2010年9月27日月曜日

高速道路

 
 高速道路を走っていると,こぎれいな軽自動車と大型トラックが併走しているのがみえた.

 大型トラックには,荷台に幌もついていないのに,たくさんの人が乗っているのがみえる.
 その運転席は赤や金色で塗られていて,ドライバーと助手だけは,けっこういい服を着ている.
 それに引き替え,荷台の人たちは,風に煽られ生きた心地もしていないようだ.よく見ると,荷台の前のほうには,小さな風よけがついていて,ごく一部の人たちには居心地がいいようにしてあるらしい.

 ドライバーと助手は仲が悪いらしく,時々怒鳴り声が聞こえる.
 こわいなあ,高速道路だというのに.
 助手は腹いせに,軽自動車のほうに罵声を浴びせた.
 でも,高速道路.風で何も聞こえない.

 そのとき,助手は後をふり向き,こう怒鳴った.
 「おまえらの居心地が悪いのは,あっちの軽自動車の奴らが,おまえらの取り分を奪っているせいだ.」
 「悔しかったら,あっちに飛び移って嫌がらせをしてこい!」

 高速道路を走っている車から車へ飛び移るヤツもいるまい,と思う.
 しかし,いた!.

 一人の作業服の男が,軽自動車の屋根に飛び乗り,しがみついている.
 怖くて,失禁したようだ.
 こぎれいな,軽自動車は男の小便まみれになった.

 軽自動車のドライバーは,パーキングエリアで男を大型トラックに帰してやり,失禁について軽く抗議すると,大型トラックのドライバーはこういった.

 「俺たちのトラックには幌がない.」
 「トラックの上の空気はどこまでも続いているから,あんたの車の上の空気も俺たちのものだ.」
 「文句があるなら実力で来い!」

 この一言で,喧嘩が始まった.トラックと軽自動車?
 いやいや.軽自動車のドライバーと助手のあいだでだ.どうやら,ドライバーと助手のあいだで,運転席を巡っての争いがあるらしい.
 トラックの運転手と助手は先ほどまで怒鳴りあいをしていたのに,いまは仲がいいようにみえる.その乗客は,一見,一致団結して軽自動車の悪口を言っているようだが,ほとんどの人は口をつぐんでいる.

 そして,双方の乗客も混じって,怒鳴りあいが始まり,壮大な「パイ投げ」が始まった.

 この二台,高速道路に戻っても,パイ投げを続けるつもりらしい.
 乗客にとっては,ただ移動するだけのつまらない時間に暇つぶしができたと考える人もいるようだ.ドライバーへの不満を言えば怖い目にあうが,まわりの自動車へ罵声を浴びせるのは奨励されている.

 ….

 よっく,考えてほしい.
 みんな,高速で移動中なのだ.
 安全に走行するためには,ルールだけではなく,マナーやエチケットも必要なのだ.
 みんなが,「俺が!,俺が!」といって走っていては,いずれ事故が起きる.
 高速道路で起きた事故は,即,大事故につながる.

 ドライバーの義務は,他車より速く走ることではないですね.乗客を安全に目的地まで届けることです.
 ドライバーは,はっきりと「わたしには乗客の安全を第一に考える義務がある」というべきです.どちらのドライバーもね.
 あ,そういえば,車の乗り心地が悪いことを,そばを走っている車のせいにして,責任回避したりしてはいけないですね.車のオーナーの責任です.

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 注:このはなしは,アジアのどこかで起きているちょっとした騒ぎのことを寓話化しているのではありません((^^;).
 昨日,高速道路で,室蘭まで行ってきたのですが,例の実験開始以来,あまりにも,ひどいドライバーが目につくので思いついた話です.マナーやエチケットどころか,ルールもしらんのではないかと思わせることが次々と起きます.無料化実験はただちにやめてほしいものです.

 あ,そういえば,大型トラックの人たちは,軽自動車の人たちが,むかし,装甲車に乗っていて,そばを走っている車を次々と踏みつぶした過去があるのをわすれてるようですね.
 追い詰めれば,軽自動車の乗客の中にも「軽自動車はやめて装甲車にしよう」と主張する人たちがでてきます.
 第一次世界大戦で敗北し,過酷な負債をおわされたドイツにヒットラーがでてきた歴史の必然をわすれてはいけません.窮鼠は猫を咬むのです.
 むかし,軽自動車を装甲車に乗り換えようとしたのも「外国の驚異」でしたし,実際に乗り換えが決定的になったのも「ABCD包囲陣」という資源を禁輸するという処置が引き金になっていたはずですね.

 高速道路は仲良く走らないと,危険なのです.

 それにしても,運転技術の未熟な素人ドライバーが高速で駆け抜ける高速道路は怖いですね.相手のドライバーが避けてくれるから事故が起きていないようなものじゃあないかと思いますね.
 車の性能は格段にアップしてますけど,それを運転する人間の性能は100年以上前から,さっぱり向上していないですからね.

 

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