2009年8月16日日曜日

辞書の展開(12)

 
●食肉目[order CARNIVORA Bowdich, 1821]
 食肉目[order CARNIVORA Bowdich, 1821]は“ネコ目”と呼ぶように指導されてますが,まるで原語を反映していません.ここでは,昔ながらの「食肉目」を使います.

 食肉目は,昔はPINNIPEDIAとFISSIPEDIAの二つに分けられるのが普通でした.
 PINNIPEDIAはpinni+ped+ia=「羽の」+「脚の」+「group」という語根の合成語で「鰭脚類」と訳されています.一方の,FISSIPEDIAはfissi+ped+ia=「裂かれた」+「脚の」+「group」という語根の合成語で「裂脚類」と訳されています.
 鰭脚類は後脚が融合し鰭状になった「アザラシ」・「アシカ」・「セイウチ」などをグループ化し,裂脚類はそうではなく,後脚が二本に分かれたままの(つまり残りの食肉目全部)をグループ化したものでした.
 現代人の常識では,脚は別れているのが普通で,鰭脚化したのは海に戻った食肉目の適応の過程だと考えてしまいますが,昔は鰭脚が基本であり,進化して鰭脚が(分かれた)脚になったと考えたのでしょうかね.

 用語の意味を聞かされれば,なにか不自然な分け方だと自然に思うことかと思います.
 もしかしたら,昔の科学者は「魚類」→「鰭脚類」→「裂脚類」と進化してきたと考えていたのかもしれませんね.

 新分類では,大まかには

order CARNIVORA Bowdich, 1821 (食肉目)
├ CARNIVORA incertae sedis(食肉目分類位置不詳)
├ suborder FELIFORMIA Kretzoi, 1945(猫形獣亜目)
└ suborder CANIFORMIA Kretzoi, 1943(犬形獣亜目)
       from “The Taxonomicon

 となっています.
 なんか,「犬」か「猫」かに分けるなんて,私らの生活感覚には合っていますね.

 しかし,「CARNIVORA incertae sedis」ってのは,いったい何でしょうね.“The Taxonomicon”には,実は「CARNIVORA incertae sedis」という分類はありません.ランクも無しに放り出してあるので,私が勝手にまとめたものです.
 いってみれば,「犬形」と「猫形」に分類するのに邪魔な「古い形質をもった雑多なもの」ということになりますか.
 具体的には,以下の属があげられています.

    genus †Aelurotherium Adams, 1896
    genus †Eosictis Scott, 1945
    genus †Elmensius Kretzoi, 1929
    genus †Kelba R.J.G. Savage, 1965
    ?genus †Vishnucyon Pilgrim, 1932
    genus †Vinayakia Pilgrim, 1932
    genus †Notoamphicyon Ameghino, 1904

 Aelurotheriumは,始新世(北米)に生息していて,古い体系では肉歯目に入れられていたこともありました.Kelbaは,中新世(東アフリカ)に生息していて,古い体系では汎盗目に入れられていたこともありました.
 Eosictis, Elmensius, Vishnucyon, Vinayakiaは詳細不明.
 と,いうことは,旧体系では大部分は無視されていたか,調査の網に引っかからなかったということ.もちろん,クラディズムでは重要なポイントを占めるグループであることは間違いありませんね.

 なにか,プレートテクトニクス的解釈では重要な露頭(岩体)でありながら,地向斜造山論では長年「無視」されてきたか,解釈不能として放置されてきた「メランジ」を思い出してしまいます.

 「分からないこと」にこそ,突破口があるということですかね.
 

