2009年9月10日木曜日

辞書の展開(16)

 
●熊小目[parvorder URSIDA Tedford, 1976]

 熊小目は,以下の四つに分けられています.

parvorder URSIDA Tedford, 1976(熊小目)
├ URSIDA incertae sedis
├ superfamily †AMPHICYONOIDEA (Haeckel, 1866) McKenna et Bell, 1997(アムプィキュオーン上科)
├ superfamily URSOIDEA (Fischer, 1817) Tedford, 1976(クマ上科)
└ superfamily PHOCOIDEA (Gray, 1821) Smirnov, 1908(アザラシ上科)
           from “The Taxonomicon

 アムプィキュオーン上科は絶滅グループですので,一般にはイメージ不可能かと思いますが,アザラシ上科とクマ上科が近いというのは意外ですね.こういうことは間々あるので,「目」ランクに具体的な動物をイメージしている名前をつけるのは「よろしくない」と思う人が多いわけです.
 やはり,URSIFORMESとかいう形が用いられるべきですね.

 なお,「目」ランクの語尾には,よくこの[-formes]が用いられますが,これは「・フォールミス[-formis]」=「~(の)形をした」の複数形だそうです.
 この《合成後綴》は「『目』を表す接尾辞」という解釈がなされ,和訳には「~形の」という語を入れない場合も多いようです.しかし,「アザラシ類は熊目に属する」というのと,「アザラシ類は熊形目に属する」では,イメージが違うと考えますね.
 で,「・フォルメース[-formes]」という語がある場合には,「形」という語を入れるべきだと考えます.

 最初に,はじき出されているURSIDA incertae sedisにはgenus Adracon Filhol, 1884が入っています.このAdraconについての情報はほとんどもっていませんが,Carroll (1988)の分類ではCARNIVORA incertae sedisに入れられており,前期漸新世の欧州に生息していました.

 アムプィキュオーン類は俗に「クマイヌ[bear dogs]」と呼ばれ,クマ類の成立の関係あるとされる一方で,食肉目全体の基幹であると考える研究者もいるようです.しかし,アムプィキュオーン類は大きさも形もしごく多様で,あまり整理されているとはいえませんね.
 前期漸新世~前期中新世の欧州と中新世の北米で繁栄したグループと,前期漸新世の北米に生息したグループとに分ける場合があるようです.が,基幹はユーラシアにいたグループで,中新世に入ってから,何度か北米に移民することで新しい分類群を成立させたという仮説が有力なようです.これはベーリンジア(現・ベーリング海峡の陸化によって生じる陸橋のこと)の成立と密接な関係があります.ちょうど,北米に基幹をおく馬の仲間がベーリンジアを通ってアジアの草原に進出することで,現代型の馬が成立してゆく過程の逆をたどっていることになります. 

 なお,学名の意味は「アムプイ[ἀμφί]」=「両側に.回りに」+「キュオーン[κύων]」=「犬」で,「両犬」.「アムプイ」は「両生類[Amphi-bia]」にも使われているので,どういう意味かイメージしてみてください.

 クマ上科とアザラシ上科は現生種が含まれており,多様ですので,別枠で.

 

0 件のコメント: