2011年2月24日木曜日
ヴァリスカン造山運動
【ヴァリスカン造山運動】
英語では Variscan orogeny
独語では Variskische Orogenese
日本の地球科学界ではすでに死語.と,いうよりは,タブーと化しているらしく,国語辞典や百科事典には出ているのに,地質学用語としては禁句.不思議.
地球科学者しか構成員がいないのに「地質学会」を名のっている学会もあることだし.ま,いいか.
【ヴァリスカン造山運動】(バリスカン造山運動)
古生代後期,特に石炭紀を中心として起こった造山運動.
E. Suess (1888)の Variscisches Gebirge に始まり,M. Bertrand (1887)のchaîne hercynienne の概念を受け継ぎ,H. Stille (1924)が造山輪廻説で総括したものの一つ.
ドイツ・日本・中国を除く国ではBertrand のヘルシニア(Hercynian)を用いる.
標準地ヨーロッパでは,アルデンヌーライン頁岩山地,ハルツなど現在は地塁をなす山地が古典的研究地で,カレドニア山地とアルプス山地との間を占める.
中心地では先カンブリア界または下部古生界の上に海成デボン~下部石炭系が地向斜堆積物をなし,石炭紀中ごろに褶曲・広域変成・深成作用など最高の時相の認められる所が多く,上部石炭~ペルム系は含炭層または赤色岩層(新赤色砂岩)となる.北米のアパラチア(南)変動,日本の本州造山など,これに相当するものが世界各地に広く存在するとされた.[山下昇:地学事典]より
Variscan は variscia+an(varisciaの形容詞形).
Variscia とは,ドイツ東部のザクセン州の南部にある地域名「フォクトランド[Vogtland]」のラテン語名とされています.
もともとの意味は,「ワリスキ[Varisci]族のすむ土地」の意味.
しかし,この「ワリスキ」はあくまで,ラテン語風の呼び方であって,正確に,なんと呼ばれていたか,あるいは自分たちをなんと呼んでいたのかはわかっていません.この民族名はタキトゥス[Tacitus]の「ゲルマニア(第42章)」の中に突然に登場するものですが「ナリスティ[Naristi]」,「ナリスキ[Narisci]」 ,「ワリスティ[Varisti]」などの変形もあります.
この程度のことしか知られていず,いわば幻の民族といっていいでしょう.
失われた民族の名称を,失われた造山運動の名前とする.奇妙な伝統です.
ついでにいっておけば,湊正雄北大名誉教授が日本のバリスカン造山運動のかけらを見つけたと思い,それにつけた名前が「安倍族造山運動」.
安倍族とは,武士政権(初めは鎌倉政権)が定着する前に,「日高見」地方=「北上川流域」に勢力を誇っていた一族のこと.安倍族のことは,こちらもわかっているようでよくわからない.
詳しくは,高橋崇「蝦夷(えみし)の末裔」を参照のこと.
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