辞書の展開(11)

 
●肉歯目[order CREODONTA (Cope, 1875) McKenna, 1975] 

 肉歯類は始新世に繁栄した原始的な肉食性哺乳類です.
 当時のアフリカとローラシア(北米+ユーラシア)に広く分布していました.
 漸新世の初期に入っても生き延びていましたが,急速に勢力を弱め,食肉目と交代してゆきます.
 肉歯目はオックシュアエナ*(=オキシエナ)類とヒュアエノドン*(=ヒエノドン)類に分けられるのが普通です.ランクは亜目だったり,科だったりはしますが.

order CREODONTA
└ suborder HYAENODONTIA
  ├ family HYAENODONTIDAE
  └ family OXYAENIDAE
               by Carroll (1988)

order HYAENODONTA van Valen, 1967 (CREODONTA Cope, 1875)
├ family OXYAENIDAE Cope, 1877
└ family HYAENODONTIDAE Leidy, 1869
               by Mueller (1989)

肉歯目〔ヒエノドン目〕[ Creodonta ]:太古の肉食性有胎盤類.
├オキシエナ亜目 [ Oxyaenoidea ]:初期の肉歯類.
└ヒエノドン亜目 [ Hyaenodontia ]:長続きした種々の肉歯類.
               コルバート・モラレス(1991)より

order †HYAENODONTIA (=†CREODONTA)
├ family OXYAENIDAE
└ family HYAENODONTIDAE
               by Burkitt (1995)

order †CREODONTA (Cope, 1875) McKenna, 1975(肉歯目)
├ CREODONTA incertae sedis
│ ├ subfamily incertae sedis
│ └ ?subfamily †KOHOLIINAE Crochet, 1988
├ family †HYAENODONTIDAE Leidy, 1869(ヒュアエノドン科)
│ ├ subfamily incertae sedis
│ ├ subfamily †LIMNOCYONINAE Wortman, 1902(リムノキュオーン亜科)
│ │ ├ tribe †LIMNOCYONINI (Wortman, 1902) Van Valen, 1966
│ │ └ tribe †MACHAEROIDINI (Matthew, 1909) Van Valen, 1966
│ └ subfamily †HYAENODONTINAE (Leidy, 1869) Trouessart, 1885(ヒュアエノドン亜科)
│   ├ tribe †PROVIVERRINI (Schlosser, 1886) Van Valen, 1966
│   ├ tribe †HYAENODONTINI (Leidy, 1869) Van Valen, 1966
│   ├ tribe †TERATODONTINI (Savage, 1965) McKenna et Bell, 1997
│   └ tribe †APTERODONTINI Szalay, 1967
└ family †OXYAENIDAE Cope, 1877(オックシュアエナ科)
  ├ subfamily †OXYAENINAE (Cope, 1877) Trouessart, 1885
  ├ subfamily †TYTTHAENINAE Gunnell et Gingerich, 1991
  └ subfamily †AMBLOCTONINAE Cope, 1877
               http://taxonomicon.taxonomy.nl/Default.aspx

 新体系でも,大きな構造は変わりないようです.subfamily 以下は別の機会に.


* 「オックシュアエナ」は普通「オキシエナ」と,「ヒュアエノドン」は通常「ヒエノドン」と表記されていますが,(たぶん)「デズニー・ランド」に近い表記の仕方だと思います.できるだけ,ラテン語風に表記しておきます.

【文献】
Carroll, R. L., 1988, Vertebrate Paleontology and Evolution. W. H. Freeman and Company, New York, 698 pp.
Mueller, A. H., 1989, Lehrbuch der Palaeozoologie, Band III, Vertebraten, Teil 3, Mammalia. Gustav Fisher Verlag, Jana, 809 pp.
コルバート, E. H.・モラレス,M.(1991)脊椎動物の進化【原著第4版】(田隅本生,1994訳).築地書館.
The Taxonomicon: http://taxonomicon.taxonomy.nl/Default.aspx

 

2009年8月15日土曜日

辞書の展開(10)

●キーモレーステース目[order CIMOLESTA McKenna, 1975]

 キーモレーステース目の名称の元になっているCimolestesは北米の後期白亜紀から前期暁新世にかけて生息していた哺乳類.食肉目の先祖形と考えられている一方で,その位置づけはあいまいでした.
 ちなみに,cimolestesの語源は,はっきりしませんが,cimoがギリシャ語の「キマス[κιμάς]」=「引き裂かれた肉」だとすると,「裂肉強盗」になり,いかにも野獣の代表ということになりそうですね.

 MaKenna (1975)はこのCimolestesをはじめとする多種多様な生物をまとめてキーモレーステース目[order CIMOLESTA McKenna, 1975]を設定しました.大部分は絶滅したグループですが,現世の穿山甲[genus Manis Linnaeus, 1758; genus Phataginus Rafinesque, 1821]などが含まれる恐ろしく多種多様なグループです.

 簡単には把握できないので,詳細は別の機会に.
 とりあえず,亜目レベルののリストだけ.

order CIMOLESTA McKenna, 1975(キーモレーステース目)
├ CIMOLESTA incertae sedis
├ suborder †DIDELPHODONTA McKenna, 1975(二子宮歯亜目)
├ suborder †APATOTHERIA (Scott & Jepsen, 1936) McKenna, 1975(擬獣亜目)
├ suborder †TAENIODONTA (Cope, 1876) McKenna, 1975(紐歯亜目)
├ suborder †TILLODONTIA (Marsh, 1875) McKenna, 1993(欠歯亜目)
├ suborder †PANTODONTA Cope, 1873(汎歯亜目)
├ suborder †PANTOLESTA McKenna, 1975(汎盗亜目*)
├ suborder PHOLIDOTA (Weber, 1904) McKenna & Bell, 1997 (穿山甲亜目)
└ suborder †ERNANODONTA Ding, 1987(通小歯亜目*<エルナノドン亜目)

*は例によって,私的和訳.

 穿山甲亜目だけは現生種が入っているので,すこし紹介しておきます.

suborder PHOLIDOTA (Weber, 1904) McKenna et Bell, 1997(有鱗亜目<穿山甲亜目)
├ PHOLIDOTA incertae sedis
├ family †EPOICOTHERIIDAE Simpson, 1927(エポイコテーリウム科)
├ family †METACHEIROMYIDAE Wortman, 1903(メタケイロミュース科)
└ family MANIDAE Gray, 1821(センザンコウ科)
  ├ subfamily MANINAE (Gray, 1821) Pocock, 1924(センザンコウ亜科)
  └ subfamily SMUTSIINAE (Gray, 1873) Pocock, 1924(オオセンザンコウ亜科)
    ├ tribe SMUTSIINI (Gray, 1873) McKenna et Bell, 1997(オオセンザンコウ族)
    └ tribe UROMANINI (Pocock, 1924) McKenna et Bell, 1997(オナガセンザンコウ族)

http://taxonomicon.taxonomy.nl/Default.aspx

 穿山甲類はこれまで,化石種を含めてセンザンコウ科一科にまとめられるか,せいぜい,現生種を含むセンザンコウ科と化石種が中心の別科の二つぐらいにしか分けられていませんでしたが,ひどく複雑になっています.
 過去の分類は,ほんのいくつか見ただけでも,研究者間でひどく異なっており,相当混乱していたのだろうということがわかります.
 どれを見ても,属-種のデータがひどく少ないので,比較がなかなか困難です.
 ただ,新分類では,生息地域(大陸)によって別系統と認識し,それによって各属を独立させるというやり方を取っているようです.

辞書の展開(9)

 
●新体系の「Ferae」から
 「FERAE」全体で一つの記事にしようと書き続けていたのですが,巨大になりすぎて,いつまでたってもケリがつかないし,一つの記事がこ〜〜んなに長いと誰も読んでくれそうもないので,細切れにします.
 体調不良で休んでいたわけではありません((^^;)
 むしろ,なにかに夢中になってないと,不快感が気になって,どうもね.

●野獣大目[grandorder FERAE (Linnaeus, 1758) McKenna, 1975]
 この標記から野獣大目はもともと野獣目 [order FERAE Linnaeus, 1758]として提案されたものということがわかりますね.

