+「~の口をしたもの《男複》」=「膨口類(?)↓」
PHYSOSTOMI = physostom-i=「浮き袋が消化管とつながっている」+《不詳》=「喉鰾類」

---
physo- はギリシャ語の「鞴,膨らますこと」を意味する[ἡ φῦσα](プューサ)をラテン語《合成前綴》化したもの.phys-, physo- (プュース・,プユーソ・)=「膨らんだ,空気・ガスのある」の意味.

-stomiも,もとはギリシャ語.「口」を意味する[τό στόμα](ストマ)をラテン語《合成後綴》化した-stomusの変異形です.《形容詞》《男性》《複数》形が名詞化したもので「~の口をしたもの」の意味.

あわせて,「膨らんだ口の類」となるはずですが….

---
physostom-という合成語自体が「浮き袋が消化管とつながっている」という意味の語根になっているようです.この場合のphyso-は「膀胱」>「袋」>「浮き袋」の連想で,stom-は「口;舌,言語;顔;出口;裂け目;先端;前」>「口から続くもの」>「消化管」の連想ですね.
PHYSOSTOMIは,したがって「浮き袋が消化管とつながっているものども」という意味になり,「喉鰾類」と訳されることがあるようです.
ただ残念なことに,この場合の-iは意味不明.-iformes、-idaが使われるべきで,PHYSOSTOMIDAになるべきだと思われますね.

(2011.09.16.:修正)

PHARYNGOGNATHI

order PHARYNGOGNATHI Müller, 1844


1844: order PHARYNGOGNATHI Müller,
1923: order PHARYNGOGNATHI: Jordan, (Berg, 1940, p. 349)

---
PHARYNGOGNATHI = pharyngo-gnathi =「喉の」+「~の顎を持つもの《男複》」=「喉顎類」

---
pharyngo-は,ギリシャ語で「喉」を意味する[φάρυγξ](プァリュゴクス)が,ラテン語《合成前綴》化したもの.pharyng-, pharyngo-=「喉の」という意味を持ちます.本来は,[φάρυγξ] はpharygxと綴り変換されるはずですが,ギリシャ語の[-γξ](-gx)は,ラテン語化して[-nx]になる習慣があります.

-gnathiも,やはりギリシャ語の[ἡ γνάθος]=《女》「顎,口」が,ラテン語の《合成後綴》化した-gnathusの変異形.《男性》《複数》形が名詞化したもので,「~の顎を持つものども」という意味.

あわせて,「喉の顎を持つもの」という意味で,「喉顎類」とでも訳しておきましょうか.

(2011.09.16.:修正)

ANACANTHINI

order ANACANTHINI Müller, 1844

1844: order ANACANTHINI Müller, (Berg, 1940, p. 346).
1904: suborder ANACANTHINI: Boulenger, (Berg, 1940, p. 347).
1906: order ANACANTHINI: Regan, (Berg, 1940, p.347).
1923: order ANACANTHINI: Jordan, (Berg, 1940, p. 349)
1932: order ANACANTHINI: Woodward, (Berg, 1940, p. 350)

---
ANACANTHINI = an-acanth-ini=「無・」+「棘の」+「~からなるもの《男複》」

---
acanth-は,ギリシャ語で「棘,針」を意味する[ἄκανθα](アカンタ)をラテン語語根化したもの.これに「否定の意」のan-がついて「棘がない」を意味します.

-iniは,現在は「族」名を合成するときに使われる語尾ですが,この当時はそのような慣習はなかったでしょう.
もとの意は,
《関係》《性質》《原料》《所有・従属関係》を示す《合成後綴》-inus (-īnus)の《男性》《複数》形.本来は形容詞(=「~からなる」)ですが,《名詞》化していて(=「~からなるもの」)を意味します.

---
したがって,「無棘類」と訳すことができます.
日本では「タラ類」と訳されている場合がありますが,これは「訳」とはいえないでしょう.

---
(蛇足)suborder ANACANTHINI: Boulenger, 1904は,Berg (1940, p. 347)によれば,PLEURONECTIFORMES: Berg, 1940と同じとのこと.

(2011.08.31:修正)

ACANTHOPTERI

order ACANTHOPTERI Müller, 1844.

---

(2011.08.29:削除)ACANTHOPTERYGII 参照のこと

SIRENOIDEI

order SIRENOIDEI Müller, 1844.


order SIRENOIDEI: Jordan, 1923 (Berg, 1940, p. 349)

---
ギリシャ語の[Σειρήν](セイレーン)はラテン語綴化するとSeirenですが,ラテン語ではSiren (Sīrēn)(シーレーン)が用いられています.これは「海の女精シーレーン*」のこと.セイレーンはもともと,上半身が人間の女性で下半身が鳥の姿をしていましたが,いつの間にか,半人半魚の姿で描かれるようになりました.要するに“人魚”ですね.
ちなみに,この伝説の正体と考えられるようになった動物のグループを[SIRENIA](シーレーニア)とよんでいます.ジュゴンやマナティのことですね.こちらは哺乳類.

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SIRENOIDEIは,定義がわからないのでなんですが,Müller (1844)ではsubclass DIPNOIに,Jordan (1923)では subclass DIPNEUSTAに分類されていますので,今でいう「肺魚類」の一グループだと考えられていたと思われます.死語なのか,再定義もしくは同物異名とされたのかは不明.

さて,SIRENOIDEIはSirenに「類似」を意味する-oideusの変化形.《男性複数形》-oideiを合成したもの.意味は「人魚類類」ですが「半魚様類」とでも訳しておきますか.
SIRENOIDEIは日本では紹介されたことがないのか,和訳は見つけられませんでした.ま,哺乳類と間違われそうですから,使用しないのはいいことですね.

---
ただし,困ったことに,両生類にgenus Siren Österdam, 1766 が存在し,
suborder SIRENOIDEA Dubois, 2005
 family SIRENIDAE Gray, 1825
  genus Siren Österdam, 1766**
  genus Siren Linnaeus, 1767**

があります.
哺乳類のほうのSIRENIAは,まずいことになると思いますね.

---
* 日本では「セイレン,サイレン」とも表記される.「セイレン」は「セイレーン」の誤記.「サイレン」は英語の日本語表記.
** 該当する属名の定義者が二人います.どちらに優先権があるのか現時点では判断できないので,両方ともあげておきます.

(2011.09.22.:修正)

2011年5月11日水曜日

LEPTOCARDII

subclass LEPTOCARDII Müller, 1844


1844: subclass VI. LEPTOCARDII Müller, (Berg, 1940, p. 346).
1923: class 1. LEPTOCARDII: Jordan, (Berg, 1940, p. 349)

---
LEPTOCARDII = lepto-cardii =「細い」+「~の心臓を持つもの《男複》」

---
lepto-は,ギリシャ語で「皮を剥いた.薄い.軟らかい.狭い.細い」を意味する[λεπτός](レプトス)が,ラテン語語根化した lept-, lepto- (レプトゥ・/レプト・)=「薄い,弱い,細い,狭い」を意味する合成前綴.

-cardiiは,ギリシャ語で「心臓」を意味する [καρδίᾱ](カルディアー)がラテン語《合成後綴》化した-cardiusの変化形.《形容詞》《男性》《複数》の-cardiiが名詞化したもので,「~の心臓を持つものども」の意味.

とあわせて,「細い心臓を持つものども」という意味です.仮に「細心類」と訳しておきます.

(2011.09.12.:修正)

CYCLOSTOMI

CYCLOSTOMI
(2011.08.26:削除)CYCLOSTOMATA参照
  

MARSIPOBRANCHII

(clade unknown) MARSIPOBRANCHII (author unknown)


1844: subclass V. MARSIPOBRANCHII s. CYCLOSTOMI: Müller, (Berg, 1940, p. 346).
1906: class MARSIPOBRANCHII: Regan, (Berg, 1940, p.347)
1923: I. MARSIPOBRANCHII s. CYCLOSTOMATA: Berg, (Berg, 1940, p. 349)
1923: class 2. MARSIPOBRANCHII: Jordan, (Berg, 1940, p. 349)

---
MARSIPOBRANCHII = marsipo-branchii=「小袋の」+「~鰓をもつもの《男複》」=「囊鰓類」

---
marsipo-は,ギリシャ語の[ὁ μάρσιπος]=「袋,小袋」が,ラテン語の《合成前綴》化したもの.
同様に marsipi-, marsipio-もあります.

[ὁ μάρσιπος](マルシポス)はmarsupium (marsūpium) (マルスーピウム)もしくはmarsuppium (marsūppium) (マルスーッピウム)とラテン語化していますので,こちらからできたラテン語合成前綴はmarsup-, marsupi-, marsupp-, marsuppi-が知られています.MARSUPIALIAは「有袋類」ですね.こちらは,よりラテン語的といえましょうか.

-branchiiは,ギリシャ語で「鰓」を意味する[βράγχιον](ブランキオン)が《合成後綴》化したもの.その《男性》《複数》形で,「~鰓をもつもの」の意.

あわせて,「袋の鰓をもつもの」=「囊鰓類」と訳しておきます.

---
なお,subclass V. MARSIPOBRANCHII s. CYCLOSTOMIは記述法の意味が不明なので,上記の様にしてあります.

(2011.09.13.:修正)

SELACHII

(clade unknown) SELACHII Müller, 1844


1844: (clade unknown) SELACHII Müller,(Berg, 1940, p. 346)
1857: class IV. SELACHII: Agassiz, (Berg, 1940, p. 347).
1906: class SELACHII: Regan, (Berg, 1940, p.347).
1909: order 1. SELACHII: Goodrich, (Berg, 1940, p. 348)
1923: class 3. SELACHII: Berg, (Berg, 1940, p. 349)
1923: subclass SELACHII: Jordan, (Berg, 1940, p. 349)
1930: order SELACHII: Goodrich, (Berg, 1940, p. 351)
1932: order SELACHII: Woodward, (Berg, 1940, p. 350)
1934: I-4. SELACHII: Säve-Söderbergh, (Berg, 1940, p. 351)
1936: sub-branch 4. SELACHII: Stensiö, (Berg, 1940, p. 351)

---
Müller (1844) が提案したSELACHII は,ギリシャ語で[τό σέλαχοϛ]=《中》「サメの類」の変化形です.

