2011年8月28日日曜日

魚の分類(14) Watson (1937)

Bergが13番目に示したのが,Watson (1937)の分類です.

ワトスン(D. Watson)は,Acanthodii(=棘魚類)に関するモノグラフで,以下の分類を提案しています.

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branch AGNATHA
 order † HETEROSTRACI
 order † ANASPIDA
 order † OSTEOSTRACI
 order CYCLOSTOMATA
branch GNATHOSTOMATA

Grade and class † APHETOHYOIDEA. A complete gill slit between the mandibular and hyoid arches.
 order † ACANTHODII
 order † ARTHRODIRA
 order † ANTIARCHI
 order † PETALICHTHYIDA
 order † RHENANIDA

Grade PISCES. The gill slit between the mandibular and hyoid arches reduced to spiracle or closed completely.
 Class CHONDRICHTHYES
 Class OSTEICHTHYES

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*1: Watson, D. M. S., 1937, The Acanthodian fishes. Phil. Trans., series B, vol. 228, London. 1937, p. 125, 142.

2011年8月27日土曜日

PETALICHTHYIDA

order PETALICHTHYIDA Jaekel, 1911

1937: order † PETALICHTHYIDA: Watson, (Berg, 1942, p. 353.)

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PETALICHTHYIDA = petal-ichthy-ida=「金属の薄片の」+「魚の」+「一族《中複》」

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petal-は,ギリシャ語で [τό πέταλον]=《中》「葉;金属の薄片」をラテン語の《合成前綴》化したもの.

ichthy-は,ギリシャ語の[ὁ ἰχθύς]=《男》「魚」をラテン語の《合成前綴》化したもの.

-idaは,-idus = -id-us = -ides-us=「《「父祖からの一族・種族の名」をあらわす》+《形容詞化》」でできた《形容詞》の変化形で,《中性形》《複数》をあらわしています.

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したがって,あわせると,PETALICHTHYIDA は petal-ichthy-idaという構造で,「金属の薄片の」+「魚の」+「一族《中複》」という意味からなり,訳すと,「金属片魚類」とでもなりますか(センスなし(^^;).

(2011.08.27.)

APHETOHYOIDEA

Grade and class † APHETOHYOIDEA: Watson, 1937 (Berg, 1942, p. 353.)

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APHETOHYOIDEA = apheto-hy-oidea=「緩めた」+「舌骨の」+「~類似の形からなるもの」(=「緩舌類」)

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apheto-は,ギリシャ語の[ἄφετος]=「緩める,広げる;自由にする」を,ラテン語の《合成前綴》化したもの.

hy-は,ギリシャ語の[ὑοειδής]=「Υ (υ)型の」を,ラテン語の《合成前綴》化したもの.別に「舌骨の」と,「豚の」という意味を持ちます(「豚の」は語源が別).

-oideaは,調査が困難でした.
ギリシャ語の [τό εἶδος]=《中》「見られるもの;形.種類」は,ラテン語風につづると,eidosになるはずですが,実際にはoidesと綴られています.
これについては,何を見ても解説がみつからないのですが,以下のように考えらました.

ギリシャ語では,語の連結は一般に[-ο- (-o-)]が使われます(これに対して,ラテン語では(-i-)).そうすると, [τό εἶδος]が《合成後綴》化して《連結形》になると, [-ο-εἶδος]になります.[-οεἶδος]はラテン語綴化の過程で,[ει (ei)]は(i)に,[ος (os)]は(us)に変えられる習慣があります.結果,[-οεἶδος]は(-oidus)になります.
このそうすると,(-oidus)は,《英語》などで「~似た」を意味する(-oid)の語源ですね.

-oidusの《語根》は-oid-.そうすると,
-oideus = -oid-eus=「~類似の」+「~からなる」という《合成後綴》が生み出されます.

これは《形容詞》ですから,《三性変化》します.
《合成後綴》《形容詞》-oideus, -oidea, -oideum =「~類似の形からなる」(順に《男》《女》《中》)

《形容詞》は《複数形》をサポートしますから,
《合成後綴》《形容詞》《複》-oidei, -oideae, -oidea =「~類似の形からなる」(順に《男》《女》《中》)
と,活用されます.
これらは《名詞》化して,=「~類似の形からなるもの」という意味を持ちます.

この《名詞》《複数形》-oidei, -oideae, -oideaは,いずれも分類単位の《語尾》に使われていますね.

ということで,-oideaは「~類似の形からなる」という意味の《合成後綴》《中性形》でした.