 FERAE=「野獣」はラテン語から.
 ギリシャ語の「野獣」は「テーロ[θήρ],テーロス[θηρός]」で,ラテン語の語根化して「テール・/テーロ・[ther-/thero-]」.こちらの語根を使った野獣類の学名は「山」ほどありますね.

 野獣大目は以下の三つに分類されています.

grandorder FERAE (Linnaeus, 1758) McKenna, 1975(野獣大目)
├ order CIMOLESTA McKenna, 1975 (裂肉盗目*<キモレステス目)
├ order CREODONTA (Cope, 1875) McKenna, 1975(肉歯目)
└ order CARNIVORA Bowdich, 1821 (食肉目)

         http://taxonomicon.taxonomy.nl/Default.aspx

*は私的訳語>これはあまりよろしくないですが….「科」までは,現生種がいるときはその名前を基本に,いないときは「属名」を基本にし,「科」より上,「目」は,あまり具体的な生物をイメージできないように,意図的に漢字訳するようにしています.

 

2009年8月6日木曜日

辞書の展開(8)

 
●新体系の「ANAGALIDA」から

grandorder ANAGALIDA(アナガレ大目)
├ ANAGALIDA incertae sedis … family ANAGALIDAE Simpson, 1931 (アナガレ科)
├ mirorder MACROSCELIDEA (Butler, 1956) McKenna & Bell, 1997(大脛中目*)
├ mirorder DUPLICIDENTATA (Illiger, 1811) McKenna & Bell, 1997(双歯中目)
│ ├ order MIMOTONIDA Li et al., 1987(ミモトナ目)
│ └ order LAGOMORPHA Brandt, 1855 (兎型目)
│   ├ family OCHOTONIDAE Thomas, 1897(ナキウサギ科)
│   └ family LEPORIDAE (Fischer, 1817) Gray, 1821(ノウサギ科*;ウサギ科)
└ mirorder SIMPLICIDENTATA (Weber, 1904) McKenna & Bell, 1997(単歯中目)
  ├ order MIXODONTIA Sych, 1971(混歯目)
  └ order RODENTIA Bowdich, 1821 (齧歯類)
    ├ RODENTIA incertae sedis
    ├ suborder SCIUROMORPHA Brandt, 1855(栗鼠形亜目*)
    │ ├ SCIUROMORPHA incertae sedis
    │ ├ Infraorder †THERIDOMYOMORPHA (Wood, 1955) McKenna & Bell, 1997(獣鼠形下目*)
    │ └ Infraorder SCIURIDA (Carus, 1868) McKenna & Bell, 1997(影尾下目)
    ├ suborder MYOMORPHA Brandt, 1855(鼠形亜目*)
    │ ├ infraorder MYODONTA (Schaub, 1955) McKenna & Bell, 1997(鼠歯下目)
    │ ├ infraorder GLIRIMORPHA (Thaler, 1966) McKenna & Bell, 1997(山鼠形下目)
    │ └ infraorder GEOMORPHA (Thaler, 1966) McKenna & Bell, 1997(堀鼠形下目)
    ├ suborder ANOMALUROMORPHA Bugge, 1974(異尾形亜目*)
    ├ suborder SCIURAVIDA McKenna & Bell, 1997(栗鼠様亜目*)
    └ suborder HYSTRICOGNATHA Woods, 1976(山嵐顎亜目*)

http://taxonomicon.taxonomy.nl/Default.aspx

注:原文は英語.各分類群の名称は私的和訳.

●アナガレ大目
 新体系では,このグループの代表にアナガレ類をもってきています.
 アナガレ科自体は,アナガレ大目所属位置不詳のアナガレ科になっていますので,なにか不自然に見えますが,まあいいでしょう.
 アナガレ類は,東南アジアの「古成紀」(パレオジーン=以前の“古第三紀”:暁新世から漸新世まで)に繁栄した絶滅グループです.

●大脛中目
 次の中目:MACROSCELIDEAは,その筋では“ハネジネズミ類”としているようですが,たぶん漢字で“跳地鼠”とかいたものをカタカナ化したものでしょう.この訳は,原語を反映していず,しかもカタカナ化すると意味がわからず不自然ですので,ここでは使いません.
 また,「目」ぐらいのランクになると,具体的な動物(種あるいは属)が想像できるような命名は不都合ですので,一般にそのグループ全体を示すような言葉が選ばれています.これを尊重し,ここでは「大脛中目」を採用します.
 大脛類は,アフリカ大陸の「新成紀」(ネオジーン=以前の“新第三紀”:中新世から鮮新世まで)に繁栄し,アフリカの各地に生き延びています.

●双歯中目
 次の中目:DUPLICIDENTATAは,その筋では“重歯類”としているようですが,「重」はこれを意味する単語が多すぎて,混乱を招きますし,「dupli-」自体は「二重の」を意味する言葉ですので,ここでは「双歯」類を使います.あるいは「二重歯」類の方がいいかもしれません.
 これは,もちろん,次のSIMPLICIDENTATA (単歯中目)に対応する言葉で,門歯の後にもう一組の歯があるかないかの違いを示しています.要するに,兎の仲間とその先祖ですね.

 双歯中目には,ミモトナ目と兎形目が含まれています.
 ミモトナは,もともと兎型類の中に入れられているのが普通ですが,兎型類の先祖として「目」を設定し,位置づけられているようです.

 なお,兎形目はしばしば,兎目と訳されています.
 現世生物のみを論じるときには,たいして問題も起きませんが,原語は明らかに「兎『形』目」ですし,ウサギ科[family LEPORIDAE Fischer, 1817]もウサギ類になってしまうので,「兎形目」と正確な訳を使用した方がいいでしょう.

●単歯中目
 次のSIMPLICIDENTATAは,単歯類と訳されていますが,上述のように「単一」の意味ではなく,「二重歯」に対応する「一重歯」の意味と思われますので,「一重歯類」を使用した方がいいかもしれません.
 単歯中目には,混歯類[MIXODONTIA]と齧歯類[RODENTIA]が含まれています.

●混歯目
 混歯類は,実態がはっきりしませんが,これに入れられている一属である Gomphos は,一時はミモトナ科として,Eurymylus, Rhombomylusはエウリュミュルス科として,アナガレ目に入れられていたこともあるようです.

●齧歯目
 齧歯目は旧体系でも巨大なグループでしたが,新体系でもそれは同じです.
 これを“ネズミ目”と呼ぶように指導されたこともありましたが,直感的にも“ネズミ”とはいえないような動物がたくさん入っていて,このような呼び方はナンセンスだということは素人にも(素人なら,なおさら)わかるはずです.
 齧歯目は「齧歯目所属位置不詳」,「栗鼠型亜目」,「鼠型亜目」,「異尾形亜目」,「栗鼠様亜目」,「山嵐顎亜目」に分けられています.もちろん,暗黙の内に,このように進化(分化)してきたということが意図されていますね.

●“齧歯目所属位置不詳”
 “齧歯目所属位置不詳”には,旧体系(たとえば,Carroll, 1988)でも「齧歯目所属位置不詳」とされた分類群のいくつかが入れられています.この“よくわからなかった部分”が齧歯目の先祖形と位置づけられているのですね.しかし,すべてがそう位置づけられているわけではなく,大部分はよくわかっていません.かなりの部分が「無視」されていますね(はっきり言ってしまえば,新分類とて,すべてを説明できているわけではないということになりますか).
 一方で,Carroll (1988)以降に創設された「科」がいくつかあり,最近の新しい発見が新体系の確立に大きな役割を果たしているということですか.