[σέλαχοϛ]をラテン語綴り化するとselachos.この語根が selach-で,「~の.~(に)属する,~(に)関係する」を意味する《合成後綴》《形容詞》の-iusを合成すると,
selachius = selach-ius=「鮫の」+「~の.~(に)属する,~(に)関係する」

になります.形容詞は《三性変化》するので,
《合成後綴》《形容詞》selachius, selachia, selachium=「鮫に属する」

形容詞は《複数》をサポートするので,
《合成後綴》《形容詞》《複》selachii, selachiae, selachia=「同上」

これらが,おのおの《名詞》化して,「鮫;鮫に属するもの」の意味になります.
SELACHIIは,これらのうちの《男性》《複数》形で,「鮫に属するものども」となります.

---
もう一つ.
ギリシャ語の[τό σελάχιον]=《中》「(小さな)サメの類」(縮小語)のラテン語綴りはselachionです.この語根は,selachi-で,これに《形容詞》化語尾の-usを合成すると,selachiusになります.
…?….
「小さな鮫の」という形容詞と,「鮫に属する」という形容詞が同じ形になっちまいました.
これは,どう考えたらいいのでしょう.文法学者の意見を聞きたいところですね.なんにしても,わたしの能力を超えた問題です.

---
蛇足します.
SELACHIIのほうは,現在でも別なランクのサメ類に使われることもあるようですが,Müller (1844) の定義と同じかどうかは,まず,定義者名が明示されることがないので「不詳」です(こまったもんだ).

subclass IV, ELASMOBRANCHII Bonaparte, 1838 s. SELACHII Müller, 1844
 order PLAGIOSTOMI (author unknown)
 order HOLOCEPHALI Müller, 1844

class IV. SELACHII: Agassiz, 1857 (Berg, 1940, p. 347).
 order CHIMAERAE
 order GALEODES
 order BATIDES

class SELACHII: Regan, 1906 (Berg, 1940, p.347).
 subclass TREMATOPNEA
  order PLEUROTREMATA (NOTIDANOIDEI, GALEOIDEI, SQUALOIDEI)
  order HYPOTREMATA (NARCOBATOIDEI, BATOIDEI)
 subclass CHASMATOPNEA
  order HOLOCEPHALI

order 1. SELACHII: Goodrich, 1909 (Berg, 1940, p. 348)

class 3. SELACHII: Berg, 1923 (Berg, 1940, p. 349)

subclass SELACHII: Jordan, 1923 (Berg, 1940, p. 349)
 order PLEUROPTERYGII
 order ACANTHODEI
 order ICHTHYOTOMI
 order POLYSPONDYLI (fam. ONCHIDAE)
 order CESTRACIONTES
 order SELACHOPHIDICHTHYOLDEI
 order NOTIDANI
 order EUSELACHII
 order TECTOSPONDYLI
 order BATOIDEI

order SELACHII: Woodward, 1932 (Berg, 1940, p. 350)

order SELACHII: Goodrich, 1930 (Berg, 1940, p. 351)

となっていますので,Müller (1844)のSELACHIIとAgassiz (1857)のSELACHIIは,さらにRegan, 1906のSELACHIIは定義が異なることになります.なお,Goodrich (1909), Woodward (1932), Goodrich (1930)では,classレベルではなくorderレベルの扱いです.
したがって,分類用語SELACHIIを使用するときには,だれの定義なのか明示する必要があります.

(2011.09.20.:修正)

ELASMOBRANCHII

(unranked clade) ELASMOBRANCHII Bonaparte, 1838


1838: (unranked clade) ELASMOBRANCHII Bonaparte,
1909: subclass 1. ELASMOBRANCHII: Goodrich, (Berg, 1940, p. 348)
1923: class 5. ELASMOBRANCHII: Jordan, (Berg, 1940, p. 349)
1930: subclass ELASMOBRANCHII: Goodrich, (Berg, 1940, p. 351)
1932: subclass 4. ELASMOBRANCHII: Woodward, (Berg, 1940, p. 350)
1934: I. ELASMOBRANCHII: Säve-Söderbergh, (Berg, 1940, p. 351)
1936: branch I. ELASMOBRANCHII: Stensiö, (Berg, 1940, p. 351)

---
ELASMOBRANCHII = elasmo-branchii=「板の」+「~鰓をもつもの《男複》」=「板鰓類」

---
elasmo-は,ギリシャ語で「金属板」を意味する[ἔλασμα](エラスマ)がラテン語語根化したelasm-, elasmo- で「板の」を意味します.「エラスモサウルス」の「エラスモ・」ですね.
ちなみに,エラスモサウルスの胸板や腰骨は“板のよう”に見えます.道内のいくつかの博物館でエラスモサウルス類の骨格を展示していますので,実際にみてみるといいでしょう.

-branchiiは,ギリシャ語で「鰓」を意味する[τό βράγχιον](ブランキオン)が《合成後綴》化したもの.

-branchius = -branchi-us=-「鰓の」+《形容詞化語尾》

形容詞は《三性変化》しますので…,
《合成後綴》《形》-branchius, -branchia, -branchium =「~鰓の」

形容詞は《複数》をサポートしますので…,
《合成後綴》《形》《複》-branchii, -branchiae, -branchia =「~鰓の」

これらが,おのおの《名詞》化して「~鰓;~鰓をもつもの」の意味になります.

あわせて,「板の鰓をもつもの」=「板鰓類」
(あ~ぁ.これを解決するのに,いったい何冊の本を読んで,何日かけたことだろう(^^;)

---
ちなみに,和羅辞典には branchiae, branchiarum, f., pl. とあり,《女性》ですから,これを信じたら,どうやっても語尾が -ii にはならないのです.ところで,元のギリシャ語は《中性》なんですから,《ラ語》化したら《女性》になるということ自体を疑わなければならなかったんですけどね.

さて,elasmo-branchiiをあわせて,「板の鰓ども《複数》」.これは現在でも普通に「板鰓類」として使われています.
こういう怪しげな論理展開はやめて, ELASMOBRANCHIMORPHA とでもしてくれれば,スッキリするのですが….

なお,学名のルールには,種名の性は属の性にあわせなければならないという,異様なこだわりがあります.そのため,原語(特にギリシャ語の様に「性」がある言語)の「性」は重視されているのだと,勝手に思い込んでいました.
しかし,実際は,元の性が《女性》でも《中性》でも,ラテン語化に際して“語尾が-usに終わる名称は男性”にするというのでは(語尾を-usにするという強引さも含めて),なにか相当な歪みがある(科学史上あった)のだろうかと想像してしまいます.(一般的な古生物学者の「性格」からもね)

(2011.08.25:修正)



もう一つ.
-iumという接尾辞があります.主に《元素名》を造るときに使われる《接尾辞》ですが,元々は《縮小詞》だったらしいです.
もしかして,elasmobranchiium = elasmo-branchi-ium=「板の」+「鰓」+《縮小詞》=「小さな板の鰓」という言葉が成立していたとすれば,この複数形はELASMOBRANCHIIIになります.iがひとつ多いですが,branchi-という《合成前綴》は,まれにbranch-という例もあるようで,そうだとすれば,ELASMOBRANCHIIという言葉が成立します.
なんにしろ,この言葉を造り出した学者先生が「どういう意味」で合成したのかがわからないので,なんともいえませんね.

(2011.08.25:付加修正)



GANOIDEI

subclass GANOIDEI Müller, 1844


1844: subclass III. GANOIDEI Müller, (Berg, 1940, p. 346).
1857: class III. GANOIDEI: Agassiz, (Berg, 1940, p. 347)
1923: superorder GANOIDEI: Jordan, (Berg, 1940, p. 349)
1932: subclass 6. GANOIDEI: Woodward, (Berg, 1940, p. 350)

---
GANOIDEI = gan-oidei=「光沢のある」+「~類似の形からなるもの《男複》」

--
gan-は,ギリシャ語の「輝き,艶,光沢」を意味する[γάνος](ガノス)が,ラテン語語根化したgan-, gano- (ガン・/ガノ・)で「光沢のある」を意味します.

-oideiは,「類似」を意味する-oidに,「~からなる」を意味する-eusを合成した-oideusの変化形.《男性》《複数》形です.

したがって,あわせて「光沢のある類似の形からなるもの」とかになりますが,意味不明ですね.意図的に「光鱗類」,「硬鱗魚類」などと訳されています.

(2011.09.07.:修正)

DIPNOI

subclass I. DIPNOI Müller, 1844.


1844: subclass I. DIPNOI Müller,.
1909: subclass 1. DIPNOI: Goodrich, (Berg, 1940, p. 348)
1923: class 5. DIPNOI: Berg, (Berg, 1940, p. 349)
1930: subclass DIPNOI: Goodrich, (Berg, 1940, p. 351)
1932: subclass 5. DIPNOI: Woodward, (Berg, 1940, p. 350)
1934: II-A. 1. DIPNOI: Säve-Söderbergh, (Berg, 1940, p. 351)
1936: sub-branch 2. DIPNOI: Stensiö, (Berg, 1940, p. 351)

---
DIPNOI(ディプノイ)は,普通に使われている(あるいは,使われていた)ラテン語ではなく,ギリシャ語からの合成語です.

DIPNOI = di-pnoi
--
di-はギリシャ語で「二回,二度,二倍」を意味する[δίς](ディス)を,ラテン語の語根化したもの.
これは,di-もしくはdis-の形を取り,「二つの,両方の,二重の」を意味します.

-pnoiは不詳.

