2019年5月10日金曜日

北海道地質学史に関する文献集(23)


湊 正雄(1982)北大における地質学と北海道.

 北海道大学名誉教授の湊正雄が,北大百年史に書いた「北大における地質学と北海道」である.対象が地質学者ばかりではないので,非常に分かりやすい内容となっている.また,博学多才といわれた湊教授の文章は読むものをとらえて放さない.しかもその時期その時期における研究の成果やその評価も適切である.

 以下に章立てを示しておく.

1 開拓使以前の時代
2 開拓使仮学校の時代
3 札幌農学校の時代
4 東北帝国大学農科大学の時代
5 北海道帝国大学の時代
6 北海道大学の時代

 なお,本論は「北大百年史」という性質上,1970年ころまでの内容となっている.したがって,「6 北海道大学の時代」で描かれた,日本列島に地向斜造山論を当てはめてきた湊-舟橋らの仕事は,現在となっては+α(=プレートテクトニクス論)の上書きが必要である.



2019年5月9日木曜日

北海道地質学史に関する文献集(22)

 
鈴木尉元(1982)地質調査所における石油・天然ガス調査事業の歩み.

 地質調査所がおこなった石油・天然ガス資源調査の歴史について,詳細に述べられている.しかし,その調査史は,時代の波に押し流され,国内だけにも地質調査所内だけにもおさまるものではなく,また,縮小を余儀なくされた時代もあったことが示されている.



 太平洋戦争中には,南方石油の開発に多くの地質家・石油技術者が駆りだされたが,戦況の悪化に伴う国内石油開発へ振り替えるために,まとめて国内に送り返された阿波丸が沈没.500有余名の専門家が死去した.「阿波丸殉難者追悼録」が出版されているとあるが,機会があったら読んでみたいものだ.
 我が師,湊正雄(北大名誉教授)は阿波丸を待たず,一刻も早く日本に帰りたいと危険を顧みず軍艦で帰国したが,皮肉なことに彼は生還した.湊が戦争を嫌い,科学者が軍事研究に与することがないように戦い続けたルーツである.

 敗戦後,深刻なエネルギー危機を迎えた日本は,地質調査所を中心に多くの油田開発を進めた.この報告以降,原油の輸入が可能になった日本は,国内の油田開発をやめて,地質屋の努力は灰燼に帰したが,この時期におこなわれた第三紀層の研究の結果は,いまも燦然と輝いている.

 以下,各章の表題と引用文献を掲げておく.
1.初期の油田調査
2.第一次の油田調査
3.第2次の油田調査まで
4.第2次の油田調査
5.第3次の油田調査まで
6.第3次の油田調査
7.第2次大戦後
8.まとめと今後の課題

参考文献
地質調査所(1887-1903)地質要報
地質調査所(1908-1944)地質調査所報告 No.4-125
地質調査所(1911-1922)鉱物調査報告 No. 1-34
地質調査所(1932)日本地質鉱産誌 453p.
地質調査所(編)(1957)日本鉱産誌 BV-b 主として燃料となる鉱石一石油および可燃性天然ガス 416p. 東京地学協会
地質調査所(1969)地質調査所出版物目録(明治12年̃~昭和43年) 251p.
地質調査所阿波丸殉難者追悼録刊行会(編)(1979)阿波丸殉難者追悼録 245p.
地質調査所八十周年記念出版物編集委員会(1962)懐古録 276p.
千谷好之助(1925)秋田山形及越後地方に於ける油田調査事業と其将来の試掘地域.地学雑 37 538-544
千谷好之助(1930)本邦油田第三紀層の分類と其名称に就きて(摘要).地質雑 37 262ー269
千谷好之助(1934)本邦油田調査事業に就きて 石油技協誌 2 173-18
千谷好之助(1940)討論研究題目「新潟県各油田の地層対比を論じ石油試掘との関係に及ぶ」開会の挨拶 石油技協誌 8 356-369
第三系堆積盆地研究グループ(1974)新潟第三系堆積盆地の形成と発展 層序編 地調報告 No. 250-1 1-319;構造地質・地球化学編 地調報告 No.250-2 1-233
池辺展生(1940)新潟県各油田の地層の対比 石油技協誌 8 361-372
池辺展生(1941)越後油田褶曲運動の現世まで行われていることに就いて 石油技協誌 10 184-185
池辺展生(1961)日本の新生代の研究史 槇山次郎教授記念論文集 339-342
伊木常誠先生追悼録刊行会(1962)伊木常識先生追悼録 197p.
今井 功(1966)慾明期の日本地質学 193p. ラティス
今井 功(1972)年表地質調査所90年史 地質ニュース No.220 185-210
桑田権平(1937)來曼先生小伝 99p.
日本地質学会(1953)日本地質学会史 185p.
OTUKA Y. (1941) Active rock folding in Japan. Proc. Imp. Acad. Japan 17 518-522
大塚弥之助(1942)活動している皺曲構造 地震 14 46-63
佐川栄次郎(1921)故ライマン氏を憶ぶ 地質雑 28 40-54
鈴木尉元・三梨 昻・影山邦夫・小玉喜三郎・島田忠夫・宮下美智夫(1972)地質調査所における戦後の石油・天然ガス調査事業の歩みと今後の課題 地質ニュース No.220 91-101
上床国夫・片山 勝・井尻正二・蔵田延男・大塚弥之助(1941)本邦油田の地質構造の研究(第一報) 石油技協誌 963-157
山根新次・三土知芳(1954)わが国の地質調査事業の沿革 地学雑 63 151-165.

 

2019年5月8日水曜日

北海道地質学史に関する文献集(21)

 
今井 功・鎌谷親善(1982)創立期の地質調査所.

 内容は表題の通り「創立期の地質調査所」の諸事情について詳述されている.
 北海道に関連する事項としては,後の北海道神宮の宮司となった白野夏雲や,地質調査事業が始められた頃の職員の中に,ライマンの弟子であった坂市太郎と西山正吾が加わっていたことが示されている.
 以下に,章の表題について示す.引用文献については,文中か「注」に示されているので,略す.

  地理寮木石課から地理局地質課へ
  ナウマンの「地質測量意見書」
  地質調査事業の準備
  庁舎施設の築造
  地質調査事業の開始
  内務省から農商務省へ
  地質調査所の設立



2019年5月2日木曜日

北海道地質学史に関する文献集(20)

 
今井 功(1972)年表 地質調査所90年史.

 この年表は,表題の通り「地質調査所90年史」についてのまとめであり,北海道の地質調査史とは直接の関連はない.しかし,非常によくまとまっているので,日本の地質調査史を概観するには好適であろう.
 参考文献が提示されているが,北海道の地質調査史とは直接かかわりがないので,省略する.


2019年5月1日水曜日

北海道地質学史に関する文献集(19)

 
曾我部正敏・根本隆文・佐川 昭・大島和雄(1968)石炭地質学の進歩.

 北海道における石炭地質学の歴史についてまとめられている.「まえがき」には石炭地質学の歴史が簡単に述べられている.引用文献は示されていない.


 以下に,章立てを示す.

まえがき
Ⅰ 北海道の炭田
Ⅱ 石炭調査・研究の現状
 (1)層序学・構造地質学的研究
 (2)堆積学・古生物学的研究
  堆積輪廻
  重鉱物分析
  斜層理・漣痕・ソールマーク
  貝化石
  植物化石
  花粉・胞子化石
 (3)炭層に伴う資源の研究
 (4)炭質研究
むすび