2010年3月19日金曜日
ラルフ=タウンゼント
「偽装の十年」との関わりで,ラルフ=タウンゼント氏の著書に手を出してしまいました.
訳本で読めるのは
タウンゼント, R. (1937-1940)「アメリカはアジアに介入するな!(田中秀雄・先田賢紀智,2005訳)」(芙蓉書房)
タウンゼント, R. (1933)「暗黒大陸中国の真実(田中秀雄・先田賢紀智,2004訳)」(芙蓉書房)
の二冊のみ.
先に,「暗黒大陸中国の真実」を読みました.
映画「砲艦サンパブロ*」の世界ですね.
「歯に衣着せぬ」タウンゼントの筆に,米国人がアジア人を理解するのは大変なことなのだろうと思いつつ,読み進めます.
すぐに,読むことに嫌気がさします.ホントにアジア人が嫌いなようです.蔑視?差別?
もっと読み進めます.
タウンゼントが中国人について書いていることは,日本人にも,現代日本人にも何割かは当たっているだろうと感じます.しかし,「日本と中国人」の章では,アジア人が理解できないのではなく,中国人を嫌いなのであることがはっきりします.
それにしても,日本人を持ち上げすぎだろうと….
不快感**この上ない本でした.
ところが,二冊目の「アメリカはアジアに介入するな!」は,タウンゼントの真意が理解できたような気がします.
すごく,リニアーな本です.
当時のアメリカ人で,こんなに公平な(もしくは日本よりの)人がいたなんて信じられませんね.ウソかと思う記述ばかりですが,裏付けのデータも示されてます.
我々が教えられていた歴史は複雑で,矛盾や不詳なところが多いのに対し,タウンゼントの世界観はすごく直線的で,理解がしやすい.こんな人が当時のアメリカ合衆国にいたのに,なぜ,日米は戦争になったのでしょうか.
歴史はプリズムのようで,見る方向によって見え方が違うといいます.
それにしても,これでは,我々の周りにある日本の近現代史が「黒だ」といっていることが「白だ」といっているに等しい.「濃い灰色」か「薄い灰色」の違いではなく,「黒」と「白」ほど違います.
読むほうは混乱する一方です.
対処法は,「足して二で割る」か,「両方とも無視する」かのどちらかになります.
私は歴史を専門としたことはなく,科学史をちょっとかじっただけなんですが,歴史ほど捏造されやすいものはないというのが実感です.
なかには,かなりの悪意もありますし,そうでないものもあります.
映画や小説,マンガやTVゲームなどで,ただ,作品を面白くするためだけに,なんでもない人物がヒーローになってたりするわけですが,それがどんどん美化されて,虚像が世論になってしまう.繰り返し,繰り返し,取り上げられていると,いわゆるプロの間にも,それを背景として心にもってしまう人まで出てくる.
例を挙げてもいいですけど,熱狂的なフアンが多いので,「炎上」でもされると,困りますから.って,それほどこのブログが読まれてるとは思えませんけどね((^^;).
それにしても,この歳になって,歴史観をまた組み立て直さなければならないとは….
* ちなみに,サンパブロは「聖人パブロ」かと思っていたのですが,じつは「sand pebble=砂・砂利」でした.たぶん,「つまらないもの」という意味の皮肉なんでしょうね.しかし,どこにでもよくあるものが,即,つまらないものというのも,偏見ですよ.
** じつは,心当たりがあります.ごく初期の香港映画(ジャッキー=チェンなどがでてくる)の主人公は,映画の主人公としてはあってならないほどインモラルな行動が描かれていることがありました.昔よく読んだ「水滸伝」のヒーローなども,「エッ」と思うような描写があります.まさか,それが中国人=漢民族にとっては当たり前のことだとは…思いたくないのですけどね.
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