● 栗鼠型亜目
 栗鼠型亜目[SCIUROMORPHA]の和訳はリス亜目になっている場合がありますので,原語を反映していないので注意しましょう.記載者名[Brandt, 1855]を見る限りでは,定義に変更はないようです.

● 鼠型亜目
 鼠型亜目[MYOMORPHA]も,リス型亜目と同様に,ネズミ亜目になっている場合があります.同様に,記載者名[Brandt, 1855]を見る限りでは,定義に変更はないようです.
 しかし,亜目以下の細部に関しては,変更があります.というか,McKenna & Bell, 1997による修正があります.McKenna & Bell, 1997は入手していないので検討は後日に回します.

●残り三つの亜目は,比較的最近になってから,創られたものですね.

● 異尾形亜目
 異尾形亜目[ANOMALUROMORPHA]は,(たぶん)Carroll (1988)では齧歯目・栗鼠顎亜目・下目未確立に入れられていた異尾上科[superfamily ANOMALUROIDEA]を拡張再定義したものと思われます.正確なところは,Bugge, 1974の論文を入手して,検討しなければなりませんが,今のところそこまでする気はありません.
 分類学というのは,難しいというよりは,こういった文献収集が「めんどくさい」んです.いきおい,大学などの図書が充実しているところでしか,研究ができないという障害になってしまいます.ま,今大学では「分類学」なんて学問はやってないんですけどね.

● 栗鼠様亜目
 栗鼠様亜目[SCIURAVIDA]はMcKenna & Bell, 1997が定義しています(すべての鍵はMcKenna & Bell, 1997の入手にかかっているようですね).
 栗鼠様亜目は,Carroll (1988)では齧歯目・栗鼠顎亜目・原齧歯形下目・強鼠上科*に入れられていた栗鼠様科[SCIURAVIDAE]を(たぶん)拡張・再定義したものと思われます.
 事実,栗鼠様亜目の栗鼠様科(新体系)と栗鼠様科(Carroll, 1988)を構成する属はほぼ同じです.も少し,詳しい検討が必要ですが,それは別の機会に.

● 山嵐顎亜目
 山嵐顎亜目[HYSTRICOGNATHA]は新旧それほど変わりがないようです.


●齧歯目・旧体系に戻ってみます.

order RODENTIA(齧歯目)
├ suborder SCIUROGNATHI(栗鼠顎亜目)
│ ├ infraorder PROTROGOMORPHA(原齧歯形下目)*
│ ├ infraorder SCIUROMORPHA(栗鼠形下目)
│ ├ infraorder CASTORIMORHA(海狸形下目)
│ ├ infraorder UNNAMED*
│ ├ infraorder MYOMORPHA(鼠形下目)
│ └ infraorder INDETERMINAE
├ suborder HYSTRICOGNATHI(山嵐顎亜目)
│ ├ infraorder BATHYGEROMORPHA(不詳**)?Bathyergomorpha***
│ ├ infraorder HYSTRLCOMORPHA(山嵐形下目)
│ ├ infraorder PHIOMORPHA(プィオミュス下目****)
│ └ infraorder CAVIOMORPHA(天竺鼠形下目)
└ order RODENTIA incertae sedis

from carroll (1988)
* 
・齧歯目は「栗鼠顎亜目」と「山嵐顎亜目」に大別され,そのほかに齧歯目・分類位置不詳のグループがあります(した).
 この「分類位置不詳」のグループは,新体系ではそれぞれ,あるグループの先祖形として位置づけられていることが多いようですが,大部分はまだはっきりとしていません(はっきり言ってしまえば,新分類とて,すべてを説明できているわけではないということになりますか).

 「栗鼠顎亜目」と「山嵐顎亜目」は,下顎と門歯の関係によって分けられていたようです.もちろん,新分類ではこの指標は採用されていませんが,採用されない理由がしっかりと説明されている文献が見つからないもので,私にはよくわかりません.
 ま,何となく変わってしまうというのは,科学の世界でも,実はよくあることです.「勝ち馬にのる」のが原因ということですかね.


●反省
 新分類での「大目」というグループを単位にして,グループの概略を把握しようとしたのですが,失敗でした.単位がちょっと大きすぎたのと,情報不足が原因ですね.
 いずれまた,調べ直して再チャレンジしたいと反省しております.

 ここは調査中のメモ書きですから,多少マニアックに見えてもしかたないと考えております.「北海道化石物語」に転記するときには,もっと理解しやすくすることを心がけましょう((^^;).

2009年7月30日木曜日

案内

 
あたらしいHP を始めました.

題名は「北海道化石物語」です.
左の「リンク」からもいけるようにしました.

このマニアックなブログとは異なり,化石に興味ある一般人や,将来古生物を専攻しようとしている高校生・大学生を対象としたつもりです.
つまり,「わかりやすい」を前提.

まだ工事中のところが多いのですが,「ナキウサギ」については,一通り読めるところまで漕ぎ着けました.

読者のご批判をいただける場所の作り方がわからないので,今は一方的になってますが,そのうち,そういうページも貼り付けるつもりです,


関係する本の紹介とかをしたかったのに,こちらの「Googleサイト」はAmazonのリンクが貼り付けられないようです(自動的に拒否される).これは困ります.
そのうちできるようになるかもしれませんので,ここは気長に待つこととします.

2009年7月29日水曜日

辞書の展開(7)

 
●旧体系と新体系の対比(4)旧体系の「…目」から

 今度は,獣亜綱中の「目」がどうなっているかについてみてみましょう.
Carroll (1988)では,以下のようになっています.

Infraclass EUTHERIA 真獣下綱
  Order APATOTHERIA 擬獣目*
  Order LEPTICTIDA 薄鼬目*(はくゆうもく)
  Order PANTOLESTA 汎盗目*(はんとうもく)
  Order SCANDENTIA 登攀目*(とうはんもく)(ツパイ目)
  Order MACROSCELIDEA 大脛目*(だいけいもく)
  Order DERMOPTERA 皮翼目
  Order INSECTIVORA 食虫目
  Order TILLODONTIA 欠歯目
  Order PANTODONTA 汎歯目
  Order DINOCERATA 恐角目
  Order TAENIODONTIA 紐歯目
  Order CHIROPTERA 手翼目*(しゅよくもく)(翼手目)
  Order PRIMATES 霊長目
  Order CREODONTA 肉歯目
  Order CARNIVORA 食肉目
  Order RODENTIA 齧歯目
  Order LAGOMORPHA 兎形目
  Order CONDYLARTHRA 顆節目
  Order ARTIODACTYLA 偶蹄目
  Order MESONYCHIA (ACREODI) 中爪目*(無肉歯目)
  Order CETACEA 鯨目
  Order PERRISSODACTYLA 奇蹄目
  Order PROBOSCIDEA 長鼻目
  Order SIRENIA 海牛目
  Order DESMOSTYLIA 束柱目
  Order HYRACOIDEA 岩狸目(擬鼠目)
  Order EMBRITHOPODA 重脚目
  Order NOTOUNGULATA 南蹄目
  Order ASTRAPOTHERIA 雷獣目
  Order LITOPTERNA 滑距目
  Order XENUNGULATA 異蹄目
  Order PYROTHERIA 火獣目
  Order XENARTHRA 異節目

注:原文は英語,和訳は適当なものをつけた.[*]は私的訳語.

