2011年5月7日土曜日

日本列島の生い立ち

 
 北大地鉱教室の先輩でもある田沢純一さん(新潟大学名誉教授)が,専門である「腕足動物」についての本を出版したらしいので,探していました.

 残念ながら,Amazonでは取り扱っていません(例によって,この系統はメジャーじゃあないのね(^^;).
 でも,しらべてみると「セブンネットショッピング」で扱っているようでしたので,取り寄せてみました.時間はかかりましたが,なんとか取り寄せることができました.

   


 出版元は「新潟大学大学院自然科学研究科ブックレット新潟大学編集委員会」.発行者は「新潟日報」でした.

 「ブックレット」というとだいたいこの大きさですね.A5版?
 「ブックレット」は「小冊子」を意味しますので,A5版はないですよね.持ち運びに不便です.ポケットに入らない.もって歩いて,通勤途中や待ち時間にでも読もうか…というサイズではないですね.
 新書サイズだと,図版が苦しいので,B6ぐらいが適当なのでしょうか.
 出版社にはもっと読み手のことを考えてほしいものです.
 また,経費節減のためなのでしょう,接着剤で端を留めただけの装丁ですが,これは本来の意味の装丁ではないですね.開きにくい.読んでいる最中に手元から離れると,本が閉じてしまう.読み捨てが前提ならば,本の値段は¥1,000以下でなければね.
 まあ,このあたりは,みんながそうやっているから…,ということなんでしょうけどね.読み手のことは考えていない証拠ですね.


 さて,本の方ですが,題名が「日本列島の生い立ち=腕足類の化石からみた大昔の日本=」でした.「腕足類そのもの」についても,「日本列島の生い立ち」についても,たいへん興味深いことなので購入したのですが,なぜか,「次の頁を読みたい」というワクワク感がおきない.

 「第6章エピローグ:日本の地質と腕足類の研究」で著者が少し触れているように,日本では「化石の研究」など重要視されていないことが,底流にあるようです.腕足類の絶滅より先に,腕足類の研究者が絶滅しそう…って,いうあれですね.
 日本では,どうして「自然についての記述」が理解されないのか.著者は,腕足類の研究のおもしろさ,そのものについて書くべきなのに「それが(なにかの)役に立つ」という視点でしか,本の著述すら要求されない.だから,主題が「日本列島の生い立ち」で副題が「腕足類の化石からみた大昔の日本」になってしまうわけです.
 (教育予算はどんどん削られてゆくのに,ノーベル賞受賞者だけが賞賛されるお国柄ですから)

 変な例ですが,昆虫採集大好き少年たちへ昆虫採集のおもしろさを伝えたいときに,昆虫採集がなんの役に立つかという視点からしか,本がかかれていなければ…確実に面白くないでしょう.


 「第6章エピローグ」で,著者が図らずも書いていますが「化石の記載論文」は確実に生き残ります.キチンと記載しておけば,いつか誰かが利用してくれます.
 ところが,みんながいま夢中になってやっている「最先端の科学」は,いつか「時代遅れ」になります.だれも,見むきもしなくなります.もちろん,プレートテクトニクスだって例外ではないでしょう.
 科学は小さな事実の記載の積み重ねです.点と点を結んで作りあげた「高尚な理論」しか「科学」ではないと思われてますけどね.

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 最後に,このブックレットは,一般市民向けに書かれているのだそうですが(「刊行に当たって」にでている;内容から見れば,そうは思えない),そうならば,地学事典はともかく,国語辞典に載っていないような言葉は脚注で解説するべきと思います.理由は,いうまでもなく,わからない言葉が続いて解説もなければ,読み続けられないからです.

 最後の+αです(^^;.
 ずいぶんケチを付けてしまいましたが,もっと,たくさんこのような本が出版されてほしいと思います.そうでなければ,いい本は結局生まれない.
 また,こんな本(失礼!)ですら入手しようとすると,けっこうな手間暇がかかります.こんな状態は改善されるべきです.
 「出版社は文化を担ってる」などとは露,思いませんが,結局,いい本は,いい書き手,いい読み手,いい編集者を育てることから始まるのだと思います.
 

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