2011年5月30日月曜日

SALMOPERCAE

order SALMOPERCAE (author unknown)


1906: order SALMOPERCAE: Regan, (Berg, 1940, p.347)
1923: order SALMOPERCAE: Jordan, (Berg, 1940, p. 349)

---
SALMOPERCAE = salmo-perc-ae=「Salmoの」+「スズキの」+「~に関係する」
SALMOPERCAE = salmo-percae=「Salmoの」+「スズキの類《複》」

---
かなり理不尽な用語です.SALMOPERCAEが示す内容・定義ではなく,用語法のことですが.
salmo-は,ラテン語のsalmo, salmonis (salmō, salmōnis)=「タイセイヨウサケ(サルモー)」の語根.ギリシャ語でsalmoを表す言葉は見つかりませんでした.

-percaeは,もとはギリシャ語で[ἡ πέρκη]=《女》「perch, スズキの類」の《複数形》[αἱ πέρκαι]=《女複》「同前」をラテン語化したものです.ギリシャ語をそのままラテン語綴りにすると,percai ですが,慣習により[αι](ai)は(ae)になりますので,ラテン語化したときには,percaeになります.

この時点で,この言葉は《ラ語》+《ギ語》という余りやるべきでないミスを犯しています.しかし,まあ,perca, percaeは「ラテン語」であるとして,目をつぶって《ラ語》+《ラ語》の構造であることにしてきましょう.

そうすると,(それにしても)これは「Salmoのスズキの類ども」という,ちょっと意味の通じにくい言葉になります.
たぶん,「salmoの仲間とスズキの仲間」ということを示したかったのだと思いますが,そういう意味になってるのかどうかはわたしにはわかりません.もっと別な言葉があるだろうという気がします.

---
ところで,SALMOPERCAEは,「サケ・スズキ類」と訳されることがあります.これは誤訳なので,使わないほうがいいでしょう.「タイセイヨウサケ・スズキ類」ならば,まだましですが,salmon (Salmo)はサケではないので,誤訳であることにはかわりありません.

(注)「Salmon」を「サケ」と訳すのは,問題があります.
「Salmon」は大西洋(&欧州の河川)にいるものです.これはSalmo属.ヨーロッパ人にとっては,川で生活するものがtroutで,海に降りるものがsalmonでしたが,どちらも同じSalmo属.
一方,太平洋にいるのは昔から(日本では)「サケ」とよばれてきました.これはOncorhynchus属です.別属です.
ヨーロッパ人が北米大陸に侵出したときに,ヨーロッパでtrout-salmonと呼んでいたSalmo属に割と似た魚を見つけ,これを自分たちの言葉で呼んでしまったのです.言葉がないですからね.ネイティブ・アメリカンの言葉を使えば問題はなかったのですが,ヨーロッパ系人はしなかったわけですね.
日本人はといえば,欧米のものはなんでも有り難がる人たち(学者なんかには特に多い)が,よく考えずに欧米の言葉を優先してしまった結果,まったく別な属を同じ「~サケ」と表現してしまうことになってしまいました.

(2011.09.20.:修正)

0 件のコメント: