2012年1月14日土曜日

動物名考(5) イワトビペンギン

イワトビペンギン


Eudyptes chrysocome (Forster, 1781)


(Rockhopper Penguin)


ordo: SPHENISCIFORMES Sharpe, 1891
 familia: SPHENISCIDAE Bonaparte, 1831
  genus: Eudyptes Vieillot, 1816 [type: Aptenodytes chrysocome Forster, 1781]
   Eudyptes chrysocome (Forster, 1781)

イワトビペンギンの属名はEudyptesで,この属の模式種はイワトビペンギンそのものです.
属名のEudyptesはeu-dyptesという構造の合成語です.eu-は[εὖ]=「よく(善く,良く),立派に」という意味のギリシャ語接頭辞であり,dyptesは[ὁ δύπτης]=《男》「ダイバー,潜水夫」という意味のギリシャ語.あわせて,「真のダイバー,潜水夫」.ペンギンにふさわしい属名ですね.
dyptesは,キングペンギンの属名Aptenodytesに使われているdytesとは兄弟のような言葉なんですかね.同じ「ダイバー,潜水夫」という意味です.
模式種chrysocomeは最初の記載時はAptenodytesになっていますから,キングペンギンの仲間と見なされていたわけです.

この属の英語の俗名は[Crested penguin]なので「カンムリペンギン」とでも,訳しておきます.
さて,カンムリペンギン属の仲間についてみておきますか.
その前に,ロッキーホッパーの分類については,相当混乱があるようなので,整理しておきます.
ロッキーホッパーは
Eudyptes chrysocome (Forster, 1781) [Rockhopper Penguin]
の一種であるという説.

ロッキーホッパーは,
Eudyptes chrysocome (Forster, 1781) [Southern Rockhopper Penguin]
Eudyptes moseleyi Mathews and Iredale, 1921 [Northern Rockhopper Penguin]
の二種であるという説.

ロッキーホッパーは
Eudyptes chrysocome chrysocome (Forster, 1781) [Western Rockhopper Penguin]
Eudyptes chrysocome filholi Hutton, 1878 [Eastern Rockhopper Penguin]
Eudyptes moseleyi Mathews and Iredale, 1921 [Northern Rockhopper Penguin]
の二亜種+一種であるという主張.
これの変形として,
Eudyptes chrysocome chrysocome (Forster, 1781) [Western Rockhopper Penguin]
Eudyptes chrysocome filholi Hutton, 1878 [Eastern Rockhopper Penguin]
Eudyptes chrysocome moseleyi Mathews and Iredale, 1921 [Northern Rockhopper Penguin]
の三亜種であるという主張.
当然出てくるであろう,
Eudyptes chrysocome (Forster, 1781) [Western Rockhopper Penguin]
Eudyptes filholi Hutton, 1878 [Eastern Rockhopper Penguin]
Eudyptes moseleyi Mathews and Iredale, 1921 [Northern Rockhopper Penguin]
という主張があるようです.

残念なことに,それらの主張(もしくは説)を公表した論文が入手できないので,検討できません(入手できても,言語学的障壁よよび学問的障壁で理解できるかどうかわかりませんけど(^^;).ただ,DNA分析のみで「亜種もしくは種に分離可能」だったとしても,形態的に分離可能かどうかは,遺伝子学的論文に書かれていることはないので,あまり意味がないだろうと思います.
理解できないものは放っておいて,ここはとりあえず一種であると仮定して,話を進めます.なお,三種もしくは三亜種であるとする主張の英俗名およびその和訳はあまりにもセンスがないので,これも放置します(理由は,南極圏において「東西南北」をどう理解するべきかを考えてみてください).


「カンムリペンギン」属構成種
genus: Eudyptes Vieillot, 1816 [Crested penguin]
 Eudyptes chrysocome (Forster, 1781) [Rockhopper Penguin]
 Eudyptes chrysolophus (Brandt, 1837) [Macaroni Penguin]
 Eudyptes pachyrhynchus Gray, 1845 [Fiordland Penguin]
 Eudyptes schlegeli Finsch, 1876 [Royal Penguin]
 Eudyptes sclateri Buller, 1888 [Erect-crested Penguin]
 Eudyptes robustus Oliver, 1953 [Snares Penguin]


種名chrysocomeは,ギリシャ語の[ἡ χρυσοκόμη]=《女》「金髪」が語源と思われますが,種名が《名詞》なのはおかしいので,chrysocomesの誤記だと思われます.
英語の俗名は,ご存じ[Rockhopper Penguin]=「イワトビペンギン」.これは,別にいつも岩の上を跳んでいるのではなくて,スズメのように両足を揃えて跳ぶ移動法からついたもの.属名とあわせて「金髪のカンムリペンギン」の方がいいのかもしれません.