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で,すべての語根をあわせると,
APHETOHYOIDEA は apheto-hy-oideaという構造で,「緩めた」+「舌骨の」+「~類似の形からなるもの」という意味を持ち,(現在は使われていませんので,日本語の訳語はないようですが)「緩舌骨類」と訳せます.

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なお,APHETOHYOIDEAは,下顎骨と舌骨弓の間の隙間に,完全な「鰓」をもつことから,名づけられたんだそうです.

(2011.08.27.)

2011年8月26日金曜日

AGNATHA

classis: AGNATHA cope, 1889

1889: classis AGNATHA cope,
1927: division I. AGNATHI: Stensiö, (Berg, 1940, p. 351)
1934: (calde unknown) AGNATHI (cope, 1889): G. Säve-Söderbergh, 1934
1933: class AGNATHA: Romer, 1933 (Berg, 1940, p. 352).
1937: branch AGNATHA: Watson, 1937 (Berg, 1942, p. 353.)

注:ここで,各々分類群の定義に関しては,原著が入手不能なので,検討していません.検討を行ったのは,「名称」の意味についてだけですので,お間違えのないように.
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AGNATHA = a-gnatha =「無・」+「~顎《中複》」
AGNATHI = a-gnathi =「無・」+「~顎《男複》」

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《接頭辞》a-は否定のa-です.
《接頭辞》a-, an-=「非・,不・,無・」<[ἀ, ἀν]=《否定辞》

-gnatha, -gnathiは,元はギリシャ語の[ἡ γνάθος]」=《女》「顎,口」で,ラテン語の《合成後綴》化によってできた《変化形》です.

-gnathus = -gnath-us=「顎の」+《形容詞化接尾辞》

ここで,《形容詞》化されたものは,《三性変化》を行いますので,
《合成後綴》《形容詞》-gnathus, -gnatha, -gnathum=「顎の」(順に《男》《女》《中》)

《形容詞》は《複数》にも対応しますので,
《合成後綴》《形容詞》-gnathi, -gnathae, -gnatha=《複》「顎の」(順に《男》《女》《中》)

となります.

ここで,classis AGNATHAは「AGNATHA《中複》」の「classis(=「綱」)」(《名詞》classisを修飾する《形容詞》AGNATHA)という使われ方をしていますが,(ここは推測ですが)classis AGNATHAがclassisを省略して AGNATHAだけが用いられるという使用法がなされたと考えられます.そうすると,AGNATHAが《名詞》化して「顎のないもの」>これだけで「無顎類」として使用されるようになってしまいます.
まとめると,AGNATHA=《中複》「無顎類」ということになります.

同様に,AGNATHIは《男複》「無顎類」ということですね.

元もと,[ἡ γνάθος]」は《女性》なので,なぜ《男性》になったり,《中性》になったりするのがわからなかったのですが,こう考えると理解ができそうです.
しかし,著者によって《男性》が選ばれたり,《中性》が選ばれたりする理由はわかりません.

(2011.08.30:修正)

魚の分類(13)Romer (1933, 1937)

ベルグが12番目に示したのが,A. S. Romerの分類.A. S. Romerの著作は,現代古生物学では古典の域に達していますね.

Romer (1933) "Vertebrate Paleontology" *1では以下のように魚様脊椎動物を分類しています.

fish-like Vertebrates


class AGNATHA
class† PLACODERMI (ARTHRODIRA, ANTIARCHI).
class CHONDRICHTHYES († ACANTHODII, ELASMOBRANCHII, † RHENANIDA, HOLOCEPHALA, etc.).
class OSTEICHTHYES (ACTINOPTERYGII, † CROSSOPTERYGII, DIPNOI)


また,Romer (1937)では,gnathostome《英》(gnathostomata《NL》=「有顎類,顎口類」)の分類を以下のように提案しています.

Gnathostome


class † PLACODERMI
class CHONDRICHTHYES (ELASMOBRANCHII s. l.).
class ACTINOPTERYGII
class CHOANICHTHYES (DIPNOI, † CROSSOPTERYGII)

---
*1: Romer, A. S., 1933, Vertebrate Paleontology, Chicago.

*6: A. S. Romer. The braincase of the Carboniferous Crossopterygian Megalichthys nitidus. Bull. Mus. Comp. Zoology at Harvard College. vol. 82, no. 1, 1987, p. 56.

