2009年3月21日土曜日

たたら製鉄の行程

 
 前回の「赤目粉鉄」で,たたら製鉄のうち,鉧押法では「こもり」,「こもりつぎ」,「のぼり」,「くだり」という四つの行程があると書いてしまいました.これは,窪田蔵郎(1987)「改訂鉄の考古学」に出ているものです.これには,「どこで」あるいは「だれが」という記述はありませんので,読者は「たたら製鉄一般では」と思ってしまうことでしょう.私もそう受け取って読んでいました.
 ところが,飯田賢一(1976)「鉄の語る日本の歴史」でも,「たたら製鉄」の鉧押しについての解説があり,こちらでは初日を「ノボリ」といい,二日目を「ナカビ」,三日目を「クダリ」とよんでいるそうです(銑押しの場合は,第四日目を「大クダリ」という).飯田氏の方にも「どこで」あるいは「だれが」やったという記述はありません.文脈からは,中国地方の一般的な「たたら製鉄」では,と読めてしまいます.
 似てはいますが,「違いは微妙である」とはいえませんね.

    

 「たたら製鉄」自体は「科学(Science)」ではなく「技術(Art)」ですので,「地域」あるいは「親方(たたら製鉄の場合は『村下』といいます)」によって「用語」や「やり方」に違いがあっても,それを問題にする方がおかしいですが,少なくとも,科学者を自称する人が,それに惑わされてはいけません.きちんと「どこで」あるいは「だれが」やったものを採録したとか,「なに」にそう書いてあったと明示すべきです.
 「真砂粉鉄」や「赤目粉鉄」も同じですが,どうやら「たたら製鉄」に関わっている人たちは,同じ言葉で違うものを,違う言葉で同じものを現している場合があるようです.これでは議論が成立しませんね.

 

0 件のコメント: