2011年12月26日月曜日

「放散虫」について(チャートとの関係)

チャートとの関係は
a) 図2-6:「白亜紀後期四万十帯の形成過程」(平朝彦,1990「日本列島の誕生」)より

・海底地形:「白亜紀後期四万十帯の形成過程」>これは四国の例
 >北海道の例で説明したいが「ない」>大筋は同じなので,参考に

●図の「1億3000万年前」に注目:中央海嶺で「プレート」が作られる
・玄武岩の熔岩は「ドロドロ」流れる(例:ハワイのキラウエア火山の噴火)
>海中で流れると瞬時に外側が冷やされる>チューブ状になって流れる>「枕状熔岩」の形成

・「富良野採石」:同時期に造られたものが,この上川盆地(富良野盆地)でも見られる
>富良野市にある採石場の跡:壁に見えるウロコ模様>枕状熔岩が重なったもの

・これは「海底火山噴火」の“化石”>噴火の記録が残っている
そこで,石灰質ナンノプランクトンが降っている様子が描かれている>マリンスノー
TVの映像で「マリンスノー」を見たことがあると思うが,陸から遠く離れているので,陸からの砂・泥がとどかない>プランクトンの遺体のみが積もる>海底に沈積して「ナンノ石灰岩」を形成する

●図の「1億1000万年前」に注目:
・こんどは「マリンスノー」として「放散虫」が降っている
>じつは石灰質ナンノプランクトン(=CNP)も「降って」いるのだが,石灰には特殊な性質がある
:ある程度以上深い海では,溶けてしまう>その限界を「CCD」と呼んでいる

・プレートに載って移動している最中に,海底面が深海まで行ってしまう(CCDより深い)
>放散虫は残るけど,CNPは残らない
>積み重なった放散虫は,続成作用によって徐々に「チャート化」する.

●図の「1億年前」に注目:
・徐々に陸地に近づく>陸からの細粒砕屑物(泥)が混じる

●図の「8500万年前」に注目:
・どんどん陸に近づき,陸上からの砕屑物(火山灰/泥)が付け加わる

●図の「7000万年前」に注目:
・プレートが海溝から沈み込んでいる

b) 図2-9「白亜紀後期西南日本の復元」:図2-6の「7000万年前」の拡大図と考えるとよろしい

・大陸棚を伝って落ちてくる「タービダイト」(礫・砂・泥が懸濁したもの)
>春の雪解け水・嵐・巨大地震などが起きると,「タービダイト」が発生する

・当時の沿岸では,長頸竜やモササウルス,アンモナイトなどが泳いでいる>「タービダイト」からは,その化石が発見される:上川盆地では見つからないが,南の富良野盆地周辺や北の名寄盆地周辺では見つかる

・海溝で>プレートは,マントルへと沈み込む
>全部が沈み込むわけではなく,上にのせていた地層を大陸棚に残して行く>「付加する」=>「付加体

>巨大地震が起きたりすると>大陸棚にあった(その昔,Pによって運ばれてきた古い堆積物が,剥落して落ちてくる)>しばしば,「ブロック」として,あるいは構造もわからない「グチャ」として

こういう連続した事件を総合的に図にすると
c) 図2-7:「柱状図」のようになる
一番下に,枕状熔岩-ナンノ石灰岩-徐々にチャートに移り変わり-陸から来た堆積物が増えてくる
・×××山(実名削除)=上川盆地東側あたりで見られるのは「層状チャート」~「頁岩」の部分

こういった「運動」の影でなにが起きているか….
●石油の起源
・大まかな形は,先ほどの海底地形と同じ
・陸上に近いところでは,陸からの植物遺体が集積して「石炭」ができる
●海洋では,プランクトンが大発生>「海山の影響」・「暖流寒流の衝突=潮目」など
>マリンスノーとして沈下>酸素が消費>腐泥の形成
>この有機物が地層中に取り込まれ,より単純な有機物(ケロジェン)に変化し>のちに石油になると考えられている
石炭・石油=エネルギー資源:われわれは,過去の微生物や植物の遺産をつかって文明を築いている.

(このあと,「放散虫化石を取り出しにくいわけ」について説明しましたが,ブログでは省略します)

2011年12月21日水曜日

「放散虫」について(チャートとの関係:プレートテクトニクス)

プレートテクトニクス

「日本付近で起きるプレート境界地震」
3.11以来,こういう図はイヤになるほど見てきたと思う.
>静岡大学防災総合センター教授 小山真人氏のHP(東日本沖で起きた巨大地震について)に原図があります.

・日本近海をいくつかのブロックに分けることができ,そのブロック内では,ほぼ周期的に「巨大地震」が繰り返しているというまとめの図

・基本的には,「ユーラシア=プレート」(大陸地殻)に,「太平洋プレート」(海洋地殻)がぶつかり,そこで下に沈み込む(サブダクション=ゾーンといいます)
>プレート同士の摩擦によってストレスが溜まり,それが開放されるときに「巨大地震」がおきるのだろうということ.

・日本付近では,左上の図のように複数のプレートが複雑に入り組んでいて,おのおのブロックによって力のかかり方が違うから>地域的に起きたかが違う>周期性が異なるのは,置かれている環境が一様ではないから

・巨大地震の周期>100~200年単位:さらに大きなものは500~1000年という間隔になるんだろう
・3.11の地震も,一部では千年に一回という地震であるという人もいる
>数十年単位でも,人間は,すぐに忘れてしまう.千年単位だと「それは起きないこと」と勝手に思ってしまう(高校地学を必修からはずしたからじゃあないですかね…).

●この間の氷河期が終わったのが約1万年前:日本列島に人が住み始め,縄文時代が始まった.
>たとえ千年に一回だとしても,われわれの先祖は,それからだけでも,3.11級をすでに10回経験している.
>10回も!
>歴史を学ばない人間は,何度でも同じことを繰り返す.


平朝彦「日本列島の誕生」より
a)図1-4c:「プレートテクトニクス」
地球全体>世界地図>地球の表面はいくつかのプレートに分かれていて,地球内部から放出される熱エネルギーによって,お互い押し合いへし合いしている.

・ナスカPと太平洋Pとの間に「東太平洋海膨」というのがある
>ここで生まれた「太平洋P」が太平洋を旅して,日本海溝で地殻の底へ沈んで行く
>その沈むときに,「摩擦」が生じて地震が起きる>3.11=「東日本大震災」もその一つ(繰り返し)

b)図1-4a:地球の断面図
>「東太平洋海膨」:ここで,マントル下部から溶けた岩石が浮かび上がる>地表に(海底)にでて冷え固まる=プレートの生成
>次から次へと,岩盤が形成される=>プレートとなって太平洋を移動し,日本海溝でマントルに沈み込む
>プレート同士の摩擦の多いところで「×」印>地震の頻発地帯

プレートの運動は,同時に>大きな海底地形をつくり出す=>図1-4b
>中央海嶺(Pのわき出し口)>巨大な海底山脈
>太平洋を移動するプレート>平坦な海洋底
>海溝(Pの沈み込み口)>極端な深海

=これは現在の「地球の断面図」だが,中央海嶺から海溝までの旅に一億年ぐらいかかっている>逆に言えば,一億年の記録が,じつは,海底に残っていることになる

===================


●記録としての一例:海山=ハワイ島=>天皇海山列
>プレートの旅の途中で「ホットスポット」があると,ハワイのような火山島ができる>古いハワイはどんどん日本に近づいてきている.
「ホットスポット」:最近では,原発事故時にまき散らされた放射能が部分的に作った「高汚染地域」のことをさす言葉として有名ですが,地球科学上では「マントル内部の特別な高温部」をさす言葉で,その地表には「火山島」があることで注目されています.

●天皇海山列

・ハワイ島は,現在活発に活動している火山島
>その横に,マウイ島とか,オアフ島とかの古い火山島がある.
>海上に頭を出していない島>「海山」:まだ沈みきっていない=「ミッドウエー島」or「ミッドウエー環礁」
>そのほかにも,海山がならんでいて=「天皇海山列(Emperor Seamaounts)」と呼
・それらを調べると,ハワイ島から離れるにしたがって古くなり「アリューシャン列島」に近いあたりでは,7000万年前ぐらいになる.
・7,000万年まえ:後期白亜紀の終わりくらい:中生代が終わるのが6500万年前
>はるか恐竜の時代から,ハワイ島はあった


GoogleEarthの写真:海洋底は,ほぼ平らで変化に乏しい>海流が流れている
なにもなければ,スムースに流れるが,所々に「ホットスポット」がのこした海山がある
>海山があればなにが起きるか
=湧昇流=>プランクトンが発生(海底の物質が巻き上げられる)>食物連鎖が開始する
>プランクトンとは?
>ハワイ沖は,世界有数の漁場:同様の場所はみな「良漁場」

2011年12月19日月曜日

「放散虫」について(放散虫とはなんなのか;生命史の中の「放散虫」)

・生命史の中の「放散虫」
地表に生態系ができて,“地球”が成立してから,約五億五千万年.それからのすべての時代の「放散虫」についての説明はできません(わたしにはそんな能力はない&そんなことは求められていないだろうから).

そこで,「地質標本館」の展示から:聴きたい(と思われる)ことに関係する部分についてだけ…

(その前に)
日本にも,昔は「地質調査所」があったんですが,いまはもうありません.地質調査所の業績を中心に展示していたのが「地質標本館」>所管が配置換えになって,つくば市にまだ存在しているはず.

地下資源は「国の基礎」のはずで,その開発及びその技術者の養成は,重要事項だったはず(その点,明治の政治家は偉かった).当時の子どもたちは,現在の大人より「岩石・鉱物」・「化石」(自然全般も含めて)について,よく知っていた.

だが,「海外から安い資源を買ってくれば良い」・「技術者・学者養成も必要ない」という,浅はかな考えが“指導者”の間に蔓延し,日本の大学からは「地質学教室」が消え,地質調査所もなくなった.
そんなんだから,自然災害を警告する(できる)人が減り,市民も「ま,大丈夫だろ」と根拠もなく考えるようになってしまったんと違う?(政府や企業のいうことを「信じていたのに」と,逆ギレする人がいるけど,「警告する人」は「づーっ」といましたよ)

最近は,農業も漁業もいらないという考えの“指導者”が増えているみたいですね>TPP


(それはともかく)
・地質調査所発行「地質ニュース」1997.6
http://www.gsj.jp/Pub/News/n_index/index.html から「1997」年を選び,さらに「6月号/No.514」を選ぶと,ダウンロードできます.

>中に,地質標本館で「付加体の形成と放散虫化石」という展示を始めたというニュースが載っている.
●「ジュラ紀付加体の海洋プレート復元と放散虫化石」(原著者の著作権保護のため「低解像度」にしてあります;以下おなじ)
この図版は,著者である利光誠一さんから上記ニュースと一緒にいただいたもの
>左に地質時代が書いてある:ペルム紀(古生代の最後の時代),三畳紀,ジュラ紀>この上が白亜紀になる
・左側:放散虫化石の電子顕微鏡写真がある>だいたい,写真の位置とでてくる時代が一致している
>上川盆地の××××山(実名削除)のチャートを溶かせば,たぶん,一番上の方にならんでいる放散虫がでてくるでしょう.

●「放散虫の模型の立体写真」>立体視ができる

●「ジュラ紀放散虫化石層序」:本文中のより正確で詳細な部分(「展示」とは性格が異なる).
22: Cinguloturris carpatica:左上ジュラ紀中期の終わりころ~白亜紀の始めころ
21: Stylocapsa(?) spiralis ::一番右;中期ジュラ紀の終わり
20: Tricolocapsa conexa :右から三番目;中期ジュラ紀の中後期
19: Tricolocapsa tetragona :表にはない
18: Tricolocapsa plicarum :右から4番目

>こういったものが,産出していることが確認されている.
>逆に言えば,これらの化石が産出すれば,その時代がわかる.

さて,なぜこのような展示を「地質標本館」でやるのか.
>べつに「放散虫化石」を見せたいからではない

展示の表題「付加体の形成と」付加体とはなにか…
>これが,チャートの存在と関係してくる.

それを説明する前に,PTについて,おさらいをしておきます.

2011年12月17日土曜日

「放散虫」について(放散虫とはなんなのか;生態系の中の「放散虫」)

●生態系の中の「放散虫」
a)「生態的ピラミッド」

・「生態系」というと,よくでてくる図:海の生態系を簡略化したもの
・一番下に大量の「植物プランクトン」があり,それを食べる「動物プランクトン」がいて,それらを食べる「小型肉食者」がいて,さらにそれを食べる「大型肉食者」がいる>「食物連鎖」と表現される
・この図の中では「放散虫」は「動物プランクトン」に含まれる>実際には,こんなに単純ではない
(これは「量的」な概念をあらわしたもの)

b)「海洋の食物循環」(あまりいい図ではないが,時間の関係でこれしか見つからなかった)

・「植物プランクトン」=「珪藻」をイメージしたものでしょう>「動物プランクトン」に食べられる;同時に,「植物プランクトン」は,エビなどの甲殻類に喰われる:同時に小型の魚にも喰われる
・小型の魚・甲殻類は大型の魚に食べられる>それらはもっと大きな肉食動物に:この絵では「サメ」ですが「イルカ・クジラ」などもそう.場合によっては「ヒト」も.
・一方で,それらすべての生物は「死ぬ」>死ぬと分解されて「分解を受け持つ生物」によって>単純な元素・化合物に還元される>それらを「植物プランクトン」が利用する>「ピラミッドというよりは循環系」

ちょっと気になるもの=「太陽の光」が描かれてる:太陽の光は「生態系」には関係ないものなのだろうか.

c)「生態系の概念」

・太陽から来る「光」のほかに…
・地球上のさまざまな要素:これらが,密接に,複雑に関係して「なにか」を作っている
>これが「地球」:普通「地球」というと,右側の三つ「大気」・「水」・「土=岩石」:それぞれ,「大気圏」・「水圏」・「岩石圏」と呼ばれている
>それだけでいいのか:それでは,どこにでもある星に過ぎない>「地球」ではない:生命は存在していない.

「動物」+「植物」+「ヒト」=「生命」>これがなければ「地球」とはいえない(だろう)
・地球物理学者は「地球の年齢は46億年」とかいうが,46億年前の“地球”なんて,ただのチッポケな熔けた星に過ぎない:生命は存在していない.

d)「地球上における水の動きとそれに伴う物質の循環」(西村三郎)
西村三郎:京都大学名誉教授;普及書をたくさん書いている>どれも面白い:10年ほど前に亡くなっているので,だんだん読めなくなる.

・地球上のさまざまな要素がある>水を媒介とした物質の循環を示している
生命もその要素の一つ>地球の営みと生命とは切り離してかんがえられないのだということを示している
>この話は「生物学者の側」からのもの

●「地球の歴史を研究」しているもの立場からは…
>それは「地球の誕生」から説明し始めなければ,ならない…>無理:別な機会があったら,と,いうことで
>ホンの一部:「地質時代における生態系の進化」について

・「隠生累代」>生命の痕跡がほとんどない時代:それでも単細胞生物=微生物はいた>生態系らしきものはない

a)「カンブリア紀の生態系」:カンブリア紀に入ると「無脊椎動物=三葉虫など」が現れる

>「植物」を各種の「無脊椎動物」が喰う:超原始的な生態系ができあがる
>「生態系」ができたとたんに「急速な進化」が始まる>俗に「カンブリア紀の爆発」
>「喰う・喰われる」の関係ができると「効率よく喰ったもの」が「勝ち」.「喰われないで生き延びたもの」も「勝ち」
>すこしでも良いデザインの生きものが多く生き残る:そういうスイッチが入ってしまった

b)「デボン紀の生態系」:デボン紀に入ると,より運動能力の高い「脊椎動物」=「魚類」が出現>魚類は生態系の頂点に立つ

c)「ペルム紀の生態系」:古生代後期になると,海の生態系は,ほとんど完成
>「無脊椎動物」の一部が,すでに上陸を果たした「植物」をおって上陸=昆虫
>魚類から進化した「両生類・爬虫類」が「植物」・「無脊椎動物」をおって上陸
>しかし,古生代の段階では,陸上はそれほど「賑やか」ではない

d)「三畳紀の生態系」:中生代=「爬虫類の時代」
>陸上が賑やかになる:食物の流れは,「植物」から始まるが「草食性爬虫類」に流れるようにシフトした.

