2007年4月29日日曜日

アカゲラの啄痕


注:「啄痕」は適当な言葉が見つからなかったので,私が造語しました.

 ここは住宅街の公園なんですが,以前から生えていた大きな木がどういう理由でか,ある高さで皆伐られてしまいました.伐り跡が傷んでしまって枯れはじめ,そこについた虫を狙ってアカゲラが木をつついています.この穴がもっと大きくなると,小鳥たちが巣穴として利用するようになるのでしょう.
 実はこのそばに,もっと立派な穴があいた木があり,時々小鳥が出入りしていたのですが,冬の間に根元から伐られてしまいました.この公園の管理には,疑問な点が多いのですが,公園課の連中と話すると,心が冷たくなってゆくのがわかるので,あまりいいたくありません.
 人間の都合で,生えていた木が切られたりすると,そこにいた動物たちは大変な迷惑をこうむるのですが,それに気がつかない人が管理しているという矛盾.

 それにもかかわらず,切られた木を利用して,逞しく生きています.
 ガンバレよ!


 ついでに.
 アカゲラの学名は Dendrocopos major (Linnaeus, 1758) です.以前は Picoides major Linnaeus, 1758 としている図鑑が多かったようですが,訂正が進んでいるようです.日本の図鑑は学名を粗略に扱いますので,そのあたりを説明しているものは見つかりません.シノニムぐらい,どこかのサイトに書いてないかと探しましたが,学名モドキしかないですな.

 わずかな情報をたよりに,いきさつを検討してみます(怖い物知らずで…どうも(^^;).

 Picoides Lacepede, 1799 はもともと,北米にいたキツツキ類につけた属名のようです.日本にいたキツツキの仲間は安易にここに放り込まれ,かなり雑多なものが混ざっていたようす.そこで,アカゲラは Picoides major Linnaeus, 1758 と分類されました.ところが, Picoides の再検討が進んで,アカゲラは Dendrocopos major (Linnaeus, 1758) と判断されることが多くなったようです.1976年にでた図鑑にはもう Dendrocopos major になっているものがありますから,最近になっても,まだ Picoides major を使ってる図鑑は学名の検討なんかしてないんだろうな.それとも, Picoides が有効名だという根拠があるのだろうか.だったら,そのあたりを書いといて欲しいですね.

 さて, Picoides は,Picus (ヤマゲラ属)に似ているという意味で-oidesの語尾がついたもの.picus は「ピークス」と読み,ラテン語でキツツキ・ヤマゲラのたぐいを指していました.サンスクリット語では pikas は「インドのカッコー」意味しているそうですが,あまり共通点があるようには思えませんね.
 もひとつの Dendrocopos は,dendrosとcoposの合成語.dendrosはもともとギリシャ語がラテン語化したもので「木」を意味します.copos は手持ちのラテン語辞典には載っていません.ギリシャ語の「コポス」はオックスフォード・ギリシャ語辞典には pains, trouble; hard work とあまりいい意味ではでていませんね.Brown (1954, 1956) Composition of scientific words にも weariness, fatigue とでています.どうも,この名前を付けた人は「木をつついて弱めるもの」の意味をもたせたようです.ちなみに,ギリシャ語の「コプトー」(ラテン語化すると kopto もしくは copto )には「打つ,小さく切る」の意味があります.これと勘違いしたのかも知れません.
 Dendrocoptos にしてくれれば判りやすかったんですがね.もしかしたら,この名前は別の生物にすでに使われていて,わざとこういう綴りにしたのかも知れませんが.

 さて,さて,種名の方の major は英語のメジャーの語源(というよりはそのままですが)のラテン語で「マイヨル」とよみ,意味は「より大きい」.コアカゲラが Dendrocopos minor (Linnaeus, 1758) ですから,学名と和名が素晴らしく調和しています.
 ちなみに,minor は「ミノル」とよみ,意味は「より小さい」.


 さて,さて,さて,化石のキツツキ類は非常に数が少なく,その進化の様子はほとんどわかっていないようです.
 それでも,キツツキ科と思われる化石が北米の中期中新世の地層から産出しています.その後も鮮新世の北米からキツツキ科の化石がでています.もしかしたら,キツツキは北米で進化したのかも知れませんね.

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