2013年2月8日金曜日

Scaphitesの展開(Ⅶ)

 
1953年には,ライト[Wright, C. W.]氏がプテロスカファイテス[Pteroscaphites Wright, 1953]という属名を提唱しています.もちろん,スカファイテスの仲間.


接頭語「プテル・/プテロ・[pter-/ptero-]」は,ギリシャ語の「プテロン[πτερόν]」=「羽,翼」をラテン語合成前綴化したもの.
翼竜の「プテラノドン[Pteranodon Marsh, 1876]」で有名ですね.ほかにも,たくさんの動物・植物の学名に使われている語根です.

ちなみに,「プテラノドン」は「プテル・[pter-]」+「・アノドン[-anodon]」の合成語で, 元はギリシャ語の「プテロン [πτερόν]」+「アノドーン[ἀνόδων]」=「翼」+「歯無し」という構造.つまり,「翼があって,歯が無い」ということです.


話を戻しますと,プテロスカファイテスは,図を見ればわかるように,殻の開口部にヒラヒラのフランジを持っていますね.これを「翼」と表現したのでしょう.
だから,プテロスカファイテスは「翼をもったスカファイテス」ということ.

なお,模式種は「スカプイテース・アウリクラートゥス[Scaphites auriculatus Cobban, 1952]」として記載されました.
種名「アウリクラートゥス[auriculatus]」は,ラテン語の「アウリクラ[auricula]」=「耳朶;耳」に「・アートゥス[-atus]」=「~を持った」という形容詞化語尾をつけたもの.つまり,「耳たぶを持った」という意味です.
ですから,もともとは,「耳たぶを持ったスカファイテス」という意味の学名でしたが,ライト氏が別属として,プテロスカファイテスを設定し「プテロスカプイテース・アウリクラートゥス[Pterocaphites auriculatus (Cobban, 1952)]」が成立しました.そこで,「耳たぶを持った,翼のスカファイテス」となった訳です.意味が二重になってしまいましたね.
 

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