・じつは,これでもう地球上の生態系は完成した:現在とまるで同じ
ということは>恐竜は滅びる必要がなかった哺乳類はでてくる必要がなかった
>それなのに変わってしまった>なぜ変わったのか「爬虫類は哺乳類にバトンタッチしたのか」というのは,面白い話題ではあるが,今日の話には関係ないので,別の機会があれば.

●さて,ここで「恐ろしいこと」に気づかないか
・生態系の上位にいる生物は,絶滅しても,代わりがでてきた>例がわかっている
>じゃあ,基礎になっている「植物プランクトン」・「動物プランクトン」が絶滅したら>代わりがでてくるのだろうか:ひょっとしたら,大変なことに…

・明瞭ではないが,じつは,過去にどうやらそういう事態が起きていたらしい.
>個別の絶滅は,いつでも起きているが,複数の分類群が一時に絶滅する“大絶滅”はそのような“連鎖反応”が関係していると考える学者もいる.
・もちろん,そのあと,代わりの「植物プランクトン」・「動物プランクトン」がでてきたのだが,その時代,その「植物プランクトン」・「動物プランクトン」を食べていた生物は甚大な被害を受けるだろう:一時的にしろ食べるものがなくなるし,代わりのものが出てきても,それを食物として受け入れられるかどうかは運次第.
>そういうわけで,連鎖的な絶滅が起きる=「大絶滅が起きる」>もちろん,これによって地層により入っている化石が変わるので,「地質時代がわかる」わけでもあるが….

●地球温暖化が起きると「大絶滅」が発生すると考える学者がいる.
>地球温暖化が起きると海水準が上昇する>浅海が広がる>「植物プランクトン」が大量発生する>海底に大量の有機物が放出される>海底付近の酸素が減少する>海底に生息する生物が絶滅する:この場合は,植物プランクトンが(絶滅したからではなく)異常に増加したから,生態系に異常をきたした例といえる.

=もうひとつ=
・地球上の生態系が始まって以来,生態系の基礎を支えているのは「植物」>主に「植物プランクトン」
>かれらがいなかったら,われわれは存在していない.

・われわれがいま呼吸している空気中の酸素は「地質時代」をとおして「植物&植物プランクトン」が生産してきたもの.
>より正確にいうと,植物プランクトンが生産した酸素が上空でオゾン層を作り,これが紫外線を遮断したため,生物が浅海に侵出できた
>浅海で効率的に酸素を発生するストロマトライトが繁栄した(正確にいうと,藍藻類が作り出す層状構造の岩石を「ストロマトライト」という)
>これが,現在の多くの酸素を含んだ大気の基礎を作った.


(蛇足)植物P・動物Pといえば,「単細胞生物」>単細胞といえば…「単細胞なヤツ」といえば,悪口>しかし,バカにできないものなんです.
そうえば「化石」もおんなじで,「化石のようなヤツ」>これも悪口ですね.
わたしら,「悪口の対象」ばかり研究している(^^;

2011年12月15日木曜日

「放散虫」について(放散虫とはなんなのか;生物としての「放散虫」)

わたしは,化石放散虫を扱っていました.そのため「生物としての放散虫」については,まるでわかりません.
「石灰質超微プランクトン」の生態なら,調べたことはありますけど….

---
ところで,19世紀から微生物としての「放散虫」が知られていました.

エルンスト=ヘッケル(Ernst Haeckel)の観察が有名.
ヘッケル:「個体発生は系統発生を繰り返す」と,いう言葉で有名な学者>個体が成長するときには,進化の道筋をたどるように見える:この学者の背景は,科学史として興味深いものがありますが,今回のテーマには無関係なもので省略.

・生物としての「放散虫」
a)ヘッケルのスケッチ1>「タケノコ型」

b)ヘッケルのスケッチ2>「玉型」
この絵は,Wikipediaで「放散虫」を検索すれば,そこにある.ほかにもたくさんあるので,興味のある人は検索してダウンロード.

いずれも大変に「美しいもの」です.と,「お茶を濁す」((^^;)

2011年12月14日水曜日

「放散虫」について(放散虫とはなんなのか;微化石としての「放散虫」)

●放散虫とはなんなのか
・微化石としての「放散虫」

a)「主な海生微化石群の生息時代」(from Haq, B. U. and Boersma, A., 1978):配布したのは日本語化したもの.

・縦に「地質時代」>横にいろいろな「微化石」:つまり>どの時代の地層から「どんな微化石がでるか」を表したもの.

・「微化石の種類」>なんだかわからないものもありますが,大部分は単細胞生物です.
 >「微化石」の意味は,単に「顕微鏡サイズ」を意味しているだけであって,「生物としての分類」には,関係がない(「示準化石」として扱う場合,じつは「生物ですら,なくっても」かまわない).

しかし,そういう「実用的」なところを離れて眺めれば…,
1)簡単に言えば,岩石の中には,こんなにも「生命の痕跡」がある
2)「放散虫」を含めて,多くの微生物は,古生代の始めからいて,(地球上の生命として)われわれの大先輩にあたる(「『ヒト』なんて最近生えた『カビ』のようなもの…」って,「カビ」も立派な大先輩です(^^;).

・メジャーなもの
・「放散虫」,「珪藻」,「有孔虫」,「石灰質超微プランクトン」
>「有孔虫」,「石灰質超微プランクトン」は,骨格がCaCO3=炭酸カルシウム=石灰からできている
>「放散虫」,「珪藻」は,骨格がSiO2=シリカ=ガラス質骨格からできている

b)「主な微化石=微生物」:四大微化石
・並べ方に意味があります
上二つ:珪質微化石,下二つ:石灰質微化石
右二つ:大きい(0.1~0.4mm),「石灰質ナノプランクトン」は:小さい(0.02~0.04)>珪藻は,大きいものは放散虫・有孔虫に匹敵するぐらい>大部分は「石灰質ナノプランクトン」と「放散虫・有孔虫」の間くらいの大きさ.

大きいものは,筆などで「拾い出す」ことが可能(昔は,トラの髭で釣ったとか)>「石灰質ナノプランクトン」は不可能.

・いずれにしても,非常に「美しい」もの
学生時代(大学院):処理し終わった微化石のプレパラートを,顕微鏡で,一晩中眺めていても,飽きなかった.
なにを?>地層の中での「化石の分布」,「種類」を調査>それがなにを意味するか

「放散虫」について(前振り)

===「前振り」1===


●地質年代表:(一般市民相手なので,大まかな「地質年代表」を示し,概説しました)
・大学で授業をおこなうときには,必ず一コマは当てます;地学を専攻している学生の場合は二コマ.
 地質学に関係した事項を説明するときに必ず必要になるから>地質時代の名称とその長さ・古さに注目


・「地球の歴史全体」の表
・累代>「隠生累代」と「顕生累代」
 「隠生累代」:生命の痕跡がほとんどない>生命が隠れている時代
 「顕生累代」:生命の痕跡がたくさんある>生命が顕著な時代
・「顕生累代」を拡大>「古生代」・「中生代」・「新生代」に分けられている
 「古生代」:古いタイプの生物の時代=主に無脊椎動物の時代
 「中生代」:中くらいのタイプの生物の時代=爬虫類の時代
 「新生代」:新しいタイプの生物の時代=われわれ「哺乳類」の時代

・中生代:「三畳紀」・「ジュラ紀」・「白亜紀」に分かれている
 「ジュラ紀」:映画「ジュラシック・パーク」以来,市民権を得ている>でも,実際に出演した恐竜は,ほとんどが「白亜紀」のもの.

・「新生代」:「第三紀」・「第四紀」に分かれている
 「第三紀」が二分>「古いタイプの哺乳類」と「新しいタイプの哺乳類」の時代に分離
 「第四紀」:われわれ「人類の時代」
 こういう概念ができてから,かなり時間が経っている:人類の化石の発見が相次ぐ>人類の時代の始まりが古くなっている:表が再編成されている最中>もう,「第三紀」は使われなくなる

===「前振り」2===


●「町内の自然を歩く」:6~7年前,町内の子どもを集めてやった,イベントの資料(「絵はがき」仕様)
 >町内で見ることができるものだけで,どのくらい時間を遡ることができるか
 >サブタイトル「ご町内は,タイムマシン」
 子どもは,もうそんなことには興味がない>「恐龍」より「モンスター」の時代
 >>没>>…(^^;



●「神居古潭」の岩石:上川盆地内では,古くからある家では,庭石として普通につかわれている
●1/50000地質図:「旭川」&「当麻」を提示
 「青色片岩」と「緑色片岩+黒色片岩」は,上川盆地の東側では見られない
 「赤色チャート」は普通に見られる.

「放散虫」:上川盆地では,じつは珍しくないもの>ほぼ,いつも見ているのに気付かない>微化石の微化石たる所以

●赤色チャートの絵はがき
 チャート自体は,上川盆地の住人には見慣れたもの:
(絵はがきの)左下:チャートを薄片にして岩石顕微鏡で見たもの
  >白い粒>「放散虫化石」(大きさ0.1~0.4mm程度)

(絵はがきの)右下:チャートを溶かして洗い電子顕微鏡で見たもの
  >スポンジ状:丸いもの,三つの枝,タケノコ…
  >うまく処理すれば,見ることが可能

===「前振り」3===


もう一つの例●新生代放散虫化石
こちらは,上川盆地ではなくて,空知平野の河原に普通にある泥岩からとりだしたもの:わたしが学生(大学院)のころやったもの(30年ぐらい昔に撮影した「銀塩」写真)

●放散虫写真
 新生代(哺乳類の時代):数百万年前(ごく新しい)>母岩が軟らかい
 >取り出すのは,そんなに大変でない;保存が良くて,表面がきれい

二枚ずつ写真がならんでいる:立体写真ではなくて,顕微鏡サイズでは大きい>厚みがあるのでピントが全体には合わない>中心部の構造がわかるものと外側の模様がわかるものと…

●形に注目
右側:“球”形:中に別の玉が入っている>三重構造
右下はだいたい球形;上下に棘>縦に長い>この中にも玉がある

左;“タケノコ”型
左上:小さい玉(上に棘)>少し大きな玉が続き>さらに下に向かって開いている
左下:似たような形>棘が折れている;折れているけど足がある
(下にくっついているのは,珪藻の殻)

“玉”型と“タケノコ”型は,放散虫の大きな分類基準

「放散虫」について

先日,上川盆地内の某所で「『放散虫』について」という題でお話ししました.
某所といって場所を明示しないのは,受講者の一部が「街おこしのヒント」にしようと考えているらしいので,差し障りがあるかもしれないからです.

ただ,こちらとしても,ある程度時間をかけて話をまとめたものなので,そのままにしておくのはバランスシートがあわないので,記録として残しておくことにしました.

話の筋は以下のようです.
なお,大見出しは先方からいただいた題です.

===
●放散虫とはなんなのか
・微化石としての「放散虫」
・生物としての「放散虫」
・生態系の中の「放散虫」
・生命史の中の「放散虫」
●チャートとの関係性は
・プレートテクトニクス
●放散虫を取り出すことが難しい訳
・続成作用
・化石化作用

===
しばらくの間,ブログ的に編集して掲載するつもりです.

2011年12月13日火曜日

断念;無顎類が面白い

ホントに,無顎類は面白いです.
が,適切な論文が見つからないままに,ネット上の頁を信用して始めたら,先に進めなくなりました.
「はしごを登ったら,はずされた」状態ね.

もっと整理して,仕切り直して,後日再挑戦をおこないたいということで,とりあえず,断念します.

2011年11月27日日曜日

Psammosteid lineage

[Mikko's Phylogeny Archive]から,“無顎類”の分類を拾って,整理しようとしてきたのだけれど,無理がありました.

上記は,基本的にクラディズムに則っていて,進化の道筋と思われるものをあらわしているので,分類じゃあ無いことが混乱するもと.
二つ目は,web上の記述であって,正式な論文じゃあ無いので,いい加減さが目立つ.根拠がわからない.知らないうちに訂正されていても,わからない.
などなど.

ま,たくさん学名のサンプリングができたからいいか.

それと,検討しているうちに,いくつかの重要な論文のpdf-fileを入手することができ,非常に面白いものを見ることができたので満足.
ネット上では,たくさんの論文のpdf.-fileを見ることができます.
博物館系で提供されているものは,基本的にfreeだし,text付きなので,ものすごく利用価値があります.一方,学会系のものは,ほとんどが有料なので,金出してまで見たくないという気にさせる.見るまで,中身はわかりませんからね.役に立たないかもしれない.
某国地質学会で出してる論文のpdf.はtextが暗号化されているので,使い道がありません.せっかく高い予算を取ってやってるのだろうけど,将来的には結局「意味ない」ものになるでしょうね.

それはともかく,面白い図があったので,一つ.

原図はTarlo, L. B. (1962)から.



基本になっているのは,真ん中下部のSchizosteus です.
Schizosteus は schiz-osteusという構造で「裂けた」+「~骨《男単》」という意味.絵は「頭甲部」です(尻尾=尾部が描かれていない)が,絵の下部(=頭甲部としては背の後方)に切れ目がありますね.これを,「裂けた」と表現したのでしょう.

これが,二つの系統に分かれ,一方は,「裂け目」が発達します.そして,PycnosteusTartuosteusになる.
Pycnosteusはpycn-osteusという構造で,「密な」+「~骨《男単》」という意味.
TartuosteusはTartu-osteusという構造で,「Tartu(エストニア二番目の都市)」+「~骨《男単》」という意味.
共に「-osteus」という語尾がついていますから,しっかりした甲板の持ち主なのでしょう.

さて,もう一方は,Schizosteusの甲板を持ちながら,頭甲部の大部分が,なにやらイボイボの飾りで覆われてきます.その名もPsammolepis
Psammolepisはpsammo-lepisという構造で,「砂の」+「鱗」という意味.イボイボのことを「砂のよう」と表現したのですかね.同じ,Psammolepisでも,Schizosteusの甲板を遺したものと,無くなってしまったものがあるようで,完全に無くなるとPsammosteusと呼ばれるようですね.
ちなみに,Psammosteusはpsamm-osteusという構造で,「砂の」+「~骨《男単》」という意味です.

これだけでも,無顎類は多様で,さまざまな進化の実験があったようだということがわかって…もらえませんか…,ねえ~~.

2011年11月16日水曜日

KIAERASPIDOIDEA

KIAERASPIDOIDEA (Stensiö, 1932)(たぶん,「目」)
下に,[Mikko's Phylogeny Archive]に表示されているものを,編集したものを示しておきます.
悲しいかな,これは分類ではなく,進化系統をあらわしたクラディズムのようです.
どうもクラディズムは,しっくり来ない(^^;.

ま.単に構成員のリストとして理解しておきます(判断に困る場合も多々ありますが…).

---
KIAERASPIDOIDEA (Stensiö, 1932) Afanassieva, 1991
├ † Didymaspis
└ † Kiaeraspididae Stensiö, 1932
  ├ † Kiaeraspis L.Dev. Spits.
  └ ? † Norselaspis glacialis Janvier, 1981 (sedis mutabilis)
    └ † AXINASPIDOIDEA Janvier, 1981a
     ├ † Nectaspis L.-M.Dev. Spits.
     └┬ † Axinaspis L.Dev. Spits.
      └┬ † Acrotomaspidinae Janvier, 1981a
       ├ † Acrotomaspis L.Dev. Spits.
       └ † Gustavaspis

---from [Mikko's Phylogeny Archive]

Sansom (2009)にKIAERASPIDOIDEAの構成員の復元図がでていたので引用しておきます.やっぱりなにか,微笑ましいです((^^)).




さて,Kiaeraspisは「Kiaer, J.」+「丸い楯」の合成語です.
Kiaer, J.は,ノルウェー人古生物学者らしいですが,不詳です.(いわゆる)“無顎類”についての論文をたくさん出しているようです.

学名に(属にも,種にも),人名が使われるのはよくあることです.
しかし,いろんな意味で,あまりセンスがよろしいとは思われませんね.
普通は何らかの献辞として使われるのですが,良く意味を考えてみてください.この場合は,「Kiaer, J.」+「丸い楯」ですよ.-aspis=・「(小さな)丸い楯」は,“無顎類”の全体の形状からよく使われる「言葉」で,この場合は「ある種の“無顎類”」そのものを意味していますが,その意味からいえば Kiaer氏は(古生物学者なのに)「丸い楯」をもっているわけです.

おなじようなセンスの命名に,アモンナイトでよく使われる「~ケラス」というのがあります.
-cerasは「~の角」という意味で,人名にくっつけると,(たとえば)Mantellicerasは白亜紀の地層に多産する特徴的なアンモナイトですが,これはもちろん,Gideon A. Mantell (1790-1852) への献辞として造られた属名です.
ところが,その意味を考えると,「マンテルの角」となり,マンテル氏には「角」があったことになり,本当に献辞なのか皮肉なのか,よくわからないという気持ちになります.

国際動物命名規約にも,「属グループの名称の複合名に人名を用いることは好ましくない」(ICZN, add. D-15.)とありますが,常識的にいっても恥ずかしい命名の仕方だと思いますね.
既成事実として,どんどん使われてますしね.

とかく,人名を学名に用いるのは,さまざまな問題を引き起こしますし,命名センスからいっても「どうかな?」とい感じるのが多いですね(感じるのは人の勝手だといわれればそうですけど(^^;).
一方で,アマチュア・化石ハンターの世界では「発見した人には,名前をつけてもらう権利がある」などという妙な“伝説”があり,関係した研究者が「あっけ」にとられる場合も少なくないと聞きます.「新種である」という根拠もないのに,上司から「~さんの名前をつけろ」と強要された学芸員もいるとか.
いろんなところから「圧力」がかかる((--;).


ついでに,意味がわかる学名のいくつかについて.
まずは,Didymaspis.
Didymaspis = didym-aspis=「二連の」+「丸い楯」
こういう命名の仕方では,その形がイメージできますね.残念ながら,復元図の良好なものは見あたりませんでしたが,Müller (1985, p. 35)には,その一種の復元図が示されており,それでは,わずかに「ひょうたん型」をした形が示されています.この「ひょうたん型」が「二連の」を意味しているのかもしれません.

つぎに,Norselaspis.
英語で,Norselandは「Norse人の国」という意味ですが,これは「ノルウェー(Norway)の異称」だそうです.
つまり,Norselaspisは「ノルウェーの」+「丸い楯」ということ.「ノルウェー産の“無顎類”」という意味でしょうね.

三番目は,Axinaspis.
Axinaspis = Axin-aspis=「斧の」+「丸い楯」
Sansom (2009)の図に,Axinaspisの一種がでていますけど,「斧」に関係あるように見えるでしょうか?
石器時代の「石斧」に見えないこともないですけど….

最後は,Acrotomaspis.
Acrotomaspis = acrotom-aspis=「切り離された」+「丸い楯」
「希語辞典」には[ἀκρότομος]は「鋭く切り離なされた;断裂の」というような意味ででていますが,acro-<[ἄκρος]は「頂点」で,tom-<[τόμος]は「切ること」ですから,「(頂点があると考えられるものの)頂点を切った(形)」と考えるのが妥当なんでしょう.
Sansom (2009)の図のにAcrotomaspisの一種が描かれていますが,そういう風に見えるかどうか
なお,Sansom (2009)の図にでているのは「頭甲部」のみで,本来は下側に尾の部分がついているべきものです.接合部が多いので,化石としては外れていることが多いのでしょう.復元図も,だいたい省略されていることが多いですね.お間違えのないよう.

ほかは,判らないので,ご容赦.

2011年11月13日日曜日

TREMATASPIDOIDEA

TREMATASPIDOIDEA (Woodward, 1891)(たぶん《目》)
下に,[Mikko's Phylogeny Archive]に表示されているものを,編集したものを示しておきます.
残念ですが,このグループは詳細が不明.
示された「種」の復元図も,ほとんど公開されていません.
Müller (1985)にTremataspis sp. の復元図がでていたので,引用しておきます.





Tremataspisはtremat-aspis=「孔のある」+「丸い楯」という意味です.
なにが「孔」なのかはよくわかりませんが,たぶん,Abb. 19.右の「下面図」にみえる鰓孔の開口部のことではないかと推測します.Abb. 20.は側面観ですが,前方下部に半円状にならんだ鰓孔が見えますね.
ただ,これがこのグループ全体に共通な特徴なのかというと,これは,情報不足で判りません.
もう一つ,この二つの復元図には頭甲部しかなく,本来あるはずの尾部が示されていません(Abb. 20では破線で示されている).たぶん,図示できるほど保存に恵まれた標本がなかったのだろうと思われます.
ま,そんなことが,ネット上にも復元図がほとんど見あたらない理由かもしれません.
これも情報不足でなんとも.

---
TREMATASPIDOIDEA

TREMATASPIDOIDEA (Woodward, 1891) Afanassieva, 1991 sensu Sansom, 2009
├ †Tyriaspis U.Sil. Eu.
│ └ †T. whitei
├ † Saaremaaspis [Dasylepis; ?Dictyolepis; Rotsikuellaspis obrutchevi Robertson, 1938] U. Sil. L. Dev. Eu.
└ † Tremataspididae Woodward, 1891
 ├ †Aestiaspis
 ├ †Dartmuthia [Lophosteus] U.Sil. Eu. [Dartmuthiidae]
 │ └ † D. gemmifera
 └┬─ †Timanaspis U. Sil. EEu. L. Dev. Eu.
  └┬ Tremataspidinae Woodward, 1891
   │ ├ † Oeselaspis [?Trachylepis] U.Sil. Eu.
   │ └ † Tremataspis Schmidt, 1866 [Odontododus, Stigmolepis] U. Sil. Eu.
   └┬ † Dobraspis
    └┬ † Tannuaspis levenkoi Obruchev, 1956 [incl. Tuvaspis margaritae Obruchev, 1956] L. Dev. NAs.
     └ † Sclerodus [Eukeraspis] L. Dev. Eu. [Sclerodontidae]

---from [Mikko's Phylogeny Archive]

いろいろ調べていたら, [Mikko's Phylogeny Archive]とは違う見解のようですが,Sansom (2009)で,THYESTIIDA Berg, 1940としてまとめられているグループの中に,TREMATASPIDOIDEAに属する連中の復元図がでていましたので添付します.
二段目と三段目の復元図が上記TREMATASPIDOIDEAに属する連中ですね.
頭甲部を上から見たものです.
なんか,微笑ましい(^^).

2011年11月11日金曜日

FURCACAUDIFORMES

FURCACAUDIFORMES Wilson & Caldwell, 1998(たぶん《目》)

試行錯誤の一つ.
情報が少ないので,FURCACAUDIFORMESという“塊”で考えます.

一応,分類は以下のよう.
from [Mikko's Phylogeny Archive]から,編集しています(誤記と思われる部分を訂正).

---
After Wilson & Caldwell, 1998

FURCACAUDIFORMES Wilson & Caldwell, 1998 (“fork-tailed thelodonts”)
├ † PEZOPALLICHTHYIDAE Wilson & Caldwell, 1998
│ └ †Pezopallichthys ritchiei Wilson & Caldwell, 1998
└ †FURCACAUDIIDAE Wilson & Caldwell, 1998
  ├ †Cometicercus talimae Wilson & Caldwell, 1998
  ├ †Drepanolepis maerssae Wilson & Caldwell, 1998
  ├ †Sphenonectris turnerae Wilson & Caldwell, 1998
  └ †Furcacauda Wilson & Caldwell, 1998 [Sigurdia; Canonia Turner, 1991]
    ├ †F. fredholmae Wilson & Caldwell, 1998
    └ †F. heintzae (Dineley & Loeffler, 1976) Wilson & Caldwell, 1998 [Sigurdia heintzae Dineley & Loeffler, 1976; Canonia? heintzae (Dineley & Loeffler, 1976) Turner, 1991]

---from [Mikko's Phylogeny Archive]


FURCACAUDIFORMES =「二股尾形類」
原著が見られないので,詳細不明.
北米・シベリアのシルル系からデボン系から産出するようですね.
概形は,縦長で熱帯魚のよう.長短の矢印形.イカみたい.
前方に口があり,鰓が開口する.
尾の形に特徴があり,薄膜でつながったフォーク状をしています.情報不足で,淡水性とか海水性とか判らない.

Wikipediaでいくつかの種の復元図が公開されていますが,あまりにもパタン化されていて,問題が多いでしょう.その証拠に,復元図をグレースケールに変換すると,どれも同じに見える.

でも,とっても愛らしい姿をしているのも事実です.

type genusのFurcacaudaはFurcacauda = furca-cauda=「音叉型の」+「尾」という意味になりますか.
Furcicaudaのほうがいいような気がしますが.
また,furcaは「二股のフォーク;音叉;二股の支柱」を意味する言葉ですので,復元図に見るような“多股”とはちょっとニュアンスが違うような….上下二つが二股で,間にあるのはだだの飾りかな?
実際の化石を見てみたい.

2011年11月7日月曜日

無顎類が面白い

「無顎類」とは,classis: AGNATHA Cope, 1889に与えられた日本語・学術用語です.
いいなおすと,米国の古生物学者エドワード=D.=コープ(1840-1897)が,動物なのに顎をもたない奇妙な生物(+古生物)たちを,一つのグループにまとめ,それにAGNATHAという学名を与えました.1889年のことです.それを和訳したのが「無顎類」なのです.

原著が見つからないので,そこにどういう定義が書かれているのかは判らないのですが,いずれにしろ,クラディズムが主流の現代分類学では,意味のある用語とは考えられていないようです.
「顎をもつ」という特徴では,一つのグループを造ることができますが,「顎をもたない」という特徴では,一つのグループ(分類群)を造るとは考えられていないからです.

逆にいえば,動物が顎をもつまでに,さまざまな試行錯誤があり,そのさまざまな試行錯誤の結果が「AGNATHA=無顎類」として,認識されたということです.
つまり,さまざまな奇妙な生物たちが「そこにいる」といえます.


現代的な情報源としては,WikipediaWikispeciesがありますが,そこに書かれている情報は,非常に曖昧で不正確なので,よくわかりません.
しかし,Mikko's Phylogeny Archiveで,ざっとその世界を眺めてみると(学名が並べてあるだけなので,生理的に拒否されるでしょうけど(^^;),凄まじい量の“試行錯誤”があったんだ,と実感できます.

その学名を,どれか一つコピー&ペーストしてGoogleしてみれば(だいたい,いい情報にあたらないことの方が多いですが),たまに,面白いものがヒットします.画像検索でやるのが,判りやすいですね.
ヒットしたそのどれもが,実に奇妙な形をした“魚?”たちです.
じつは,もう「魚類」という言葉も,科学的には「死語」なのです(クラディズムが原因です).


どうして「無顎類」をテーマにした本が書かれないのかと不思議に思うぐらい,奇妙で大胆な連中がそこにいます.
これをテーマにした本が書かれれば,きっと,グールドの「ワンダフル・ライフ」とおなじようなヒット作となること請け合いなんですけどね.
   
 

2011年11月4日金曜日

ワラジムシとダンゴムシ pt. IV

Porcellio scaber Latreille, 1804は,日本では「ワラジムシ」と呼ばれています.

porcellioは,英語では「woodlouse, sowbug」を意味するラテン語で,日本語に訳すとこれは「木シラミ,ブタ虫」ですが,現地の「ワラジムシ」を意味する言葉です.
ただし,ラテン語のporcellio自体が何を意味しているかは,例によって「レキシコン」には書かれていません.


ちょっと違った方向から,考えてみます.
ラテン語では porcusは「ブタ」を意味しています.
Porcus marinusならば「海のブタ=イルカ」なんだそうです(注:これは学名ではなく,ラテン語の熟語です).

「紅の豚」の主人公(主豚公?)は「Porco Rosso」.
これはイタリア語ですが,日本語になおすと「紅いブタ」(英語ならば「Pork Red」?).もちろん,porco は porcus から来ているのでしょう.英語のporkもね.

porcus の語根は porc-.
これに《縮小辞》の-ulusをつけたものが,porc-ulus = porculus=「ブタの」+《縮小詞》=「ブタの小さなもの」.
たとえば,porculus marinus は,「海の若ブタ」=(やっぱり)「イルカ」.

porcus の語根は porc-.
これに別の《縮小辞》である-ellusをつけたものが,porc-ellus = porcellus =「ブタの」+《縮小詞》=「ブタの小さなもの」.こちらも同じ.

ここで,porcellusを語根化するとporcell-ですが,前出 porcellioの語根でもありますね.
そうすると,porcell-io = porcellio=「ブタの小さなものの」+《行為,その結果》という構造になりますが,ちょっと意味がイメージできません.-ioが《動詞》につくなら,イメージできるのですがねえ.
もしくは,-ioではなく,-ionならば,porcell-ion = porcellion=「ブタの小さなもの」+《縮小詞》=「本当にと小さいブタ」….
なにか,判りそうで判らない,もどかしさ.
古代ローマ人は,「ブタ」というと,なにをイメージするのか.それが判れば,なにかヒントがつかめそうですが….


しょうがないので,先に進みます.
種名のscaberはラテン語の《形容詞》で,「ザラザラした」という意味の《男性形》です.特殊な意味で「疥癬にかかった」という意味で使われる場合もあるようです.

ということは,Porcellio scaber=「属名」と「種名」をあわせて,「ザラザラしたワラジムシ」もしくは「ザラザラした子ブタ」.一番それらしいのは,「疥癬にかかった子ブタ」.
う~~ん.あまりセンスのいいネーミングとはいいがたい.それとも,なにか深い意味があるのか….
 

2011年11月3日木曜日

ワラジムシとダンゴムシ pt. III

Armadillidium vulgare (Latreille, 1804)は,日本では「オカダンゴムシ」と呼ばれています.

属名のArmadillidium という語は Armadill-idiumという構造で,「アルマジロの」+《縮小詞》=「アルマジロの小さなヤツ」という意味.
なるほど,「オカダンゴムシ」が,その名前のように「丸まる」のが,「アルマジロ」そっくりですね.こういう防御形態をとる動物は,動物分類の枠を越えて共通しているものがありますが,そういうのを「平行進化」と説明する場合があります.
進化系統上は遠い動物でも,似た環境に適応する場合,似た体の構造をとる場合があるということです.つまり,外見の類似だけで生物分類をおこなうと,思わぬ落とし穴が待っているというわけです.
ま,アルマジロとダンゴムシを生物として近いと思う人はいないでしょうけどね((^^;).

なお,語根 Armadill- の原形は armadillo ですが,これはスペイン語らしい.
もともとは,ラテン語で armatus-illus =「武装した」+《縮小詞》=「武装(この場合は「防御」がメインですね)した小さなもの」だったらしいのですが,スペイン語が入ってarmad(o)-illoに変化しているらしいです.
わたしはスペイン語はわかりませんので,なんですが,スペインの「無敵艦隊」のことを,確か「アルマダ(Armada)」といってましたから,たぶん,あっていると((^^;).


種名のvulgareは,ラテン語で,「ウルグス(vulgus)」=「集団,多数;大衆.群衆」の形容詞で《中性形》.「大衆に属する」という意味で,「一般的な,普通な」の意味が強いものです.
vulgare にはvolgaris というバージョンがあります.volgarisは,なんとなく,ドイツの大衆車「フォルクスワーゲン(Volks-Wagen)」をイメージしてしまいます.「フォルクスワーゲン」の「フォルクス(volks)」は,「大衆の」という意味ですから,たぶん関係があるんでしょう.

さて,属名と種名をあわせると,「普通な,アルマジロの小さなヤツ」ですから,現地(タイプ・ロカリティ(type locality))では,普通にいるヤツだったのでしょう.
イヤ,名詞の「集団,多数」の意味が形容詞化した,「(いつも)たくさんいる,アルマジロの小さなヤツ」の方が,リアルですね.
 