ギリシャ語で「風,空気.呼吸.生命,魂.インスピレーション.霊,霊魂.精霊」を意味する[πνεῦμα](プネウーマ)の別綴り(簡略形?)である[πνοή / πνοιή](プノエー・プノイエー)を,ラテン語の語根化すると,pno-=「呼吸の」となります.
つまり,dipno-=「二つの呼吸法をとる…」となると思われますが,どういう経緯をたどってdipnoiになるのかは解析できませんでした.

--
訳すと「二呼吸類」とでもなりますか.ま,水中でも空気中でも呼吸できるということですね.
日本語訳では通常「肺魚類」とされていますが,これは訳ではないですね.

(2011.08.25:修正)


--
もしかすると,-pnousという《形容詞》を合成していたのかもしれません.
-pnous = -pno-us=「呼吸の」+《形容詞化語尾》
これが,《形容詞》ですから,《三性変化》をおこします.
《合成後綴》《形容詞》-pnous, -pnoa, -pnoum =「呼吸の」(順に《男》《女》《中》)
これが,各々《複数》になると,
《合成後綴》《形容詞》-pnoi, -pnoae, -pnoa =「呼吸の」(順に《男》《女》《中》)
さらに,各々が《名詞》化すると,=「~呼吸をするもの」という意味になります.
従って,-pnoiは《男複》「~呼吸をするもの」.

DIPNOI = di-pnoi=「二つの」+「~呼吸をするもの《男複》」=「二呼吸類」となりますね.

(2011.08.26:修正)


PISCES

superclass PISCES Linnaeus, 1758(不詳)

1844: class PISCES: Müller, (Berg, 1940, p. 346).
1857: class II. PISCES: Agassiz, (Berg, 1940, p. 347).
1906: class PISCES: Regan, (Berg, 1940, p.347)
1909: grade I. class PISCES: Goodrich, (Berg, 1940, p. 348)
1923: Il. PISCES: Berg, (Berg, 1940, p. 349)
1923: class 6. PISCES: Jordan, (Berg, 1940, p. 349)
1930: class PISCES : Goodrich, (Berg, 1940, p. 351)
1932: class PISCES: Woodward, (Berg, 1940, p. 350)
1937: Grade PISCES: Watson, (Berg, 1942, p. 353.)

---
「魚」のことをラテン語でpiscis(ピスキス)といいます.複数形もpiscis(ピスキス).
ところが(辞典の説明が簡略すぎてよくわかりませんが),天文学でいう「魚座」のことをPisces (Piscēs)(ピスケース)といい,こちらはピスキスから派生したことになっており,しかも,もとから複数形.理由は,どうも,魚座が二匹の魚を示していることらしいですね.複数形のピスケースにも複数形があります(単複にあまり注意を払わない日本人にはわかりにくい感覚です).

それはPiscium(ピスキウム).
魚座が二つあったりするわけはないので,これはどうも,占星術関連の言葉のようです.つまり,複数の「魚座生まれの人」.逆に,占星術では「魚座」のことを「双魚宮」とよんでいるようですが,なるほど,ある意味,占星術の方が正確なんですね.

ともあれ,分類名PISCES(ピスケース)は,現実の魚からではなく「魚座」からできた言葉ということになります.
 
---
蛇足しておきますと,

class PISCES Linnaeus, 1758
 order APODES Linnaeus, 1758
 order JUGULARES Linnaeus, 1758
 order THORACICI Linnaeus, 1758
 order ABDOMINALES Linnaeus, 1758
 order BRANCHIOSTEGI Linnaeus, 1758

class PISCES: Müller, 1844
 subclass I. DIPNOI Müller, 1844
 subclass II. TELEOSTEI Müller, 1844
 subclass III. GANOIDEI Müller, 1844
 subclass IV, ELASMOBRANCHII Bonaparte, 1838 s. SELACHII Müller, 1844
 subclass V. MARSIPOBRANCHII (author unknown) s. CYCLOSTOMI (author unknown)
 subclass VI. LEPTOCARDII Müller, 1844

class II. PISCES: Agassiz, 1857
 order CTENOIDEI
 order CYCLOIDEI

class PISCES: Regan, 1906
 subclass PALAEOPTERYGII
 subclass NEOPTERYGII
 subclass CROSSOPTERYGII

grade I. class PISCES: Goodrich, 1909
 subgrade 1. CHONDRICHTHYES
 subgrade 2. † OSTRACODERMI
 subgrade 3. † OSTEICHTHYES

Il. PISCES: Berg, 1923 (Berg, 1940, p. 349)
 A. CHONDRICHTHYES
 B. OSTEICHTHYES

class 6. PISCES: Jordan, 1923 (Berg, 1940, p. 349)
 subclass CROSSOPTERYGII
 subclass DIPNEUSTA
 subclass ACTINOPTERI

class PISCES: Woodward, 1932 (Berg, 1940, p. 350)
 subclass 1. † OSTRACODERMI
 subclass 2. CYCLOSTOMI
 subclass 3. † ARTHRODIRA
 subclass 4. ELASMOBRANCHII
 subclass 5. DIPNOI
 subclass 6. GANOIDEI
 subclass 7. TELEOSTEI

class PISCES: Goodrich, 1930 (Berg, 1940, p. 351)
 subgrade CHONDRICHTHYES
 subgrade OSTEICHTYES

と,なっています.各々構成員が違いますから,定義が異なることになります.したがって,用語PISCES を使用するときには,だれの定義なのか,明示する必要があります(そういうのって,みたことないですけど~~(^^;).

 

2011年5月10日火曜日

魚の分類(2)Müller (1844)

 
 まずは,Bergという人から.
 Leo S. Berg (Lev Semenovich Berg); 1876-1950
 と,いう記述があります.日本語での表記の仕方は不明です.もとがロシア人ですので,ロシア語を英語に発音転写したものでしょうから,とりあえず,「レオ=セメノヴィッチ=ベルグ」としておきます.わたしはロシア語も英語もできませんもので.

---


 ベルグは,最初に注目すべき「科学的な」現世の魚類分類はMüller (1844)の試みであるといっています.
Müller, J., 1844, Über den Bau und die Grenzen der Ganoiden und über das natürliche System der Fische. Abhandl. Akedemie Wiss. Berlin, phys.-math. Kl., 1844, pp. 201-204.

 つまり,Müller (1844)以前の分類学的試みは科学的でない,もしくは科学的な議論の対象にならない,と,いってるわけです.

 Müller (1844)以前の現世魚類分類についての試みが,どんなものであったかは,知ることもできませんが,こういういい方には注意が必要です.“過去の研究は非科学的で,錬金術にもひとしい”といういい方がごく最近もされています.それは,(プレートテクトニクス論を展開した)地球科学者が(地向斜造山論を展開した)地質学者に対して貼ったレッテルです.
 まあ,現在,ほとんどの地質学者はその看板を下ろして,自らを地球科学者と名のってますから,そのレッテルにクレームを付ける人なんて,まず,いないんですけど(地質学者より一ランク下がるとされる「地質屋」は,まだその看板を下ろしていないようです).「古い神,土俗の神は悪魔である」というやり方は,キリスト教世界を眺めてみると腐るほど例があります.

 科学的か非科学的かは,(科学的には(^^;)裏表の関係にあるのではなくて,相対的にどうかという程度のものです.どちらがよりリーズナブルに自然を説明しているか,違いはその程度のものです(たいした理由もなく,あっちは古いから非科学的=オカルトと断定するのは,科学ではなく宗教の世界でしょう).もちろん,「科学は知識の体系」ですから,教祖さまが黒といえば黒になるようなものは,体系として成立していないので,科学ではありません.

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 さて,Berg (1940)に示されたMüller (1844)の分類を引用してみましょう.

class PISCES


subclass I. DIPNOI Müller, 1844
 order SIRENOIDEI Müller, 1844
subclass II. TELEOSTEI Müller, 1844
 order ACANTHOPTERI Müller, 1844
 order ANACANTHINI Müller, 1844
 order PHARYNGOGNATHI Müller, 1844
 order PHYSOSTOMI Müller, 1844
 order PLECTOGNATHI Cuvier,
 order LOPHOBRANCHII Cuvier,
subclass III. GANOIDEI Müller, 1844
 order HOLOSTEI (author unknown)
 order CHONDROSTEI Müller, 1844
subclass IV, ELASMOBRANCHII Bonaparte, 1838 s. SELACHII Müller, 1844
 order PLAGIOSTOMI (author unknown)
 order HOLOCEPHALI Müller, 1844
subclass V. MARSIPOBRANCHII (author unknown) s. CYCLOSTOMI (author unknown)
 order HYPEROARTII Müller, 1844
 order HYPEROTRETI Müller, 1844
subclass VI. LEPTOCARDII Müller, 1844
 order AMPHIOXINI Müller, 1844

 まず,class PISCESですが,構成要素をみればわかるとおり,class PISCES Linnaeus, 1758とはまったくちがうものですから,たぶんclass PISCES Linnaeus, 1758: Müller, 1844となるべきものなのでしょう(だったら,そう明示してほしい).もっとも,いわゆる“魚類”がすべて含まれているのなら,わけ方が変わっただけで「ぜんぶ含まれているのでLinnaeus (1758)の定義と同じ」という考え方も成り立つかとは思いますが,なんにしても,定義が明示されていないのだから,どうにもならないです.

 subclass (亜綱)はすべて,Müller (1844)が立てたものと書いてあります.order (目)以下については,定義者名が示されていなかったので,ここに表示した定義者名はわたしがいくつかの方法によって調べて付加したものです.Cuvier の分類を踏襲しているものがありますが,いつのものかは不明.


 なぜ,魚類分類では,定義者名を示さないという習慣が続いているのでしょうね?
 たぶん,博物学の時代のあまりに古いところから分類作業が始まり,あまりにたくさんの分類法が提示されてきた結果,事実上,文献を示すことができないなどということがあるのかもしれません.

 四番目と五番目の亜綱は二つの名称が併記されていますが,「s.」の略号の意味は不明です.

 さて,上記分類名には“和訳”がないですが,それについては,別項で….

 

魚の分類(1)

 
 「苦しい時代に」をブラシアップするために,魚の分類と進化についてしらべています.

 以前,「シャケの進化」をしらべたときに,魚類の分類がサッパリわからないことに悩みました.
 取っ掛かりがまるでないのですね.

 たとえば,学名の記載者が記述されていないので,原著に当たれない.これは,上位分類については,特にその傾向が強く,「○○目」とか,分類名はあるのに,定義者・定義がわからない.これは,魚類分類では,当たり前のようになっていて…,正直な話,分類してるとはとっても思えない.定義がみつからないんですから.
 第一には,魚の分類なんてやってる人が,日本には(たぶん)存在しないんだろうということなんでしょう.と,思っていたら,これは外国でもほぼ同じ状況のようです.分類名に記載者(定義者)が示されていないのが普通です.だからぜんぜんわからない.
 わからないから,分類が混乱してることすら,あいまいなまま.

 たとえば,魚類[pisces]という言葉は,すでにいくつかの理由で分類名としては使われていません.
 最初に,pisces(魚類)という言葉を使ったのは,どうやらLinnaeus (1758)らしいです.
 ところが,Linneが定義した(原著が入手できないので,どのように書いてあったかはわかりません)piscesは以下のようになっていました(らしい(^^;).

class PISCES Linnaeus, 1758
├ order APODES Linnaeus, 1758(ここだけの訳語:無足類)
├ order JUGULARES Linnaeus, 1758(ここだけの訳語:喉位類)
├ order THORACICI Linnaeus, 1758(ここだけの訳語:胸郭類)
├ order ABDOMINALES Linnaeus, 1758(ここだけの訳語:腹腔類)
└ order BRANCHIOSTEGI Linnaeus, 1758(ここだけの訳語:鰓蓋類)

 で,ここに示された[order](目)はどれも,現在は使われていません.ということは,PISCESの構成要素がないんだから,PISCES Linnaeus, 1758自体も成立しない.
 誰かが,たとえば,class PISCES Linnaeus, 1758 (emend. Gonbe, 19xx)として訂正していれば,それを使えますが,そんなのはみつからない.だから,class PISCES Linnaeus, 1758は“死語”ということになります(それでも使われている場合がある).

 これがわかるだけでも数年かかっています.それほど,魚の分類に手を付けるのは難しい(^^;.
 だから,どうにもならないのですが,以前,古書店からBerg (1940) Classification of fishes both recent and fossil. A. J. Reprint Agency, New Delhi, 517 pp.というのを入手していたのを,すっかり忘れていたんですが,「苦しい時代に」を書こうとして,ふとその存在を想い出したわけです.
 そしたら,原文はロシア語なんですが,後半に英訳がついていて,魚類分類の研究史が載ってました.
 しばらく,それで整理してみようかなと考えています.
 終わったら,結局,わからなかった…と,なりそうですが,まあ,このブログは探索メモですから((^^;).
 

2011年5月9日月曜日

事故の法則

 
 「事故はめったに起きない」
 わたしは,そう思っています.

 休日のドライブは嫌いなのですが,必要があって,しばしば出かけます.そうすると,必ず,「怖いドライバー」にであいます(怖いドライバーにあう確率が高いから,休日のドライブは「や」なのです).
 「あれでよく事故が起きないなあ」と,つぶやきます.
 そう,たいていの場合は,巻き込まれそうになった相手のドライバーが避けることによって,事故は回避されています.「怖いドライバー」のほうは,なにかが起きかかったことには,間違いなく気付いていないと思います.

 それでも,この国では,年間一万人もの交通事故死者を出してるのですから,まれに「怖いドライバー」と「怖いドライバー」が絡み合うことがあるのでしょう.

 ちなみに,事故死者数が一時期に比べて減っているのは,交通法規がきびしくなったせいでも,警察が努力したせいでも,事故に対する意識があがったせいでもありません.車製造メーカーが安全な車を造ったからです.というよりは,事故が起きれば死者が出るような危険な車を作りにくくなったからでしょう.
 しかし,不況のせいで,軽自動車に乗り換える人が増えてますから,死者数はこれから増えてゆくでしょう.軽自動車は安全対策がより難しいですからね.

 話を戻します.

 「事故はめったに起きないものです」
 ただ,「危険な企業」と「危険な企業」が絡み合った場合は,事故にいたる確率は,確実に高くなります.
 食肉業者がトリミングをおこなっているか,焼き肉店側がトリミングをおこなっていれば,死者が出るほどの事故には至らなかったでしょう.ある確率で危険性はあるものの,どこかでだれかが回避しているのが普通だからです.
 今回は,お互いに責任をなすりあっている二つの企業が,事故の確率を“かけ算”してしまった結果,臨界値を越えてしまったのでしょう.

 同じことが,原発にもいえます.
 核反応はもともと,危険なものです.それを前提として,真摯に対応する企業と指導力のある政府.利口な国民が構成要素だったら,事故なんか起きなかったのです.
 何が何でも,原発を造りたい指導者.それで一儲けしたい企業.群がる悪徳政治家.コントロールできないお役所.監視しない国民….事故の確率はべき乗で高くなっていたのは,間違いないでしょうね.
 

