2010年1月16日土曜日

学名辞典(恐竜編)

 
 ようやっと,ここ数ヶ月夢中になってつくっていた「学名辞典(恐竜編)」が完成!,とまでは行きませんが,実用レベルに達してきました.

 20世紀までに記載された恐竜名(属も種も)は,ほぼ網羅したはずです.
 でも,属名はともかく,種名の方は意味不明のものも多々あるので,それはまだ「不詳」として放置してあります.

 もしばらく「いじっ」たら,オンラインソフトウェアとして公開しようかな?などと考えてます(と,いってもその方法を知らないな(^^;).

 しばらく「いじる」というのは,当初の目的は「学名に市民権を与える」なので,眼にする頻度が多いと思われる日本産の哺乳類や鳥類ぐらいは「引けば意味がわかる」ぐらいにしたいからです.
 ただ,このさいでも,一つの辞書にまとめておくべきか,「恐竜辞典」,「哺乳類辞典」,「鳥類辞典」などと分けておくべきか,それすらも方針が立っていません.
 Logophileの辞書エディタが,辞書の分離や合併に対応していれば,あまり考えることなくできるんですが,前にも書いたようにこのエディタはあまり強力ではないからです.無意識に登録した単語を消していることもあるようです.単語「削除ボタン」にアラートがなく,間違えて押すとそのまま消えてしまうんです.一遍やってしまうと,後戻りがきかない=アンドゥもないんですね.


 さて,これまで,辞典造りをやってきて,気付いたことを幾つか.

 第一にいえることは,日本におけるラテン語環境・ギリシャ語環境が実に情けない状態だということです.簡単にいえば,まず,まともな「羅和辞典」・「ギ和辞典」がない.

 ちょっと失礼ないい方だったかな.
 言い直せば,学名の意味を知るための「羅和辞典」・「ギ和辞典」は存在しないわけです.
 それで,聖書やら特殊な古典やらに出てくる単語しかでてないような,しかも「単語」の成り立ちがわかるようなものではなく,単なる「単語帳」のような辞書しかなく,これを使うしかないのが現状.
 それも,価格的に安ければ,「しようがない」でも使いますが,思わずコストパフォーマンスを考えてしまうような値段(^^;.「羅英」・「ギ英」がダメ元で買える様な値段なのに比して…,彼我の文化程度の違いを思わず考えてしまう環境です.

 当初,けっこう役に立ったのが,大槻真一郎の「独-日-英 科学用語 語源辞典 ラテン語編」と「ギリシャ語編」.この中に出てくる《合成前綴》,《合成後綴》という概念は便利でした.合成語の多い学名の理解には,便利この上ない概念ですね.でも,ほかの辞書にはこういう概念はないですし,この辞書内でも,扱いが統一されていない=筋が通っていないことが,使い続けているとわかります.
 だいたい,《前綴》,《後綴》というけど,その間に使われているのは《なに綴》なんだ?《間綴》?

 使い続けていてわかるもうひとつのことは,第一にボキャ数が足りない.
 特に「ギリシャ語編」は,これで辞典?お金取る気?と思わせるほどのボキャ数.
 見出し単語および説明に出てくる単語の選定に偏りがある.著者はたぶん植物学の専門家なのだろうということが推測できます.植物学用語と医学用語はかなり些末なところまででていますが,動物や(もちろん古生物も)現代科学技術用語もおざなり.看板に「科学用語」とありますが,どうもね.
 使いこなしてくると,不満が出てきます.
 「~を参照せよ」みたいな記号があるので見てみると,それは見出し単語として存在しなかったりもする.辞典として熟成しているとは言い難いところがあるというとこですか.

 ま,文句はありますが,一番役に立った辞書であることも事実です(値段分役に立っているかというと,それは疑問).もっとも,ターゲットが医学関係者のようなので,高くて当たり前なのかも.PC翻訳ソフトでも,医学用はバカ高いですモンね.

 なお,似たようなもので,「医語関連 ローマ字化ギリシャ語集」(松下正幸著,栄光堂刊)というのがありますが,ほとんど役に立ちませんでした.なぜかというと,ギリシャ語からラテン語化するときの過程が問題なのに,最初から《ギ語》を使わずにローマナイズした単語を見出し語に使っているからです.
 内容も,ただの単語帳です.
 源語である《ギ語》からどのような過程をたどって《ラ語》,さらに現代(科学)用語になっているかが示されてないと,見出し語にない単語は,まるで理解不能になります.

 一例ですが,「変化のある」という意味のギリシャ語に「ポイキロス[ποικίλος]」というのがあります.これがラテン語化したときにはpoecilos, poecilus, poicilus, poicilos, poekilus, poekilosというようなバリエーションが見いだされます.
 ちなみに,前出「医語関連…」には「poikilos」しか載っていません.
 これでは,使い物にならない.

 もうひとつ,「科学英語 語源小辞典」(前田滋・井上尚英編)というのを入手しましたが,こちらも,源語である「ギリシャ語」を無視しているので,「医語関連…」とほとんど変わりがありません.ただし,こちらは「語根」を重視しているので,かなり応用がききます.
 源語である「ギリシャ語」から解説してもらえれば,もっと理解しやすい辞典になったと思います.

 致命的なのは,「小辞典」であること.なんといっても,ボキャ数が….
 もっと致命的なのは,「小辞典」といいながら,A5サイズであること.A5サイズは,辞書として引くには,日本人の手には大きすぎることがわかっていない.とにかく引きにくい.


 すべての辞典にいえることですが,ラテン語は単語の変化があきれるくらいあるのに,省略が多すぎること.初学者が誤解・混乱するような記述が多すぎて,学ぶこと自体がいやになりそう.
 ラテン語に熟達しているなら辞書を引くこともないはずですが,ラテン語に熟達していなければ,引けない辞書が多すぎますね.
 一番気になるのが,辞典ごとに見出し語の選択や意味にいたるまで,「相違」が矛盾といっていいほどあり,辞書自体が「熟成」していない,という気にさせます.

 

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