2011年11月2日水曜日

ワラジムシとダンゴムシ pt. II


さて,ついでですから,学名の意味を探っておきましょう(こっちが,わたしの興味あるところ).

いわゆる「ホンワラジムシ」と呼ばれているOniscus asellus C. Linnaeus, 1758から.

Oniscusは,もとはギリシャ語で「オニスコス[ὁ ὀνίσκος]」がラテン語化したもの.その意味は「(海に住む)タラ」のこと(意外!).別に,「woodlouse」の意味とあります.「woodlouse」は「woodlice」の複数形で,意訳すると「木のシラミ」で,具体的にはギリシャ付近に生息する“ワラジムシ”のことを指しているといいます.もっと,深い意味があるかどうかは記述がありません.
もう一つ,「windlass, crane」という意味がありますが,これは「巻き揚げ器」とでもいいますか,梃子/滑車の応用で,少ない力で重たいものを持ち上げる道具を指しているらしい.

こんなに違う三つの意味があるということは,何か元々の意味がありそうですが,「一番信用できる」とされるこの「ギ英辞典」にはなにもでていません.
これは,じつはわれわれが悪い.
「辞典」というと「言葉の意味」が書かれていると思いがちですが,「ギ英辞典」としばしば訳されるこの“辞典”は,ほんとうは「Lexicon」なのです.
言葉通りの「レキシコン」は「ディクショナリー」ではなくて,「古典」のどこにその言葉が使われているかという「リスト」に過ぎないので,たまたま見つかっているその「古典」の著者が,言葉の誤用をしていたとしても,「レキシコン」の編集者には責任がないというわけです.
で,われわれは「レキシコン」と「ディクショナリー」の区別をつけずに,「辞典」と訳して使っているわけです.

そんなわけで,「オニスコス[ὁ ὀνίσκος]」が示す意味は曖昧.
さて,この「オニスコス[ὁ ὀνίσκος]」はラテン語化していて,oniscosもしくはoniscusとして使われていたようです.
ギリシャ語からラテン語化した場合,語尾の[-ος](-os)は[-us]になりますが,両方の形があるということは,古い形を残しているということかもしれません.
しかし,「ラ英辞典」では,その意味は「wood-louse, milleped」しかありませんので,「希語」と一対一ではない.あ,「wood-louse」は上記してありますが,「milleped」は,もちろん「ヤスデ」のことです.
ということは,古代ローマ人には「ワラジムシ」も「ヤスデ」も,区別をつける必要の無いものだったということですかね.
ちなみに,「ワラジムシ」も「ヤスデ」も腐食性で,ヤスデも脅すと「丸まる」性質のあるものがいますよね.

話を戻します.
Oniscus asellusの種名の方のasellusは….
こちらは,ラテン語で「子ロバ,若ロバ」のことですが,不思議なことに,ここでも「タラ,コダラ」という意味が出てきて,古代ローマ人が「好んで食した」というようなことが書いてあります.
「ワラジムシ」と「タラ」の不思議な関係が成立していますね.

ちなみに,asellusはasinusの派生語でasellus = as-ellus=「ロバの」+「小さいもの」という構造.asinus は as-inus=「ロバの」+「所属するもの」という構造ですから,as-は「ロバ」を意味する語根.
英語のass=「ロバ」はこれを借りているわけですね.

も一つちなみに,asellusはこれを属名とする生物がいるようです.
それはAsellus aquaticus (C. Linnaeus, 1758)といい,ネット上で画像を検索すると,これもワラジムシそっくりで,ヨーロッパに分布する水棲甲殻類だとのこと.なるふぉど,「水棲のワラジムシ」という意味ね.

話を戻します((^^;).
さて,そういうことで(何が?(^^;),Oniscus asellusは「子ロバのワラジムシ」….
意味がわからん(--;.なにか,深~~~い意味が,まだありそう.
 

2011年11月1日火曜日

ワラジムシとダンゴムシ

facebook上で,専門家に,道内での「ダンゴムシ」の北上について訊ねたのだけれども,どうやら,「×××,ヘビに怖じず」だったようです.まったく申し訳ない.

どういうことかというと,「ダンゴムシ」や「ワラジムシ」という名は「俗称」に過ぎず,ある「種」に対応した言葉ではないからです.“虫”の世界ではありがちですが.

たとえば,「ダンゴムシ」はoredr ISOPODA Latreille, 1817(目 等脚類)を構成する生物のうち,陸棲で刺激を受けると丸くなる習性をもつもののことだそうです.
しかし,これが,分類学上の単位と一致するのかどうかは明瞭ではありません.

一方で,一般にダンゴムシと呼ばれている生物には,メジャーなものがあり,それは学名でArmadillidium vulgare (Latreille, 1804)というもので,これには「オカダンゴムシ」という和名が与えられているようです.
まあ,われわれ(凡人:非“虫”人)が「ダンゴムシ」というと,だいたいこれを指しているというわけですね.

ところが,プロにとっては,別種,別属,別科にも“ダンゴムシ”が居るのだから,わたしのように無知な質問をするものがいると,戸惑うというわけですね.
あ,もちろんそのプロのかたは,そんなことはおくびにも出さず,親切に回答してくださっています.


ついでに,調べたところを蛇足しておくと,「ワラジムシ」も似たようなことがあり,われわれが,「ワラジムシ」というと,だいたいが,Porcellio scaber Latreille, 1804という種のことを指しているのですが,一方で,suborder ONISCIDEA Latreille, 1802(亜目 ワラジムシ類)に含まれる大部分も「ワラジムシ」と呼ばれているそうです(ざっと,写真を見たところ,わたしには,ほとんど区別がつかなかったですが).

だったら,俗称を和名として「一種」に対応させればいいようなものですけど,現状はそうなっていないらしい.
これはまあ,分類が混乱しているというよりは,分類研究は手つかず状態をようやく脱皮し,ちょっとの違いで「これも新種,これも新種」ということで群雄割拠中という状態らしい(ほかにも,「ワラジ~系」は移入種が多いといわれながら,在来種が居たのかどうかも定かでないとか,あるみたい).
日本だけでも,何十種いるとも,何百種いるともいわれているようです.

だいたい,“虫”の世界は,わずかな違い,たとえば,色とか模様とかが少し違うということで「新種」として報告されることが多いのですが,わたしのように,(昔のことですが)化石を扱っていたものにとっては「そんなに違いがあるのかいな」と感じることもシバシバです(化石には,「色や(それが造り出す)模様」は,ほとんどない).

まあ,それは研究しなければ,あるいはできなければ,混乱があるのは致し方ないことですし,研究が始まったとしても開始初期の混乱(見かけ上,起きる)というのは,また仕方のないことなのです.
さらに,そういうところにお金を出すのは「無駄だ」と考えているエライ人が多い情けない国なので,研究費は出ても涙金.インプットがなければ,アウトプットもない.常識.
誰かが,ノーベル賞でも取れば,秘技「手のひら返し」があるんですけどね.

もう一つ,登場人(虫!)物.
学名をOniscus asellus C. Linnaeus, 1758というのがいまして,こいつはどうやら欧州出身で日本にはいりこんできたものらしい.こいつは,適当なのかどうなのか「ホンワラジムシ」という「和名」をもらっています.たぶん,suborder(亜目)名の語根に使われているonisc-の元だから,「ホン…」とつけられたのでしょう.

さて,この三人の(三つの)登場人物の関係はどうなっているのかというと,以下にあるweb pageにでていた分類表から抜粋したものを示します.

order ISOPODA Latreille, 1817
└ suborder ONISCIDEA Latreille, 1802
 └ infraorder LIGIAMORPHA Vandel, 1943
  └ section CRINOCHETA Legrand, 1946
   ├ superfamily ONISCOIDEA (Latreille, 1802)
   │└ family ONISCIDAE Latreille, 1802
   │ └ genus Oniscus C. Linnaeus, 1758
   │  └ Oniscus asellus C. Linnaeus, 1758(ホンワラジムシ)
   └ superfamily ARMADILLOIDEA Brandt, 1831
    ├ family ARMADILLIDIIDAE Brandt, 1833
    │└ genus Armadillidium Brandt, 1833
    │ └ Armadillidium vulgare (Latreille, 1804)(オカダンゴムシ)
    └ family PORCELLIONIDAE Brandt & Ratzeburg, 1831
     └ genus Porcellio Latreille, 1804
      └ Porcellio scaber Latreille, 1804(ワラジムシ)

こうなると,われわれ一般人にとって,もっとも目につく特徴である「丸くなる」というのは,分類学上では,ほとんど意味が無いようです.実際に,「ホンワラジムシ」と「ワラジムシ」の画像をいくつか見てみましたが,これといった違いはわかりませんでした.
一方,「ワラジムシ」に近い関係にある「オカダンゴムシ」は,何度もいうように「丸まる」という特徴でもって,“ホンワラジ”や“ワラジ”とは異なっているように見えるんですけどねえ.
 

2011年10月29日土曜日

今日の《希語》《羅語》:台風

「つむじ風」のことをギリシャ語で,「テュプォース[τυφώς]」というらしい(羅語綴り化すると typhos).
これを擬人化(擬神化)したのが「テュプォース[Τυφώς]」.またの名を「テュプォーエウス[Τυφωεύς] 」.さて,「テュプォーエウス[Τυφωεύς] 」をラテン語風に綴ると,Typhoeusです.

とりあえず,固有名詞の頭文字は「大文字」で示しておきます.(もっとも信用できるとされる)辞典にそう書いてあるから.
でも,古代ギリシャ語は,すべて大文字で綴ったので,こんな区別はなかったそうです.なぜ「大文字」しかなかったかというと,文字は「石」に刻んだので,鑿で刻みやすいように「カクカク」した形だったのです.
これが,のちに柔らかい紙や革に手書きするようになると,「丸っこい」文字ができる.
こちらを「小文字」と呼び,元の「カクカク」した文字を「大文字」としたので,「大文字」と「小文字」が同時に使われるということは,なかったようなのです.
だから,ほんとうは固有名詞の頭文字を「大文字」で綴る,なんてのは「嘘っぱち」のようです.


話を戻します.
擬人化された「テュプォーエウス(Typhoeus)」もしくは「テュプォース(Typhos)」は,じつは,「ガイア[Γαῖα]」と「タルタロス[Τάρταρος]」の末子.「百の頭をもつ巨神」だったそうです.ガイアは大地,タルタロスは冥府です.
ギリシャでは,つむじ風は多かったのですかね.「百もある」というのですから.
それにしても,「大地と地獄」の息子が「風」というのは,すごいセンスですね.

さて,Typhoeusの息子が「テュープォーン[Τῡφῶν]」.ラテン語綴りにするとTyphon.かれは,たくさんの「風」の父親ということになっています.その娘たちの名が「テュプォーニス(Typhonis)」.
う~~ん,「風」だらけですね.

さて,このTyphonが中国語の「台風[tai fung]」とまじりあってできた言葉が,英語の「タイフーン(typhoon)
」.
昔どこかで(って,学校でしょうけど)「台風」が英語化したって習いましたけど,じつはギリシャ神話が大元だったわけです.

たしかに「台風」は地獄の孫.今年は,そんな年でしたねえ.


そういえば,日本で吹いた「神風」で沈んだ「元」の船(実際に攻撃してきたのは,元に支配された朝鮮半島あたりの民族だったらしいですが)がつい最近発見されましたね.
あれって,損害賠償請求できないんでしょうかね(^^;.
 

2011年10月25日火曜日

スコティッシュ・カレー

先日,娘が通学する高校のPTA国際交流委員会がおこなうイベントに参加してきました.
一応,名目だけですが,国際交流委員の代表を務めているもんで((^^;).

イベントといっても,外人講師を招いて,ご当地のお話を聞いたり,ご当地の料理などを作ったり,ゲームをしたりなどが主な内容です.

当日の講師は,スコットランド人なんですが,事前に連絡があって,「カレーを作る」といいます.
スコティッシュ・カレーなんてあるのかな? などと思いながらも,前々日の「買い出し」から手伝うことに.

スコティッシュ・カレーの由来は…,講演会で理解できました.
講師の女性は,イギリスはバーミンガムの出身なんですが,バーミンガムは英国二番目の大都市で,産業革命発祥の地でもあります.
そこで,第二次大戦後の復興期に,たくさんのエスニックが労働力として入りこみ,現在では,(なんと!)全人口の1/3が,インド人を中心とするエスニックが占めているそうです.ほかにも,カリビアン,アフリカン,チャイニーズ,東南アジア人などがいるそうですが,インド人が一番多い.
大量の移民は,かれらの生まれ故郷の,(それこそ)「エスニック料理」を持ち込み,かれらのための「レストラン」を作ります.

講師の女性が生まれたころは,エスニック料理レストランは,街に普通にあり,それらは,スコットランド人家庭にも,家庭料理として,普通に入りこんでいました.もちろん,スコットランド人の舌にあうように,味は調えられていたようですが.

というわけで,スコットランド人の若者にとっては,ある意味,本格的なエスニック料理は「おふくろの味」でもあるというわけです.

な~~るふぉど.聴いて見なきゃ判らんわけだ.
これぞ,国際交流!


面白かったことがもう一つ.
講師の人が,英語で書かれたままの「レシピ」をもってきたのですが,それで,食材を調達することに….
参加した,お母さん方は,英語が得意な人もいることはいましたけど,大部分は「そりゃあ,外国語!」という方たち.
で,強引に「日本語」を繰り返したり,「和製英語」や「カタカナ語」を駆使(?(^^;)して…,それでもなんとか,問題をクリアーしていきました.

個人的なことですが,わたしは江戸時代末期から明治の初めにかけて,北海道に入りこんできた近代地質学の流入に興味があります.日本で最初に,近代地質学が輸入されたのは,ここ北海道なわけですが,外人講師とのやりとりは,当時もこんな感じだったんかなと,ふと,思いました.

完全な英会話能力なんて必要ないですね.「意志あるところ通ず」です.
う~~ん.これぞ国際交流!!
 

2011年10月20日木曜日

今日の《希語》《羅語》:サル

ギリシャ語で,「サル」のことを「ピテーコス[ὁ πίθηκος]」といいます.

で,なんの不思議もないのですが,ちょっと奥があります.
「希英辞典」で見ると,「ピテーコス」は,「ape」であり,「monkey」です.
日本人にとっては,「サル」は「サル」で,いろんなサルがいるだろうぐらいのことはわかりますが,サルが二分別されるなんてことは,まったく頭にありませんね.

「英和辞典」を見ると,「ape」は,「尾のない大型サル(類人猿)」であり,「monkey」は「尾のある小型サル」のことです.

ということは,(古代)ギリシャ人は,日本人のように「サル」に区別をしていなかったと考えていいのでしょう.

ところが,「羅英辞典」を見ると,このあたりは,とたんに曖昧になります.
ある辞典には,「ピテークス(pithecus)」(ギリシャ語の「ピテーコス[ὁ πίθηκος]」がラテン語化した言葉)という見出しがあり,その解説には「ape」とかかれています.別の辞典には,「ピテークス(pithecus)」いう見出しそのものがない.

しょうがないので,「英羅辞典」から,「ape」を引くと,そこには,(simia, simius)とあります.「monkey」を引くと,こちらにも「simia」がある.
どちらの解説も不親切ですが,simia と simius は同じもので,simiaが《女性形》で,simiusが《男性形》です.意味は「サル」と書いてありますが,どうも疑問.

これは,ギリシャ語の「シーモス[σῑμός]」=「獅子鼻の,平べったい鼻の」が,ラテン語の語根化した「シーム・(sim-)」=「獅子鼻の」から造られた《合成語》「シーミウス(simius)」=「獅子鼻の」が名詞化したものくさい.

つまり,
simius = sim-ius=「獅子鼻の」+「《形容詞》~に属する」
《合成語》《形容詞》simius, simia, simium =「獅子鼻の;獅子鼻に属する」
《合成語》《形》《複》simii, simiae, simia =「同上」
(それぞれ,順に,《男性形》《女性形》《中性形》)
これが,おのおの名詞化して,=「獅子鼻;獅子鼻に属するもの」になります.これらは,おのおの,羅英辞典の《女性形》simia, simiae,《男性形》simius, simiiに対応しています.