種名chrysolophusは,ギリシャ語の[χρυσόλοφος]=「金色の鶏冠をもつ」のラテン語綴り化したもので,chrysolophus = chryso-loph-us=「黄金色の」+「鶏冠の」+《形容詞》と考えることも可能です.どちらにしても,「金色の鶏冠を持っている」という意味ですね.
英俗名の[Macaroni Penguin]は,18世紀のイギリスで流行した派手な装飾のことをマッカローニズム[Maccaronism]といい,それをとりいれた若者をマッカローニ[maccaroni]あるいはマカローニ[macaroni]といったそうです.この種の鶏冠は,その装飾を彷彿とさせるので,そう呼ばれるようになったといわれています.

種名pachyrhynchusは,pachy-rhynch-us=「厚い」+「嘴の」+《形容詞》という構造の合成語です.
つまり,「厚い嘴のカンムリペンギン」という意味ですが,カンムリペンギンの仲間で,とくに嘴が厚いようにも見えません.ま,そんなこともあるんでしょう.
英俗名の [Fiordland Penguin]のFiordlandはニュージーランド南島の南西の隅にある地名で,ここらあたりが住処のようです.

種名schlegeliは,ドイツの鳥類学者で,シーボルトが日本で収集した脊椎動物を研究し,『Fauna Japonica 』(日本動物誌)を執筆した人です.しかし,このschlegeliとは,とくに関係が見あたりません.発見に関係あったわけでもなく,この種の記載に関係あったわけでもないようです.単に,Schlegel, H.の名を記念したというだけかもしれません.
英俗名の[Royal Penguin]は,キングペンギンやエンペラーペンギンの仲間と勘違いされそうなので,あまり使いたくないですね.“和俗名”としても「ロイヤルペンギン」が使われているようですが,学名を尊重して「シュレーゲルペンギン」がいいのではないでしょうか.

種名sclateriは,Philip Lutley Sclaterを記念したもの.Sclater, P. L. (1829-1913)は英国の法律家,動物学者で,とくに鳥類学に詳しいということです.
《合成語》《種名》sclateri = sclater-i=「Sclater, P. L.の」
英俗名[Erect-crested Penguin]は「鶏冠が立ったペンギン」という意味ですが,「カンムリペンギン」属の構成種は,ほとんどすべてがあてはまってしまいます((^^;).立っているから鶏冠だろう((^^;).
日本語訳では“シュレーターペンギン”というのがまかり通ってますが,何語にしてもSclaterを“シュレーター”とは読まんだろうと思います….ま,英語は綴り通りには読まないのが普通ですけどね((^^;).
学名としては「エゥデュプテス=スクラテリ」です.

種名robustusは,ラテン語の形容詞robustus, robusta, robustum =「堅い木の;樫の;強い,固い,強化された」の男性形.この場合は,「強い」という意味でしょうね.種名としては,大きめで頑丈そうな種に対して,よく使われる言葉です.属名とあわせて,「強いカンムリペンギン」.
英俗名の[Snares Penguin]のSnaresは,ニュージーランド南島の南海岸にある島々の名前.この種は,そこらあたりで繁殖しているのだそうです.
 

2012年1月12日木曜日

動物名考(4) ジェンツーペンギン

ジェンツーペンギン(オンジュンペンギン)


Pygoscelis papua (Forster, 1781)


[Gentoo penguin]



ジェンツーペンギンはジェンツーペンギン属の模式種ですね.
俗称である「ジェンツー」については,諸説あるようで,英和辞典によって説明がバラバラ.異教徒(とくにヒンズー教徒)をあらわすポルトガル語[gentio]が原語だという説が有力のようですが,あまりしっくり来ないです.ターバンのようにも見えないし.
“和名”として「オンジュンペンギン(温順ペンギンらしい)」というのもあるそうですが,なんだかなあ….

