2007年8月11日土曜日

旭川と山崎有信



 山崎有信(やまざきありのぶ)という人がいました.
 「大鳥圭介傳」の著者であることは,すでに図書館で調べていたので知っていました.
 幕末のオランダ留学生らの,特に榎本武揚の「地質学」について調べていた私は,その関連で大鳥圭介にも興味を持ったというわけです.大鳥圭介は榎本武揚と長崎海軍伝習所からオランダ留学をへて,箱館戦争の戦友でもあり,その後の北海道開拓にも共に従事した人物です.

 ある日,市内の某古書店で,偶然に山崎有信の著作をみつけ,彼が「大鳥圭介傳」だけではなく,幕末から明治にかけてのさまざまな出来事を記録していることを知りました.同時に,彼が旭川に住んでいたことを知り不思議な気持ちになりました.
 さっそく,「旭川市史」を調べたのですが,著作については記録がありましたが,「山崎有信」という人物がわかる記述ではありません.膨大な著作を残しているわりには,忘れられてしまった人物のようです.しかし,旭川の歴史にとっては重要人物と思われます.以来,機会を見ては山崎有信の著作を探しており,いくつかは入手したのですが,とても,満足の行くものではありません.

 そうはいっても,これ以上ドラスティックな進展は期待できないので,これまで知りえたことを,記録しておきたいと思います.

 「山崎有信氏は,明治三年福岡県企救郡曽根村に生る.幼より学を好み,神童をもって近郷にその名を称せられしも,不幸にして家計豊かならざりし為,小学教育さえ中途退学の止むなきに至る.氏,修学の念禁ずる能わず,或は徒弟となりて仏門に入り,或は書生となりて苦学力行,遂に明治二十九年関西法律学校を卒業し,同時に奈良県監獄書記となる.以後内務省,陸軍省,馬政局,拓殖局等に奉職し,官海の風浪を浴びること十有五ケ年.大正五年に至り,旭川市に事務所を開き,弁護士として訴訟事務に従事し今日に及ぶ.北海道法曹界の元老たり.」
 「氏,また著述を好み,文章に巧みにして,亦和歌に錦心を流露し,殊に彰義隊の研究に於ては当今氏の右に出づる物無し.」
 「温容人に接して圭角なく,淡々談じ来って障壁なき立志伝中の紳士である.」
 (以上,「幕末秘録」末尾,「著者紹介」より.同文は「北海道市町村総覧」津守篤著からの引用である)

 存命中の著作ですので,死亡年は不明です.

 「旭川市史」では,唯一の本文中の記述になるエピソードは,第一巻の「市政」のところにあります.
 昭和三年に,「臨時市史編纂委員会」が設置されました.
 すでに大正四年,大正天皇即位の記念事業の一つとして,「旭川区史」の編纂が計画され進行していましたが,紆余曲折の末,まだ完全ではないということで,「委員会」が設置されたのです.
 その後,完成した市史を昭和六年八月に印刷するにあたって,校正を務めたのが,弁護士・山崎有信でした.(山崎の判断によれば)結局,完全というには程遠いということで,市史ではなく,「旭川市史稿」として,昭和六年十二月に発行されたそうです.

 次に,「旭川市史」(第三巻)ほかから,山崎有信の著作について記しておきます.

1911(明治四十四)年,「野辺地戦争記聞」(東京,上野彰義隊事務所)
1911(明治四十四)年,「彰義隊琵琶歌」(東京,博文館)
1913(大正二)年,「彰義隊戦史」(著者発行)
1915(大正四)年,「大鳥圭介伝」(東京,北文館)
1917(大正六)年,「彰義隊顛末」(東京,上野彰義隊事務所)
1923(大正十二)年,「旭川十傑」(博進堂)
1926(大正十五)年,「天野八郎小伝」(旭川,博進堂)
1926(大正十五)年,「幕末史譚 天野八郎伝」(旭川,博進堂)
1927(昭和二)年,「本田親美翁伝」(旭川,旭屋書店)
1928(昭和三)年,「幕末血涙史」(東京,日本書院)
1929(昭和四)年,「戊申回顧 上野戦争」(東京,上野彰義隊事務所)
1929(昭和四)年,「陪審裁判 殺人未遂か傷害か」(東京,法律新報社)
1929(昭和四)年,「大旭川建設へ」(東京,日本書院)
1932(昭和七)年,「奥士別親子地蔵の由来」(著者発行)
1933(昭和八)年,「日露戦争の懐旧」(著者発行)
1937(昭和十二)年,「胎教に就て」(東京,上野彰義隊事務所)
1937(昭和十二)年,「能行口説」(東京,上野彰義隊事務所)
1938(昭和十三)年,「五稜郭」(東京,日本書院)
1939(昭和十四)年,「護れ傷痍の勇士」(東京,日本書院)
1939(昭和十四)年,「豊前人物志」(著者発行)
1940(昭和十五)年,「旭川市功労者伝」(東京,日本書院)
1941(昭和十六)年,「大鳥圭介南柯紀行」(東京,平凡社)
1943(昭和十八)年,「幕末秘録」(東京,大道書房)

発行年不詳,「判検事弁護士試験答案集」(不詳)
発行年不詳,「判検事弁護士試験及第術」(不詳)
発行年不詳,「古社寺保存,法註解同,保存手続 古社寺保存便覧」(著者発行)
発行年不詳,「彦夢物語」(不詳)
発行年不詳,「上野彰義隊」(不詳)
発行年不詳,「日露戦没忠死者 建碑並招魂社合祀手続」(著者発行)
発行年不詳,「実例競売法手続」(不詳)

 ほかにも,「近刊」・「未刊」でいくつかの書名があがっているのですが,未確認なので割愛します.なお,旭川市立図書館には十五冊の蔵書しかなく,いずれも禁帯出扱いなのが残念です.

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