2009年2月9日月曜日
訃報=松本達郎九州大学名誉教授=
さきほど,地質学会のメルマガで松本達郎・九州大学名誉教授の訃報が流れました.
私は,現役時代の松本教授のことはよく知らないのですが,我が師・湊正雄北大名誉教授と,ほぼ同時代に活躍された方です.
穂別町立博物館に島流し状態になった時に,初めてお会いしました(もちろん,それまでにも,地質学会などでその雄姿をお見かけしたことはありましたが,会話など恐れ多くて…).
夏になると,ほぼ毎年,フラリとお弟子さんたちをつれて現れて,穂別の宿を拠点にフィールドに出かけられたり,そうでない時は博物館の研究室で,熱心に,館所蔵のアンモナイトの記載を行なっておられました.
すでに,相当難聴になられていて,あまり会話は成立しませんでしたが,先生はその方がいいようで,無心にアンモナイトの計測や写真撮影などを行なっておられました.
たまに,過去の記載論文が必要になると「誰々の何年の論文はないですか」とボソッとおっしゃられて,その論文を探してくると,また一心不乱にアンモナイトに向かっておられました.
なにか,凄く荘厳な感じがしました.
「私の仕事は落ち穂拾いです」
すでにたくさんの仕事を成し遂げているのにもかかわらず,未記載のアンモナイトをひとつひとつ拾い上げて記載する姿は学者の鑑だと思いました.
小さなひとつの事実を記載してゆくこと.それが科学者のするべきこと.決して高尚な理論を構築することが,科学者の仕事ではありません.どんな不遇なところにいても,科学はできる,そんなことを教えてくださった方でした.
ご冥福をお祈りいたします.
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