2013年1月30日水曜日

Scaphitesの展開(Ⅰ)

 
スカファイテス(もしくはスカフィテス)[Scaphites]というアンモナイトがあります.
数字の「6」みたいな形をしている不思議なヤツです.


なにが不思議って,この形からは,こいつの人生は「ここで終わり」ってことが想像されてしまうからです.アンモナイトは開口部から軟体部が出ていて生活しているはずです.そうすると,軟体部が最初の巻いた殻の部分にぶつかっているはずですから,これ以上成長できないわけです.
だから,彼の人生はこれでお終い!.

まったく,生き物の世界というのは不思議なことがありすぎます.
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さて,このスカファイテスから,学名についての雑学を探ってみたいと思います.
その前に,スカファイテスを最初に記載した人ですが,ジェームス=パーキンソン[James Parkinson (1755 - 1824)]といいます.Parkinsonは英国の薬学者で外科医,博物学者で政治活動家でもありました.
要するに,当時の知的階級というヤツですね.
パーキンソン氏は「パーキンソン病」の発見者でもあります.

なお,この学名は日本では「スカファイテス」と表記されるのが一般的なようですが,もとは「舵手」を意味するギリシャ語[σκαφ_ίτης]ですから,「スカプイテース」となるのが正しいはずです.
なお,英語的には「スカ・ファイ・テス」と発音しているようです.つまり,現在の日本で使われているのは,カタカナ化英語ということですね.

ギリシャ語のスカプイテース(=舵手)ですが,なぜこの名前が選ばれたのかは,パーキンソンの原著にも書いてありませんので不明です.

ちょっと探ってみます.
ギリシャ語の「スカプェー[σκάφη]」は「えぐり掘られたもの」という意味で,小舟(たぶん丸木舟)を意味します.これに接尾辞「・イテース[-ιτης]」=「《化石.鉱物.塩類.製品.身体の部分の属性》などを示す」が合成されたものですから,スカプイテースは「小舟の舵手」だったのだろうことが推測できます.
しかし,たぶんですが,パーキンソンはそうではなく,「えぐり掘られたもの」に「石(化石)」を意味する語尾をつけて合成語をつくったのだろうと想像します.
6の字型の内側が「えぐり掘られたように」見えるからです.

パーキンソンは模式種を指定していません.ま,昔のことですから,記載もいい加減だったんでしょう.
1813年になって,サービィ[Sowerby, J.]が模式種[Scaphites equalis]を指定しているようです.
種名[equalis]は意味不明.たぶん,ラテン語の[aequalis]=「等しい」なのでしょうけど,「等しいスカファイテス」って意味不明.
まあ,そんなことも,間々あります.

[続く]
 

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