CHOANICHTHYES

class CHOANICHTHYES (author unknown)

1937: class CHOANICHTHYES: Romer, (Berg, 1940, p. 352)

(2011.09.04.:削除)CHOANATA,参照

犬の糞

 
犬の糞
 涼しくなると
  復活し


暑い間は,あまり被害はなかったですが,ここ数日涼しくなったせいか,一日おきくらいに,玄関先に犬の糞があります.
イヌの恨みを買った覚えはありませんが…(^^;

こういう飼い主は,犬がかわいくて飼ってるわけではなく,ブームだから飼っている連中が多いので,犬の飼い方なんかほとんど知らず,散歩すら自分の都合なんでしょう.
暑い間は「や」ですモンね.
本当に,こういう連中が増えましたね.え?「恥知らず」ですよ.

TVをつければ,朝から晩まで,恥知らずな連中が恥知らずな連中のおこした恥知らずなニュースを流してますからね(肩書きだけは立派ですけど~~).
そんなわけで,そこら辺に住んでいる庶民に,モラルを求めるのは不可能な時代になったのかもしれません.

そういえば,道に落ちているたばこの吸いがらは,ほぼ毎日片付けているのに,毎日増えていきますね((^^;).
こちらは,「薬物中毒」ですから,自分を正当化するのは「へ」でもない.目の前で吸いがらを棄てたから,注意すると「そんなことはしていない」という(唖然).
次には,「俺たちにだって,(たばこを)吸う権利がある」だそうです.
「吸う権利はあるかもしれないけど,他人に迷惑をかける権利は誰にもない」こんなことがわからない.

犬の飼い主は,薬物中毒でもないのに,ほぼ同じ反応をします.
「犬が糞をするのは当たり前だ」
「小便くらいいいべや(生理現象だ!)」

犬が糞や小便をするのをとがめているわけではありません.
道路や他人の敷地にする(させる)権利は,あなたにはありません.

なお,犬が好きで買っている人に聞きましたら,散歩中に,イヌが「まずいところ」に糞や小便をしそうになったら引き綱を引けば(そこでは)「しない」そうです.
どこにでも,クソや小便をさせる飼い主は,大抵,イヌに引きずられている((^^;).そういうイヌは,自分の方が飼い主よりも「エライ」と思い込んでいるので,早い話が,「バカ」にされているのだそうです.
 

2011年8月21日日曜日

魚の分類(12)Stensiö (1921, 1927, 1932, 1936)

ベルグが11番目に示したのがE. A. Stensiöの分類.
一連の論文,Stensiö (1921, 1927, 1932, 1936)をまとめると,以下のような分類になるとしています.

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VERTEBRATA CRANIATA


division I. AGNATHI *1


class OSTRACODERMI (= CYCLOSTOMATA)
 subclass A. PTERASPIDOMORPHI
  order 1. † HETEROSTRACI (COELOLEPIDAE, DREPANASPIDAE, PTERASPIDAE)
  order 2. † PALAEOSPONDYLOIDEA
  order 3. MYXINOIDEA
 subclass B. CEPHALASPIDOMORPHI
  order 1. † OSTEOSTRACI (CEPHALASPIDAE, TREMATASPIDAE)
  order 2. † ANASPIDA
  order 3. PETROMYZONTIA

division II. GNATHOSTOMATA *2


branch I. ELASMOBRANCHII
 sub-branch 1. † ACANTHODII
 sub-branch 2. † PLACODERMI
  group A. † ANTIARCHI
  group B. † ARTHRODIRA (order EUARTHRODIRA, order PHYLLOLEPIDA), † STEGOSELACHII, † RHENANIDA
 sub-branch 3. HOLOCEPHALI
 sub-branch 4. SELACHII
branch II. CHOANATA *3
 sub-branch 1. † CROSSOPTERYGII
 sub-branch 2. DIPNOI
branch IlI. ACTINOPTERYGII
 BRECHIOPTERYGII (POLYPTERIDAE) *4
 CHONDROSTEI, *5 HOLOSTEI, TELEOSTEI

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*1: E. Stensiö. The Downtonian and Devonian Vertebrates of Spitzbergen. Part 1. Family Cephalaspidae. Skrifter om Svalbard og Nordishavet, no. 2, Oslo, 1927, p. 379.
*2: E. Stensiö. On the Placodermi of the Upper Devonian of East Greenland. Meddel. om Grönland, vol. 97, no. 2, 1936, pp. 30-31.
*3: To the Choanata belong, besides, all the Tetrapoda.
*4: E. Stensiö. Triassic fishes from Spitzbergen. Vienna, 1921, p. 147. -- Meddel, om Grönland, vol. 88, no. 3, 1932, p. 74.
*5: On the classification of Chondrostei see E. Stensiö, Meddel. om Grönland, vol. 83, no. 3, 1932, pp. 96-97.

BRACHIOPTERYGII

(clade unknown) BRACHIOPTERYGII (author unknown)

1921: BRACHIOPTERYGII (POLYPTERIDAE): Stensiö, (Berg, 1940, p. 351)

---
BRACHIOPTERYGII = brachio-pterygii=「腕の」+「翼《男複》」(=「腕鰭類」)

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brachio-は,ギリシャ語で[ὁ βραχίων]」=《男》「上腕,肩」がラテン語の《合成前綴》化したもの.

-pterygiiは…,
ギリシャ語の[ἡ πτέρυξ]」=《女》「翼」の《属格》[τῆς πτέρυγος]=《女》「翼の」がラテン語の《合成前綴》化したpteryg-, pterygo-に《形容詞》化《接尾辞》-iusがついたもので…
《合成後綴》《形容詞》-pterygius, -pterygia, -pterygium=-「翼の」+《性質》=「~翼の」

この《男性形》が《名詞化》し,-pterygius=「~翼の(性質を持つもの)」となり,これが「複数化のルール」に従って,-pterygii=《男・複》「~翼;~翼をもつもの」となったものです.
本来は,「鳥の翼」ですが,「魚の翼」なので,「鰭」として扱われています.

すっごく自由だなあ….なにがって,ギリシャ語からラテン語をつくること…((^^;).

(2011.09.02.:修正)

RHENANIDA

superorder RHENANIDA Broili, 1930

1932: order † RHENANIDI: Woodward, (Berg, 1940, p. 350)
1936: order † RHENANIDA: Stensiö, (Berg, 1940, p. 351)
1937: order † RHENANIDA: Watson, (Berg, 1942, p. 353.)

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RHENANIDI = rhenan-idi=「ライン川の」+「一族のもの《男複》」
RHENANIDA = rhenan-ida=「ライン川の」+「一族のもの《中複》」

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rhenan-は,ラテン語の古語でライン川をあらわす《男》Rhenusを《形容詞化》:rhenanus = rhen-anus=「ライン川の」を,さらに語根化したもの.
さて,Rhenanusとかいう属があれば別ですが,地名が《目名》に使われるというのは,非常に珍しい例だと思います.もしかしたら,無効名となってしまったgenus Rhenanusがあったのかもしれません.
(注:目名の付け方としては,地名を用いるなど,ほかに例がない.通常は“目の特徴”,“代表的な属名”の語尾変化による.もしかしたら,Rhenan-xxという,現在は無効名となった属があったのかもしれない)

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-idaは,-idus = -id-us = -ides-us=「《「父祖からの一族・種族の名」をあらわす》+《形容詞化》」の変化形.
《合成後綴》《形容詞》-idus, -ida, -idum =「一族の」(順に《男》《女》《中》)

《形容詞》は《複数》をサポートするので,
《合成後綴》《形容詞》-idi, -idae, -ida =《複》「一族の」(順に《男》《女》《中》)

これらが,《名詞》化して,=「~一族;一族のもの」という意味を表します.

--
したがって,
RHENANIDI = rhenan-idi=「ライン川の」+「一族のもの《男複》」
RHENANIDA = rhenan-ida=「ライン川の」+「一族のもの《中複》」

と,なります.
ただし,《男複》と《中複》は,(たぶん)命名者の主観でしょうから,違いの理由まではわかりません.

(2011.08.27:修正)

PHYLLOLEPIDA

order PHYLLOLEPIDA Stensiö, 1934


1934: order PHYLLOLEPIDA Stensiö,
1936: order PHYLLOLEPIDA: Stensiö, (Berg, 1940, p. 351)

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PHYLLOLEPIDA = phyllolep-ida=「Phyllolepisの」+《一族の名;目》
Phyllolepis = phyllo-lepis=「葉状の」+「鱗」

PHYLLOLEPIDAはgenus Phyllolepisを冠とする分類群名称の一つです.
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phyllo-は,ギリシャ語の[τό φύλλον]」=《中》「葉」が,ラテン語の《合成前綴》化したもの.

-lepisも,ギリシャ語の[ἡ λεπίς]」=《女》「上皮の薄片.鱗.鱗片」で,この場合は「鱗」を意味しているようです.
あわせて,《合成語》Phyllolepis = phyllo-lepis=「葉状の鱗《女単》」

---
Phyllolepis類似のグループを表すためにつくられた言葉がPHYLLOLEPIDA.
Phyllolepisを語根化してphyllolep-.これに-idaをくわえたもの.

-idaは,「英和大辞典」などには,「動物の「目」をつくるときに使われる」などと書いてありますが,「語」の説明になっていませんね.

あくまで私的解釈ですけど,-idaは,-idusが語源だと思います.
-idusは-id-usで,もとは(たぶん)-ides-us.
-idesは辞典には《「父祖からの一族・種族の名」をあらわす》となってますが,なんのことだかわかりませんね.これはギリシャ・古代ローマの習慣に関係あるようです.当時の文書では,女性の名前というのは特別な場合を除いて出てきません.たとえば「オーケアノス[Oceanos: Ὀκεαός]の娘たち」は一括して「オーケアニデス[oceanides: ὡκανίδς]」と呼ぶらしいのですが,その-idesですね.

さて,-idusという語尾が成立すれば,これは《形容詞》として扱うことができます.つまり,
《形容詞》-idus, -ida, -idum=「一族の,子孫の」
という変化が起きます.で,-ida=《女単》=「一族の(もの)」という名詞化が起きて,PHYLLOLEPIDAは「Phyllolepisの一族のもの」という意味になります.あるいは,《形容詞》のママで,「Phyllolepisの一族の」order (Ordo)という構造だったのかもしれません(ここは,当時の分類名称を造るルールというものがどういうものだったかの記録がないので「推測」です).

さて,当然《形容詞》には《形容詞》《複》をつくるルールがありますので,
《形容詞》《複》-idi, -idae, -ida=「一族の」
が成立します.
ここで,《女複》が名詞化すると-idaeという語尾ができます.これは,これは現在の動物分類学では無条件で「科」の語尾に使用することになっています.
元は,「~の一族,子孫」という意味だったんだということがわかります.

蛇足しておくと,こんなことは「辞典」にも,「文法書」にも出ていません.
「点」と「点」を結んだ,わたし個人の探索行の記録です.

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なお,Phyllolepisを冠とする分類群名称には《科名》として,
PHYLLOLEPIDAE = phyllolep-idae=「Phyllolepisの」+《科》
のほかに,
PHYLLOLEPIDIDAE = phyllolepid-idae=「Phyllolepisの」+《科》
があります.
同様に,上記《目名》PHYLLOLEPIDAのほかに,
PHYLLOLEPIDIDA = phyllolepid-ida=「Phyllolepisの」+《目》
PHYLLOLEPIDIFORMES = phyllolepid-iformes=「Phyllolepisの」+《目》
などが,見られます.

つまり,phyllolep-のほかに,phyllolepid-という語根があることになります.
これは大変に困ることです.なぜなら,phyllolepid-はphyllolepidusの語根であり,Phyllolepisの語根ではないからです.そもそもが,Phyllolepis を冠とした分類群名称として成立していない.
phyllolepid-は,たぶん,《属格》形なんだと思われますが,こういう混乱をまねくようなことはしてはいけないと思いますね.しかし,残念ながら,行われているのが実情のようです.

ちなみに,phyllolepidusだと,「葉状の楽しいもの」と訳されてしまいますね.

(2011.09.16.:修正)

EUARTHRODIRA

order EUARTHRODIRA (author unknown)


1936: order EUARTHRODIRA: Stensiö, (Berg, 1940, p. 351)

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EUARTHRODIRA = eu-arthro-dira=「真の」+「節のある」+「頸をもつもの《中複》」(=真節頸類)

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eu-は,ギリシャ語の[εὖ]」=「よく(善く,良く),立派に」を《合成前綴》化したもの.
アンモナイトの「ユーパキュディスクス[Eupachydiscus]」の「ユー[Eu-]」ですね.

arthro-は,ギリシャ語の[τό ἄρθρον]」=《中》「関節.肢節」を《合成前綴》化したもので,「節のある」という意味.

diraは,本来はdeireが正しい.
deireは,もともとはギリシャ語で,[ἡ δειρή]=《女》「首,喉」という意味.ラテン語綴り化の過程で[ει (ei)]は(i)に,末尾の[-η (-ē)]は(-a)になる習慣があります.理由は不明ですが,「ICZN, 付録Bによる許容」により使用が許されている(たぶん,アルファベット民族は[a]も[e]も[i]も[o]も[u]も区別がついていないということがあるとおもいます.日本語なら「あ」は「あ」,「え」は「え」なんですけどね).
従って,dira=《女》「首,頸」という意味(「首」と「頸」は,本来意味が違うのですが,現代日本語では違いが重視されていません).

《合成後綴》化の過程を想定しました.
dira=《女》「首,頸」の語根はdir-ですので,これを形容詞化します.

-dirus = -dir-us=「首の」+《形容詞化語尾》=「首の」

形容詞は《三性変化》しますので…,
《合成後綴》《形容詞》-dirus, -dira, -dirum =「首の」

形容詞は《複数》をサポートしますので…,
《合成後綴》《形容詞》《複》-diri, -dirae, -dira =「首の」

これらが,おのおの《名詞化》して=「~首:首をもつもの」の意味になります.-diraはこれらのうちの《中性》《複数》形.

従って,上記EUARTHRODIRAの構造はeu-arthro-dira=「真の」+「節のある」+「頸をもつもの《中複》」となり,「真節頸類」と訳せることになります.

(2011.09.07.:修正)

PALAEOSPONDYLOIDEA

order PALAEOSPONDYLOIDEA Sollas, 1903


1903: order PALAEOSPONDYLOIDEA Sollas,
1927: order 2. † PALAEOSPONDYLOIDEA: Stensiö, (Berg, 1940, p. 351)

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PALAEOSPONDYLOIDEA = palaeospondyl-oidea=「Palaeospondylusの」+「~類似の形からなるもの」

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Palaeospondylus はgenus Palaeospondylus Traquair, 1890のこと.
Palaeospondylus = palaeo-spondylus=「古い」+「脊椎」=“古椎類(属)”

palaeo-は,ギリシャ語の[παλαιός]」=《形容詞・男》「古い」が,ラテン語の尾語根化したものです.本来は,palai-, palaio-のはずですが,ラテン語綴り化する段階で,[αι(ai)]は[ae]に変換される習慣があるようです(ICZNでも,そう勧告されています).それで,palae-, palaeo-として用いられています.バージョンとしてpale-, paleo-も使用される場合がありますが,語源的には,こちらはかなり問題がありそうです.

spondylusは,(一般には)ギリシャ語の「スポンデュロス[σπόνδυλος]」=「脊椎」のラテン語化だとされています.
しかし,元もと(Classical Greek)では,[ὁ/ἡ σφονδύλος]だったらしく,これはラテン語風につづると,sphondylos もしくはsphondylusでした.[σπόνδυλος]のほうは,(現代)ギリシャ語辞典には載っていますが,古典ギリシャ語辞典では,どうも曖昧.

一方,ラテン語辞書にはspondylus (spondylos)やsphondylus (sphondylos)は載っていたり,載っていなかったり.その意味するところも,「(貝類の)肉質の部分」や「一種の筋肉」であって,あまり調和的でない.
spondylus (sphondylus), spondyli (sphondyli)=《男》

案ずるところ,ギリシャ語:[ὁ/ἡ σφονδύλος]=「脊椎」,ラテン語:spondylus=「筋肉」だったのが,ギリシャ語をラテン語化する過程においてゴッチャになり,現在では
《ラ語》spondylus, spondylī =《男》「脊椎:脊柱」
になってしまったのかもしれません.

--
さて,Palaeospondylus類を一括する言葉が必要になりました.
しかし,現在でも動物分類では「目(order: Ordo)」とかを示す語尾は統一されていません.たぶん,1900年代初期といえば,やりたい放題だったのでしょう.

ここで使われている-oideaは,現在では,主に「上科」を表す語尾として統一されていますが,もともとは,ギリシャ語の[εἰδος]=「形.種類」をラテン語化した-oides=「類似の」の変化形といわれています.
のはずですが,ここいらあたりを説明した辞典・文法書には,いまだ巡り会っていませんので,なんだかわからない((^^;).
いろいろと類推すると, ギリシャ語の[τό εἶδος]=《中》「見られるもの;形.種類」を《接尾辞》連結形としたときに,[-ο-ειδης]という形をとり,これがラテン語綴りになるときに[ει(ei)] = [i]となる性質が表れて,-oidesになったらしい.(蛇足しておくと)さらに-oide《仏》になり,-oid《英》になります.もちろん意味は「~類似の」.
この-oidesが変化し,語尾が-eusとなると,-oideus = -oid-eus=「~類似の」+「~からなる」=「類似の形からなる」という意味をつくりますが,この時,語尾が-usなので,形容詞としての変化が適用され,-oideus, -oidea, -oideum=「~類似の形からなる」という《形容詞》が成立します.
あまりに柔軟すぎると思いますし,文法書にだって,こんな解説はないのですが,この時,-oideaは《女》《単》《形容詞》なんですが,《女性名詞》化して《主・単》が-oidea,《主・複》が-oideaeとなります(他にも変化形をつくりますが,関係分だけ).

で,この「類似の形からなる」という語尾が,-oideaは「動物分類上の「上科」に使用され」,-oideaeは「植物分類上,「亜科」に使用され」ているというわけです.

点と点を繋いで,ようやくたどり着きましたが((^^;),このあたりが,現在の限界ですね.
 

AGNATHI

division I. AGNATHI: Stensiö, 1927 (Berg, 1940, p. 351)

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(2011.08.26.:この項削除>AGNATHA参照のこと)

2011年8月17日水曜日

ギリシャ語・ラテン語のお勉強 pt. II

 
引きつづき,ギリシャ語・ラテン語のお勉強中((^^;).
なんとなく,どこに問題があるかがわかってきました.
って,いうか,問題だらけですね.

第一の問題は,「ギリシャ語・ラテン語」は語尾変化が著しいのにもかかわらず,辞典には,それが明記されていないこと.変化形語尾の説明(項目)が「辞典」に載っていることがないこと.です.
わかるわきゃあ,ないよな.

定本といわれる「ギリシャ語辞典」・「ラテン語辞典」のオンライン版を入手しましたけど,かなり「トホホ」状態.なぜかというと,まあ,「時代遅れの代物」と,いったほうがいいだろうとおもいます.
と,いってしまえば,このオンライン版をつくって無償で提供している人(々)に申し訳ないですけどね.

原本が,辞典にありがちな「省略だらけ」のため,せっかくテキスト化されていても,「検索」に耐えない.
ギリシャ文字が「テキスト」ではなく,外字?もしくはグラフィックでつくられているために,ギリシャ文字での検索ができない.
根本的な問題は,元が「希-英辞典」だということもあると思いますね(勝手に記述を変えるわけにもいかないですからね).

ギリシャ語を,英語を介して理解することが適切といえるのかどうかという根本問題もあるとおもいます.
といって,「希-和辞典」「羅-和辞典」といえば,(値段が)バカ高い(Greek-English or Latin-Englishと比べたら数倍から十数倍もする.内容は…(--;)割に,お笑いのような辞典(失礼.「わたしの目的に関しては」という限定ということにしといてください)は,これ以上購入する気にならない.だいたい,記述が矛盾だらけですし….
もちろん,PC上で動く「希-和辞典」なんてのは存在していないです.日本という国の語学のレベルの問題です.これまでの「感じ」では,「希-羅-和」というのは非常に相性がいいんではないのか」という気がしています.「和」というよりは「漢字」との相性ですかね.
早急に必要なのは,「希-羅-和辞典」ですね.


じゃあ,文法書でも読んでみようか」ということになりますが,ここが第二の問題.
第二の問題は,まともな教科書がないこと(文学書解読とか,現代ギリシャ語会話については,関係ないので評価できませんし,していません.).
独学者にとっては,「辞典の引き方」から書いてないと,独学が始まらない.もちろん,教科書を読み始めることもできない(そういう意味では,「本当の入門書*1」というのは,これまで存在していなかったのだろうとおもいます).
辞典の引き方は辞典を見ろといわれそうですが,「引き方」が書いてある辞典はないです.みな,ある程度「ギリシャ語」・「ラテン語」がわかっている人を前提としています.

基本的なところで,文法書は「文学書の解読」が前提ですから,そういう仕様になっている.名詞の構造とか形容詞の構造とか,あるにはありますが,いくつかのパタンが示されているだけで,のこりは巻末の表で…と,なっているのが普通です.しかし,十分な量の例が載ってるわけではないので,これで調べるのは「徒労」に近い.
具体的な単語の変化について確認したくても,だいたい,どうにもならない,
単構造語についても,こんなもんですから,学名に多い「複合語(合成語)」については,まったく手に負えないです.

結局,今つくっている「学名語源辞典(希-羅-和辞典)」を整備してゆくという方法しかないみたいです.

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*1:植田かおり「古典ギリシャ語のしくみ」,小倉博行「ラテン語のしくみ」が,かなりこれに近いです.これを読んで,初めて,文法書に書かれていることが頭に入り始めた.もちろん,基礎の基礎なので,これを読んだからといって「ギ語・ラ語」がわかるわけではありませんので,念のため.

      
 

2011年8月5日金曜日

ギリシャ語・ラテン語のお勉強

 
近ごろ,ブログの更新がなかなか進まないのは,「学名語源辞典」をrev. upしてる最中だからです.
“落とし穴”を発見したので,データを補強する必要が生じたからです.


学名の語源はラテン語をかじったぐらいでは処理できないことがハッキリしています.理由は,学名のほとんどはギリシャ語が語源だからです.

英語で「ちんぷんかんぷん」のことを「それはギリシャ語だ[It’s Greek]とか[That is all Greek to me.]」というんだそうです.
(だから,じゃあないですけど)ギリシャ語に深入りはしたくなかったんですが,「学名」というものについて「平易にしゃべれるようにしよう」とすると,ギリシャ語とラテン語の関係を明確にして,日本語につなげるというシステムを作らないと,無理くさいのです(現在は,ギリシャ語とラテン語の間がつながっていない&間に英語をはさんでいるので語彙が散漫化している).

これが,けっこう大変.

取っ掛かりが,まず,ない.
ラテン語辞典が無い.羅和辞典は,まともなものがないというのが印象.もちろん,聖書やラテン文学などを読むだけなら,充分とはいえないまでも使えるんだろうと思います(興味がないので知らない).
自然科学系は,ほとんどorまったくダメ.

しょうがないので,Latin-English Dic.をいくつか買い込みましたが,どれもダメ.語源のギリシャ語まで踏み込んでくれているものがあれば,助かるのですが,そんなものはない.

しょうがないので,Greek-Dic.をいくつか買い込んで,照らし合わさなければなりません.ここでも困ったことに,Greek-Dic.は,現代ギリシャ語と古典ギリシャ語では言葉が違うので,辞書も別になっている.
科学用語として,ラテン語に使われるようになったギリシャ語は,古典ギリシャ語も,現代ギリシャ語も両方とも含んでいる.だから,まずLatin-English Dic.を引いて,ラテン語化していないことを確かめて,Crassical Greekを確認して,(Modern) Greekを確認しなくちゃあならない.
(愚痴をこぼせば,(^^;)どの辞典も初学者のことを考慮していないので,かならず(?)にぶち当たる.(どんなことで苦労しているのかは,恥ずかしいのでいえない(^^;;基本的には省略が多すぎることなんですが…)

わからなくなったら,文法書にチャレンジするんですけど,こちらがまたわからない((^^;).
世にある「ラ語文法書」あるいは「ギ語文法書」(あるいは「~語四週間」なんて本は)というのは,大学で教科書として使うことを前提としているものがほとんどで,指導者がそばにいなければ,読みつづけることができないものです.
ま,独学では敷居が高すぎるのですね(だいたいが,学名の解析に必要な,名詞の変化については,ほとんど出ていない).


子どものころ,最初は英語という教科が好きだったんですが,「英文法」という授業が始まったとたんに「キライ」になったのを想い出します.
「~法」というからにはルールがあるんだろう,と勘違いしたわけです.実際には(ご存じの通り)「例外」のほうが多いわけで,それを憶えることが「英文法」という教科なわけです.

当時すでに,「理科系能」になっていたわたしの頭では,理解できるものではありませんでした.だって,(たとえば)水素原子は,イオン化したらH+になるのが当たり前で,実際には,3割方がH-になるとか,のこり3割方がH++になるとかだったら,「理科」なんか好きにならない.「自然界にはルールがある」から面白かったのです.

語学は,例外が当たり前.
しかも,「わからないものにはわからない(=憶えるしかない)」という妙な壁がある.
ここを突き破るのは大変です.

2011年8月3日水曜日

原子力安全庁?

 
事故起きて
 ようやくできる
  原安庁


 危険庁(?)では
 いけないのかい


結局,原子力ムラの一員だったりして.

(責任編集:宮武軟骨)


2011年8月2日火曜日

テロ

 
 世界の火薬
  皆集め.全部花火に
   してみたい


いろいろ主張はあるでしょうけど,暴力で,しかも自分自身の力でもないものにたよって,たまたま居合わせた人を犠牲にするのは,悲しい.

 (責任編集:宮武無骨)