 真獣下綱以下の「目」は,みな等価に置かれていますね.
 はっきりいって,これは,系統関係つまり進化の道筋は「わからない」といっているということです.しかし,よく見ると,実はこれらの「目」の並べ方には,ある傾向があり,じつは,なんとなく進化の道筋を表しています.
 さて,Carroll (1988)は,Novacek (1986)を引用して,これらの「目」はいくつかのグループ分けが可能であろうことも示しています.
 それは,以下…,

Subclass THERIA 獣亜綱
 └ Infraclass EUTHERIA 真獣下綱
   ├ Cohort EDENTATA 貧歯区
   └ Cohort EPITHERIA 上獣区
     ├ Superorder INSECTIVORA 食虫目
     ├ Superorder VOLITANTIA 遊飛上目*
     ├ Superorder ANAGALIDA アナガレ上目
     ├ Superorder UNGULATA  有蹄上目
     └ Cohort EPITHERIA incertae sedis

 Cohort EDENTATA 貧歯区には
Cohort EDENTATA 貧歯区
  ├ Order XENARTHRA 異節目
  └ Order PHOLIDOTA 鱗甲目

 が含まれており,各Superorderには以下の分類群が含まれています.

Superoder INSECTIVORA 食虫目
  ├ Order LEPTICTIDA 薄鼬目*(はくゆうもく);レプティクティス目
  └ Order LIPOTYPHALA 欠盲腸目;リーポテュプラ目
    ├ Suborder ERINACEOMORPHA ハリネズミ亜目
    └ Suborder SORICOMORPHA トガリネズミ亜目

Superorder VOLITANTIA 遊飛上目*
  ├ Order DERMOPTERA 皮翼目
  └ Order CHIROPTERA 翼手目

Superorder ANAGALIDA アナガレ上目
  └ Order MACROSCELIDAE 大脛目*(跳地鼠目)(may include ANAGALIDAE)
     └ Grandorder GLIRES  山鼠大目*
       ├ Order RODENTIA 齧歯目
       └ Order LAGOMORPHA 兎型目

Superorder UNGULATA (有蹄上目)
  │ ├ Order ARCTOCYONIA 北狼目
  │ ├ Order DINOCERATA 恐角目
  │ ├ Order EMBRITHOPODA 重脚目
  │ ├ Order ARTIODACTYLA 偶蹄目
  │ ├ Order CETACEA 鯨目
  │ └ Order PERISSODACTYLA 奇蹄目
  ├ Grandorder MERIDIUNGULATA 午蹄大目(most South American ungulates)
  └ Grandorder PAENUNGULATA  半蹄大目*
    └ Order HYRACOIDEA イワダヌキ目
      └ Mirorder TETHYTHERIA (テーテュース獣中目)
        ├ Order SIRENIA (海牛目)
        ├ Order PROBOSCIDEA 長鼻目
        └ Order DESMOSTYLIA  束柱目

Cohort EPITHERIA incertae sedis
  ├ Order TUBULIDENTATA 管歯目
  ├ Order CARNIVORA 食肉目
  ├ Order PRIMATES 霊長目
  ├ Order SCANDENTIA 登攀目
  ├ Order TILLODONTIA 欠歯類
  └ Order TAENIODONTA 紐歯目

 なお,最後のCohort EPITHERIA incertae sedisは系統関係がわからないという意味ですので,おのおのを繋いだのは私の勇み足かもしれません.
 これはまあ,進化の道筋ではなく,いくつかの系統分けが可能だということを示しているに過ぎませんね.

 次に,Colbert & Morales (1991)なんですが,Burkitt (1995ed.)もふくめてCarroll (1988)とパタンは大きく変わりませんし,長くなりすぎるので「略」します.


 では,新体系では…,以下が概略です.

superorder PREPTOTHERIA (顕獣上目)
 ├ grandorder ANAGALIDA(アナガレ大目)
 ├ grandorder FERAE(野獣大目)
 ├ grandorder LIPOTYPHLA (= INSECTIVORA) (リーポテュプラ大目・欠盲腸大目)
 ├ grandorder ARCHONTA(主(獣)大目)
 └ grandorder UNGULATA(有蹄大目)

 Carroll (1988)が引用した Novacek (1986)によく似た分類が採用されているように思われます.
 しかし,こちらの場合は,クラディズムが基本ですから,実は進化の道筋を表していることになります.してみると,有蹄類が一番進化していることになるんですかね.