2011年5月7日土曜日

「山が楽しくなる地形と地学」

 
 久々に面白い本を見つけました((^^)).

 広島三朗(1991)山が楽しくなる地形と地学=山,それ自体がおもしろい!=.(山と渓谷社刊)

    


 ずいぶんと古い本ですが,まだ現役.
 気がつかなかったのは,「登山家」あるいは「登山初心者」のための本だったからでしょう.
 読んでいて,一頁を読み終わると,次の頁が読みたくなる.しかも,なんとなくワクワクする.

 「地形と地学」と書いてありますが,地質学そのものです.
 しかも古いタイプの「博物学」の匂いを濃く残している.眼に止まるものすべてについて「これはなに?」,「あれはなぜ?」という原始的な欲求を満足させてくれる本.
 著者は高校教師ということで,あまりに専門に流れていないのがいいんでしょう.

 いってみれば,「博物学的地質学の本」.お勧めです.

 

日本列島の生い立ち

 
 北大地鉱教室の先輩でもある田沢純一さん(新潟大学名誉教授)が,専門である「腕足動物」についての本を出版したらしいので,探していました.

 残念ながら,Amazonでは取り扱っていません(例によって,この系統はメジャーじゃあないのね(^^;).
 でも,しらべてみると「セブンネットショッピング」で扱っているようでしたので,取り寄せてみました.時間はかかりましたが,なんとか取り寄せることができました.

   


 出版元は「新潟大学大学院自然科学研究科ブックレット新潟大学編集委員会」.発行者は「新潟日報」でした.

 「ブックレット」というとだいたいこの大きさですね.A5版?
 「ブックレット」は「小冊子」を意味しますので,A5版はないですよね.持ち運びに不便です.ポケットに入らない.もって歩いて,通勤途中や待ち時間にでも読もうか…というサイズではないですね.
 新書サイズだと,図版が苦しいので,B6ぐらいが適当なのでしょうか.
 出版社にはもっと読み手のことを考えてほしいものです.
 また,経費節減のためなのでしょう,接着剤で端を留めただけの装丁ですが,これは本来の意味の装丁ではないですね.開きにくい.読んでいる最中に手元から離れると,本が閉じてしまう.読み捨てが前提ならば,本の値段は¥1,000以下でなければね.
 まあ,このあたりは,みんながそうやっているから…,ということなんでしょうけどね.読み手のことは考えていない証拠ですね.


 さて,本の方ですが,題名が「日本列島の生い立ち=腕足類の化石からみた大昔の日本=」でした.「腕足類そのもの」についても,「日本列島の生い立ち」についても,たいへん興味深いことなので購入したのですが,なぜか,「次の頁を読みたい」というワクワク感がおきない.

 「第6章エピローグ:日本の地質と腕足類の研究」で著者が少し触れているように,日本では「化石の研究」など重要視されていないことが,底流にあるようです.腕足類の絶滅より先に,腕足類の研究者が絶滅しそう…って,いうあれですね.
 日本では,どうして「自然についての記述」が理解されないのか.著者は,腕足類の研究のおもしろさ,そのものについて書くべきなのに「それが(なにかの)役に立つ」という視点でしか,本の著述すら要求されない.だから,主題が「日本列島の生い立ち」で副題が「腕足類の化石からみた大昔の日本」になってしまうわけです.
 (教育予算はどんどん削られてゆくのに,ノーベル賞受賞者だけが賞賛されるお国柄ですから)

 変な例ですが,昆虫採集大好き少年たちへ昆虫採集のおもしろさを伝えたいときに,昆虫採集がなんの役に立つかという視点からしか,本がかかれていなければ…確実に面白くないでしょう.


 「第6章エピローグ」で,著者が図らずも書いていますが「化石の記載論文」は確実に生き残ります.キチンと記載しておけば,いつか誰かが利用してくれます.
 ところが,みんながいま夢中になってやっている「最先端の科学」は,いつか「時代遅れ」になります.だれも,見むきもしなくなります.もちろん,プレートテクトニクスだって例外ではないでしょう.
 科学は小さな事実の記載の積み重ねです.点と点を結んで作りあげた「高尚な理論」しか「科学」ではないと思われてますけどね.

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 最後に,このブックレットは,一般市民向けに書かれているのだそうですが(「刊行に当たって」にでている;内容から見れば,そうは思えない),そうならば,地学事典はともかく,国語辞典に載っていないような言葉は脚注で解説するべきと思います.理由は,いうまでもなく,わからない言葉が続いて解説もなければ,読み続けられないからです.

 最後の+αです(^^;.
 ずいぶんケチを付けてしまいましたが,もっと,たくさんこのような本が出版されてほしいと思います.そうでなければ,いい本は結局生まれない.
 また,こんな本(失礼!)ですら入手しようとすると,けっこうな手間暇がかかります.こんな状態は改善されるべきです.
 「出版社は文化を担ってる」などとは露,思いませんが,結局,いい本は,いい書き手,いい読み手,いい編集者を育てることから始まるのだと思います.