以下に,ジェンツーペンギン属に属するとされる種を示しておきます.

genus: Pygoscelis Wagler, 1832 [type: Aptenodytes papua Forster, 1781]
 Pygoscelis papua (Forster, 1781) [Gentoo Penguin]
 Pygoscelis antarcticus (Forster, 1781) [Chinstrap Penguin]
 Pygoscelis adeliae (Hombron and Jacquinot, 1841) [Adélie Penguin]
以下,化石種
Pygoscelis tyreei Simpson, 1972 [Tyree's Gentoo]: L. Plioc. (New Zealand)
Pygoscelis calderensis Hospitaleche et al., 2006: M. Mioc.-Plioc. (Chile)
Pygoscelis grandis Walsh and Suarez, 2006: Plioc. (Chile)


属名のPygoscelisは,ギリシャ語の [ἡ πῡγή]=《女》「尻,臀部」と[τό σκέλος]=《中》「脚,脛」の合成語.あわせて「尻の脚」という意味.大きな「尾」が体を支える「足」のように見えるから,らしい.
本来は Pygoscelos Pygoscelus だと思いますが,この語に関する誤記は頻繁にあるようです.
たぶん,ギリシャ語を素直にラテン語化したscelusは,ラテン語にオリジナルで存在するscelus=「犯罪,邪悪な行為;不幸」になってしまうために,意図的に換えられているのかもしれません.でも,scelisはギリシャ語の [ἡ σκελίς]=《女》「牛の脇腹;ベーコン」の意味があり,まったく不似合いな言葉になってしまいます.
ほかの例として,恐龍に Scelidosaurus というのがあり,これは「脛の龍」という意味だとされています.しかし,ギリシャ語の[σκέλος]は《属格》[σκέλιδος]という変化はしないので,scelido-という語根はあり得ません.混乱の多い「語」です.

種名papua,たぶん…,Papua = New Guineaのことだと思いますが,パプア=ニューギニアまで,このペンギンが生息範囲を持つとは思えませんので,地名に由来するものではないのでしょう.パプアはマレー語で「羊毛のような毛をもつ」という意味だという説が辞書に書かれていますが,これならペンギンの羽毛のことを表現しているのかなと思いますが(なんで,マレー語?),別な説もあり,どうも曖昧.よくわかりません.
模式種papuaは最初の記載ではAptenodytesになっていますから,キングペンギン属に入れられていたわけですね.DNA分析でも近縁(しかし,属として分けてもかまわないぐらい)と判断されているようです.

種名antarcticusは,ギリシャ語の[ἀνταρκτικός]=「南極の」を,ラテン語綴り化したもので「南極の;南の」を意味します.あわせて「南極の尻足」.
《英語の俗称》の[Chinstrap Penguin]は「あごひもペンギン」で,顎紐みたいに見える模様のことを示しています.

種名adeliaeは,フランス人探検家デュモン・デュルヴィル(Dumont d'Urville)が1840年南極大陸に上陸し,上陸地点に妻アデリー(Adélie)の名をとってアデリーランド(Adelieland: Terre Adélie)と名づけました.こういう命名の仕方は希にあることですが,妻への愛情が感じられて好ましいと考える人と,公的なことに対し私的な名前をつけることへの“いやらしさ”を感じる人と意見の分かれるところだと思います.
アデリーペンギンは,この地で発見されたので,同じく"アデリー"の名がつけられたといわれています.地名「Adélie」からの命名であればadeli-ensisとなるはずですが,語尾[-ae]がついているのは女性人名「Adélie」が語源ということになります.命名者Hombron と Jacquinotがどういう人たちなのかわかりませんが,命名の経緯には「なにか」があったはずですね.
また,本来はadelie-aeになるのですが,欧米圏の(われわれには理解できない)習慣により,女性名が語源の場合は「語呂を整えるために」[-e]を略していいという取り決めがあるようです.だからadeliaeになっています.
ついでにいっておけば,仏国は「南極条約」に反し,この地の「領有権」を主張しているそうですから,科学的な探検があったというより,なにか映画にでもなりそうな「ドラマがあった」ような気がします.調べてみると面白そうですが,たぶんにドロドロしていることでしょう((^^;).

種名tyreeiは,ニュージーランド南島の住人Peter Tyreeの名前を採ったもの.
ペーターはPygoscelis tyreei Simpson, 1972の模式標本の発見者.当時,11歳の少年.1967年のクリスマスの日にMontunau Beach(ニュージーランド南島)で発見したとあります.かれは,標本の重要性を認識しており,発見直後にクライストチャーチ[Christchurch]のカンタベリー博物館[the Canterbury Museum]に寄贈しました.
adeliae 命名の経緯とは,ずいぶん違いますね((^^;).

種名 calderensis は,模式地の近くにあるチリ中央部の海岸にある都市(Caldera, Atacama, Chile)の名前からとったものです.日本語化している「カルデラ(caldera)」と同じ綴りですが,たしかに大釜状の湾があります.でも,火山によるものかどうかはわかりませんでした.
《合成語》《種名》calderensis = calder-ensis=「Caldera産の」

種名 grandisは,ラテン語の形容詞 grandis =「十分に成長した.大型の,大きい,偉大な」です.余程大きい標本だったと思われます.
 

厳寒期

厳寒期
 独り続くは
  イヌの足跡(「あと」と読んでください(^^;)

宮武軟骨



-10℃台が続くと,朝の新雪にイヌの足跡だけが点々と.
イヌの糞尿を放置する飼い主が増えるのと並行して,寒いと散歩がイヤになる飼い主も増えるのでしょうね.
イヌだけが散歩に出るようです.

この間,朝の除雪をしていたら,目の前で黄色い染みを落としていったイヌと飼い主がいました.
思わず呆れた風をとってしまいましたが,飼い主はいたって平然.そのまま通り過ぎました.

いつまで経っても,このネタは尽きないなあ.
某国では,犬の飼育は免許制だとか.日本もそうならないかね~~.
恥知らずの人口密度がどんどん増えてる日本ですから…(それは,秘書が…)(事故に責任はない;社長).

2012年1月11日水曜日

動物名考(3) キングペンギン

Aptenodytes patagonicus Miller, 1778


キングペンギン(オウサマペンギン)


[King Penguin]



ordo: SPHENISCIFORMES Sharpe, 1891
 familia: SPHENISCIDAE Bonaparte, 1831
  genus: Aptenodytes J. F. Miller, 1778 [type: Aptenodytes patagonica Miller, 1778]
   Aptenodytes patagonicus Miller, 1778

キングペンギンの属名はAptenodytesで,この属の模式種はキングペンギンそのものですね.
属名Aptenodytesはapteno-dytesという構造で,元はギリシャ語.
apteno-は[ἀπτήν]=《男女》「未熟な」という意味のギリシャ語をラテン語の《合成前綴》化したもの.もともとは「羽がない;翼がない」という意味ですが,日本語でも「まだ毛も生えそろわない」といえば「未熟者」を意味しますね.-dytesは [ὁ δύτης]=《男》「潜水夫」をラテン語綴り化したものです.
あわせて,「未熟なダイバー」という意味になりますが,これは!,キングペンギンに対して,失礼というものですね((^^;).王様ですよ! 相手は!!.

模式種がpatagonicaになっているのに,その下の学名の方はpatagonicusになっていますね.気付いた方はエライ((^^;).
これは,属名の-dytesが《男性》なので,形容詞である種名はそれにしたがって《男性》にしなければならないのに,原著者が《女性形》を書いてしまったのですね.それで,あとで訂正されてしまったわけです.

さて,キングペンギン属に属する種について見てみましょう.
genus: Aptenodytes J. F. Miller, 1778
 Aptenodytes patagonicus J. F. Miller, 1778 [King Penguin]
  Aptenodytes patagonicus patagonicus J. F. Miller, 1778
  Aptenodytes patagonicus halli Mathews, 1911
 Aptenodytes forsteri Gray, 1844 [Emperor Penguin]
 Aptenodytes ridgeni Simpson, 1972 [Ridgen's Penguin]: E. Plioc. (New Zealand)

キングペンギンは二亜種に分ける場合もあるようです.その場合の「英名」は不明.「和名」はいくつかあるようですが,いずれも首を傾げたくなるようなもの.だから,略します.亜種名 halliの語源も不明.hall-iですから,人名「Hallの」という意味ですが,Hallが誰なのかがわかりません.ま,あまり気にしなくてもいいかと.

種名patagonicusは,patagon-icusという合成語です.Patagonは,古いスペイン語で「巨人」という意味らしいです.現在パタゴニアと呼ばれている地域の原住民が極めて背が高かったのでPatagonと呼ばれたらしい.
パタゴンの土地ですからPatagon-ia=「パタゴニア」.
種名patagonicusPatagon-icusをつけて《形容詞》化したもの.「パタゴンの;パタゴン族の」という意味ですね.

種名forsteriは,forster-iという構造で「Forsterの」という意味です.
ForsterはJohann R. Forster.Forsterは独国の博物学者で,キャプテン・クックの第二次太平洋航海に同行,5種のペンギンを命名しています.この種の英名は,[Emperor Penguin]で「コウテイペンギン(皇帝ペンギン)」と訳されています.キングより大きいので,エンペラーね.現生種ペンギンの中では最大の種だそうです.

種名ridgeniは,11歳の小学生Alan Ridgenにちなんでつけられてものです.かれは,1968年,ニュージーランドのカンタベリー地域の海岸で最初にこの化石を発見しました.そう,キングペンギン属の化石種なんです.
 

2012年1月8日日曜日

動物名考(2) ペンギン類およびフンボルトペンギン

ペンギン[Penguin]類


冬の散歩で有名な旭山動物園のペンギンたちについて.
でもまあ,ペンギンの散歩は運動不足の開始目的で,べつに旭山動物園にプライオリティがあるわけじゃあないですけどね.ペンギンの飼育施設では,どこでも普通にやってるとか.
それと,ペンギンにもいろいろ性格の違いがあるようで,イワトビペンギンなんかは性格がきついので,一般客の前で自由に振る舞わせることは無理なようです.

さて,ペンギンは,ペンギン目ペンギン科に属する鳥類の総称です.
現生種は,一目一科一亜科にすべて含まれていますが,化石種の大部分は別の亜科に含まれる用ですが,その分類学的位置付けは,まだ,かなり曖昧なようです.
ペンギン[Penguin]という俗称の語源は諸説あるようで不詳.残念ですね.気になる人は英語版Wikipediaで.

ordo: SPHENISCIFORMES Sharpe, 1891


familia: SPHENISCIDAE Bonaparte, 1831


subfamilia: SPHENISCINAE Bonaparte, 1831



各名称からわかるとおり,type genusはSpheniscus Brisson, 1760です.
面白いことに,genus Spheniscusそのものに,《英名》banded penguinsが当てられています.bandedは「帯模様(縞模様)を持つ」という意味ですけど,その通りで,この属に属する4種はどれもよく似た帯模様を持っています.素人目にはほとんど区別がつかないですね.本当に,分ける意味があるのでしょうかね.

genus Spheniscus Brisson, 1760 [type: Diomedea demersa Linnaeus, 1758]
 Spheniscus demersus (Linnaeus, 1758) [African Penguin]
 Spheniscus magellanicus (Forster, 1781) [Magellanic Penguin]
 Spheniscus humboldti Meyen, 1834 [Humboldt Penguin]
 Spheniscus mendiculus Sundevall, 1871[Galapagos Penguin]
の4種が構成種.このうち,「フンボルトペンギン」と呼ばれるS. humboldtiは旭山動物園在住のようですが,農協キャラには選出されていません.
属名のSpheniscusは,ギリシャ語の[ὁ σφήν]」=「楔」をラテン語綴り化し,《合成前綴》化したものです.語尾の-iscusは《縮小詞》で,この合成語の意味は「小さな楔」.
なにが,「小さな楔」なのかは,ちょっとわかりませんが,体長60~70cmのペンギンが泳ぐさまは「小さな楔」に見えるのかもしれません.
なお,リンネが命名したときのDiomedeaは,「アホウドリ属」のこと.当初はアホウドリの仲間と思われていたということでしょうかね.

種名demersusは,ラテン語で「沈んだ」という意味で,属名とあわせて「沈んだ小楔形」.なんか,海中を泳ぐペンギンの姿を彷彿とさせますね.
最初の記載の時にはdemersaだったのが,genus Spheniscusに移されたときに,語尾が-usに変わっていることに気付きましたか?
これは,属DiomedeaDiomedusの《女性形》なので,《形容詞》である種名も女性形のdemersaをとっていたのが,移されたSpheniscusは《男性形》なので,demersus《男性形》に換えられたわけです.
本来は,原著者が提案した「綴り」は尊重されなければならないのですが,ギリシャ語-ラテン語の系譜を継ぐ「学名」は「名詞」(=属名)を修飾する「形容詞」(=種名)は同じ「性」になるという文法にしたがっていますので,無条件で訂正していいことになっています.ここは,なんか「衒学」的で「ヤ」なところです.なぜって,ろくなラ語辞典・希語辞典がないのに《性》を確認する作業はけっこう大変だからです.「これを知ってるといばれるの唄」みたい(^^;.

種名magellanicusは,Magellanの形容詞形.Magellanは元は人名ですが,この場合は地名「マゼラン海峡の」という意味ですね.人名ならば,Magellan-iとなるはずですから.
属名とあわせて「マゼラン海峡の小楔形」.マゼラン海峡を泳ぐペンギンの姿が浮かんでくるよう.

フンボルトペンギン


Spheniscus humboldti Meyen, 1834


[Humboldt Penguin]


種名humboldtiは,独国の自然科学者F. H. A. Humboldtの名の形容詞化.たぶん,フンボルトが発見に関わったとかいうのではなくて,フンボルト海流が南米を洗うあたりに生息しているのだとおもいます.フンボルト海流は,別にフンボルトが発見したわけではなく,彼が最初に図示したことによるそうです.ちょっと,錯綜してますね.

種名mendiculusは,ラテン語のmendīcus =「物乞いの,貧困の,窮乏した」の縮小語.属名とあわせると,「小さな物乞いの小楔形」って,ひどいんじゃあない(-.-#).
 

2012年1月7日土曜日

動物名考(1) ベニイロフラミンゴ

ベニイロフラミンゴ


[Phoenicopterus ruber Linnaeus, 1758]


「ベニイロフラミンゴ」は,日本には自然状態では生息しない鳥なので,当然この言葉は「学者」が造った言葉でしょう(この情報時代に,誰が造った言葉なのかハッキリしないのは残念).
この「ベニイロフラミンゴ」は学名Phoenicopterus ruber Linnaeus, 1758の和名として使われています.この種は,中南米に生息する鳥なので,英名は「American Flamingo」と呼ばれています.本来は「アメリカフラミンゴ」と呼ばれるべきものかもしれません.

「アメリカフラミンゴ」がいるなら,別な地域名を持ったフラミンゴもいるのでしょうか.
答は「イエス」です.
その学名は「Phoenicopterus roseus Pallas, 1811」.「ヨーロッパフラミンゴ」と呼ばれていますね.ところが,英名は「Greater Flamingo」.訳すと「オオフラミンゴ」になってしまいます.
なぜ「オオフラミンゴ[Greater Flamingo]」というかというと,アフリカ東部からインドあたりに分布する比較的小型なフラミンゴを「コフラミンゴ」とするからです.たぶん,もともとは,「ヨーロッパフラミンゴ」だけが,「フラミンゴ」で,のちに発見されたアフリカ~インドに住む「シュード・フラミンゴ」と区別するために「大小」の区別をつけたものでしょう.

つまり,1758の時点で,
Phoenicopterus ruber Linnaeus, 1758「フラミンゴ」

1798には,
Phoenicopterus ruber Linnaeus, 1758「フラミンゴ」→「オオフラミンゴ」
Phoenicopterus minor Saint-Hilaire, 1798「無名」→「コフラミンゴ」

1811には,
Phoenicopterus ruber ruber Linnaeus, 1758「オオフラミンゴ」→「ベニイロフラミンゴ」
Phoenicopterus ruber roseus Pallas, 1811「オオフラミンゴ」→「オオフラミンゴ」
Phoenicopterus minor Saint-Hilaire, 1798「無名」→「コフラミンゴ」
と,なったのでしょう.

ならば「オオフラミンゴ」ではなく「ヨーロッパフラミンゴ」を選択して,セットで「ベニイロフラミンゴ」は英名の訳である「アメリカフラミンゴ」にすべきだと思うのが普通だとおもいますけど,現行の“和名”は,誰が考えたのか,完全に交差していますね.
なお,1782年には「チリフラミンゴ[Phoenicopterus chilensis Molina, 1782]」(英名を「Chilean flamingo」)が記載されていますので,そうすると,「ヨーロッパ」・「アメリカ」・「チリ」のフラミンゴが並び,生息地も示しているので,「グッ」な“和名”だと思いますがね~~~((^^;).

もう一つ.
「ベニイロフラミンゴ」以外に「ベニイロ」(もしくはその系統の色)はないのかというと,「ヨーロッパフラミンゴ」や「チリフラミンゴ」も,あとで書く別なフラミンゴ類も「淡いピンク色」をしているといいますし,この「色」自体が,食べ物による染色だといいますから,「ベニイロ」とつけるのは,分類学上は的外れな“和名”命名ということになりそうな….
もっとも,「フラミンゴ」という俗名そのものも,ラテン語のflamma=「炎」から来ていますから,それにあてはまる鮮紅色の鳥は「ベニイロフラミンゴ=アメリカフラミンゴ」だけなんですけどね.淡いピンク色の「炎」って,あり得ないよね~~((^^;).


さて,現在は別な属に移されていますが,当初は同属と考えられていた,ほかのフラミンゴについて.
「コフラミンゴ」
Phoenicopterus minor Saint-Hilaire, 1798
Phoeniconaias minor (Saint-Hilaire, 1798)

「ジェームスフラミンゴ,コバシフラミンゴ」
Phoenicopterus jamesi Sclater, 1827
Phoenicoparrus jamesi (Sclater, 1827)

「アンデスフラミンゴ」
Phoenicopterus andinus Philippi, 1854
Phoenicoparrus andinus (Philippi, 1854)

「コフラミンゴ」はアフリカ東部からインドあたりに生息しています.
「チリフラミンゴ」と「アンデスフラミンゴ」は,生息地域が幾分重なるのですが,別種と認識され,さらにのちには別属とされるようになりました.

「アンデスフラミンゴ」と「ジェームスフラミンゴ」はアンデス山中に生息し,二種は独自の属を構成します.
生息地域が,属の定義に大きな影響を与えているようですね.別な属に移されたのは,どうやらDNA分析の結果らしいのですが,その論文が入手できないので,詳しいところはわかりません.Phoeniconaiasは一属一種だからいいとしても,Phoenicoparrusの模式種がわからない=見つからないのは,正式な記載論文ではなくして(形式に載っていない)造られたからではないかと,邪推しています((^^;).


でな,わけで,フラミンゴの分類をまとめると….

ordo: PHOENICOPTERIFORMES Fürbringer, 1888


familia: PHOENICOPTERIDAE Bonaparte, 1831


genus: Phoenicopterus Linnaeus, 1758 [Type: Phoenicopterus ruber Linnaeus, 1758]
 Phoenicopterus ruber Linnaeus, 1758「オオフラミンゴ」
  Phoenicopterus ruber ruber Linnaeus, 1758「アメリカフラミンゴ」(もしくは「ベニイロフラミンゴ」)
  Phoenicopterus ruber roseus Pallas, 1811「ヨーロッパフラミンゴ」(もしくは「バライロフラミンゴ」)
 Phoenicopterus chilensis Molina, 1782「チリフラミンゴ」
 Phoenicopterus minor Saint-Hilaire, 1798「コフラミンゴ」
 Phoenicopterus andinus Philippi, 1854「アンデスフラミンゴ」(本来は「andesensis」が正しい*)
 Phoenicopterus jamesi Sclater, 1827「ジェームスフラミンゴ」(「ヤメシフラミンゴ」の方が正確**)

もしくは


genus: Phoenicopterus Linnaeus, 1758 [Type: Phoenicopterus ruber Linnaeus, 1758]
 Phoenicopterus ruber Linnaeus, 1758「オオフラミンゴ」
  Phoenicopterus ruber ruber Linnaeus, 1758「アメリカフラミンゴ」(もしくは「ベニイロフラミンゴ」)
  Phoenicopterus ruber roseus Pallas, 1811「ヨーロッパフラミンゴ」(もしくは「バライロフラミンゴ」)
 Phoenicopterus chilensis Molina, 1782「チリフラミンゴ」

genus: Phoeniconaias Gray, 1869 [type: Phoenicopterus minor Saint-Hilaire, 1798]
 Phoeniconaias minor (Saint-Hilaire, 1798)「コフラミンゴ」

genus: Phoenicoparrus Bonaparte, 1856 [type: unknown]
 Phoenicoparrus andinus (Philippi, 1854)「アンデスフラミンゴ」(本来は「andesensis」が正しい)
 Phoenicoparrus jamesi (Sclater, 1827)「ジェームスフラミンゴ」(「ヤメシフラミンゴ」の方が正確)

と,なるのですかね.
ただし,食い散らかしたようなデータが多く,なかなか,キチンとした文献を見つけることができませんので,あちこち修正を加えてありますし,引用文献を明示することができません.あしからず.
なお,学生のみなさんは,決してレポートに丸写ししたりしないように.これは,私見ですので恥をかくだけでは済まないと思いますよ.

*andinus > andesensis :andinusはAndesの形容詞に見えますが,このAndesはアンデス山脈のAndesではなく,ローマの詩人ウェルギリウス[Vergilius]の生地であるAndes村のことです.アンデス山脈のAndesはまったく別の語源と考えられていますから,この形容詞を使うのはおかしい.合成語であるandesensis = andes-ensisを使用するべきですね.ただし,一度つけられた学名は勝手に変更することはできませんから,これを使うしかありません.
**「ヤメシ」:jamesiは原語はどうであれ,学名とされた時点でラテン語ですから,現地語ではなくラテン語の呼び方が採用されるべきです.したがって,jamesiは「ヤメシ」と読むしかないのです.たとえば,英語圏の人間はCoelacanthusを,平気で英語読みの「シーラカンス」と読み,英語圏でない人間にもそう読むように強制しますが,英語圏でない人間にはどうやったって,そうは読めない.これはラテン語読みの「コエラカントゥス」と読まれるべきです.自国語読みでかまわないのなら,学名を使う意味がありませんからね~~.
ま,「道理」が引っ込む世界ですから「無理」でしょうけどね.
 

動物名考(0)

旭山動物園の動物たちの名前を雑学的に紹介していこうと思います.
飼育動物リストでも入手できればいいのですが,そんなものは公開していないようなので….

ところで,「JA旭川青果連」は商品キャラとして,旭山動物園の動物たちを使っています.
具体的には,「JA旭川青果連」の頁を見てください.
ここにイラストを載せてもいいのですが,著作権問題を起こしたくないので…ね.

とりあえず,ここにでている動物たちで,順にサーフィンしていこうと考えてます.
まずは,鳥類から….

AVES[鳥類]


以前は,「鳥類」は,class AVES Linnaeus, 1758 として,ひとつの分類群を形成していると考えられていました.
現在は,いわゆる「鳥類」といわゆる「恐竜類」の類似性が強調され,一方で,分類単位としては,長期間認められていなかった「恐竜類」が復活し,鳥類が恐竜類に含められてしまうなど,新しい分類体系がたくさん提案されています(いるらしいです?).同時に,DNA解析による現生種類縁関係の再構成があり,くわえるにクラディズムの台頭で,リンネが提唱し,それなりに安定していた「分類体系」が,ガタガタになっています.
まあ,食い散らかしたような論文が多いのですがね.そんなわけで,体系的かつリーズナブルな分類体系というのは,現在は存在していないのです(関係者のみなさま,すいません.これが,部外者の素直な感想です).

なんとなく,日本に「プレートテクトニクスが導入されたころ」の地質学会の様子を彷彿とさせるようなところがあります.
地質調査をすることによって,なんとか日本列島の地質を体系立てようと苦心し,それなりの形が整いつつあるところに,外国から「PT論」が導入され,食い散らかしたような論文が,そのときどきで手を変え品を変え頻出したので,地質学界のいわゆる「重鎮たち」がイライラしていた時期ですね.
PT論者たちは,「仮説」を立てて,それを実際の「地質」で検証するという方法論をとっていました:抵抗勢力はこの方法論にも,イライラしたようです.抵抗勢力の方は「地質を細かく記載」し,それによって「体系立てる」という方法論をとっていましたからね(実際は,ちょっと疑問のところもありましたけど(^^;).

もっとも,分類学の方では,日本には抵抗勢力(リンネ流の分類学を厳密にやっていたグループ:学会,学閥)が存在していなかったようで,どこを食い散らかしても,論争など起きなかったようですけどね.

いつになったら,理解できるような分類体系が示されるのだろう….
ま,それはともかくとして,各動物(旭山動物園キャラ)について,稿を改めて示したいと思います.