ということは,simiusは,もともと「サル」ではなくて,「獅子鼻の」という形容詞が,「獅子鼻のもの」という名詞化して,「(獅子鼻の)サル」に変化したのだということが考えられるわけです.
ということは,古代ローマ人には「サル」という言葉が無くて,古代ギリシャ語から借りたということになりますね.さらに,古代ローマ人は「獅子鼻のサル」しか知らなかったということになりそうです.
ま,サルの分類は,なかなか難しいので(使われている言葉と分類とがきれいに一致しない),そう簡単ではないかもしれませんが….


ところで,「ピテーコス[ὁ πίθηκος]」はどうなったのでしょうか?
「ピテーコス[ὁ πίθηκος]」は,(ほかの単語もだいたいそのような傾向があるのですが)そのままラテン語化せずに,ラテン語の「語根化」しています.
だから,信頼できる羅英辞典ではpithecusという見出しが無くて,pithecium = pithec-ium=「小さなサル」のように「語根」として使われた「語」しか,見出しにないということらしいです.

じゃあ,なぜ,(怪しい形)ラ語辞典にはpithecusという見出しがあるのか.
それは,たぶん,pithecusが学名の一部として現在も使われるため,辞典編集者が項目として取り入れたものなのでしょう.実際,どう考えても《NL》= New Latinには,学名からきたとしか考えられないものが散見されます.
ただし,これらはわたしの私見に過ぎないので,信用しないように
 

2011年10月14日金曜日

今日の《希語》《羅語》:サウルス

サウルスについては,「学名で遊ぶ」で一度紹介したのですが,再度.

サウルス(saurus)というラテン語はありません.
サウルスは,ギリシャ語の「サウーロス[ὁ σαῦρος]」=《男》「トカゲ」から作られた合成語です.

[σαῦρος]をギリシャ語・アルファベータからラテン語・アーゼータ(正確にはなんと呼ぶのかシランですが,一般的には「アルファベット」と呼ばれるヤツです)に変換すると,saurosになります.

ものの本には,ギリシャ語からラテン語に変換すると,自動的に末尾の[-ος]は -usに変化すると書いてあります.わたしも始めはそれを信じていましたが,いろいろ見ていくと,どうも違うような気がします.
ギリシャ語に関する本とか,ラテン語に関する本はありますが(日本語で読めるもの),ギリシャ語とラテン語の関係について書かれた本は無いので,自己流に(機械的に)解釈することにしました.
その方が,簡単なので.

ラテン語化されたsaurosの語根はsaur-です.これに(ラテン語の)形容詞化語尾である-usを合成します(不思議なことに,ラテン語の-usは名詞化語尾でもあります.これについては後で…).そうすると,saur-us = saurus=「トカゲの」ができあがります.語尾-usは,ラテン語の中では典型的な変化をしますので,

saurus = saur-us=「トカゲの」+《形容詞》
《合成語》《形》《単》saurus, saura, saurum=「トカゲの」
《合成語》《形》《複》sauri, saurae, saura=「トカゲの」

ができます.順に《男性形》《女性形》《中性形》です.
sauraがsaurusの《女性形》とかいわれるのは,このあたりからですね.

なぜ,こんなのが必要かというと,実用ラテン語のことは知りませんが,学名ラテン語では,《属名》が《名詞》,《種名》が《形容詞》であらわされ,「赤いイヌ」とか「白いネコ」みたいな形であらわされるのですが,《名詞》の《属名》にも《性》があり,それを形容する《種名》はそれに引っ張られて,「同じ《性》であらわされる」というみょうなルールがあるからです(だから,《男性形》《女性形》《中性形》を作らなければならない.また,「できる」ということでもあります).
これは,実用ラテン語の尾を引いているということなんでしょう.
また,現在では,「種」が生物分類の基本単位とされていますが,このルールが成立したころは,「属」が基本単位で,「種」は,それを形容する「違い」をあらわす名前だったことが推測できます.

この《性》のルールについては,キチンと整理ができていないようです.一方で,《性の統一》については,しばしば「原著者が間違っているので,訂正を」という報告もしばしばあるようです.《性のルール》について,キチンとしたものが公開されていないのだから(とくに,英語を介してでしか,ギリシャ語やラテン語が理解できない日本では…),《性の統一》なんかやめてしまえば…と思いますが,こういう伝統(レガシー;どちらかというとPC界の用法です.もう役に立たないのに「残っている」というような)のあるものは,意味が無くても,なかなか訂正されませんね.

話を戻します.
じつは,ギリシャ語にもラテン語にも,現代文法でいうような《名詞》とか《形容詞》とかの区別はないような気がします.ちゃんと説明できませんけど.それで,上記の《形容詞》は,そのままの形で《名詞》になってしまいます.ギリシャ語だと《冠詞》がつけば《名詞》だと,すぐにわかりますが,ラテン語に冠詞はないそうです.
辞典などでは-usは《名詞化語尾》とも,《形容詞化語尾》とも書いてありますが,なぜ「名詞」も「形容詞」も同じなんでしょうかね.たぶん,「同じ」だからですね.
この《名詞化》については,《合成後綴》として考えた方が理解しやすいかもしれません.

-saurus = -saur-us=「トカゲの」+《名詞化語尾》
《合成後綴》《単》-saurus, -saura, -saurum=「~トカゲ」
《合成後綴》《複》-sauri, -saurae, -saura=「同上」

という形ですね.

たとえば,-us=《行為とその結果》《性質》の代わりに,-ius =「~の.~(に)属する,~(に)関係する」を合成すると,

-saurius = -saur-ius=「トカゲの」+「~の.~(に)属する,~(に)関係する」
《合成後綴》《形》《単》-saurius, -sauria, -saurium=「~トカゲの;~トカゲに属する」
《合成後綴》《形》《複》-saurii, -sauriae, -sauria=「同上」
となり,これが名詞化すると同じ形で,それぞれが=「~トカゲ;~トカゲに属するもの」という意味になります.
恐龍類を意味するDINOSAURIAはdino-sauriaで「恐ろしい」+「トカゲに属するものども《中性複数》」という意味だったことがわかりますね.
 

2011年10月12日水曜日

今日の《希語》《羅語》

ブログがまったくストップしておりますが,体調不良なわけではありません.

魚類の分類名称の検討をおこなっていたら,今まで作ってきた「MY学名語源辞典」の見なおしが必要になりまして,-a~ωまで訂正中なのです.なにせ,データーが膨大なので,やっと[L]に到達したところ.
ヒマがあれば,やってますので,ブログ更新できないのです.

この間,某「生物学名概論」で“定本”とされたLiddell & ScottのA Greek-English Lexiconや,LewisのA Latin Dictionaryなどのオンライン版を入手しまして,検討を続けてました.

思うに,これは,ダメですね.

これらの辞典は,英語とギリシャ語もしくは英語とラテン語に「精通」している人にでないと,意味がないようです.
第一に,省略が多すぎて,辞典を引いているのに,ほとんど謎解き状態.
第二に,英語を経由するわけですが,これらの辞典の著者はギリシャ語やラテン語に精通しているのかもしれないですが,英語はどうもそうではないようです.基本的に説明がヘタ.とくに言葉のえらび方に疑問があります.
辞典の解説文なのに,使われている単語が,しばしば多義性の言葉であって,英語経由で日本語になおすと,どんどん意味が広がって曖昧になってしまうことがあります.古典ギリシャ語,古典ラテン語のプロが直接日本語になおしてくれないと,辞書としてはつねに「?」状態です.

もっとも,日本で販売されている希語辞典,羅語辞典の元本は,どうやら上記の本なようで,ときどき「みょうな訳」(明白な「間違い」も)があるわけがわかりました.

考えてみれば,
「古典ギリシャ語」>「古典ラテン語」化>「英語」化さらに>「日本語」化
もしくは「古典ギリシャ語」>「英語」化さらに>「日本語」化
もしくは「古典ラテン語」>「英語」化さらに>「日本語」化
してるわけで,何重もの言葉(文化)のフィルターがかかっているわけですから,どの言語についてもヅブの素人であるわたしには「ちんぷんかんぷん」な時のほうが多いわけです.

第三に,希語も羅語も「変化形」が多くて,しかも重要といわれているのに,「変化形」がわかるように示されていない.
わたしのような素人には,「原形」がわからないので,辞典を引くことも困難なわけです.

しかし,これら辞典をオンライン化デジタル化した人がいまして,わたしのような素人にでも,「変化形」から辞書を引くことが可能になったわけです.すごく助かります.
残念なのは,ギリシャ文字に「外字」を使用していて,ギリシャ語は直接検索することができません(相当昔に作られたものなのでしょう).一度,ラテン語(綴り)化してからでないと引けないわけです(ラテン語綴り化は,いくつか法則があるようですが,統一されてはいないようです;だから,引きなおしが必要).もったいない.
 

2011年9月25日日曜日

魚の分類(15)

ようやっと,Berg (1940)の研究史に載っていた分類群名の語源について,rev. up. し終わりました.

日本では,気がついている人はいないと思いますけど((^^;).
おかげで,世界中からスパムが集まるようになってしまった((^^;)

何がやりたかったかというと,デボン紀の一大事=脊椎動物の上陸について,駄文を書くことだったんですが(大人の童話シリーズ;(^^;),魚の分類があまりにもカオスなので,整理してみようと思ったからです.
結果は…,やはりカオスのママなんですが,ここ十年以上も作り続けている“学名語源辞典”にたくさんのデータが集まり,今までわからなかった「語尾変化」についても理解できるようになったつもりでいます.

たぶん,海棲爬虫類やアンモナイト,あるいは日本に生息している動物などの学名についての調査を始めることができるようになったかとも思います.

もう一つ気付いたことは,「無顎類」が面白い.
海域の巨大化した無脊椎動物に追われながら,陸域から流れ込む有機物(すでに植物は上陸していた)を求めて,移動を開始した原始的な脊椎動物は,砂漠化しつつあるデボン紀の大陸という,こちらも苛酷な環境から「渚」ではなく,さらに陸上へといかざるを得ない運命が待ち受けていたこと.
また,体制を変えた上で,海に戻る連中もいたわけですが,どっちにしても,その間,たくさんの“進化の実験”がおこなわれた.
S.J.グールドの「ワンダフル・ライフ」に匹敵するようなドラマがあるんだろうと思いますが,そんな情報はどこにあるんだろう….

ZEIFORMES

order ZEIFORMES (author unknown)


1940: order 97. ZEIFORMES: Berg, p. 468.

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ZEIFORMESはgenus Zeus Linnaeus, 1758を冠とする分類群名称の一つです.

Zeusは,一般にはギリシャ語の[ὁ Ζεύς]=「ゼウス大神」からきているとされていますが,どうも疑問があります.
ギ語辞典には,[ὁ Ζεύς]が魚に関係があるような記述はないのに対し,ラ語辞典には「zeus, zei (zēus, zēī)は,“魚の一種”であり,ギリシャ語では[ζαιός](zaios)もしくは [ζαζαιός](zazaios)という」と記されているからです(残念ながら,[ζαιός], [ζαζαιός]についての説明はありませんけど).
したがって,genus Zeusの語源は,ギリシャ語の[ὁ Ζεύς]ではなく,ラテン語の(zēus, zēī)であると判断したほうがよさそうです(だいたい,欧米人が「神」の名につながる「名」を魚につけるとは思われませんからね).

そうすると,ze-, zeo-を語根とする系列と,ze-, zei-を語根とする系列があるようであることが理解できます.ze-, zeo-のほうは,ギリシャ語の[ὁ Ζεύς]を語源とし(間違い),ze-, zei-のほうは,ラテン語の(zēus, zēī)を語源としている(正当)と考えるとスッキリするからです.

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以下,ze-, zeo-を語根とする系列と考えられる分類群名称.
《合成語》《亜目》ZEOIDEA = ze-oidea=「Zeusの」+「~類似の形からなる《中複》」=「Zeus類」
《合成語》《目名》ZEOMORPHI = zeo-morphi=「Zeusの」+「~様のもの《男複》」=「Zeus様類」
《合成語》《目名》ZEOIDEI = ze-oidei=「Zeusの」+「~類似の形からなる《男複》」=「Zeus類」

以下,ze-, zei-を語根とする系列と考えられる分類群名称.
《合成語》《属名》Zeus = ze-us =「zēusの」+《名詞化語尾》=「マトウダイ属」
《合成語》《科名》ZEIDAE = ze-idae =「Zeusの」+《科》
《合成語》《亜目》ZEIOIDEI = zei-oidei =「Zeusの」+「~類似の形からなるもの《男複》」=「マトウダイ類形類」
《合成語》《目名》ZEIFORMES = ze-iformes =「Zeusの」+「~の形をした《男女複》」=「マトウダイ形類」
違うかもしれませんけど((^^;).

(2011.09.25.)

2011年9月23日金曜日

TELEOSTEI

subclass TELEOSTEI Müller, 1844


1844: subclass II. TELEOSTEI Müller, (Berg, 1940, p. 346)


1904: order TELEOSTEI Müller, 1844: Boulenger, (Berg, 1940, p. 347)


1909: order 3. TELEOSTEI: Goodrich, (Berg, 1940, p. 348)


1923: superorder TELEOSTEI: Jordan, (Berg, 1940, p. 349)


1932: subclass 7. TELEOSTEI: Woodward, (Berg, 1940, p. 350)


1930: order TELEOSTEI: Goodrich, (Berg, 1940, p. 351)



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TELEOSTEI = tele-ostei =「完全な」+「~骨をもつもの《男複》」=「完骨類(完骨魚類・全骨魚類・真骨魚類)」



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ギリシャ語で「終わりに達した.完全な,真の」を意味する言葉が[τέλεος](テレオス).これをラテン語の語根としてtele-, teleo- (テレ・,テレオ・)=「完全な,全くの」の意味で使用します.



tele-は「遠い」という意味だと誤解されがちですが,そちらはギリシャ語の[τῆλε](テーレー)が語根化したtel-, tele- (tēl-, tēle-)のほうです.こちらは発音は「テール・,テーレ・」になりますので,望遠鏡は「テーレ・スコープ」,電話は「テーレ・プォーン」が正確です(英語じゃあないですよ).



-osteiは,「骨」を意味するギリシャ語の[ὀστέον](オステオン)がラテン語の《合成後綴》化した-osteusの変異形で,《形容詞》《男性》《複数》が名詞化したもの.「~骨:~骨をもつもの」の意.



合わせて,「完全な骨をもつものども」の意味です.「完骨類」と訳せます.


通常は「完骨魚類」・「全骨魚類」・「真骨魚類」と訳されているようです(「魚」を付加するのが適切かどうかは注意すべきでしょう).まれに「硬骨魚類」としている場合を見かけますが,これは完全な誤訳ですね(「硬骨魚類」→ OSTEICHTHYES)


(2011.09.23.:修正)


スパムが酷いので,移動します.


(2014.07.13:修正)

SYNBRANCHIFORMES

(clade unknown) SYNBRANCHIFORMES (author unknown)


1904: suborder SYMBRANCHII: Boulenger, (Berg, 1940, p. 347).
1906: order SYMBRANCHII: Regan, (Berg, 1940, p.347)
1909: suborder 6. SYMBRANCHIFORMES: Goodrich, (Berg, 1940, p. 348)
1923: order SYMBRANCHIA: Jordan, (Berg, 1940, p. 349)

---
SYNBRANCHIFORMESは,genus Synbranchus Bloch, 1795を冠とする分類群名称の一つです.
Synbranchusは,文法的にはSymbranchusが正しいのですが,最初の記載が,Synbranchusという誤記だったらしいです.ところが,文法的には間違いでも,最初の記載が生きますので,Synbranchusが正しい,というやっかいなことになっています.

---
Synbranchus = sym-branch-us=「共に」+《不詳》+《名詞化語尾》

もっと困ったことに,branch-に該当するギリシャ語もラテン語も見いだすことができません.
最も近いラテン語はbranchos(<もとのギリシャ語[βράγχος])ですが,これは「しわがれ声」という意味.訳せば,「共にしわがれ声をもつもの」という意味になりますが,なんのことだか….
もう一つ.Branchus(<もとのギリシャ語[Βράγχος])というものがありますが,これはギリシャ神話のアポロ(神)の息子の一人.こういうものは,原著が読めなければ,理解が不可能ですね.

たぶん,これは,branchi-の誤記だと思います.
branchi-は,ギリシャ語の[τό βράγχιον]=《中》「鰓」が,ラテン語の《合成前綴》化したもの.これならば,Symbranchiusとなり,「共に鰓をもつもの」となり(たぶん,癒合したような鰓をもっている),意味が通じます.
繰り返しますが,こういうものは,原著が読めなければ,理解が不可能です.

何が起きたのかを推測すれば,[βράγχιον]の語尾[-ιον(-ion)]は《縮小詞》と同じ形なので,これは「小さな鰓」であって「(普通の)鰓」である言葉があるのだと勘違いしたのでしょう.現存する最大のギリシャ語辞典にも,そのような言葉は(残念ながら)「ありません」でした.
もし,この解析が正しければ,原著者は(文法的には)二重の過ちを犯していることになります.
困ったことに,文法的に誤っていようが,意味のない言葉であろうが,命名法では「最初に使われた名称」が生きますので,Synbranchusは(意味不明でも)正当な分類用語となります.

---
さて,Synbranchusの語根は,synbranch-です.これに,各種語尾が合成されて,分類用語が造られます.
《合成語》《科名》SYNBRANCHIDAE = synbranch-idae=「Synbranchusの」+《科》
《合成語》《目名》SYNBRANCHIFORMES = synbranch-iformes=「Synbranchusの」+《目》

以下は,ミススペルSynbranchusを訂正し,Symbranchusとしたものと思われる例.
《合成語》《亜目名》SYMBRANCHIFORMES = symbranch-iformes=「Symbranchusの」+「~の形をしたもの」

以下は,ミススペルSynbranchusを訂正し,Symbranchiusとしたものと思われる例.
《合成語》《目名》SYMBRANCHIA = sym-branchia=「共に」+「鰓をもつもの《中複》」=「共鰓類」
《合成語》《亜目名》SYMBRANCHII = sym-branchii=「共に」+「鰓をもつもの《男複》」=「共鰓類」
《合成語》《目名》SYMBRANCHII=「同上」

(2011.09.23.修正)


2011年9月16日金曜日

学名の記載者名が「省略形」な理由

かねてから,学名の記載者名が省略形なわけをづーっと考えてました.
ま,「省略形」などころか,「記載者名」そのものすら明記しないことが,ほとんどなんですけどもね.

この「省略する習慣」ために,原著を確認することができないばかりか,誰が定義した「分類群名」なのかもわからないので,実際に何を意味しているかもわからずに“分類”が行われているという,わけのわからない事態がしょっちゅう起きているわけです.
本当に困ったことです.

話を戻します.
記載者名の省略形とは,たとえば有名なLinne (Carl von Linné),ラテン語名Linnaeus (Carolus Linnaeus)の名前がLinn.と略されるようなことです.

Linneならば,現代的分類記載法の創設者ですから,誰でも知ってますが,そうではなくて,誰も知らないようなマイナーな記載者名まで,こういう省略形を使う習慣があるようです.
学名をキチンと書いてある図鑑なんてのもほとんどありませんが,まれにでもあるそういう図鑑を見ていただくと,記載者名には,そのような省略形が多いのに気付きますよ.
ひどいときには,Tak.なんてのがありました.これはなんと,Takahashiという日本人名なんですが,そんなの誰が知ってるかい!(特に外国人は)

こんな悪習が,普通にあるのが不思議でした.

以前紹介した小倉博行(2007, p. 24)を読んでいて気がつきました.
古代ローマ人の個人名は,「実にバリエーションに乏しく,せいぜい20ほどしかありませんでした」とあります.つまり,最初の数文字を記してしまえば,そのフルネームがすぐにわかってしまったというわけです.つまり,フルネームを示す意味があまりない.

この話は非常に面白いので,ぜひ原著を読んでほしいと思います.ギリシャ神話などで,たとえば,オーケアノスの子どもたちを,まとめてオーケアニデスなどと呼ぶ習慣があることを想い出します.

つまり,こういう個人名にはあまり意味が無く,「何々一族の男」とか,「誰々の何番目の娘」とかいういい方のほうが,一般的だったのですね.だから,個人名は省略形がおおいのです.

リンネは,スウェーデン人で,スウェーデン風の名前を持っているのにもかかわらず,ラテン語風にアレンジした名前を使用していました.なんか,現代の子どもの名前に欧米風の名前をつけることが多くなっているのと重なってしまいます.こてこての日本人顔なのに….

つまるところ,無意識な,リンネへのあこがれ,ラテン語を使うことへのあこがれみたいなものが,分類学者の中にもあるということなんです.
アイドルの髪型をまねる若者みたいな軽薄さが….
   

2011年9月15日木曜日

PETROMYZONTIFORMES

order PETROMYZONTIFORMES (author unknown)


1909: subclass 2. PETROMYZONTIA: Goodrich, (Berg, 1940, p. 348)
1923: class 2. PETROMYZONES: Berg, (Berg, 1940, p. 349)
1927: order 3. PETROMYZONTIA: Stensiö, (Berg, 1940, p. 351)
1930: subclass PETROMYZONTIA: Goodrich, (Berg, 1940, p. 351)

以上は,名称の形を比較しただけで,その定義の比較はしておりません.
---
PETROMYZONTIFORMESはgenus Petromyzonを冠とする分類群名称です.

---
Petromyzon = petro-myzon=「岩石の」+「吸うもの」

petro-は,ギリシャ語の[ἡ πέτρᾱ]=《女》「岩石」が,ラテン語の《合成前綴》化したもの.

-myzonは,ギリシャ語の[μύζων]=《男》《単》「吸うこと;吸うもの」が,ラテン語化し,《合成後綴》扱いになったものです.

これらをあわせて,Petromyzon = petro-myzon=「岩石の吸うもの」.意味は,よくわかりません((^^;).こんな,わけのわからない命名も珍しいですね.
だいたいが,[μύζων]という単語自体についての,辞典の説明もわけがわからんのですけどね.

---
しょうがないですが,話を進めます.
Petromyzonの語根はpetromyz-のはずです.しかし,各分類群名称を検討すると,petromyzont-が採用されています.

PETROMYZONTIFORMES = petromyzont-iformes
PETROMYZONTIDA = petromyzont-ida
などです.
なぜ,こうなるのかはわかりません.が,可能性が高いのは,myzonの《属格》形が使われているのではないかと思われます.しかし,たしか,こういう合成語には《属格形語尾》
は使用してはいけないというルールがあったと記憶するですが,こう堂々と使われていると,逆に《属格形語尾》を使うんだったかな?と思ってしまいますね(わざわざそんな,混乱を起こすようなことが,推奨されるでしょうかね).
ただし,[μύζων]は,前述したように辞典の記述の意味がわからないだけでなく,その変化形もろくに示されていませんから,確たる証拠はありません.

だから,上記は,
PETROMYZIFORMES = petromyz-iformes
PETROMYZIDA = petromyz-ida
なのでは,と思います.

---
一方,現在は使われなくなった,petromyz-を冠とする分類用語に以下があります.
PETROMYZONES
PETROMYZONTIA

こちらは,なぜこの語尾を採用しているのかは,まったくわかりません
ホントにわけのわからない分類群(名称)だこと(--;.
---

(2011.09.15.:修正)


2011年9月7日水曜日

スズメバチ

数日前から,庭のブラックベリーの茂みと,ブドウの棚に,スズメバチがきています.

イヤだなと思いつつも,草木の手入れの最中に,連中の行動を観察していると,まるでマルハナバチみたいに,一生懸命,蜜を集めています.

なんか,近所の不良中学生が,いつもはペットボトルやパンの袋など「ポイ捨て」なのに,街に落ちているゴミを拾っているのを見たときのよう((^^;).
連中は連中で,一生懸命なので,離れて観察している分には,けっこうカワイイ奴らです.

ただ,無意味に「攻撃的」なのがいけませんね.

「攻撃的」というレッテルを貼られると,存在そのものが怪しくなりますね.見かけただけで,「殺してしまえ」という反応を導き出してしまう.
国際関係もそうですね,やたら「攻撃的」な国は(というよりは,そういうレッテルを貼られた国は),同じ反応を導き出します.
最近,そういう国が多いですね.
貧乏なくせに軍事費だけがやたら突出している国とか,まだ貧乏人をたくさん抱えているのに航空母艦を作りたがる国とか.

日本だって,おんなじで,戦争はしないと宣言し,軍事費を抑えているから,割と警戒心を持たれないんで,近所の国に対抗するためと称し,軍事費を増やしていったら,60数年前を想い出す人が増えてゆくことでしょう.国際間の緊張は,いいことではありませんね.
こんな簡単なことが,ほとんどの国にはわかっていない.

相手がどういう虫,中学生,国民なのか知らないで,風評に踊らされること.これが逆に「危機」を生み出すということ.
でも,相手がスズメバチじゃあ,友好関係は保てないよな~~.またまた((^^;).
「虫コナーズ」ぶら下げとこ.

2011年9月5日月曜日

COELACANTHIFORMES

order COELACANTHIFORMES Berg, 1937


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COELACANTHIFORMESはgenus Coelacanthusを模式属とする科の上位分類群名として提案されたものの一つです.以下その例.

genus Coelacanthus Agassiz, 1836
family COELACANTHIDAE Agassiz, 1836
suborder COELACANTHOIDEI Berg, 1937
order COELACANTHIFORMES Berg, 1937
subclassis COELACANTHIMORPHA (author unknown)

order COELACANTHIDA (author unknown)
1857: order COELACANTHIDA: Agassiz,: Berg, 1940, p. 347.

order COELACANTHINI Agassiz, 1843
1843: order COELACANTHINI Agassiz,
1909: order COELACANTHINI: Goodrich, (Berg, 1940, p. 348)
1930: order COELACANTHINI: Goodrich, (Berg, 1940, p. 351)

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まずは,genus Coelacanthusから.
Coelacanthus = coel-acanth-us

coel- は,ギリシャ語の「空洞の」を意味する[κοῖλος](コイーロス)が,ラテン語の語根化したものです.本来は,coil-, coilo-の綴りのはずですが,coel-, coelo-も使用されます.
これらの語根は,本来は「空洞の」という意味ですが,「中空の」,「腹の,腹腔の」,「(くり抜いて)凹んだ」などの意味を持たせることもあるようです.

acantho-は,ギリシャ語で「棘,針」を意味する[ἄκανθα](アカンタ)をラテン語語根化したもの.acanth-, acantho- (アカントゥ・,アカント・)=「刺の,刺のある」という意味を持ちます.

-usは,ギリシャ語語尾に多い[-ος](・オス)をラテン語化するときに使われています.なぜそうなるのかは不明.一方で,これは,「《行為とその結果》《性質》を示す」名詞形接尾辞であるとか,「~の.~(に)属する.~(に)関係する」形容詞形接尾辞であるとかの説明があります.ちょっと理解不能.
なお,ICZN Add. B.では[-ος]は[-us]に換えるよう推奨されています(理由不明).
合成科学用語では,ギリシャ語に安易につけられてラテン語化されることも多いような気がします.

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さて,この合成語は「中空の棘に属するもの」とでも訳せるのでしょうか.意味不明ですね.そこで意訳して,「中空の脊椎を持つもの」(属)となります.「管椎類」と訳されている場合があります.
じつは,英語のspine(スパイン)も「棘」と同時に「脊椎」の意味を持っています.どうやら,「神経棘」が尖っていることを意味しているらしいのですが,脊椎が連続した「脊柱」を意味することもあります.それで,ギリシャ語-ラテン語の「アカンタ」-「アカンタス」も「脊椎」-「脊柱」の意味にも使うということらしいです.

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Coelacanthusが成立したので,これがcoelacanth-という語根になります.
これに,さまざまな《合成後綴》が合成されて,多様な分類群名になります.

まず,《科》を意味する《合成後綴》-idaeが合成されて,
COELACANTHIDAE = coelacanth-idae=「Coelacanthusの」+《科》

つぎに,「~の形をしたもの《男女複》」という意味で,《目》名によく使用される《合成後綴》-iformesを合成して,
COELACANTHIFORMES = coelacanth-iformes=「Coelacanthusの」+「~の形をしたもの《男女複》」

さらに,「~様のもの《中複》」という意味で,《綱》名によく使われる《合成後綴》-morphaを合成して,
COELACANTHIMORPHA = coelacanthi-morpha=「Coelacanthusの」+「~様のもの《中複》」=「Coelacanthus様(類)」

などがあります.

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一方,現在使用されていない分類群名には,
《関係》を意味する《合成後綴》《男複》の-iniを合成して,
COELACANTHINI = coelacanth-ini=「Coelacanthusの」+《関係:男複》=「Coelacanthus類」
(注:-iniは,現在は,動物分類上の《tribe(族)》の語尾に用いられる)

《家族,種族,同類》を意味する《合成後綴》《中複》の-idaを合成して,
COELACANTHIDA = coelacanth-ida=「Coelacanthusの」+《家族,種族,同類:中複》
=「Coelacanthus類」

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(2011.09.05.:修正)


2011年9月3日土曜日

CHIMAERIFORMES

order CHIMAERIFORMES Obruchev, 1953

1857: order CHIMAERAE: Agassiz, (Berg, 1940, p. 347).
1923: order CHIMAEROIDEI: Jordan, (Berg, 1940, p. 349)
1953: order CHIMAERIFORMES Obruchev,

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上記,分類群名称は,genus Chimaera から派生したものです.

Chimaeraは,ギリシャ語の[ἡ Χίμαιρα]=《女》「キマイラ」がラテン語綴化したもの.
ラテン語綴化のために,本来はChimairaですが,Chimaeraになっています(二重母音[-αι](-ai)は,ラテン語化して[-ae]になる(ICZN:付録B))

これは,そのまま属名として…,
genus Chimaera =「キマエラ」(=ギンザメ属)

《科》をあらわす《合成後綴》-idaeが合成されて,
CHIMAERIDAE = chimaer-idae=「Chimaeraの」+《科》

《目》をあらわす《合成後綴》-iformesが合成されて,
CHIMAERIFORMES = chimaer-iformes=「Chimaeraの」+《目》
などが,造られています.

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一方,現在は使われていない「目名」として,
Chimaeraの複数形をそのまま使ったCHIMAERAE(=「Chimaeraども」)や,

「~類似の形からなる」を意味する《合成後綴》-oideusの《男性複数》形-oideiを使った,
CHIMAEROIDEI = chimaer-oidei =「Chimaeraの」+「~類似の形からなる《男複》」
などがあります(これは,亜目名として,現在も使われることがあるようです).

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【蛇足】
Chimaeraの語根に《形容詞》形語尾-usが合成された
chimaer-us = chimaerusは,形容詞なので「種名」として用いられています.意味は「寓話のような.法外の,信じ難い」となっていますが,どこからその意味が出てきたのかは不明.

(2011.09.03.:修正)

2011年9月2日金曜日

BERYCIDAE

family BERYCIDAE (author unknown)

BERYCIDAEはBeryxを模式属とする科です.
genus BeryxはCuvier (1829)が記載したことはわかっていますが,この名をいただく,科・亜目・目のすべてが「記載者不明」という,とっても不思議なグループです(とても科学の範疇にあるとは思えませんね:魚類分類学では,間々あるようですが…(^^;).
order BERYCIFORMES (author unkown)
suborder BERYCOIDEI (author unkown)

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そもそも,Beryxという用語自体の意味が不明.ある辞典には「魚の一種」とありますが,説明ではないですね.別な辞典には「絶滅した古代魚の一種」とありました.Beryxは現生種の「キンメダイ」のことなんですが….
「語源辞典・ラテン語編」の説明はもっと難解.語源辞典にも載っていないギリシャ語の単語で説明してあります(-_-;).
「<(βῆρυς =) κήρυξ, κήρυκος《男》反芻魚」

どうやら,キュビエがつくった合成語らしいのですが,その合成語のもとの語の意味が,入手可能な辞書には載っていないのでお手上げというところ.

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ともあれ,Beryxという「用語」が存在するという前提で話を始めます.

《NL》《男》beryx, berycis (bēryx, bērycis)=「キンメダイの類」

この《合成前綴》がberyc-, beryci- =「キンメダイの」.
これに,《科》を意味する《合成後綴》を付加して,
BERYCIDAE = beryc-idae=「Beryxの」+《科》

「~類似の形からなるもの」という意味の《合成後綴》-oidei《男複》を付加して,
BERYCOIDEI = beryc-oidei=「Beryxの」+「~類似の形からなるもの《男複》」
これは「亜目」として使用されているようです.

BERYCIFORMES = beryc-iformes=「Beryxの」+「~の形をしたもの《男複》」
こちらは,「目」として使用されています.

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別に,目名として,BERYCOMORPHIと BERYCOIDEIが提案されています.

BERYCOIDEIのほうは,上記「亜目」と同じ形(動物分類学では,現在でも「上科」以上のランクについて《語尾形》が決まっていない.ましてや,昔はやったもの勝ち状態なので).

BERYCOMORPHI = beryco-morphi=「Beryxの」+「~様のもの《男複》」
Beryxはギリシャ語ではないので,beryc-o-morphiではなく beryc-i-morphiのほうが正則だと思われますが,BERYCOMORPHI自体が,現在は使われていないので,問題外なようです.
 

2011年8月28日日曜日

魚の分類(14) Watson (1937)

Bergが13番目に示したのが,Watson (1937)の分類です.

ワトスン(D. Watson)は,Acanthodii(=棘魚類)に関するモノグラフで,以下の分類を提案しています.

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branch AGNATHA
 order † HETEROSTRACI
 order † ANASPIDA
 order † OSTEOSTRACI
 order CYCLOSTOMATA
branch GNATHOSTOMATA

Grade and class † APHETOHYOIDEA. A complete gill slit between the mandibular and hyoid arches.
 order † ACANTHODII
 order † ARTHRODIRA
 order † ANTIARCHI
 order † PETALICHTHYIDA
 order † RHENANIDA

Grade PISCES. The gill slit between the mandibular and hyoid arches reduced to spiracle or closed completely.
 Class CHONDRICHTHYES
 Class OSTEICHTHYES

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*1: Watson, D. M. S., 1937, The Acanthodian fishes. Phil. Trans., series B, vol. 228, London. 1937, p. 125, 142.

2011年8月27日土曜日

PETALICHTHYIDA

order PETALICHTHYIDA Jaekel, 1911

1937: order † PETALICHTHYIDA: Watson, (Berg, 1942, p. 353.)

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PETALICHTHYIDA = petal-ichthy-ida=「金属の薄片の」+「魚の」+「一族《中複》」

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petal-は,ギリシャ語で [τό πέταλον]=《中》「葉;金属の薄片」をラテン語の《合成前綴》化したもの.

ichthy-は,ギリシャ語の[ὁ ἰχθύς]=《男》「魚」をラテン語の《合成前綴》化したもの.

-idaは,-idus = -id-us = -ides-us=「《「父祖からの一族・種族の名」をあらわす》+《形容詞化》」でできた《形容詞》の変化形で,《中性形》《複数》をあらわしています.

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したがって,あわせると,PETALICHTHYIDA は petal-ichthy-idaという構造で,「金属の薄片の」+「魚の」+「一族《中複》」という意味からなり,訳すと,「金属片魚類」とでもなりますか(センスなし(^^;).

(2011.08.27.)

APHETOHYOIDEA

Grade and class † APHETOHYOIDEA: Watson, 1937 (Berg, 1942, p. 353.)

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APHETOHYOIDEA = apheto-hy-oidea=「緩めた」+「舌骨の」+「~類似の形からなるもの」(=「緩舌類」)

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apheto-は,ギリシャ語の[ἄφετος]=「緩める,広げる;自由にする」を,ラテン語の《合成前綴》化したもの.

hy-は,ギリシャ語の[ὑοειδής]=「Υ (υ)型の」を,ラテン語の《合成前綴》化したもの.別に「舌骨の」と,「豚の」という意味を持ちます(「豚の」は語源が別).

-oideaは,調査が困難でした.
ギリシャ語の [τό εἶδος]=《中》「見られるもの;形.種類」は,ラテン語風につづると,eidosになるはずですが,実際にはoidesと綴られています.
これについては,何を見ても解説がみつからないのですが,以下のように考えらました.

ギリシャ語では,語の連結は一般に[-ο- (-o-)]が使われます(これに対して,ラテン語では(-i-)).そうすると, [τό εἶδος]が《合成後綴》化して《連結形》になると, [-ο-εἶδος]になります.[-οεἶδος]はラテン語綴化の過程で,[ει (ei)]は(i)に,[ος (os)]は(us)に変えられる習慣があります.結果,[-οεἶδος]は(-oidus)になります.
このそうすると,(-oidus)は,《英語》などで「~似た」を意味する(-oid)の語源ですね.

-oidusの《語根》は-oid-.そうすると,
-oideus = -oid-eus=「~類似の」+「~からなる」という《合成後綴》が生み出されます.

これは《形容詞》ですから,《三性変化》します.
《合成後綴》《形容詞》-oideus, -oidea, -oideum =「~類似の形からなる」(順に《男》《女》《中》)

《形容詞》は《複数形》をサポートしますから,
《合成後綴》《形容詞》《複》-oidei, -oideae, -oidea =「~類似の形からなる」(順に《男》《女》《中》)
と,活用されます.
これらは《名詞》化して,=「~類似の形からなるもの」という意味を持ちます.

この《名詞》《複数形》-oidei, -oideae, -oideaは,いずれも分類単位の《語尾》に使われていますね.

ということで,-oideaは「~類似の形からなる」という意味の《合成後綴》《中性形》でした.

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で,すべての語根をあわせると,
APHETOHYOIDEA は apheto-hy-oideaという構造で,「緩めた」+「舌骨の」+「~類似の形からなるもの」という意味を持ち,(現在は使われていませんので,日本語の訳語はないようですが)「緩舌骨類」と訳せます.

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なお,APHETOHYOIDEAは,下顎骨と舌骨弓の間の隙間に,完全な「鰓」をもつことから,名づけられたんだそうです.

(2011.08.27.)

2011年8月26日金曜日

AGNATHA

classis: AGNATHA cope, 1889

1889: classis AGNATHA cope,
1927: division I. AGNATHI: Stensiö, (Berg, 1940, p. 351)
1934: (calde unknown) AGNATHI (cope, 1889): G. Säve-Söderbergh, 1934
1933: class AGNATHA: Romer, 1933 (Berg, 1940, p. 352).
1937: branch AGNATHA: Watson, 1937 (Berg, 1942, p. 353.)

注:ここで,各々分類群の定義に関しては,原著が入手不能なので,検討していません.検討を行ったのは,「名称」の意味についてだけですので,お間違えのないように.
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AGNATHA = a-gnatha =「無・」+「~顎《中複》」
AGNATHI = a-gnathi =「無・」+「~顎《男複》」

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《接頭辞》a-は否定のa-です.
《接頭辞》a-, an-=「非・,不・,無・」<[ἀ, ἀν]=《否定辞》

-gnatha, -gnathiは,元はギリシャ語の[ἡ γνάθος]」=《女》「顎,口」で,ラテン語の《合成後綴》化によってできた《変化形》です.

-gnathus = -gnath-us=「顎の」+《形容詞化接尾辞》

ここで,《形容詞》化されたものは,《三性変化》を行いますので,
《合成後綴》《形容詞》-gnathus, -gnatha, -gnathum=「顎の」(順に《男》《女》《中》)

《形容詞》は《複数》にも対応しますので,
《合成後綴》《形容詞》-gnathi, -gnathae, -gnatha=《複》「顎の」(順に《男》《女》《中》)

となります.

ここで,classis AGNATHAは「AGNATHA《中複》」の「classis(=「綱」)」(《名詞》classisを修飾する《形容詞》AGNATHA)という使われ方をしていますが,(ここは推測ですが)classis AGNATHAがclassisを省略して AGNATHAだけが用いられるという使用法がなされたと考えられます.そうすると,AGNATHAが《名詞》化して「顎のないもの」>これだけで「無顎類」として使用されるようになってしまいます.
まとめると,AGNATHA=《中複》「無顎類」ということになります.

同様に,AGNATHIは《男複》「無顎類」ということですね.

元もと,[ἡ γνάθος]」は《女性》なので,なぜ《男性》になったり,《中性》になったりするのがわからなかったのですが,こう考えると理解ができそうです.
しかし,著者によって《男性》が選ばれたり,《中性》が選ばれたりする理由はわかりません.

(2011.08.30:修正)

魚の分類(13)Romer (1933, 1937)

ベルグが12番目に示したのが,A. S. Romerの分類.A. S. Romerの著作は,現代古生物学では古典の域に達していますね.

Romer (1933) "Vertebrate Paleontology" *1では以下のように魚様脊椎動物を分類しています.

fish-like Vertebrates


class AGNATHA
class† PLACODERMI (ARTHRODIRA, ANTIARCHI).
class CHONDRICHTHYES († ACANTHODII, ELASMOBRANCHII, † RHENANIDA, HOLOCEPHALA, etc.).
class OSTEICHTHYES (ACTINOPTERYGII, † CROSSOPTERYGII, DIPNOI)


また,Romer (1937)では,gnathostome《英》(gnathostomata《NL》=「有顎類,顎口類」)の分類を以下のように提案しています.

Gnathostome


class † PLACODERMI
class CHONDRICHTHYES (ELASMOBRANCHII s. l.).
class ACTINOPTERYGII
class CHOANICHTHYES (DIPNOI, † CROSSOPTERYGII)

---
*1: Romer, A. S., 1933, Vertebrate Paleontology, Chicago.

*6: A. S. Romer. The braincase of the Carboniferous Crossopterygian Megalichthys nitidus. Bull. Mus. Comp. Zoology at Harvard College. vol. 82, no. 1, 1987, p. 56.

CHOANICHTHYES

class CHOANICHTHYES (author unknown)

1937: class CHOANICHTHYES: Romer, (Berg, 1940, p. 352)

(2011.09.04.:削除)CHOANATA,参照

犬の糞

 
犬の糞
 涼しくなると
  復活し


暑い間は,あまり被害はなかったですが,ここ数日涼しくなったせいか,一日おきくらいに,玄関先に犬の糞があります.
イヌの恨みを買った覚えはありませんが…(^^;

こういう飼い主は,犬がかわいくて飼ってるわけではなく,ブームだから飼っている連中が多いので,犬の飼い方なんかほとんど知らず,散歩すら自分の都合なんでしょう.
暑い間は「や」ですモンね.
本当に,こういう連中が増えましたね.え?「恥知らず」ですよ.

TVをつければ,朝から晩まで,恥知らずな連中が恥知らずな連中のおこした恥知らずなニュースを流してますからね(肩書きだけは立派ですけど~~).
そんなわけで,そこら辺に住んでいる庶民に,モラルを求めるのは不可能な時代になったのかもしれません.

そういえば,道に落ちているたばこの吸いがらは,ほぼ毎日片付けているのに,毎日増えていきますね((^^;).
こちらは,「薬物中毒」ですから,自分を正当化するのは「へ」でもない.目の前で吸いがらを棄てたから,注意すると「そんなことはしていない」という(唖然).
次には,「俺たちにだって,(たばこを)吸う権利がある」だそうです.
「吸う権利はあるかもしれないけど,他人に迷惑をかける権利は誰にもない」こんなことがわからない.

犬の飼い主は,薬物中毒でもないのに,ほぼ同じ反応をします.
「犬が糞をするのは当たり前だ」
「小便くらいいいべや(生理現象だ!)」

犬が糞や小便をするのをとがめているわけではありません.
道路や他人の敷地にする(させる)権利は,あなたにはありません.

なお,犬が好きで買っている人に聞きましたら,散歩中に,イヌが「まずいところ」に糞や小便をしそうになったら引き綱を引けば(そこでは)「しない」そうです.
どこにでも,クソや小便をさせる飼い主は,大抵,イヌに引きずられている((^^;).そういうイヌは,自分の方が飼い主よりも「エライ」と思い込んでいるので,早い話が,「バカ」にされているのだそうです.
 

2011年8月21日日曜日

魚の分類(12)Stensiö (1921, 1927, 1932, 1936)

ベルグが11番目に示したのがE. A. Stensiöの分類.
一連の論文,Stensiö (1921, 1927, 1932, 1936)をまとめると,以下のような分類になるとしています.

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VERTEBRATA CRANIATA


division I. AGNATHI *1


class OSTRACODERMI (= CYCLOSTOMATA)
 subclass A. PTERASPIDOMORPHI
  order 1. † HETEROSTRACI (COELOLEPIDAE, DREPANASPIDAE, PTERASPIDAE)
  order 2. † PALAEOSPONDYLOIDEA
  order 3. MYXINOIDEA
 subclass B. CEPHALASPIDOMORPHI
  order 1. † OSTEOSTRACI (CEPHALASPIDAE, TREMATASPIDAE)
  order 2. † ANASPIDA
  order 3. PETROMYZONTIA

division II. GNATHOSTOMATA *2


branch I. ELASMOBRANCHII
 sub-branch 1. † ACANTHODII
 sub-branch 2. † PLACODERMI
  group A. † ANTIARCHI
  group B. † ARTHRODIRA (order EUARTHRODIRA, order PHYLLOLEPIDA), † STEGOSELACHII, † RHENANIDA
 sub-branch 3. HOLOCEPHALI
 sub-branch 4. SELACHII
branch II. CHOANATA *3
 sub-branch 1. † CROSSOPTERYGII
 sub-branch 2. DIPNOI
branch IlI. ACTINOPTERYGII
 BRECHIOPTERYGII (POLYPTERIDAE) *4
 CHONDROSTEI, *5 HOLOSTEI, TELEOSTEI

---
*1: E. Stensiö. The Downtonian and Devonian Vertebrates of Spitzbergen. Part 1. Family Cephalaspidae. Skrifter om Svalbard og Nordishavet, no. 2, Oslo, 1927, p. 379.
*2: E. Stensiö. On the Placodermi of the Upper Devonian of East Greenland. Meddel. om Grönland, vol. 97, no. 2, 1936, pp. 30-31.
*3: To the Choanata belong, besides, all the Tetrapoda.
*4: E. Stensiö. Triassic fishes from Spitzbergen. Vienna, 1921, p. 147. -- Meddel, om Grönland, vol. 88, no. 3, 1932, p. 74.
*5: On the classification of Chondrostei see E. Stensiö, Meddel. om Grönland, vol. 83, no. 3, 1932, pp. 96-97.

BRACHIOPTERYGII

(clade unknown) BRACHIOPTERYGII (author unknown)

1921: BRACHIOPTERYGII (POLYPTERIDAE): Stensiö, (Berg, 1940, p. 351)

---
BRACHIOPTERYGII = brachio-pterygii=「腕の」+「翼《男複》」(=「腕鰭類」)

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brachio-は,ギリシャ語で[ὁ βραχίων]」=《男》「上腕,肩」がラテン語の《合成前綴》化したもの.

-pterygiiは…,
ギリシャ語の[ἡ πτέρυξ]」=《女》「翼」の《属格》[τῆς πτέρυγος]=《女》「翼の」がラテン語の《合成前綴》化したpteryg-, pterygo-に《形容詞》化《接尾辞》-iusがついたもので…
《合成後綴》《形容詞》-pterygius, -pterygia, -pterygium=-「翼の」+《性質》=「~翼の」

この《男性形》が《名詞化》し,-pterygius=「~翼の(性質を持つもの)」となり,これが「複数化のルール」に従って,-pterygii=《男・複》「~翼;~翼をもつもの」となったものです.
本来は,「鳥の翼」ですが,「魚の翼」なので,「鰭」として扱われています.

すっごく自由だなあ….なにがって,ギリシャ語からラテン語をつくること…((^^;).

(2011.09.02.:修正)

RHENANIDA

superorder RHENANIDA Broili, 1930

1932: order † RHENANIDI: Woodward, (Berg, 1940, p. 350)
1936: order † RHENANIDA: Stensiö, (Berg, 1940, p. 351)
1937: order † RHENANIDA: Watson, (Berg, 1942, p. 353.)

---
RHENANIDI = rhenan-idi=「ライン川の」+「一族のもの《男複》」
RHENANIDA = rhenan-ida=「ライン川の」+「一族のもの《中複》」

---
rhenan-は,ラテン語の古語でライン川をあらわす《男》Rhenusを《形容詞化》:rhenanus = rhen-anus=「ライン川の」を,さらに語根化したもの.
さて,Rhenanusとかいう属があれば別ですが,地名が《目名》に使われるというのは,非常に珍しい例だと思います.もしかしたら,無効名となってしまったgenus Rhenanusがあったのかもしれません.
(注:目名の付け方としては,地名を用いるなど,ほかに例がない.通常は“目の特徴”,“代表的な属名”の語尾変化による.もしかしたら,Rhenan-xxという,現在は無効名となった属があったのかもしれない)

--
-idaは,-idus = -id-us = -ides-us=「《「父祖からの一族・種族の名」をあらわす》+《形容詞化》」の変化形.
《合成後綴》《形容詞》-idus, -ida, -idum =「一族の」(順に《男》《女》《中》)

《形容詞》は《複数》をサポートするので,
《合成後綴》《形容詞》-idi, -idae, -ida =《複》「一族の」(順に《男》《女》《中》)

これらが,《名詞》化して,=「~一族;一族のもの」という意味を表します.

--
したがって,
RHENANIDI = rhenan-idi=「ライン川の」+「一族のもの《男複》」
RHENANIDA = rhenan-ida=「ライン川の」+「一族のもの《中複》」

と,なります.
ただし,《男複》と《中複》は,(たぶん)命名者の主観でしょうから,違いの理由まではわかりません.

(2011.08.27:修正)

PHYLLOLEPIDA

order PHYLLOLEPIDA Stensiö, 1934


1934: order PHYLLOLEPIDA Stensiö,
1936: order PHYLLOLEPIDA: Stensiö, (Berg, 1940, p. 351)

---
PHYLLOLEPIDA = phyllolep-ida=「Phyllolepisの」+《一族の名;目》
Phyllolepis = phyllo-lepis=「葉状の」+「鱗」

PHYLLOLEPIDAはgenus Phyllolepisを冠とする分類群名称の一つです.
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phyllo-は,ギリシャ語の[τό φύλλον]」=《中》「葉」が,ラテン語の《合成前綴》化したもの.

-lepisも,ギリシャ語の[ἡ λεπίς]」=《女》「上皮の薄片.鱗.鱗片」で,この場合は「鱗」を意味しているようです.
あわせて,《合成語》Phyllolepis = phyllo-lepis=「葉状の鱗《女単》」

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Phyllolepis類似のグループを表すためにつくられた言葉がPHYLLOLEPIDA.
Phyllolepisを語根化してphyllolep-.これに-idaをくわえたもの.

-idaは,「英和大辞典」などには,「動物の「目」をつくるときに使われる」などと書いてありますが,「語」の説明になっていませんね.

あくまで私的解釈ですけど,-idaは,-idusが語源だと思います.
-idusは-id-usで,もとは(たぶん)-ides-us.
-idesは辞典には《「父祖からの一族・種族の名」をあらわす》となってますが,なんのことだかわかりませんね.これはギリシャ・古代ローマの習慣に関係あるようです.当時の文書では,女性の名前というのは特別な場合を除いて出てきません.たとえば「オーケアノス[Oceanos: Ὀκεαός]の娘たち」は一括して「オーケアニデス[oceanides: ὡκανίδς]」と呼ぶらしいのですが,その-idesですね.

さて,-idusという語尾が成立すれば,これは《形容詞》として扱うことができます.つまり,
《形容詞》-idus, -ida, -idum=「一族の,子孫の」
という変化が起きます.で,-ida=《女単》=「一族の(もの)」という名詞化が起きて,PHYLLOLEPIDAは「Phyllolepisの一族のもの」という意味になります.あるいは,《形容詞》のママで,「Phyllolepisの一族の」order (Ordo)という構造だったのかもしれません(ここは,当時の分類名称を造るルールというものがどういうものだったかの記録がないので「推測」です).

さて,当然《形容詞》には《形容詞》《複》をつくるルールがありますので,
《形容詞》《複》-idi, -idae, -ida=「一族の」
が成立します.
ここで,《女複》が名詞化すると-idaeという語尾ができます.これは,これは現在の動物分類学では無条件で「科」の語尾に使用することになっています.
元は,「~の一族,子孫」という意味だったんだということがわかります.

蛇足しておくと,こんなことは「辞典」にも,「文法書」にも出ていません.
「点」と「点」を結んだ,わたし個人の探索行の記録です.

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なお,Phyllolepisを冠とする分類群名称には《科名》として,
PHYLLOLEPIDAE = phyllolep-idae=「Phyllolepisの」+《科》
のほかに,
PHYLLOLEPIDIDAE = phyllolepid-idae=「Phyllolepisの」+《科》
があります.
同様に,上記《目名》PHYLLOLEPIDAのほかに,
PHYLLOLEPIDIDA = phyllolepid-ida=「Phyllolepisの」+《目》
PHYLLOLEPIDIFORMES = phyllolepid-iformes=「Phyllolepisの」+《目》
などが,見られます.

つまり,phyllolep-のほかに,phyllolepid-という語根があることになります.
これは大変に困ることです.なぜなら,phyllolepid-はphyllolepidusの語根であり,Phyllolepisの語根ではないからです.そもそもが,Phyllolepis を冠とした分類群名称として成立していない.
phyllolepid-は,たぶん,《属格》形なんだと思われますが,こういう混乱をまねくようなことはしてはいけないと思いますね.しかし,残念ながら,行われているのが実情のようです.

ちなみに,phyllolepidusだと,「葉状の楽しいもの」と訳されてしまいますね.

(2011.09.16.:修正)

EUARTHRODIRA

order EUARTHRODIRA (author unknown)


1936: order EUARTHRODIRA: Stensiö, (Berg, 1940, p. 351)

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EUARTHRODIRA = eu-arthro-dira=「真の」+「節のある」+「頸をもつもの《中複》」(=真節頸類)

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eu-は,ギリシャ語の[εὖ]」=「よく(善く,良く),立派に」を《合成前綴》化したもの.
アンモナイトの「ユーパキュディスクス[Eupachydiscus]」の「ユー[Eu-]」ですね.

arthro-は,ギリシャ語の[τό ἄρθρον]」=《中》「関節.肢節」を《合成前綴》化したもので,「節のある」という意味.

diraは,本来はdeireが正しい.
deireは,もともとはギリシャ語で,[ἡ δειρή]=《女》「首,喉」という意味.ラテン語綴り化の過程で[ει (ei)]は(i)に,末尾の[-η (-ē)]は(-a)になる習慣があります.理由は不明ですが,「ICZN, 付録Bによる許容」により使用が許されている(たぶん,アルファベット民族は[a]も[e]も[i]も[o]も[u]も区別がついていないということがあるとおもいます.日本語なら「あ」は「あ」,「え」は「え」なんですけどね).
従って,dira=《女》「首,頸」という意味(「首」と「頸」は,本来意味が違うのですが,現代日本語では違いが重視されていません).

《合成後綴》化の過程を想定しました.
dira=《女》「首,頸」の語根はdir-ですので,これを形容詞化します.

-dirus = -dir-us=「首の」+《形容詞化語尾》=「首の」

形容詞は《三性変化》しますので…,
《合成後綴》《形容詞》-dirus, -dira, -dirum =「首の」

形容詞は《複数》をサポートしますので…,
《合成後綴》《形容詞》《複》-diri, -dirae, -dira =「首の」

これらが,おのおの《名詞化》して=「~首:首をもつもの」の意味になります.-diraはこれらのうちの《中性》《複数》形.

従って,上記EUARTHRODIRAの構造はeu-arthro-dira=「真の」+「節のある」+「頸をもつもの《中複》」となり,「真節頸類」と訳せることになります.

(2011.09.07.:修正)

PALAEOSPONDYLOIDEA

order PALAEOSPONDYLOIDEA Sollas, 1903


1903: order PALAEOSPONDYLOIDEA Sollas,
1927: order 2. † PALAEOSPONDYLOIDEA: Stensiö, (Berg, 1940, p. 351)

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PALAEOSPONDYLOIDEA = palaeospondyl-oidea=「Palaeospondylusの」+「~類似の形からなるもの」

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Palaeospondylus はgenus Palaeospondylus Traquair, 1890のこと.
Palaeospondylus = palaeo-spondylus=「古い」+「脊椎」=“古椎類(属)”

palaeo-は,ギリシャ語の[παλαιός]」=《形容詞・男》「古い」が,ラテン語の尾語根化したものです.本来は,palai-, palaio-のはずですが,ラテン語綴り化する段階で,[αι(ai)]は[ae]に変換される習慣があるようです(ICZNでも,そう勧告されています).それで,palae-, palaeo-として用いられています.バージョンとしてpale-, paleo-も使用される場合がありますが,語源的には,こちらはかなり問題がありそうです.

spondylusは,(一般には)ギリシャ語の「スポンデュロス[σπόνδυλος]」=「脊椎」のラテン語化だとされています.
しかし,元もと(Classical Greek)では,[ὁ/ἡ σφονδύλος]だったらしく,これはラテン語風につづると,sphondylos もしくはsphondylusでした.[σπόνδυλος]のほうは,(現代)ギリシャ語辞典には載っていますが,古典ギリシャ語辞典では,どうも曖昧.

一方,ラテン語辞書にはspondylus (spondylos)やsphondylus (sphondylos)は載っていたり,載っていなかったり.その意味するところも,「(貝類の)肉質の部分」や「一種の筋肉」であって,あまり調和的でない.
spondylus (sphondylus), spondyli (sphondyli)=《男》

案ずるところ,ギリシャ語:[ὁ/ἡ σφονδύλος]=「脊椎」,ラテン語:spondylus=「筋肉」だったのが,ギリシャ語をラテン語化する過程においてゴッチャになり,現在では
《ラ語》spondylus, spondylī =《男》「脊椎:脊柱」
になってしまったのかもしれません.

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さて,Palaeospondylus類を一括する言葉が必要になりました.
しかし,現在でも動物分類では「目(order: Ordo)」とかを示す語尾は統一されていません.たぶん,1900年代初期といえば,やりたい放題だったのでしょう.

ここで使われている-oideaは,現在では,主に「上科」を表す語尾として統一されていますが,もともとは,ギリシャ語の[εἰδος]=「形.種類」をラテン語化した-oides=「類似の」の変化形といわれています.
のはずですが,ここいらあたりを説明した辞典・文法書には,いまだ巡り会っていませんので,なんだかわからない((^^;).
いろいろと類推すると, ギリシャ語の[τό εἶδος]=《中》「見られるもの;形.種類」を《接尾辞》連結形としたときに,[-ο-ειδης]という形をとり,これがラテン語綴りになるときに[ει(ei)] = [i]となる性質が表れて,-oidesになったらしい.(蛇足しておくと)さらに-oide《仏》になり,-oid《英》になります.もちろん意味は「~類似の」.
この-oidesが変化し,語尾が-eusとなると,-oideus = -oid-eus=「~類似の」+「~からなる」=「類似の形からなる」という意味をつくりますが,この時,語尾が-usなので,形容詞としての変化が適用され,-oideus, -oidea, -oideum=「~類似の形からなる」という《形容詞》が成立します.
あまりに柔軟すぎると思いますし,文法書にだって,こんな解説はないのですが,この時,-oideaは《女》《単》《形容詞》なんですが,《女性名詞》化して《主・単》が-oidea,《主・複》が-oideaeとなります(他にも変化形をつくりますが,関係分だけ).

で,この「類似の形からなる」という語尾が,-oideaは「動物分類上の「上科」に使用され」,-oideaeは「植物分類上,「亜科」に使用され」ているというわけです.

点と点を繋いで,ようやくたどり着きましたが((^^;),このあたりが,現在の限界ですね.
 

AGNATHI

division I. AGNATHI: Stensiö, 1927 (Berg, 1940, p. 351)

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(2011.08.26.:この項削除>AGNATHA参照のこと)

2011年8月17日水曜日

ギリシャ語・ラテン語のお勉強 pt. II

 
引きつづき,ギリシャ語・ラテン語のお勉強中((^^;).
なんとなく,どこに問題があるかがわかってきました.
って,いうか,問題だらけですね.

第一の問題は,「ギリシャ語・ラテン語」は語尾変化が著しいのにもかかわらず,辞典には,それが明記されていないこと.変化形語尾の説明(項目)が「辞典」に載っていることがないこと.です.
わかるわきゃあ,ないよな.

定本といわれる「ギリシャ語辞典」・「ラテン語辞典」のオンライン版を入手しましたけど,かなり「トホホ」状態.なぜかというと,まあ,「時代遅れの代物」と,いったほうがいいだろうとおもいます.
と,いってしまえば,このオンライン版をつくって無償で提供している人(々)に申し訳ないですけどね.

原本が,辞典にありがちな「省略だらけ」のため,せっかくテキスト化されていても,「検索」に耐えない.
ギリシャ文字が「テキスト」ではなく,外字?もしくはグラフィックでつくられているために,ギリシャ文字での検索ができない.
根本的な問題は,元が「希-英辞典」だということもあると思いますね(勝手に記述を変えるわけにもいかないですからね).

ギリシャ語を,英語を介して理解することが適切といえるのかどうかという根本問題もあるとおもいます.
といって,「希-和辞典」「羅-和辞典」といえば,(値段が)バカ高い(Greek-English or Latin-Englishと比べたら数倍から十数倍もする.内容は…(--;)割に,お笑いのような辞典(失礼.「わたしの目的に関しては」という限定ということにしといてください)は,これ以上購入する気にならない.だいたい,記述が矛盾だらけですし….
もちろん,PC上で動く「希-和辞典」なんてのは存在していないです.日本という国の語学のレベルの問題です.これまでの「感じ」では,「希-羅-和」というのは非常に相性がいいんではないのか」という気がしています.「和」というよりは「漢字」との相性ですかね.
早急に必要なのは,「希-羅-和辞典」ですね.


じゃあ,文法書でも読んでみようか」ということになりますが,ここが第二の問題.
第二の問題は,まともな教科書がないこと(文学書解読とか,現代ギリシャ語会話については,関係ないので評価できませんし,していません.).
独学者にとっては,「辞典の引き方」から書いてないと,独学が始まらない.もちろん,教科書を読み始めることもできない(そういう意味では,「本当の入門書*1」というのは,これまで存在していなかったのだろうとおもいます).
辞典の引き方は辞典を見ろといわれそうですが,「引き方」が書いてある辞典はないです.みな,ある程度「ギリシャ語」・「ラテン語」がわかっている人を前提としています.

基本的なところで,文法書は「文学書の解読」が前提ですから,そういう仕様になっている.名詞の構造とか形容詞の構造とか,あるにはありますが,いくつかのパタンが示されているだけで,のこりは巻末の表で…と,なっているのが普通です.しかし,十分な量の例が載ってるわけではないので,これで調べるのは「徒労」に近い.
具体的な単語の変化について確認したくても,だいたい,どうにもならない,
単構造語についても,こんなもんですから,学名に多い「複合語(合成語)」については,まったく手に負えないです.

結局,今つくっている「学名語源辞典(希-羅-和辞典)」を整備してゆくという方法しかないみたいです.

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*1:植田かおり「古典ギリシャ語のしくみ」,小倉博行「ラテン語のしくみ」が,かなりこれに近いです.これを読んで,初めて,文法書に書かれていることが頭に入り始めた.もちろん,基礎の基礎なので,これを読んだからといって「ギ語・ラ語」がわかるわけではありませんので,念のため.